論文コンペの準備に美月の付き添いとして来たエリカ。だが同じくコンペ代表の鈴音の護衛に選ばれた桐原の付き添いとして来た紗耶香が突然走り出したのでその後を追い駆けた。
「待ちなさいって言ってるでしょう!」
紗耶香に追い駆けられていた女子生徒がようやく中庭で立ち止まる。そして、紗耶香を追い駆けていたエリカと桐原が追いつく。
「貴女、一年生ね」
紗耶香はその女子生徒の事は知らない。一年生と言ったのは彼女の身長を見ての推測だ。
「・・・そうです。そういう貴女は二年の壬生紗耶香先輩・・・でしたね」
「そう。2ーE 壬生紗耶香。貴女と同じ2科生よ」
「・・・1ーE 平河千秋です」
「平河さん。貴女の持ってるそれ、無線式のパスワードブレーカーでしょ」
千秋は紗耶香の指摘に持っていた物を慌てて背に隠そうとするが、
「隠しても分かる。私も同じのを使った事があるから」
「・・・」
「そうよ。私もスパイの手先になった事がある。だから、忠告してあげる。今すぐに連中と手を切りなさい。後で苦しむことになるから」
「例え私が苦しんでも先輩には関係の無い事でしょう。放っておいてください」
「放っておける訳ないでしょ!どんな連中と組んでるのかは知らないけど、貴女はいずれ、利用されるだけされて捨てられるのよ!」
「そんな事分かってます。利用する側が利用される側の事を考えないなんて当然じゃないですか!」
「ッ・・・。自棄になっても、何も手に入らないし、何も残らないのよ!」
「貴女には解りませんよ。それに私は何かが欲しくて手を組んだんじゃない」
「はぁ・・・ゴメン桐原君手伝って」
「おう」
紗耶香はいつの間にか千秋を救うという使命感に駆られていた。獲物は無いが、それでも、目の前の彼女は二人で取り押さえる事ができると思った。二人が同時に踏み込んだ瞬間、千秋は小さなカプセルを投げた。
「伏せて!」
カプセルの存在に気が付いたエリカが叫ぶ。だが千秋は動きを止めない。千秋は右手を紗耶香に向ける。すると袖口からバネ式のダーツが飛び出した。
「チッ・・・」
エリカは落ちていた木の枝ではらう。割れたダーツから煙があがる。エリカは回避できたが桐原はまともに吸ってしまったようで膝を突く
「(神経ガス?)」
千秋はエリカの予想以上に用意周到だった。CADを持たない為に得意の自己加速術式も使えない。数で勝手も、獲物も無く、相手の出方が分らない状況で迂闊な真似はできない。千秋は少しづつ、後ろに下がろうとしている。
このままでは逃げられる・・・そう思った時、
「うおーー」
草むらから飛び出したレオが千秋、目掛けて突進した。
「え!」
「え?」
突然現れたレオに困惑した千秋は為す術なく押し倒され、後頭部を打ち気を失った。
「・・・もしかして、やり過ぎた」
「そうね。まるでアンタがその子を襲ってる様にしか見えないから」
「な!違うって!」
「分かってるから。早くどいて、ついでにその子を保健室まで運んで、ついでに桐原先輩も」
「次いでか俺は」
「桐原君は私が連れて行くから西城君は平河さんをお願い」
「分かりました」
エリカ達は千秋や負傷した桐原をつれ保健室に向かう。