自宅を離れコミューターでマンションに帰ろうとしていた小百合。自動運転のコミューターは小百合を無事に自宅マンションに送るはずだったのだが、途中、コミュータの後ろをピッタリとくっ付いていた自走車に阻まれた。自走車がコミューターを追い越した後、直ぐに強引に割り込んだ為、コミューターの衝突回避システムが作動し急停止した。そして同じく急停止した自走車から二人の男が小百合の乗るコミューターに駆け寄った。
「ちょっと!何事?」
男たちがコミューターの扉をこじ開けようとしたその時、後を追いかけていた達也が駆け付ける。
「お前達 その人に何の用だ?」
男の一人は達也に無言で拳銃を構え、もう一人は指輪を向けた。
「(キャスト・ジャミングか)」
キャスト・ジャミングで魔法を妨害し、拳銃で仕留める。本来なら魔法師と戦う為の常套手段。しかし、相手は普通の魔法師では無い。拳銃の引きがねが引かれる事は無かった。彼等より達也がCADの引き金を引く方が早かった。男の持つ拳銃がバラバラになる。
「!!」
男たちはキャスト・ジャミングが効かない事に驚いている様だ。
「逃がすつもりは無いぞ」
達也は更に引き金を引き、男たちにCADを向け、肩や足を撃った。すると自走車が再び動き出す。如何やらまだ他に同乗者がいた様だ。達也はまとめて捕らえようと思ったが周りを見て考え直す。流石に住宅街で強引な手は取れないと。そんな事を考えていた達也の意識を背後からの強烈な殺気が現実に呼び戻す。
「ぐっ!」
達也は咄嗟に回避行動を取った。しかし、それでも避ける事は出来なかった。遥か後方から撃たれた銃弾が達也を貫く。達也はコミューターの陰に退避した。
「今のは危なかったな」
達也は即座に自身の身体を再生させる。
「さて、お返しをしないとな」
達也は狙撃手を探し始める。倒れた男たちを回収して逃走をし始めた自走車を放って。
「魔法が使われていない分、少々面倒だが大体の位置は分かる」
それから達也は僅か数秒で狙撃手の位置を特定した。
「見つけたぞ」
狙撃手は第二撃を撃とうとしていた。
「残念だがこれで終わりだ」
達也は狙撃手に向けて分解魔法を放った。世界からまた一つの存在が消えうせた。
「大丈夫ですか?小百合さん」
「貴方こそ大丈夫なの?」
「俺はあのくらいじゃ死ねませんから」
「・・・っ」
「家まで送りますよ。そしてやっぱりそれは此方で預かります。いいですね」
「わ、分かったわよ」
小百合を自宅マンションまで送り届けた後、達也は風間に報告した。
「街路カメラの方は既に処理を始めている」
「そりゃどうも、助かります」
自身の情報が露見するのは達也は勿論のこと、風間にとっても宜しくない。
「しかし、相手も随分と大胆だな。都心ではないとはいえ、いきなりライフルをぶっ放すとは」
「確かに油断はしてましたが、それでも恐るべき技量でしたよ」
「腕のいい狙撃手を用意するのは簡単じゃない。敵は案外簡単に見つかるかもな」
「そうだといいですが」
「・・・ちょっと待て、今、車が見つかったと報告が来た。調べた後は此方で処分してもいいか?」
「ええ。構いませんよ」
そう言って達也は回線を切った。
「はあ。また、厄介事に首を突っ込んだらしい」
達也は誰もいない部屋でため息を付きながら、そう呟いた。