達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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横浜騒乱編 横浜事変 行動開始

達也たちの姿が扉の向こう側へ消えた直後、一際激しい爆発音が会場を揺るがす。このままでは間違いなくパニックへと発展する騒動を前に、第一高校生徒会長の中条あずさはどうしたらいいか、何をすればいいのか分からずに座ったまま硬直していた。

 

「あーちゃん、あーちゃん・・・中条あずさ生徒会長!!」

 

硬直したままのあずさに声をかけたのは真由美。

 

「このままだと本物のパニックになるわ。そうなれば、怪我人も大勢でることになる。だから貴女の力で皆を鎮めて」

 

「えっ!、でも、アレは・・・」

 

中条あずさは『梓弓』という情動干渉魔法を使うことができる。この魔法で人の情動に干渉することでパニックを抑えることができるだろう。しかし、精神に干渉する魔法は魔法の中でも特に厳しく規制されており、未成年の勝手な判断で軽々しく使用できるものではない。

 

「貴女の力は、こういう時の為のものでしょ?今、必要とされている力は私の力でも、摩利の力でも、鈴音の力でもない!あなたの力が必用なの!」

 

真由美は本気で梓に『梓弓』の使用を求めている。

 

「大丈夫!責任は私が取るから。七草の名は伊達じゃないのよ!」

 

あずさは力強く頷くと、身体を反転させ、所々で押し合い圧し合いに発展し始めた客席を視界に収める。そして、首に掛けたチェーンを手繰り、先端のロケットを取り出し、サイオンを流し込む。そして、『梓弓』が発動する。

 

澄んだ弦の音が、最前列から最後列まで、会場を徹り抜けた。

 

「第一高校の七草真由美です」

 

突然の声に観客の意識が真由美に向いた。

 

「現在、この街は侵略を受けています。先程捕縛した暴漢も侵略軍の仲間でしょう。先刻から聞こえている爆発音も、この会場に集まった魔法師と魔法技能を目当てとした襲撃の可能性が高いと思われます」

 

真由美の話は観客からすれば到底信じられない話だが、紛れもない事実だ。

 

「ご存知とは思いますが、この会場は地下通路で駅のシェルターに繋がっています。十分な収容力はあると思われますが、侵略軍の攻撃にどの程度持ちこたえられるかは分かりません。ですが、この場に留まり続けるのは危険です。各校の代表は直ぐに生徒を集めて行動を開始してください!どんな判断をするにしろ一刻も無駄にできない状況です!」

 

真由美の発言に各校が行動を開始する。

 

「九校関係者以外の方々は、各々ご自身の判断で避難をお願いします。私達には皆さんの安全に責任を負うだけの力がありません。シェルターに避難するなら直ぐに、地下通路へ、脱出をお考えなら沿岸防衛隊が瑞穂埠頭に輸送船を向かわせているという報告を受けています」

 

真由美は一礼し、マイクを切ると、再びあずさに語り掛けた。

 

「じゃあ、皆のこと任せたわよ。先生方、中条さんのサポートお願いします」

 

「えっ!? せ、先輩?」

 

「大丈夫。貴女ならできるわ!」

 

そう言った真由美は身体を翻して鈴音たちのいる控室に戻っていった。

 

正面出入口の前は、ライフルと魔法の撃ち合いの真っ直中だった。攻撃側のゲリラ兵は会場に乱入したテロリストと同じ格好で、突撃銃とパワーライフルで武装していた。先頭を走っていた達也は出入口の陰で足を止め、続いていた深雪の足もピタリと止まったが、三番手を争うように横並びで、ついてきていた二人は血気に逸っていた。

 

「ストップ! 対魔法師用の高速弾だ」

 

エリカを呼び止め、レオの襟首を掴んで引きずり戻す。

 

「おっと・・・」

 

「ぐえっ!?」

 

「・・・容赦ないね、達也」

 

「でも、御かげで命拾い」

 

少し、遅れて残り四人が追いつく。

 

「深雪、銃を黙らせてくれ」

 

「畏まりました。ですが、この人数を一度に、となると・・・」

 

「分かってる」

 

深雪は差し出された達也の左手に右手を絡め魔法を発動する。

 

振動減速系概念拡張魔法 『凍火(フリーズ・フレイム)』

 

この魔法には、対象物の熱量を抑制する効果がある。故に、この魔法を受けた火器は沈黙を強いられることになる。

 

ゲリラの残存兵力は丁度30人。今の状態の深雪が同時に魔法の照準を合わせられる上限数は16。故に『凍火』の二連射。その効果も確かめず。達也は隠れていた物陰から飛び出し、ゲリラ兵に魔法を宿した両手の手刀を振るう。更に、エリカが続く。

 

「達也!エリカ!」

 

後方からの幹比古の声に二人は左右に散る。そして、吹いてきた風がゲリラ兵を襲う。残りのゲリラ兵を警備の魔法師にまかせ二人は一旦仲間の所まで戻った。

 

「出る幕なしか・・・」

 

達也はいじけているレオを無視してほのかと美月に小さく笑いかける。

 

「すまない。刺激が強すぎたな」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「あっ・・・私も大丈夫です」

 

「それで、これからどうするんだ」

 

「情報が欲しい。状況は予想以上に悪いらしい。行き当たりばったりじゃ泥沼にはまるかもしれない」

 

「じゃあ、VIP会議室を使えば?」

 

「VIP会議室?」

 

「うん、あそこは閣僚級の政治家や経済団体トップレベルの会合に使われる部屋だから、大抵の情報にアクセスできると思う」

 

「そんな部屋があったのか」

 

「一般には開放されてない部屋だから」

 

「・・・良く知ってるわね、そんな事」

 

「暗証キーもアクセスコードも知ってるよ」

 

「雫、案内してくれ」

 

達也たちは急ぎVIP会議室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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