達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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横浜騒乱編 裏でうごめく陰謀 其之三

 

レオとエリカの乗ったキャビネットは基本的に二人乗りだ。狭い車内に同級生と二人きり。その同級生がエリカだからか、レオにとっては沈黙漂う今の空間は居心地の悪い物だった。

 

「・・・簡単すぎるとは思わない?」

 

「何がだよ?」

 

「昨日、スパイが潜入してるって警告を受けて、今日お粗末とはいえスパイの手先に堕ちた生徒が見つかった」

 

「お粗末って・・・結構苦労しただろ」

 

「捕まえるのにでしょ。普通ハッキングツールをむき出しで持たないわよ。不用心が過ぎる」

 

「まぁ、そりゃアイツが素人だから・・・」

 

「そうね」

 

「・・・どうしたんだよ?」

 

「・・・これで終わりじゃないんじゃないかって思って。あの子は単なる当て馬じゃないかな」

 

「あの子は囮で本命は別にいるって?」

 

「・・・」

 

「まさか、俺に用って、その本命を炙りだそうって探偵の真似ー」

 

「フフッ、誰もアンタに頭脳労働なんて期待しないわよ」

 

「何だと!コラ!」

 

真剣な話し合いの場であったがレオは本気でキレた。

 

「柄じゃないでしょ。アンタもアタシも。そういう事は達也君にでも任せればいいのよ。それにアタシ達にはもっと相応しい役回りがあるでしょう?」

 

「・・・! 成程、用心棒か」

 

相手の正体はまだ分からないが、狙いは論文コンペなのは間違いない様だ。それならば態々こちらから炙り出しに掛からなくても、論文コンペの本番が近づけば向こうの方から近づいてくれるのだから。

 

「守るより反撃がメインになるけど」

 

「達也を囮にするのか?」

 

「大丈夫よ。アタシが惚れた男だもん。簡単には死なないわ」

 

「・・・(何か今とんでもない事を暴露された気が・・・)」などと多少、会話が緩くなって来た思っていたが、

 

「でも、その為には足りないものがある」

 

再度、雰囲気が引き締まる。

 

「何が」

 

「レオ、アンタの歩兵としての潜在能力は一級品たど思う。素質は服部先輩や桐原先輩よりも上。・・・まぁ素質という点ではミキも相当な物だと思うけど」

 

「・・・それで?素質はって事は、要は今の俺の能力に問題があるってことだな」

 

「言ったでしょ。足りないものがあるって。アンタには決め手がない」

 

「決め手?」

 

「そう。相手を確実に仕留められる技」

 

 

「・・・お前にはあんのかよ」

 

「勿論。ただ、専用のホウキが必用だけどね。それを使えば確実に相手を仕留められるわ」

 

「へぇ・・・」

 

「でもアンタにはそれが無い。以前達也君が作ってくれた『小通連』は使い方とチューニング次第で使える武器にはなると思うけど、それでも決め手にする程の斬れ味は見込めない」

 

「・・・確かに、俺には敵を殺すことを前提とした技術は無い」

 

「その技術を身に付ける覚悟はある?」

 

エリカの眼差しはこれ以上ない程、真剣なものだった。

 

「自分の手を人の血で汚す覚悟がある?今度の敵は多分そういう相手よ。今回の一連の件に本気で関わるつもりなら殺し合いを覚悟しておく必要があるわ」

 

それに対してのレオの回答は簡潔なものだった。

 

「愚問だぜ」

 

「だったら、アタシが教えてあげる。秘剣・薄羽蜻蛉。アンタにピッタリな技よ」

 

 

達也はすっかり日も落ちて街灯に照らされた駅までの帰り道をいつものメンバー(エリカ・レオはいない)+花音と啓に千秋の件を聞かされながら帰っていた。

 

「・・・成程。そういう動機ですか」

 

達也は分かった範囲で事情を聴き納得して見せた。

 

「何ですかそれって?!単なる逆恨みじゃないですか!」

 

「って言うより八つ当たり?」

 

憤慨するほのかと理解に苦しむ雫。二人にとっては今の話の中に納得できる要素はかけらも無い様だ。

 

「それでも何かをせずにはいられなかったんだろうね」

 

「やろうとしたことは認められませんけど、気持ちだけなら解る気がします」

 

対照的に美月と幹比古は同情交じりの言葉を漏らした。

 

「けど、それなら、放っておいても良さそうですね」

 

「狙われているのはキミなんだけど・・・」

 

「オレを狙った嫌がらせに巻き込んでしまってすいません。でも大丈夫です。パスワードブレーカーで破られる様な軟なセキュリティーは組んでませんから」

 

「イヤ、僕らに謝られても。セキュリティーの件に関しては僕も心配はしてないよ。ただ、クラックが通用しないって分かったらもっと妨害の手段がエスカレートする気が・・・まぁ、小春先輩に説得して貰うのが一番だと思うけど・・・」

 

「先輩をこの件に関わらせるのは止めましょう。姉妹といえど、関係も責任もないんだから」

 

「・・・へぇ~、ちゃんと優しいトコもあるのね」

 

達也のセリフに花音は素で驚き、深雪はムッとした。

 

「余計面倒になりそうだからですよ。最近オレの周りをウロチョロしてるのは平河妹だけじゃないみたいですし」

 

そのセリフにハッとした一同だが不審な人影は見当たらなかった。ただ啓と幹比古の二人は意図しないサイオンの波紋を感じ取った。

 

「・・・やっぱり、護衛を付けようか?」

 

 

「いえ。この手のタイプは七草先輩クラスの知覚能力が無いと尻尾を掴むのは難しいと思いますよ」

 

そう言って、護衛の件は断った。

 

 

達也達が下校している頃。品川のとある料亭の個室では、ある密会が行われていた。

 

「例の少女がしくじったようですが」

 

「陳閣下の御懸念は理解しているつもりです。ですが、彼女には此方の情報は何一つ教えていませんから、情報漏洩の危険性は無いと思いますよ」

 

「此方の情報を教えずによく協力者に仕立て上げましたね」

 

「あの年頃は純粋で情熱的、何より、多くを聞くより語りたがるもの」

 

「そうですか。ただ、くれぐれも『万が一』が無い様にお願いしますよ」

 

「心得ておきます。近日中に様子を見て参ります」

 

その言葉を最後に、密会は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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