エリカ達は負傷した桐原と千秋を連れ保健室にやって来た。幸い保険医の安宿
怜美は在室しているようだ。
「すみません。安宿先生」
「あら、壬生さん?貴方達どうしたの?」
「実は・・・」
流石に気を失っている生徒を連れている以上、事情は説明しなければならない。しばらくして風紀委委員長の花音が現われた。
「アンタ達、やり過ぎよ」
経緯を聞いた花音は思いっきり,ため息を漏らす。
「非合法な電子機器を持っていただけで、違法行為も校則違反も行ってないでしょ」
「非合法なハッキングツールを持っているだけで、捕まえるのには十分だと思いますケド?」
「やり過ぎが問題だって言ってるの」
「汚い大人に利用されてる学友を保護しようとしただけなんですケド」
「保護する相手を気絶させるの?貴女は?」
「隠し武器まで持ち出されて抵抗されては仕方ないですね」
険悪な空気のエリカと花音。それに焦りを覚えた紗耶香だが、口を挟むタイミングが掴めない。助けを求めて怜美を見るが彼女はニコニコしているだけ。しかし、この状況は直ぐに収まった。
「じゃあ、後は宜しくお願いします。委員長」
レオが口を挟みエリカを引っ張っていった。
「ちょっと!何すんのよ?」
やがてエリカの声が聞こえなくなり、花音も落ち着きを取り戻す。
「それで、この子の容態は?」
「見た所、脳にも骨にも異常は見られないから自然に目を覚ますでしょう」
安宿は医療系の特化型能力者なので見るだけで、そこ等の医療機関にある精密機械より正確な判断を下す事ができる。
「なら、この子が目を覚ましたら、ご連絡下さいますか?」
「良いけど。逃げられても文句言わないでね」
怜美の冗談めいたセリフを、花音も、
「先生が怪我人を逃がす訳ないじゃないですか」
と笑顔で返し、保健室を後にした。本来ならば立場上、千秋が目を覚ますまで付いていなければならない花音だが、花音は風紀委員長であると同時に論文コンペ代表メンバーの一人、五十里 啓の護衛でもあるためだ。しかし、花音は戻って直ぐにため息を漏らす羽目になった。問題児(エリカ)が男子生徒に注意されている。無視する訳にいかず、一部始終を見ていたであろう達也に説明を求めた。
「一体 何事?」
「どうやら関本先輩は千葉と西城がウロウロしているのがお気に召さないんでしょう」
「はぁ~」
花音は仕方なく騒動の中心に割って入る。
「あの、関本先輩。どうしたんですか?」
「ん?あぁ、千代田か。大したことじゃない。護衛でもない奴等がウロチョロしていては邪魔になると注意していたとこだ」
「来年、再来年の為にも、一年生の実験の見学を止める理由はありません。もし、本当に邪魔になるなら私達の方で注意しますから。けど、貴女達、今日は帰りなさい」
「フフッ じゃあ達也君。深雪。アタシもう帰るね」
エリカは冷笑しながら花音と関本を見向きもせずに去って行った。