Fate/EXTRA 吼え立てよ、我が憤怒   作:孤高の狼

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征服王もケリィもアンリも来なかったよこんちくしょう!


1日目

─泥濘の日常は燃え尽きた─

 

 

─魔術師による生存競争─

 

 

─運命の車輪は回る─

 

 

─最も弱き者よ、剣を鍛えよ─

 

 

─その命が育んだ、己の価値を示す為に─

 

 

 

目が覚めると、白い天井が見えた。見渡す限り、どうやらここは保健室らしい。

 

……あれは、夢だったのだろうか。ドール。エネミー。そして、アヴェンジャーと名乗る彼女。どれも自分の理解から離れているものだ。いや、殺されかけた事を考えれば、夢だったほうがありがたいのだが──

 

現実は甘くないらしい。何気なく見た手の甲には、令呪と呼ばれていた3画の紋様があった。これ1つだけでも、自分が何か違う場所に来たような感覚に襲われる。

 

そしてこの保健室。自分が覚えている保健室とは何か違う。なんというか、雰囲気が違うのだ。ここは、本当に自分が知っている場所なのだろうか。

 

とにかく、起き上がらなければ始まらない。体を起こすと、隣に気配を感じる。しかし注意を向けても、もう1つのベッドと壁しか見えない。しかし、

 

「漸く目覚めましたか。呑気なものですね。まったく、それで聖杯戦争で生き残れると思ってるの?」

 

突然彼女は現れた。印象は黒。炎を操り、ドールを瞬殺した彼女は、アヴェンジャー。

 

彼女にも聞きたい事はある。だが彼女が、そしてあの男の声が共通して発した言葉。

 

「聖杯、戦争……?」

 

恐らく、自分が意図せず巻き込まれた物。だが、全く分からない。その意味も、彼女に聞けば分かるのだろうか?

 

「……まさか、聖杯戦争を忘れてるの?まあ死にかけたのだし、記憶が混乱してても仕方ないですね」

 

彼女は一瞬面食らったような顔をしたが、すぐに元の顔に戻る。そうして、聖杯戦争の説明が始まった。

 

 

月面で発見された、過去現在未来全てを観察し、記録する演算装置。あらゆる願望を叶えるとする聖杯、ムーンセル。

それの所有権を巡り、魂を月に繋げた魔術師(ウィザード)と呼ばれる霊子ハッカー達。

 

SE.RA.PH(セラフ)』と呼ばれる仮想空間を舞台に、地球で記録された英雄を再現したサーヴァントを従え、最後の1人になるまで戦うトーナメント形式の殺し合い。

 

「……と、これが、この世界の聖杯戦争です。分かりましたか?」

 

「……ああ、大体。」

 

なんとも、夢物語のような話だ。スケールが違いすぎる。そんな大事に自分も参戦したとは。となると、自分も魔術師(ウィザード)と呼ばれる存在だったのだろうか。何を聖杯に求め、此処に来たのか。……記憶があやふやだ。何も思い出せない。

 

「じゃ、じゃあ、君もサーヴァントなんだよな?」

 

若干暗くなった気持ちを切り替える為、話かける。サーヴァントが再現された英雄だというなら、目の前の彼女もなにかしら偉業を成した英雄なのだろう。そういうのは、個人的に気になるものだ。

 

「……そうですね。では、サーヴァントについて詳しく説明しましょう。」

 

説明は続いた。サーヴァントは、生前の偉業によって、適性に合うクラスに分けられるという。

 

剣士のサーヴァント、セイバー。

槍兵のサーヴァント、ランサー。

弓兵のサーヴァント、アーチャー。

騎乗兵のサーヴァント、ライダー。

魔術師のサーヴァント、キャスター。

暗殺者のサーヴァント、アサシン。

狂戦士のサーヴァント、バーサーカー。

 

基本的には、この7つのクラスに振り分けられるらしい。だが、この中に彼女が名乗ったアヴェンジャーという名前は入っていない。その事について聞いてみた。

 

