達也の周りは敵だらけ   作:黒以下

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横浜騒乱編 終章 四葉本家での事情説明 其之ニ

風間との交渉を終えた真夜の目の前には達也だけが座っていた。風間との交渉の後、真夜が達也に残る様に命令した結果である。因みに深雪はサンルームで待たされている。

 

「・・・それで。お話しとは何です?」

 

「そんなに慌てないで。お茶でも如何?」

 

「さっきのもそうですが、俺にお茶なんか出したことがバレれば、周りに五月蠅いこと言われませんか?」

 

「フフッ。貴方もそんな事を気にするのね。でも、心配はいらないわ。だって、私にそんなことを面と向かって言うような度胸のある人はいないもの」

 

そう言いながら、真夜はテーブルに置いてあったベルを鳴らす。すると即座に執事の葉山が現われる。

 

「お呼びで御座いますか。奥様」

 

「葉山さん。私にお茶のお代わりを、それと、達也にも同じものを」

 

「畏まりました」

 

真夜は葉山が持って来たカップに口を付けると、ようやく話を切り出した。

 

「今回は、大活躍だったわね」

 

「いえ、そのようなことは」

 

「でも、ウチにとっては、困った事をしてくれたものだわ」

 

「申し訳ありません」

 

「・・・まぁ、貴方が命令に従っただけなのは分かっているけど、許可を出した私が今さら言うのもなんだけど、正直、あそこまでする必要があったのかどうか・・・まぁ、過ぎたことは仕方ないわね」

 

「畏れ入ります」

 

「そんな事より、問題は今後のことよね」

 

「何か具体的な不都合が生じていると・・・」

 

「・・・スターズが動いているわ」

 

「それはアメリカ自体が動き出しているという意味ですか?」

 

真矢は静かに首を横に振る。

 

「今はまだ、スターズが独自に調査を開始した段階よ。でも彼らは既に、あの爆発が質量をエネルギーに変換する魔法によって引き起こされたものであるという処まで掴んでいるわ。術者の正体に関してもかなりの処まで、貴方と深雪を容疑者の一人として特定するまでに絞り込んでいるわ」

 

「・・・凄い情報収集力ですね」

 

「伊達に世界最強の魔法師部隊を名乗っていないと言う事ね。はぁ~、本当に面倒なことだわ」

 

「フフッ、叔母上」

 

「・・・何?」

 

「俺が言っているのは貴女の手の者のことですよ」

 

「・・・」

 

「世界最強の魔法師部隊を自認するスターズの諜報活動成果をほぼリアルタイムで探り出すなんて、スパイでも潜り込ませてるんですか?」

 

「・・・ノーコメントよ」

 

真夜は珍しく拗ねたような表情でそう言った。

 

「・・・はぁ~兎に角。身の回りには気を付けなさい。スターズは今まで貴方が相手にした底辺のチンピラの様に甘い相手ではないわよ。アメリカの覇権を揺るがすと判断すれば、実力で排除に掛かってくるでしょう」

 

「それが四葉に飛び火する可能性が出てくれば、別の処から刺客が送り込まれるとういことですか?」

 

「そこまで分かっているなら話が早いわ」

 

「俺にどうしろと?」

 

「達也。学校を辞めなさい」

 

「辞めて、どうしろと」

 

「しばらくは此処で謹慎なさい。」

 

「お断りします」

 

「どうして?」

 

「このタイミングで俺が突然退学したら、大亜連合艦隊を殲滅した魔法師は自分だと告白している様なものでしょう」

 

「理由は何とでもなるでしょう」

 

「そうでしょうか?」

 

「私の命に従わぬと?」

 

「叔母上、俺に命令できるの深雪だけですよ」

 

達也がその言葉を放った直後、世界が「夜」に塗りつぶされた。

 

闇に浮かぶ、燦然と輝く星々の群れ。謁見室の天井が、月のない星の夜空に変わった。星が光の線となって流れる。だが、次の瞬間、それは音も無く室内を満たす「夜」が砕け散った。

 

「・・・驚きました。随分と手加減されましたね」

 

「フフッ。子供相手に本気になれる訳がないでしょう」

 

「まぁ、それを差し引いても上出来ね。いいわ、今回は貴方の我儘を聞きましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「気にしないで。私の魔法を破った事に対する、ちょっとしたご褒美なのだから」

 

「それでは、これで、俺はサンルームに」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「まだ何か?」

 

「今後についてもう一つ貴方には話しておくことがあるのだけど」

 

「何でしょう?」

 

「今後、深雪のガーディアンに水波ちゃんを付けようと思ってるの」

 

「水波を深雪に?つまり俺はお払い箱ですか?」

 

「フフッそんなに怒らないの。深雪をしっかり守れるガーディアンは貴方しかいないわ。でも常に貴方が一緒に入れる訳でないのだし、大人になれば女性の護衛が必要な時は必ず来るわ」

