魔法科高校は全国に九つしかない特別な学校ではあるが、昼食時の学生食堂の様相はさして一般的な普通科高校と変わらない。一校の学食は今日も騒がしかった。それが収まるのは決まって深雪が現われた時だ。
「お兄様 お待たせしました」
深雪はほのかと雫とともに学食にやって来た。達也はテーブル席に一人で座っていた。ただ、これは席取りの為だ。
「あ!深雪さん 来てたんですか?」
「今来たところよ。美月」
そこに、トレーに食べ物を載せた美月と幹比古がテーブル席に戻って来た。
「じゃあ、俺達も取りに行こうか」
美月と幹比古が戻って来た為に達也は必然的に深雪・ほのか・雫の三人と共に配膳台に向かう事になる。達也はいつも以上に要らぬ視線を向けられることになった。
そしてトレーを手に戻った四人を迎えたのは美月と幹比古の二人だった。
「・・・エリカと西城君はまだ履修中なの?」
未だ姿を見せない二人を気にしてほのかが何気ない口調で尋ねた。仮にこの場に達也と深雪がいないなら、ほのかはこんな質問はしないだろう。達也は論文コンペの準備で忙しいのは当たり前だし、そんな達也を無視して深雪が食堂に来るはずがない。だかエリカとレオが学食に来ない理由がほのかには分からなかった。
「あの二人なら今日は休みだよ」
達也の答えにほのかの目がキラリと光った。
「え!二人一緒にですか」
「そう。二人そろって」
「意外・・・でもない?」
「え!そうなんですか?」
「ちょっと美月。貴女が私達に聞いてどうするの?」
「あうっ。そうですね」
「・・・」
美月が目を泳がせ始めると少女たちの視線は幹比古に集まる。
「えっ!特に二人の間にそんな素振りは無かったと思うけど・・・でもエリカの好きな人って達也なんじゃ」
「えっ!」
「えっ!」
達也の「えっ!」は突然の幹比古の爆弾発言を受けて。深雪・ほのか・雫・美月ついでに幹比古の「えっ!」は気づいていなかったのかという驚きからだ。
「そう言えば昨日も二人は一緒に帰ったな」
達也は気を逸らそうと爆弾を投下した。
「でも、エリカちゃんとレオ君、本当にどうして休んだんでしょう」
「そうだね。あの二人に限って、急病って事も無いだろうし」
全員が食事を済ませ、食後のお茶に移ったところで、一旦は沈静化した『二人が一緒に休んでいる』疑惑が再燃した。
「勿論。偶然という可能性もあるわけですけど・・・」
「偶然じゃないという可能性もある」
「でもあの二人に偶然じゃないというイベントはあり得るの?」
「あり得ない事も無いと思うけど」
「仮に二人が一緒にいたとして・・・一体何をしているのかしら?」
その頃、達也達に噂されている二人は千葉家の道場にいた。
「こらっ!また皺が寄ってる」
「~ってぇなあ・・・何度も言うけど、手より口を先に出せよ」
「口で言っても分かってないからでしょ」
「殴ったら分かると思ってんのかよ・・・」
「・・・分かったわよ。それじゃあ、少し、休憩しようか」
「わ、悪りぃ」
「別に・・・マントの時は上手く出来てたのにね。やっぱり、勝手が違う?」
「九校戦のアレか?」
「そう、あのマント」
「あん時だって、アイロンがけみたいにキレイに真っ平に伸ばしてた訳じゃねえよ。多少細かい皺があっても盾としての役割に支障が無かったからな。それに、生地自体に伸展補助術式が組み込まれてたし」
「ふーん・・・補助術式はコッチにも組み込まれてるはずなんだけど・・・しょうがない達也君にー」
「そりゃダメだ!」
「何で?」
「達也の手を煩わせたら本末転倒だろ。術式が組み込まれてるなら、俺が発動できる様になればいい」
「・・・フフッ、オトコノコだね」
不意にエリカの見せたその笑顔が妙に艶めかしくて、レオはおもわず目を逸らした。