「ああ、それはエクストラクラスというやつです。7つのクラスに該当しないサーヴァントに与えられるクラスのことね。私のクラス、アヴェンジャーもその1つ。あとは知ってる限りでは……ルーラーと、シールダーです。」

 

……?気のせいだろうか。ルーラーとシールダーと言った時、顔が歪んだように見えたのだ。なんというか、宿敵の名前を出したかのような。

 

しかし、アヴェンジャー。復讐者ときた。となると、彼女は生前なにかしらの復讐を成し遂げ、そのクラスになったということか。では、彼女の本当の名前はなんなのだろうか。思ってもしかたなし、聞いてみることにした。

 

「えっと、君の本当の名前、教えてくれないか?」

 

「……それに関しては、伏せさせてもらうわ。」

 

……?それは、自分に知られたくない、ということだろうか。それとも、有名すぎるからだろうか。

 

「真名とは、サーヴァントの弱点を丸裸にするもの。あなたが本当に信頼に値するマスターかどうか確認してからでなければ、名乗る事はできません。」

 

なるほど、最もな理由だ。自分が真名を知ったとして、それに関する言葉をうっかり漏らしてしまうかもしれない。それに、彼女と自分は出会って殆ど経っていない。まずは、お互いについて知ることが先決という訳だろう。

 

「それで、あなたの名前は?」

 

「え?」

 

「名前よ名前。あなた、まだ私に名乗ってないじゃない。」

 

そうだった。まずは名前だ。名前、自分の……

 

「白野。岸波、白野だ。」

 

「……あなた、自分の名前も忘れてなかった?」

 

その言葉に一瞬ドキッとする。自分の名前すら思い出すのに時間がかかった。これも記憶喪失の弊害なのだろうか。しかし、一般的な事柄については忘れていないときた。たしか、『エピソード記憶』というやつだったか。それのみを忘れたのだろう。

 

「ねえ、そろそろここから出ない?でないと始まらないわよ」

 

確かにそうだ。みたところ傷も治っているようだし、何時までもいると迷惑だろう。

 

立ち上がると、アヴェンジャーの姿が一瞬で消えた。これもサーヴァントに与えられたら能力だろうか。姿だけで正体がばれる英雄はいないと思うが、装備などで候補を絞る事は出来る。これも、真名ばれを防ぐ為のものだろう。

 

とにかく、保健室から出よう──

 

「あっ、目が覚めたんですね」

 

とする前に、紫髪の少女が入ってきた。

 

その少女、間桐桜からも説明を受けた。なんでも、聖杯を求めて来たマスターは記憶を一時的に奪われ、仮初の学園生活を送る。その間に自我を取り戻した者のみが本戦に参加出来るという。そして、突破した人間には記憶が戻るとのことだが──自分には、名前以外の記憶が戻っていない。

 

そのことを伝えると、彼女は驚きながらも、自分は運営用のAIなので対処が出来ないと言われた。彼女は恐らくNPC、戦争を円滑に進める為の存在なのだろう。

 

「それと、これを渡しておきますね」

 

彼女はそう言って携帯端末を渡してきた。ムーンセルからの連絡を受け取るだけでなく、サーヴァント情報を纏める事も出来るらしい。一言礼を言って、外に出た。

 

それから一通り、校舎を回ってみた。校舎内は記憶通り。だが、存在している生徒の殆どは本戦に上がったマスター達だ。纏っている雰囲気が違う。彼等はこの中の誰かと殺し合う運命にある。だから、なれ合おうとする人間は殆どいなかった。一組カップルでいちゃついていたが、あの二人は何を思って此処に来たのだろうか。出れるのは、1人だけだというのに。

 

気分を変える為に、予選で友人だった一成が勧めていた屋上に向かう。風に当たりたい、というのもある。所詮仮想のそれだろうが、それで気分が変えれるのならと割り切った。

 

屋上には先客がいた。赤い服に、髪をツインテールに纏めた美少女。直接の面識はないが、恐らく遠坂凛だろう。

 

「一通り調べたけど、おおまかな作りはどこも、予選の学校とあまり変わらないのね」

 

