達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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夏休み編 会長選挙 其の四

真由美の提案した生徒会役員資格制限撤廃議案は賛成多数で可決され、次はあずさの選挙演説が始まる。

 

あずさの演説は概ね無難に進んで行った。 波乱が起きたのは時期生徒会役員に言及した時、

 

「本日の決定を尊重し、次期生徒会役員には、一科生、二科生の枠に捉われず有能な人材を登用していきたいと思います」

 

低レベルなヤジが飛ぶ。

 

「さっきの二科生のこと~」

 

「あずさちゃんはワイルドな年下が好みなの~」

 

あずさの人となりは反対派にも知られている だから反対派はあずさは反撃せずにスルーすると思い込んでいた。

 

確かにあずさは何も言わなかった。イヤ、言え無かった。言う暇が無かった。

 

「誰だ、今のは?」

 

「言いたい事があるならはっきり言いなさい」

 

そして反対派とあずさファンの間で掴み合いに発展。その輪は更に広がっていく。

 

「お静かに 御着席下さい」

 

「静粛に願います」

 

「皆さん 落ち着いて下さい」

 

既に真由美達の声も届かない。

 

収集が付かなくなりそうなので、辰巳 沢木にアイコンタクトして飛び込む覚悟を決める。だが達也の決断は遅かった。反対派の達也とあずさの仲を邪推する、極めて下品なヤジが放たれた瞬間。

 

少女の叱声が騒擾を制した。

 

「静まりなさい!」

 

生徒達の意識を圧倒したのは声の大きさでなく強さだった。

 

深雪の周りでは想子光の吹雪が荒れ狂っている。常識外れの干渉力の強さは理解できずともこのままではイケないことは誰の目にもあきらかだ。だが彼女を止める方法は彼女の干渉力を超えることだけだと解っていても。CADを手にした役員達ですら深雪の干渉力を超えられない事を理解させられている。このまま氷漬けにされるのを只待つだけなのか? そんな絶望がよぎった時 いつの間にか少女の前に立っていた少年が少女の力を抑え込み全生徒を救った。

 

会場は落ち着きを取り戻し、演説会は再開される。演説が終わるまでヤジも声援も無かった。

 

そして何事も無かったように投票に入り、翌日の朝に結果が公表された。

 

その結果は 

 

「おめでとう あーちゃん」

 

「中条 おめでとう」

 

「おめでとう 中条さん」

 

当選したのは勿論あずさ。だが素直に喜べる訳でもない。

 

「司波さん そんなに気にすることもないですよ。所詮、無効票です」

 

「惜しかったな 達也君」

 

何故か 深雪を労わる鈴音 面白がる摩利。

 

投票数 554

 

内 有効投票数 173

 

では残りはどうなっているのか・・・

 

「凄い事になったわね」

 

「司波が220 中条が173 達也君が161・・・」

 

「勘違いで私に投票した人がいるのは認めざるを得ません。ですが 何故『女王様』や『女王陛下』や『スノークイーン』を私の得票でカウントされているんですか?」

 

「仕方ありません。『深雪女王様』『司波深雪女王陛下』『スノークイーン深雪様』と書いてあれば他に解釈のしようがありません」

 

「一体 普段の私は皆さんにどんな風に映っているんですか?」

 

「落ち着いて深雪さん 誰も貴女の事 変に見てないから」

 

「お兄様~」

 

本格的に泣きじゃくり始めた深雪を抱き寄せて、そっと耳打ちする。

 

「大丈夫 お前は女王様じゃないよ。他人にどう見えようと俺にとっては、可愛いお姫様だから」

 

「お兄様」

 

深雪の暴走が収まったことを喜んだ一同だが、すぐに後悔した。泣き止んだ後も深雪は達也の腕から離れなかった。むしろ、今の状況を逆手に頭を、頬を 達也の胸に擦り付けた この二人の出す雰囲気に胸やけを覚えた。

 

その日の昼休み 生徒会室に真由美と摩利だけ 鈴音はいつも用がなければ姿を見せない。あずさは同級生達に祝福されて欠席、達也は深雪が来なければ来ない 深雪が来ないのは皆の前で甘える姿を見られたのが恥ずかしかったからだ。

 

そんな二人しかいない生徒会室に来客者が一人。

 

「どうしたんだ 十文字」

 

「今日が七草の引退日だからな」

 

「成程 真由美を労いに来たのか」

 

「あら、ありがとう 十文字君」

 

「イヤ、どういたしまして」

 

「・・・そっか 達也君、誰かに似てると思ったら、十文字君に似てるんだ」

 

「司波が・・・司波といえば、昨日はどうなるかと思ったぞ」

 

「そうね 流石に私も焦ったけど 達也君のおかげで何とかなったわね」

 

「あれはやはり 司波が妹を抑え込んだのか」

 

「ホント 信じられない出力と制御力よね。でもいくら無系統魔法が得意だからって、いくら肉親だからって、他人の想子をあんな簡単に操れるのかしら。ウチの双子の妹達でもあんな事・・・そりゃあ、深雪さんが自分の想子をコントロールしていない状態だったからっていう事情もあるけど」

 

「妹の力を見ても、やはり、遺伝的素質を無視することはできんと思うが・・・」

 

「だが 達也君は十師族ではないと否定したんだろ」

 

「あぁ、嘘をいってるように見えなかった」

 

「それにあの兄妹 得意魔法が違い過ぎる」

 

「達也君は無系統魔法が得意と真由美は言うけど基本 達也君は魔法力が低すぎる」

 

「対して深雪さんは魔法力は高く、そして減速・冷却魔法が得意 でもそれだけじゃなくて 他の系統魔法もレベルが高い」

 

「だが現 十師族に冷却魔法を得意とする家はないはずだ」

 

「じゃあ 二人は一体・・・」

 

「はぁ~ 止めましょ この話 切りがないわ」

 

真由美は無理やりこの話を止めさせた。

 

 

 

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