達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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横浜騒乱編 裏でうごめく陰謀 其之七

二人が一校に到着すると同時に雨が降り出した。

 

「これでは野外作業は無理ですね・・・」

 

「天候ばかりはどうにもできないしな」

 

もっとも、今日は最初からロボ研(ロボット研究会)のガレージでデバック作業の予定だったので天気は関係が無かった。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

「はい、頑張ってください、お兄様」

 

今日の作業は達也一人で行う。ロボ研には大小様々ロボットばかり、そんな中、達也を出迎える人影があった。

 

「お帰りなさいませ」

 

「一年E組 司波達也」

 

達也は顔認証と声紋認証を行う事で、この部屋のセキュリティーのパスに成功した。

 

その確認をしたのは3H(ヒューマノイド・ホーム・ヘルパー)通称、ピクシーと呼ばれるメイド姿のロボットだ。

 

「コーヒーを御用意・致します」

 

達也がコンソールデスクに座り、端末を立ち上げると、サイドテーブルにコーヒーが置かれた。

 

「ピクシー、サスペンドモードで待機」

 

達也は背後に立つピクシーにそう命じた。いくらロボットといえ、かなり精巧に作られているピクシーに後ろに立たれるのには抵抗があった。

 

作業開始から約一時間した頃、体に異変を感じた。達也を突然の睡魔が襲う。

 

「(根を詰め過ぎたかな?)」

 

そう思って深呼吸すると、一層、眠気が強くなった。外で一休みしよう・・・と考えて立ち上がる。しかし、手足は重い、身体が覚醒しない。今の自分の体調は異常だ。

自己修復術式がその必要性を認め活動を開始した。そして、達也の身体は『眠気に捉われる前の状態』に戻った。しかし、それで問題が解決したわけでは無い。

原因が分からない。達也は常日頃から警戒を怠らない。今日、口に入れたコーヒーでさえ、自分の眼でみて異常が無い事を分かっている。

 

「(他に何か原因があるはず)」

 

達也は眼を使い室内を確認した。すると空調システムにあるものを視た。

 

「ガスか!」

 

達也は空調内に毒性が低く、持続時間も短いが即効性の高いガスが空気中に混入しているのが視えた。だが、それ以上のことができない。ガスを『分解』するのは簡単だが、魔法観測装置のある状況下で使えば秘密をバラすことになる。また、彼には深雪達の様にガスだけを選別して室外に排出する技術はない。しかし、息を止めるのに限界がある。今できるのはこの場から逃げる事だけ、達也は入り口に向かったのだが。3Hに逃げ道を防がれた。

 

「空調システムに・異常が・発生・しました。マスクを・お使いください」

 

「ピクシー、強制換気装置を作動。避難時の二次災害を警戒し、俺は此処に留まる。

監視モードで待機。救助の為の入室に備え、排除行動は禁止する」

 

「二次災害回避を・合理的と・認めます。強制換気装置を・作動させます」

 

命令を終えると達也は端末の前に座り直し、マスクを外し、眠っている達也の様子を見に来るであろう人物を待つ準備をし始めた。 待ち人は直ぐにやって来た。

 

「司波?眠っているのか?」

 

何度か声を掛け反応が無いのを確認して、その人物は行動を起こそうとした。

 

「関本さん、何をしてるんですか?」

 

不意に背後から掛けられた声に侵入者は慌てて振り返った。

 

 

「千代田!? どうしてここに?」

 

「どうしてって。私は保安システムから空調装置の威容警報を受け取ったからですけど、関本さんはどうしてここに?・・・それと手に持ってる物は何ですか?」

 

「バカな・・・警報は切って・・・」

 

「警報を切った? 関本さん、自分を犯人だと認めましたね」

 

「冗談がきついぞ、千代田。僕が犯人?一体何の犯人だって言うんだ?」

 

「何のって、エアコンに細工して睡眠ガスを流した犯人?あ!産業数学パイの現行犯でもありますね」

 

「失礼だぞ。僕は事故によるデータ滅失を恐れてバックアップを取ろうとー」

 

「ハッキングツールでバックアップを?あり得ないでしょう、そんな事。そうよね。司波君」

 

関本が振り向くと達也が立っていた。

 

「バカな!ガスが効いていないのか?」

 

「関本さんは九校戦を見てないんですか?あの一条のプリンスを倒した子です。残念ながら催眠ガス程度で無力化されてくれる様なかわいい子じゃありませんよ」

 

「可愛げが無いのは認めますけど、デモ機から直接バックアップを取るというのはあり得ません」

 

「私もそう云うのは疎い方ですけど、流石にその位は知ってます」

 

「クソッ」

 

「関本勲 CADを外して床に置きなさい」

 

花音の口調が変わる。それは関本を犯罪者と確定した投降勧告。それに対する関本の答えは、

 

「千代田!」

 

花音に対しての起動式の展開だった。 関本は風紀委員に選ばれた猛者。魔法の発動手順・起動式の取り込みと構築、そのスピードも中々のもの。しかし、

 

「・・・カッコ付け過ぎ」

 

関本の魔法は不発に終わった。花音の床を媒体とした振動系魔法に意識を刈り獲られたからだ。魔法の発動に名称を唱える必要はない。まして、標的の名前を叫ぶ意味も無い。現代魔法の勝負は一瞬。それにCADを先に起動させていた花音に対して関本が相手の名を叫んだ上で先に魔法を発動することなどできる筈がなかった。

気を失った関本は直ぐに連行された。花音を含めた風紀委員が退出すると達也は、

 

「ピクシー、監視モード解除。監視命令時点から現在までの映像音声をメモリーに記録した後、マスターファイルを破棄しろ」

 

「畏まりました。データを・メモリーに・複写・・・複写完了。マスターファイルを・完全削除・します」

 

その後、達也はピクシーに待機を命じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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