床や手すりをペタペタと触りながら彼女は言う。その眼光は鋭く、纏う雰囲気は、他のマスターと一線を画している。彼女は明らかに勝ちに来ている。自分以外のマスターの願望を潰し、その手に聖杯を掴もうとしている。そんな覚悟が感じられた。の、だが──

 

「……あれ?ちょっと、そこのあなた」

 

こちらに気付くと、彼女はその眼光を和らげた。

 

「そう、あなたよ。そういえば、キャラについてはチェックしてなかったわよね」

 

笑顔でそう言って、こちらに近づいてきた彼女は──突然、頬にゆっくりと触れた。……どういう事なんだろうか。

 

「へぇ、温かいんだ。生意気にも」

 

彼女は笑みを浮かべているが、こちらとしては意味が分からない。これは、新手のプレイか何かだろうか?驚きで固まっているところをペタペタと触ってくる。

 

「あれ、おかしいわね。顔が赤くなってるような気がするけど……」

 

彼女は更に顔を近づけてきた。心臓がドキリとする。……もうここまでくると、リアクションをしないほうが彼女の尊厳の為ではないだろうか。

肩やら腹やらを触ってくる遠坂凛は、先程まで出していた威圧感が嘘のような和やかな雰囲気を出している。すると、

 

「なるほどね」

 

何を納得したのか、そんな言葉を発した。

 

「思ったより作りがいいんだ。見かけだけじゃなく感触もリアルなんて。人間以上、褒めるべきかしら」

 

彼女はそこまで言うと、眉を顰め急に後ろを向いた。

 

「ちょっと、何笑ってんのよ。NPCだって調べておいた方が今後何かの役に……」

 

恐らく、彼女のサーヴァントと話しているのだろう。どうやら、自分はNPCと思われていたらしい。……特徴が無いとは思っていたが、まさかここまでとは……

 

「……えっ?彼もマスター?嘘……だ、だってマスターならもっと……」

 

しゃきっとしてる、と言いたいのだろう。彼女はサーヴァントに言い訳をしてるのだろうが、そのたびに特徴の無さを突きつけられ無性に悲しくなる。……気分転換の筈が、何故こうなったのか。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃ、調査とか言って体を触ってた私って──」

 

先程までの行動に気付いたのか、顔を赤らめる。

 

「くっ、なんて恥ずかしい……。うるさい。私だって失敗ぐらいするってーの!痴女とか言うなっ!」

 

言えない。おもいきり痴女みたいだったとか言える訳がない。

 

「職業病みたいなものよ。これだけキャラの作りが精密な仮想空間もないんだから。調べなくてなにがハッカーだっての」

 

そこまで言うと、彼女はこちらを向いて言葉を続けた。

 

「大体、そっちも紛らわしいんじゃない?マスターの癖にそこらの一般生徒と同等の影の薄さってどうなのよ?」

 

逆ギレにもほどがあるが、こちらもそんな間違いをされるなど露ほども思わなかったのだ。言われても反応に困る。

 

「今だってぼんやりした顔して。まさかまだ予選の学生気分で、記憶がちゃんと戻ってないんじゃないでしょうね?」

 

……図星だった。戻るべき記憶が戻ってこない。覚悟も決意も全て置いてきた状態。今の自分は正しく学生気分なのだろう。

 

遠坂は自分の反応で先程の言葉が真実であることを知ると、驚いた顔をした。

 

「え……嘘。本当に戻ってないの?それって……かなりまずいわよ?」  

 

聖杯戦争に途中退室は許されない。記憶に不備があればホームに帰ることは出来ない。彼女はそこまで言うと、急に声色を変えた。いや、戻したというべきだろうか。

 

「……あ。でも関係ないわね。聖杯戦争の勝者は1人きり。あなたは結局、どこかで脱落するんだから」

 

彼女は、自分も聖杯を奪い合うマスターの1人と認識したのだろう。であれば、交友を深める必要などありはしない。

 

「へぇ、安っぽい挑発だこと。ねえマスター、さっきの痴女行動掘り返して煽ってみなさいよ。面白くなりそうでしょう?」

 

