帰宅し、一息つく。
美鈴は門番の仕事をやりに行くが瀬賀も一緒にやると言い、一緒に門に立つ。
「先生、聞きたいことがあるんですけど。」
「はい、何ですか?」
「先生って合気道の開祖ではないですよね?」
「えぇ、そりゃあそうですよ。もっともっと昔に出来たものですから。」
「じゃあ、先生は何で合気道を始めたんですか?」
「…。」
少し彼女は間を置き、語り始める。
「私が合気道を始めた理由は……」
———7年前———
とある柔道場で。
「じゃますんぜ〜。」
扉を蹴り破り、現れたのは当時10才の瀬賀。
「何だ君は!!」
「わしは瀬賀っちゅうもんじゃ!!ちょいと相手を探してるんじゃ!!」
「君、此処が何処かわかってるのかね?」
「あぁ、わかってんぞ。馬鹿の溜まり場だろ?ぺっ!!」
「なっ!?」
彼女は畳に唾を吐き、踏ん反り返る。
「こ、このガキ!!
そんなに相手が欲しけりゃ相手をしてやる!!」
そう言い、青帯の男が彼女の前に出る。
「けっ、青帯かよ。
師範呼んでこい!!師範を!!雑魚に用はねぇ!!」
「こ、こいつ!!てめぇぇぇぇぇ!!」
男が彼女に掴みかかりに飛びかかる。
「っせいやぁ!!」
しかし男は彼女に襟を掴まれ外まで投げ飛ばされる。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
男は外のアスファルトの地面を滑走する。
道着を着ていた為擦過傷は免れたとはいえ、かなりの衝撃が彼を襲う。
「なんて荒い背負い投げだ!!」
他の門下生達がざわつく。
「はっ、だから師範を呼んでこいって言ってんだよバ〜カ。」
「そんなに私とやりたいのかお嬢ちゃん。」
前に出たのは2mはある黒帯の男。
彼が師範のようだ。
「ほぉう、お前が師範か。
やっと骨がありそうな奴に会えたぜ。」
両者共相対する。
彼女は120cmしかない為、その体格差は絶望的とも言える程だった。
「あ〜あ、病院送りになってもしらねぇ〜ぞ俺ら。」
門下生の1人が呟く。
「へっ、デカいだけじゃわしには勝てねぇ〜ぞ。」
彼女は師範の男に中指を立てる。
「ふっ、後悔するなよ!!」
そう言い彼は猛スピードで彼女に飛びかかる。
「ふんっ!!」
彼女は掴みかかりに来たかれの股下で足をドンッと踏み鳴らす。
「うっ!?」
彼は一瞬跳び上がる。
「うおぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁ!!」
跳び上がった彼を彼女が掴み、精一杯の力で背負い投げを繰り出す。
「うぼあぁぁぁ!!!!!」
彼は勢いよく床に叩きつけられ、衝撃のあまり一瞬跳ねた。
叩きつけられた彼は白目を向き、痙攣している。
「ふぅ、流石に重ぇな。」
「師範!!」
門下生達が失神した師範の男達に駆けつける。
「マジかよ、師範が一瞬で…。」
「このガキなんなんだよ!?」
門下生達が彼女を見て騒つく。
「誰がガキだって!?」
彼らに一歩踏み出し、足を踏み鳴らす。
「ヒィッ!!すみません!!」
彼らは彼女を怯えて逃げ出した。
当然である、自分達より遥かに強い人間が一瞬で倒されたのだ。
怯えて当然である。
「また、君は道場破りをしたのかね!?」
「してねぇ〜よ、ちょいと手合わせしに行っただけじゃ。」
小学校の生徒指導室で彼女は生徒指導の教師に怒られていた。
彼女は机の上に脚を乗せて彼を見上げている。
「わしは暇なんじゃ、人様の趣味に指図していいんか?先生はよ〜?」
「くっ!!こ、こいつ!!」
彼女にはこの頃から家族はいなかった。
その為、保護者がどうこうとは出来なかったのだ。
そう、彼女は当時、とてつもない問題児だったのだ。
せの性格は現在とは真逆と言ってもいいほどだった。
当時彼女は、柔道三段、空手五段、剣道四段もの実力を持っていた。
それほどに彼女は強かった為、学校では何人もの生徒や教師を病院送りにしたり、道場を見つけては格闘家を叩きのめしていた。
そしてある日彼女は。
「さぁて、今度はここじゃ。」
彼女はなんと『警察署』の前にいた。