 

「それは理解できますが・・・」

 

「あら、水波ちゃんでは不安?桜シリーズの障壁魔法の実力も性能も問題無い筈だけど。それにあの子は第二世代。第一世代の彼女とは違うわ。貴方もそれは良く知っているでしょう」

 

「・・・」

 

「水波ちゃんで不安なら亜夜子ちゃんに頼みましょうか?。それなら実力的にも安心でしょう」

 

「亜夜子は護衛向きではないでしょう。それと水波が深雪のガーディアンになる事を否定はしていないんですが」

 

「そう、時期はまだ未定だけどその時は先輩ガーディアンとして色々と教えてあげなさい」

 

「わかりました」

 

「じゃあ、そろそろ、サンルームに向かいましょうか」

 

四葉本家 サンルーム

 

 

深雪は達也と真夜が謁見室にいる間、一人読書で気を紛らわせていた。サンルームにいるのは深雪と深雪のお世話を命じられたメイドが一人。深雪は読書をしつつ達也の帰りを待ち望んでいた。決して一人が寂しい訳ではない。深雪が気にしているのは、自身のお世話係として傍に控えているメイドの事だ。本家に仕えている女性の殆どが和装の女中さんの服装で給仕を行っているのだが、彼女だけは本当にメイドさんという言葉がお似合いの服装をしている。彼女とは初対面ではない。しかし、深雪は彼女の顔を見る度に気持ちが沈んでしまう。勿論、彼女に非がある訳では無い。

 

彼女の名前は桜井水波。四葉で障壁魔法を得意とする調整体魔法師「桜」シリーズの第二世代の魔法師である。

 

「あの、深雪お嬢様」

 

「な、何かしら、水波ちゃん」

 

「お飲み物が冷えているようですので代えをお持ちしましょうか?」

 

「えっと、ありがとう水波ちゃん。それじゃあいただくわ」

 

「処でお嬢様」

 

「な、何かしら」

 

「本日は此方にお泊りになられるのですか?」

 

「残念だけど、明日から学校もあるからお兄様がお戻り次第、東京に帰るつもりよ」

 

「そうですか。それは残念です。お暇があれば先生に実技を見ていただきたかったのですが」

 

水波の言う先生とは達也のこと。水波と顔を合わせて直ぐに真夜から指導をする様に命令された経緯がある。

 

気を紛らわせる為に読書にのめり込んでいた深雪の元にようやく真夜と葉山と達也が姿を見せた。

 

「待たせて御免なさいね。深雪」

 

「いえ、御気遣いありがとうございます。叔母様」

 

「本当は泊まってくれてもいいのだけれど」

 

「申し訳ありません。叔母様」

 

「分かっているわ。明日から学校があるものね」

 

「はい、それではまた」

 

そう言って、深雪と達也は、真夜達に見送られながら本家を後にした。

 

「水波ちゃん」

 

「はい、奥様」

 

「悪いけど、部屋の片づけをお願いね」

 

「はい、畏まりました」

 

水波にサンルームの片づけを任せて、真夜は自室に戻る。

 

「では奥様。何かご入用であれば御呼びください」

 

「ちょっと待って」

 

部屋を出ようとした葉山を真夜が呼び止めた。

 

「私に何か聞きたい事があるんじゃない?」

 

「畏れ入ります。それでは・・・達也殿をあのままにして、宜しいので?」

 

「構わないわ。葉山さんが何を懸念してるいるか、十分に理解してるわ。確かに、あの子は、いつでも四葉を裏切るでしょうね」

 

「・・・」

 

「それにさっきも確かめたけど、私の魔法はあの子の異能に対して相性が悪い。本気で戦っても高い確率で私が負けるでしょう」

 

『流星群』(ミーティア・ライン) 四葉真夜の得意とする収束系魔法。

 

 

対象物のあらゆる耐性に関係なく光が通り抜ける穴を穿つ防御不可能な魔法。

 

「私があの子に殺されてしまう可能性も小さいとはいえない。でも達也は四葉を裏切る事は出来ても、深雪は裏切れない。その一方で深雪が四葉と敵対する事はあり得ない」

 

「しかし、今の深雪様は達也殿に深く依存されております。達也殿が当家に反旗を翻した時、その意に反するとは思えませんが」

 

「深雪は己に課せられた責任からは決して逃れられない。姉さんにそのように育てられているから。そして達也には、深雪を苦しめるような真似は絶対にできない」

 

「・・・しかし、その為には」

 

「他の候補者の子達には悪いけど、次の当主は深雪で決まりね」

 

「そのためには、深雪様に何としても当主の座を受けていただかねばなりませんね」

 

「大丈夫よ。その為の策も考えているから」

 

真夜はそう言って余裕の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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