義母の襲撃事件から数日後。達也は自宅のワークステーションでデータ処理をしていると、ホームサーバーがアタックされている事に気が付いた。複数の経路からの同時アタック。間違いなくプロの仕業だ。何度も撃退しても、しつこくアタックを繰り返す。
達也は迎撃しながら逆探知プログラムを立ち上げた。
翌日 達也はカウンセリングルームを訪れた。只、達也に思春期の悩みがある訳では無いのだが。
「・・・途中で接続を切られたんで、攻撃元はつかめませんでしたけど」
達也は昨夜の出来事をカウンセラー小野遥に話していた。
「・・・それで? 言っておくけど、私、ネットワークチェイスなんてできないけど」
「教えてもらいたい事があるんですけど」
「・・・何を?」
「最近、魔法関係の秘密情報売買に手を出している組織について、知っている範囲でいいんで教えてください」
「ねぇ 司波君?私にも守秘義務があるの分かる?」
「それは勿論」
「・・・はぁ」
遥が重い口を開く。
「先月末から今月の初めにかけて、横浜・横須賀で密入国事件が相次いでいるそうよ。そして、それと時期を同じくして、マクシミリアンやローゼンに部品を納入しているメーカーが相次いで盗難に遭っているそうです」
「無関係ではないと?」
「その連中だと決まった訳じゃないけど」
そう言って遥の視線は身体ごとデスクに向かう。要するにこれ以上話す事は無いから帰れと言う遥の強い意志表示の様だ。放課後 達也は風紀委員会本部でも五十里に昨晩の出来事を話した。
「被害は無かったの?」
「ええ。何とか」
「先輩のお宅は大丈夫なんですか?」
「・・・それって、もしかして、クラッカーの狙いって」
「明らかに文書データを狙っていたのでコンペ絡みだと云う事を否定できません」
「この話は市原先輩にも伝えた方がいいね」
「ええ」
五十里との話が終わったタイミングで。
「啓 お待たせ」
の声と同時に花音が啓に抱き着いた。
「うわっ!」
勢いが付き過ぎたのか椅子ごと啓が倒れかけた。
「少しは押さえろ。花音。その内、怪我するぞ」
花音と一緒に入って来た摩利が呆れていた。
「千代田先輩は兎も角、渡辺先輩がどうして?」
花音は現風紀委員長だからここに来るのは当たり前だが、前委員長の摩利は来る必要がない。
「実は論文コンペの警備の事でね」
「警備? 会場警備を風紀員会が担うんですか?」
「流石にそれは無いよ。会場警備は魔法協会がプロを手配してくれる。私が言っているのは代表メンバーの身辺警護とプレゼンで使う資料や使用器具の見張りだよ」
「身辺警護って随分大袈裟ですね」
「まぁ、置き引きやひったくりを警戒すればいいんだが」
「啓は私が守ってあげる」
「因みに護衛メンバーは風紀委員と部活連執行部から選ばれる。まぁ、誰が誰を護衛するかは当人の意志が尊重される。五十里は花音が護衛でいいな」
「え!あ、はい。花音で大丈夫です」
「市原には服部と桐原が付く」
「へぇ~部活連会頭自ら護衛ですか」
「それで、ここまで話せばわかると思うが、私が来たのは」
「自分の護衛ですか?必要ありませんよ」
「まぁ、そう言うだろうとは思っていたが、・・・分かった。服部には私から伝えておこう」
「何故先輩がそんな事を?」
「へぇ?」
「こう云うのは千代田先輩の仕事ですよね」
「・・・ッ」
「(過保護だな)」
摩利は少し恥ずかしそうに部屋を後にした。