達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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横浜騒乱編 裏でうごめく陰謀 其之十

10月25日 火曜日の放課後 

 

達也は摩利と真由美と共に関本が拘留されている八王子特殊鑑別所に向かっていた。入り口で色々な手続きがあったが、中に入ってしまえば後は案内用の端末を渡されただけで、職員の同行も無かった。恐らくこれは『七草』の名が成せることだろう。関本が拘留されている部屋は牢屋では無かった。中の様子が外から丸見えの鉄格子の中ではなく、狭いビジネスホテルのような個室だった。ただし、中の様子を見ることのできる隠し部屋が併設されている。真由美と達也はその隠し部屋に、摩利が一人で関本と対峙する。

 

「渡辺!・・・何をしに来た」

 

「勿論 事情を聴きに」

 

「い、いくらお前でもここで魔法は使えないぞ」

 

「そうか」

 

摩利が浮かべた笑みを関本は見逃さなかった。

 

「・・・!」

 

関本の指摘は本来であれば正しいものだった。ここは法を犯した未成年魔法師やその卵を拘留する施設。魔法の発動が確認されれば、アンティナイトを身に着けた警備員が駆け付ける。但し、監視システムが機能していれば

 

「時間がないから、要点だけ聞かせて貰おうか」

 

関本の意識が朦朧とし始める。そして、摩利の問いかけに応え始めた。

 

拘留室隣の隠し部屋

 

様子をみていた達也は摩利が何をやったのかその眼で理解した。

 

「匂いを使った意識操作ですか」

 

「達也君、見るのは初めて?」

 

「そりゃ、まぁ、大っぴらに使えるものじゃないですし」

 

「そ、そうね」

 

 

 

「関本 お前は達也君を眠らせて何をしようとしていた」

 

「デモ機のデータを吸い上げた後で、司波の私物を調べる予定だった」

 

「達也君の私物? 一体何を盗むつもりだった」

 

「宝玉の聖遺物だ」

 

「・・・!! 達也君そんなもの持ってたの?」

 

「持ってませんよ、そんな物」

 

「でも・・・」

 

真由美が更なる追及をしようとした、その時、所内に非常警報が鳴り響く。

 

警報を聞いた三人の対応は早かった。

 

「侵入者ですね」

 

「何処の命知らずだ」

 

昨日の病院襲撃の件で一体には特別警戒態勢が敷かれていた。

 

「達也君、何処から来てるか分かる?」

 

真由美に問われ、端末を操作する。端末が避難経路を指定する。これを逆にたどれば侵入者の位置が割り出せることになる。

 

「屋上から侵入したみたいですね。・・・現在位置は東階段三階付近だと

思います」

 

真由美は達也の回答を聞きながら『マルチ・スコープ』で、達也は真由美の質問に答えながら『エレメンタル・サイト』でその場所を視た。

 

「大当たり。如何やら侵入者は四人、しかも、パワーライフルで武装してるわ」

 

「パワーライフルですか。厄介ですね」

 

パワーライフルは対魔法師用の携行武器として知られている。対物魔法障壁を撃ち抜く

ほどの発射薬を使用している。しかし、達也が『厄介だ』と言ったのは武器その物の事ではない、パワーライフルはそこらのチンピラテロリストが簡単に手に入れられるものではないからだ。 そんな代物で武装している侵入者はそれなりの組織力を有することになる。

 

「警備員が階段の踊り場バリケードを作って応戦してる」

 

「廊下の出入り口は隔壁で閉鎖されてるようですね」

 

三人の現在位置は中央階段よりの二階。それほど、慌てなくていい状況だが。

 

「イヤ・・・コッチが本命か」

 

中央階段を鋭く見据える達也、遅れて真由美と摩利の視線も中央階段へ向いた。そして、三人の視線の先に大柄の男が現われた。

 

「呂剛虎!?」

 

見覚えのある姿に摩利が驚愕の声を上げる。

 

