鈴音からの相談は論文コンペの出場の打診だった。最初は拒んでいた達也だったが結局、出場する事にした。
「それでは 早速で申し訳ありませんが本番まで三週間しかありません。先ずは司波君に論文コンペの事を知ってもらわなくては」
「お願いします」
「論文コンペは高校生が魔法学、魔法工学の研究成果を発表する場です。開催日は毎年十月の最終日曜日。開催地は横浜と京都で交互に行われます。今年の会場は横浜国際会議場です」
「テーマは原則として自由なんだけど当然、公序良俗に反しない事だよ」
「それはそうでしょうね」
「一昨年、大量破壊兵器に関する魔法をテーマにした生徒がいましたが当然、事前審査ではねられています」
「何でそんな事を市原先輩が知っているんですか?」
「それはその執筆した生徒が三代前の生徒会長だからですよ」
「・・・」
「兎に角、コンペに必要な完成稿と使用機材、プレゼン企画書を事前に横浜の魔法協会に提出しなければなりません」
「期限は再来週の日曜日で提出先は魔法協会関東支部だけど、廿楽先生にチェックしてもらう時間も含めて来週の水曜日辺りに仕上げる方向で調整をする事にしてるんだ」
「分かりました」
第一高校 校門前
「(随分なスケジュールになりそうだ)」
鈴音達の話を聞いて、そんな事を思っていると、さきに帰っていたと思っていたいつものメンバーが揃っていた。
「・・・なぁ、あそこに寄るか?」
「いいね!」
「賛成」
という声が帰って来たので、達也達はいつもの喫茶 アイネブリーゼへ。
喫茶 アイネブリーゼ
「でもどうしたの?達也君から誘うなんて」
「確かに珍しい」
「いや、これから忙しくなるから最後の息抜きというか」
「忙しく? 新しく生徒会に入ったほのかや元々役員の深雪が忙しくなるって言うなら分かるけど」
この日、一校では新生徒会が発足してから既に一週間が過ぎている。前生徒会長の七種真由美、会計の市原鈴音が引退。新生徒会長に会長選挙で当選した中条あずさが就任。
副会長は深雪の続投。そして会計の鈴音の後任に二年 五十里 啓 書記に一年 光井ほのかを迎えている。
「あぁ実は・・・」
達也は用の出来事を話した」
「え! 達也。論文コンペの代表に選ばれたの?」
「確か論文コンペの代表って三人だけなんじゃ」
「あぁ まぁ」
「達也君、感動薄すぎじゃない」
「達也にしてみればその程度は当然ってことか」
「一年生が出場なんて早々ないよ」
「バーカ。職員達がインデックスに新しい魔法を書き足す様な天才を放置するわきゃねぇーだろ」
「おい、レオ その天才っての止めろ」
「ホントに達也さんって天才と呼ばれるのが御嫌いですよね」
「俺には都合のいい言葉にしか聞こえん」
「それでも凄いよ、あの大会の優勝論文は『スーパーネイチャー』に毎年、掲載されてるし二位以下の論文も学会誌に掲載される事もあるんだ」
「ねぇ 達也さん コンペってもう直ぐだよね。時間が無いんじゃない?」
「まぁ、学校への提出期間はチェックも含めて、後九日くらいだ」
「え!本当にもうすぐじゃないですか」
「まぁ、でも今回俺はサブだし、メインの市原先輩が夏休み前から進めてたらしいから」
「それにしても、急なお願いでしたね」
「本来のサブ担当だった三年生が体調を崩したらしい」
「それでテーマは何なんだ?」
「『重力制御魔法式熱核融合炉の技術的問題点とその解決策について』だ」
「・・・は?」
「それ『加重系統魔法の三大難問じゃなかったっけ?」
「CAD関係の論文じゃないんですね」
周りが様々な反応をする中、深雪は達也が本気なのを驚いていた。