今日も達也は風紀委員本部で摩利に扱き使われていた。
「委員長、書類整理くらい自分でしてくださいよ」
「私も九校戦の準備とかで忙しいんだ」
「ウチは三連覇が掛かってるんでしたっけ?」
「あぁ、そうだよ」
「今年も順当に行けば勝てるんでしょう?」
「だが、不安がない訳じゃない」
「不安?ですか」
「そうだな~今年で言えば新人戦も不安だが、毎年エンジニアの問題がある」
「あぁ。九校戦で使う競技用CADの調整要員ですね」
「ウチは毎年、君みたいな魔工師希望が少ないからね」
「まぁ、それは仕方ないでしょう」
「九校戦では確かに選手は大事だがエンジニアも大事だ。競技用CADはハード面で規制があるがソフト面にはない。選手の質は何処もそれ程代わりはない。差を付けるならCAD つまりエンジニアの腕の見せ所と云う訳だ。選手が有能でも使うCADがダメでは勝つ事は難しいからな」
達也は他人事の様に聞いていた。
翌日、達也のクラスは体育の授業だった。行われているのは『レッグ・ボール』と云う競技。試合中なのはE組とF組の男子。女子は観戦中。
「達也、頼んだぞ」
「おう」
ボールがレオから達也へ渡る。しかし、達也の位置からゴールは狙えそうに無い。だから、達也はフィールド全体を見まわし一つの結論を出す。彼に任せるべきだと。
「きめろ。吉田!」
達也は彼にボールを託す。そして託された彼は見事にゴールを決めた。彼のお陰で達也達の勝ちが決まる。
試合終了後
「しかし、吉田の奴、以外に出来るみたいだな」
「あぁ、読みがいいし見かけ以上に体も動く」
吉田幹比古は達也と同じクラスである。しかし、彼はいつも一人だ。そんな彼に珍しく達也の方から声を掛ける。
「ナイス・プレイ」
「やるじゃねぇか吉田」
「君達のアシストあってこそだよ」
「まさか吉田がここまで出来るとは思ってなくてさ」
「幹比古。幹比古でいい、名字で呼ばれるのは好きじゃない」
「なら俺もレオって呼んでくれ」
「俺も呼ばせて貰って構わないか?もちろん俺の事は達也でいい」
「勿論だよ達也。実を云うと前から話して見たかったんだ」
「奇遇だな幹比古。俺もだよ」
「何か疎外感を覚えるぜ」
「勿論、レオとも話したいと思ってたよ。君はあのエリカの相手が務まるみたいだし」
「なんだよ、それ」
三人の間に笑いが起こる。
「・・・? 幹比古。お前エリカを知ってるのか」
「え! あ、イヤ~」
「幼馴染ってやつよ」
いつに間にか傍にいたエリカが話に加わる。幹比古は気まずそうだ。幹比古はエリカを直視できない。理由はエリカと久々に話すから気まずいと云うだけでは無い。
「エ、エリカ! 君、なんて恰好してるんだ?」
「何って?伝統的な体操着だけど」
「なんと言うか、変わったデザインのスパッツだな?」
「スパッツじゃないって」
「でも、アンダースコートじゃないんだろ?」
「アタシだってスコート履かずにアンダースコートだけ履く趣味はないよ! これはブルマーって言うの!」
「ブルマー?」
「・・・! ブルマーって云えば、モラル崩壊時代に女子生徒が親父共に金欲しさに売ったアレか?」
「黙れ!このバカ」
レオの話を聞いて恥ずかしくなったエリカはレオを蹴った。
昼休み 生徒会室
「はぁ~」
「何を悩んでるんです会長?」
「九校戦の事よ」
「なにか問題でも?」
「代表選手は決まったけど技術スタッフが揃わないのよ~」
「まだ、揃わないのか?」
「特にウチの三年は実技方面に傾いてるから。まぁ二年には、あーちゃんとか五十里君がいてくれるけど」
「五十里?アイツはそんなに調整が得意とは聞いてないぞ」
「仕方ないでしょ。文句を言える状況じゃないんだから」
真由美は摩利を見て、
「せめて誰かさんが自分のCADくらい調整ができれば・・・楽になるんだろうけど」
「イヤハヤ、深刻でございますな~」
「ねぇ~リンちゃん。やっぱり・・・」
「無理です。私の腕では皆さんの足を引っ張るだけです」
話は平行線の様だ。達也は帰ろうとした。
「そんなに候補者がいないなら司波君に頼めばいいんじゃ」
「へ?」
「なんたって、トーラス・シルバーのお弟子さんなんですし」
「・・・ あー!そうよ!いい人材がここにいるじゃない」
達也はあずさを睨む。
「(余計なことを)」
睨まれたあずさは涙目だ。
「一年生が過去にエンジニアとして選ばれたことはなかったんじゃ?」
「何でも、最初は初めてよ」
「前例は覆されるのが世の常だ」
「CADの調整と云うのはユーザーの信頼あってのものです。嫌われ者の俺じゃ選手たちは納得しませんよ」
「じゃあ、お兄様は期間中は私のCADを見てくれないのですか?」
「お前は自分のCADの調整ぐらいできるだろ」
「取りあえず、放課後の会議に来てね」
「あの、俺の意見は無視ですか?」
「聞こえない~」
「(・・・ハァ)」
生徒室で昼食を済ませたはずの中条あずさは悩んでいた。しかし、達也はそんな事を気に掛けない。達也はCADを弄っていた。
「今日はシルバー・ホーンをもって来てるんですね」
「最近ホルスターを新調したんで早いとこ馴染ませようかと」
「へぇ!見せてください」
「まぁ、構いませんけど」
達也はあずさにホルスターとシルバー・ホーンを渡す。
「うわぁ!シルバーモデルの純正品だよ~。いいな~このカット。抜き打ちしやすい絶妙なカーブ。何より高い技術力に溺れないユウザビリティーへの配慮。あぁ、憧れのシルバー様!」
あずさの発言の直後、深雪は珍しく、キーボードの打ち間違えをした。
「珍しいですね。深雪さんがミスをするなんて」
「打ち間違えなんて誰にでも良くある事でしょ?」
失敗は誰にでもある。しかし、深雪の失敗の原因が自分だとあずさは知らない。
「司波君。トーラス・シルバーってどんな人か少しは教えてくださいよ」
「何でそんなにあの人の事気にしてるんです?」
「そりゃあ、気になりますよ。ループ・キャスト・システムの実用化を始め、僅か一年で特化型CADのソフトウェアを十年は進歩させたと云われる天才技術者じゃないですか」
「はぁ~、あの人がそんなに高い評価を受けてるとは知りませんでした」
「だから教えてくださいよ~」
「イヤ、あんな人の事を知っても・・・」
また、深雪がミスをする。
「もう!お兄様。先生をあんな人呼ばわりなんてしないでください」
「ねぇ、あーちゃん?楽しそうなとこ悪いけど、お昼休み中に済ませたい課題があるんじゃなかったの?」
「・・・あ~、会長!助けて下さい」
「フフッ。少しくらいなら手伝うから」
「本当ですか?」
「それで、課題は?」
「そ、それが」
あずさは深刻な表情をしている。
最近 お気に入り数が少しずつ増えてるみたいです。
ありがたい!