非合法工作員 ジロー・マーシャルと対峙した翌日。深雪はいつものメンバーで学食にいたのだが、エリカが難しい顔をしていたのが珍しく思えた。
「まだ、昨日の事を気にしてるの?」
「逃げられた事は気にしてないけど」
「じゃあ何を気にしているの?」
「アイツの・・・『学校の中だからと言って安心はできない』・・・もしかして、生徒の中に・・・」
「それはまだ分からない。それにまだ、手を出されていないんだから」
「でもよ。いつまでも受け身じゃな」
「分かってるさ。このままではダメな事くらい」
本番が近づき、一校では本来の授業時間もコンペ準備に割り当てられていた。コンペの準備に授業時間を割いてまで準備する必要があるのか?と言う人がいるかもしれない。論文コンペの代表は3人で、九校戦の代表の52人に比べれば少なすぎる数で地味である。だがむしろコンペの準備に関わる人数は九校戦より多い。なにより、九校戦と同じく九校間で優劣を競う場でもある。だからこそ一校にとっても重要事項とされている。
「おーい 達也君!」
「エリカちゃん、邪魔しちゃダメだよ」
忙しそうにしている達也に駆け寄ろうとしたエリカを美月が止める。
「おい、千葉 少しは空気読めよ」
エリカの性格を知っており、鈴音の護衛に選ばれた桐原も面倒事が起きない様に先に釘を打ちに来た。
「あれ?サーヤも見学」
エリカは話し掛けられた桐原を完全に無視して話し掛けたのは桐原の隣にいた紗耶香だった。
「・・・お前なぁ」
「どうしたんだエリカ。見学・・・しに来た訳じゃないだろ。何か用か?」
エリカは達也と違いコンペの準備に関係ない。そんな人物が現れ、只でさえ時間のない時に作業を中断され、堪忍袋の緒が切れそうな先輩達を制して達也が目的を問う。
「美月の付き添いだよ」
「そうか」
「じゃあエリカ。取り敢えずこっちに来なさい」
「何の実験してるの?」
「プレゼン用の常温プラズマ発生装置よ」
「常温?熱核融合ですよね」
「必ずしも超高温である必要はないらしですよ」
「なんでです?」
「・・・それは。御免なさい。私も詳しい事は理解できてないんです」
「・・・そ、そうですか」
気まずい雰囲気が流れる中、紗耶香の眼がある一点を見て動かないのにエリカが気付いた。
「どうしたの?さーや?」
「あの子・・・」
そう呟くと紗耶香はいきなり駆け出す。
「おい、壬生?」
「ちょ!だからどうしたのよ?」
遅れて桐原とエリカが走り出す。
「待ちなさい!」
紗耶香はある一人の女子生徒に向かい叫んだ。