彼女は警察署の警察と勝負をするつもりらしい。
「う〜っす、やってるか〜い?」
扉を蹴破り、そこにいたのは。
「何だ君は!?」
「通りすがりの女の子で〜っす。」
「何でこんな子供が?他の連中は何をしているんだ!?」
扉の先にいたのは武術の稽古をしている警察達だった。
「他の連中?あぁ、道中会った奴らはみんなお昼寝してるぜ?」
「なに!?」
彼女は警察署の警察の4割を倒して来たらしい。
「まぁ、そんな事は如何でもいいんじゃ。
お前さんらと勝負がしてぇんじゃ。」
「…。わかった。
だが負けた暁には如何なるかわかってるね?」
「あ〜、はいはい、わかってますわかってます。
じゃ、全員まとめてかかってきな。」
「なに!?」
彼女は7人の警察をまとめて相手をするつもりだ。
つまり七人組手だ。
「どうした?ビビってるのか?公務員さんよ〜?」
「っく!!後悔するなよ!!」
「ふっ。」
彼女は飛びかかるって来た1人の股下で足を踏み鳴らす。
すると彼は一瞬跳び上がった。
「おらぁ!!」
彼女は跳び上がった彼を掴み、背負い投げを極める。
「ぐわぁぁぁ!!」
すかさず彼女は他の警察に同じように股下で足を踏み鳴らし、跳び上がったところに背負い投げを極める。
(ふははは!!極まる極まる!!
どいつもこいつも股下で足を踏み鳴らせばビビって跳び上がりやがる!!
ここに背負い投げを極めればどんどんぶっ倒せる!!
まったく、面白いぐらい引っかかりやがるぜ!!)
彼女は次々と警察達を同じように投げて行く。
しかし。
「はぁぁぁぁぁ!!」
最後の1人が彼女にタックルをしたのだ。
「うぐっ!!」
彼女は腕と頭を押さえつけられ身動きが出来ない状態になる。
「く、くそっ!!離せ!!離せぇ!!」
「このガキ!!意外と力がありやがる!!」
そして翌日生徒指導室にて。
「ふん、自業自得だ。」
「むっ。」
彼女は包帯や湿布、絆創膏だらけで教師に怒られていた。
どうやら捕まった時に暴れ合って怪我をしたらしい。
何とか彼女は抜け出せはしたらしい。
「わしは負けてはいねぇからな!!調子に乗んなよハゲ!!」
「なっ!?ハゲだと!?」
「あぁ、ハゲだ!!ハゲハゲハゲ!!バーコード!!」
「くっ!!」
実に子供らしい暴言だ。
その姿は少し可愛気があった。
「どうするんですか校長!!
彼奴、まだ道場破りとかやるかもしれませんよ!?」
「う〜む。」
放課後、生徒指導の教師と校長が彼女について話し合っているらしい。
「昨日は警察署で暴れたらしいですよ!?このままじゃ更に酷いことに…!!」
「まぁ、落ち着きたまえ。
私に良い考えがある。」
「良い考え?」
翌日彼女は校長室に呼び出された。
「何だよ校長。」
「君は大層強い、君はおそらく自分は誰にも負けないと思っているだろう。」
「あたりめぇーだ!!そんな当然のことを言いにわざわざ呼び出したのか?あぁ?」
彼の机を蹴飛ばし、机の上に飛び乗り彼を見下す。
「確かに君は強い。
だが、そんな傲慢でいられるのも今日までだ。」
「なに?どういう意味だ?」
「君に見せたいものがある。」
そう言い、放課後に2人はあるところに行く。
『養神館』そう書かれた看板が掲げられている道場に彼女は連れてこられた。
「なんじゃこりゃ?」
「君は『合気道』を知ってるかね?素晴らしい武術だから一度見てみるといい。」
「ふーん、まぁ、どうせくだらねぇものだろうけどな。」
2人は中に入り、稽古を見学する。
そこでは小さな老人が次々と苦もなく大柄な男達を何度も何度も連続で投げていた。
そこで彼女は。
「何だこれ?インチキじゃねぇーか。」
そう言い、呆れた態度をとる。
そこで彼女にその老人が。
「一緒にやりせんか?」
彼女を誘ったのだ。
「いいぜ、やってやるよ。」
そして彼女はニヤリと笑い、誘いを受けた。
(化けの皮剥がして恥かかせてやるよ爺が。)
そして2人は向き合う。
(相手はわしが柔道をやってるのを知ってるだろう。
なら、掴みに行くふりをして股間を蹴り上げてやるよ!!)