アヴェンジャーは遠坂に煽り返すように言うが、自分はただ沈黙していた。勝てない。自分が何よりもそれを理解していたから。今の自分は、何もかも足りていないのだから。

 

その後も遠坂は何か言っていたようだが、自分はそれがBGMに聞こえるほど、考え込んでいた。

 

「待ちたまえ、そこのマスター。君にはまだ話していない事がある」

 

遠坂との会話の後一階まで降りてみると、神父服の男性に話し掛けられた。

 

「本戦出場おめでとう。これより君は正式に聖杯戦争の参加者となる。私は言峰。この聖杯戦争の監督役として機能している、NPCだ」  

 

言峰と名乗る男は、こちらの反応を見ずにひたすら話を続ける。

 

「この聖杯戦争がトーナメント形式であることはもう知っているかな?128人のマスターが毎週殺し合い、残った1人に聖杯が与えられる。どんな愚鈍な頭でも理解出来る、実にシンプルなシステムだ」

 

殺し合い。アヴェンジャーの説明にもあったが、改めて聞くと体が固まる。思い出すのは、最初のドール戦。あの時に匹敵、もしくはそれ以上の痛みを毎週受けるかも知れない。そして、それを相手に与えることも。そして……最後には、無様に消えるのだろう。

 

「殺し合い、そしてこの世界での死がどの様なものかは、一回戦が終われば分かるだろう。そこで勝とうと負けようとな」

 

嫌味、だろうか。未だに現実を直視仕切れない自分に対しての。だが、生き残る為にはこの男の話は聞かなければならない。ルールすら知らない人間に、勝利はないのだから。

 

「各マスターには六日間、相手と戦う準備をする猶予期間(モラトリアム)が与えられる。君はこれから六日間で相手を殺す算段を立てればいい」

 

 

戦う準備。殺す算段。果たして自分はそれを出来るだろうか。ドールはまだ人形だったからよかった。だが次は人間だ。自分が、人を殺す──?

 

「そしてその六日間の間に、二枚の暗号鍵(トリガー)も入手しなければならない」

 

「暗号鍵……ですか?」

 

「そうだ。二枚の暗号鍵を集めきれなかったマスターには、決戦場への扉は開かれない。不戦敗、ということだ」

 

どうやら猶予期間では、闇雲に鍛錬を積むだけではいけないらしい 暗号鍵を入手するのを最優先とし、次点に修行。その次に情報収集をするべきだろうか。どれも一つ欠ければ致命的になるものだ。行動は慎重に行うべきだろう。

 

「さて、何か質問はあるかね?」

 

言峰の説明は以上らしい。大まかなルールは理解した。 だが、決闘式なら、一番重要な情報が自分には知らされていなかった。

 

「俺の対戦相手の情報が知らされてないんですが」

 

「む……?ふむ。どうやらシステムにエラーがあったようだな。君の対戦相手は明日発表しよう」

 

エラーについて知りたいが、恐らく、いや確実に教えてはくれないだろう。ついさっきあったばかりだが、教えてくれる人間ではなさそうだし。

 

「最後に、本戦に出場するマスターには個室が与えられる。端末にコードを送っておくので、2-Bの教室から入るといい。アリーナの入り口は予選に通った倉庫の扉だ。開けておくので、空気に慣れておくといい」

 

話は終わったと言わんばかりに、言峰は去っていった。

 

 

アリーナでの戦闘は、アヴェンジャーの炎で近づかれる前に殆ど倒した、と言っておこう。蜂型のエネミーはしぶとかったが、アヴェンジャーが手に持った旗で叩き落として仕留めてしまった。……これで、経験を積めているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 




ところでFGO一章でのワイバーンですが、あれって聖杯が作ったのでしょうか。それとも、邪ンヌの竜の魔女EXが作り出したのでしょうか。

前者なら問題ないのですが、後者なら竜型エネミーを作って戦わせるとか出来そうですよね。まあほぼ反則っぽいし、いくらザビ主従が弱くても勝てそうなので、前者説で通すと思いますけど
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