達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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横浜騒乱編 論文コンペ準備 其之三

駅で友人たちと別れ帰路に着く。そして二人は珍しく自宅の前にシティーコミューターが停まっていることに気が付く。二人は同時に顔をしかめた。この家に来る来訪者は兄妹にとって面倒、もしくは厄介な人物に限られているからだ。達也が先に玄関のドアを開ける。

 

「お帰りなさい・・・相変わらず仲が良いのね」

 

「コッチに帰るのは久しぶりですよね。小百合さん」

 

「え、ええ、その、どうしても本社に近い方が便利だから」

 

「分かってますよ」

 

久しぶりに帰宅した義母の小百合に素っ気なく答える達也。帰宅したと言っても彼女の部屋はこの家にはない。彼女はFLT本社の近くの高層マンションの最上階で結婚生活を夫婦水入らずで過ごしている。

 

「直ぐに夕食の支度をしますね」

 

深雪はそう言って小百合を見向きもせず台所に向かう。

 

「相変わらず貴方達は私の事が気に入らないようね」

 

「深雪が気に入らないのは親父の方で、まぁ、貴方の事は本当に何とも思ってないみたいですよ」

 

「・・・そう」

 

「それで、今日は態々、何の用です?」

 

「達郎さんからの伝言を伝えに来たのよ」

 

「へえ~。それで親父は何と」

 

「単刀直入に言うわ。また、貴方に本社の研究を手伝って欲しいの。高校を中退して」

 

「無理ですね。深雪が一校に通う以上俺も一校生でいないと」

 

「別に貴方がいなくても本家から別のガーディアンが派遣されるでしょ」

 

「四葉の魔法師は他の家より少ない。それに唯の護衛じゃなく代わりのガーディアンの派遣は直ぐには無理ですよ」

 

「これは貴方の父親の命令よ」

 

「俺に命令できるのは御当主と深雪であって親父じゃない」

 

「・・・」

 

「確認ですけど。今回の件は本家に了承を得た上で俺に話してるんですよね」

 

「・・・っ、それは」

 

「まぁ。アンタ達が本家の了承を得るなんて無理ですよね。連絡手段もないんだから」

 

深雪の実の父である達郎と義母の小百合は四葉家と連絡を取り合う事ができず、本家に招かれる事もない立場にあった。

 

「勝手な事ばかりやってると本家に何されるか分かりませんよ。俺はアンタ達を擁護する立場じゃないし、深雪もアンタ達を擁護しようとはしませんよ」

 

「貴女の様な優秀なスタッフを遊ばせておく余裕はウチにはないのよ」

 

「遊んでるつもりはないんですが。今期だって飛行デバイスの大量受注があったでしょ」

 

「・・・じゃあ。せめてこのサンプルの解析だけでも手伝ってくれない?」

 

小百合がバックから取り出したのは宝石箱。開けるとそこには半透明な玉が一つ。

 

「へぇ~聖遺物(レリック)ですか」

 

聖遺物 魔法的性質を持つオーパーツ。出土した時代の技術水準を超えている加工が施されている物。

 

「何処で出土したんです?」

 

「知らないわ」

 

「・・・成程。国防軍絡みですか」

 

FLTは軍関係の仕事を受託する事がある。

 

「解析だけですね。まさか複製まで請け負ってませんよね」

 

達也は小百合の表情がほんの少し強張ったことで確信した。

 

「何でそんな無謀な事を?コレは現代技術で人工的に合成する事が難しいからレリックなんて大袈裟な呼ばれ方してるんですよ」

 

「国防軍からの強い要請があったの。断る事は出来ないわ」

 

「国防軍もレリックの複製が難しい事ぐらい分かってるだろうに。なのにどうして・・・」

 

「コレには魔法式を保存する機能があるそうよ」

 

「!! それは実証されているんですか?」

 

「まだ仮説の段階だけど、軍が動くだけの十分な観測結果が出ているわ」

 

小百合からもたらされた回答は達也の表情を壊した。放課後、図書館で調べていたのは、魔法式の保存機能に関してだったからだ。

 

「事実なら軍も無視できないか」

 

「でも、複製は」

 

「貴方の魔法なら」

 

「俺の魔法でも複製できるかわからないけど、どうしてもと言うなら三課の方にサンプルを回しといてください」

 

「ダメよ。そんな処。解析は本社で」

 

「三課の方が良く行くんで・・・イヤ、面倒だからそれは此処で預かりますよ」

 

「・・・結構です。やっぱり、貴方を頼ったのは間違いだったわね!」

 

「駅まで送りますよ。貴重品を持ってるんだし」

 

「必要ないわ!」

 

怒って出て行った小百合と入れ替わりで深雪が入って来る。

 

「はぁ~。やっと帰ってくれた」

 

「悪いけど深雪。やっぱり送って来るよ」

 

「何故です?あんな人どうだっていいじゃありませんか」

 

「人は兎も角所有物にもしもの事があったら困るからな」

 

「そうですか。分かりました」

 

深雪は渋々、達也の命に従った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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