彼女はじわじわと距離を詰める。
「……。」
しかし彼は微動だにせず棒立ちのままだった。
(もらった!!)
彼女は掴みかかるふりをして思い切り前蹴りを放った。
しかし次の瞬間。
彼女はいつの間にか彼から5m程離れたところにいた。
「へ?」
彼女は門下生の人達に抱えられていた。
小柄な為凄く軽い。
彼女は何が起きたかわからず暫く間抜けな顔になっていた。
暫くして彼女はハッと気付き、彼に飛びかかる。
しかし、結果は同じだった。
彼女はまたもいつの間にか彼から離れており、門下生の人達に抱えられていた。
どうやら彼女は『投げられていた』らしい。
そして投げられた彼女は門下生の人達の所まで飛ばされ、キャッチされていたようだ。
「え?えぇ?」
全く状況が理解出来ず混乱する。
そして彼女は一呼吸起き、彼と向かい合う。
(な、何が起きてるかわからねぇーが、このままじゃわしのプライドが!!)
暫く睨み合い、掴みかかりに『行き始めた』瞬間。
パシッと脚を蹴られたのだ。
そして彼女はパタッとあっさり転んでしまう。
「え?えぇぇぇぇぇ!?」
気合いを入れていたのにあっさり転ばされてしまい、赤面する。
「ぷっ…!!」
門下生達がクスクスと笑い出す。
気合いたっぷりだったのに小さな老人にあっさり転ばされて赤面している小さな少女。
その光景は実に可愛らしく可笑しかった。
「み、見るなぁ!!くそぉ!!」
慌てて距離を置くも、気が動転しており、足が縺れて尻餅をついてしまう。
それが更に彼らのツボにはまった。
「わははははは!!」
門下生達が大爆笑する。
「う、うぅ…。」
真っ赤に赤面する彼女の元に相手の老人が。
「どうですか?これが合気道です。」
にっこりと微笑みながら彼女に手を差し伸べる。
彼はこの道場の師範だったのだ。
「え?あぁ、その…。」
赤面しながらもじもじとしてしまいながら言葉に詰まる。
そんな彼女の元に。
「大丈夫かいお嬢さん?」
「元気出しなよ。」
「誰も馬鹿にしてないから元気出しな?」
門下生達が彼女を心配して来てくれたのだ。
「え?えぇっと、その…あの…。」
初めてこんなに優しくされた為、少し戸惑う。
「あの、じ、じゃあ、その、弟子にしてください…。」
恥ずかしげに上目遣いで師範を見上げ、弟子入りを懇願する。
すると彼は。
「いいですよ、一緒に頑張りましょう。」
笑顔で応え、彼女の手を握り立ち上がらせる。
「おめでとう。」
門下生達が拍手を送り、彼女を歓迎する。
「は、ははは…。」
照れくさそうに頭を掻く。
………………
「そんなこんなで、私は合気道を学ぶようになったわけです。」
「へぇ〜、先生にそんな過去が。」
「因みに私の名前、瀬賀 剛二三は昔は剛二三ではなかったんですよ。」
「え?改名したってことですか?」
「はい、昔は瀬賀 剛二(せが ごうじ)って名前だったんです。」
「それはまた、随分と勇ましい名前でしたね…。」
「はい、だから一新して剛二三という人間として新しく歩んだんです。」
「へぇ〜。」
「あの先生は私の恩師ですよ。うんうん。」
「でも、投げられて赤面しちゃうなんて、あの時のお嬢様みたいですね。」
「うぐっ!!そ、その話は忘れてください!!」
「あはは。先生可愛い。」
痛いところを突かれ赤面し、取り乱す。
そんな彼女を見て和む彼女であった。
自分で書いておきながら想像して勝手に和んでました。
次回から少しずつ彼女の実力が出て行く予定です。
一応、ギャグ要素がちまちま入る物語のつもりです。