「誰?」

 

摩利と違い真由美は彼の姿に見覚えも心当たりも無い様だ。

 

「へぇ~呂剛虎」

 

呂は達也たち三人に向かって向かってきた。

 

「此処は俺がやりますんで、2人はー」

 

「イヤ、ここは私が出る。達也君は真由美のガードだ」

 

「何、言ってるんですか?」

 

「心配するな、只者では無い事は知っている」

 

そう言うと摩利はスカートを叩き、太腿に隠していたホルスターから獲物を取り出し、戦闘態勢を取る。

 

「気を付けてね、摩利」

 

最初に火蓋を切ったのは真由美だった。左右の壁と天井から無数のドライアイスが

降り注ぐ。だが、その程度で彼は止まらなかった。そのまま摩利に襲いかかる。それを摩利が迎え撃つ。しかし、摩利の打ち込みは右手に防がれた。直後、彼は顔を仰け反らせる。その直後に、彼の目の前を刃が通り過ぎた。如何やら、摩利の得物は三節構造の小型剣の様だ。

 

真由美の第二射が呂を襲う。真由美の第二射は第一射より、細かく、硬く、

速度も貫通力も倍増したものだった。呂はそれを受け、対物障壁に切り替える。

 

第三射をそれで切り抜け摩利に接近すると見せかけて、標的を真由美に切り替える。しかし、それを先ほどから戦闘を傍観していた達也が阻んだ。呂の魔法を達也の『術式解体』が剥ぎ取り、すかさず真由美の射撃魔法。更に摩利が背後から襲い掛かる、摩利が右手を突き出すと、その手から黒い粉が呂を襲う。彼は咄嗟に目と鼻を庇う。黒い粉が周囲の酸素を喰らいつくし、周りに低酸素状態を作り出す。そして、摩利が獲物を振り下ろす、。呂は何とか躱そうとした。

 

だが、それは敵わなかった。呂に向かって振り下ろされた刃は一つでは無かった。どんな達人でも三方から同時に振り下ろされた刃を躱すのはむずかしい。まして今の状態では、呂は一枚の刃を躱したが残り二枚の刃を肩と背に受け跪いた。

 

その後警備員が駆け付け、呂剛虎は拘束された。達也達に事情聴取は無かった。これも恐らく『七草』の名が成せることだろう。達也は早々にその場所から離れることができた。

 

響子から連絡があったのは、コンぺの本番を二日後に控えた金曜の夜。

 

「スパイの実働部隊はこの三日間でほぼ、拘束できました。まぁ、隊長の陳祥山は逃がしちゃったけど、達也君が呂剛虎を確保したくれたから、概ね満足できる結果です」

 

「そりゃどうも、ところで、聖遺物の件は何処から漏れてたんですか?」

 

「軍の経理データが漏洩してたらしくて、それで、軍から、魔法研究の委託費支払いが

あったところを、片っ端から狙ったみたい」

 

「成程」

 

「それじゃ、報告はこの辺で、日曜日は頑張ってね!応援してるから」

 

「ありがとうございます。といっても所詮サブですけどね。頑張ります」

 

横浜 中華街

 

「周先生、すっかり、お世話になりました」

 

「恐縮です」

 

「本国から艦隊を派遣すると連絡がありました。御かげで無事、次の作戦に移行できます」

 

「お役に立ててなによりです」

 

「ただ・・・」

 

「どうなされました」

 

「ご存知でしょうが、ウチの副官が敵の手に落ち」

 

「存じております驚きました」

 

「失態を犯したいえ、彼は必要な男・・・」

 

「身柄は明日、横須賀の外国人刑務所に移送される様ですね」

 

「本当ですか?」

 

「移送ルートも調べてあります」

 

「ご配慮感謝致します」

 

論文コンペまで、あと一日、嵐は直ぐそこまでやってきていることを達也はまだ気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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