いつか貴女と、肩を並べて   作:おおとり

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 ちゅんちゅんと鳥のさえずりと、カーテン越しの柔らかな朝日に急かされるように覚醒する。

 ゆさゆさと掛け布団の上から体を揺すられる。

 

「ん~。なぁにぃ翔鶴姉ぇ。今日は午後の演習だけでしょ~」

 

 瑞鶴は接着剤で止められてしまったかのような瞼を開けないまま、布団の中で唸った。

 ふむ、という吐息が聞こえたかと思うと、もそもそと布団の中に入ってくる。

 

「もう翔鶴姉ぇなに……」

 

 ようやく瞼を開けた瑞鶴の視界に飛び込んできたのは、葛城の笑顔だった。

 

「おっはようございまーす……」

「うきゃあああああ!」

「ぉわあああ!?」

 

 瑞鶴の悲鳴に釣られて葛城の声もほぼ同時に上がった。

 瑞鶴は素早く布団から転がり出ると、立膝になり何故かファイティングポーズを取った。

 

「なな! なななな!?」

「ななな?」

 

 葛城が首をかしげる。

 

「葛城じゃないのよ!」

「はい! 葛城です! 厳しい特訓を終えて帰ってきました!」

 

 葛城も布団から身を起こし、正座をした状態でゆるく敬礼をした。

 瑞鶴は違和感に襲われる。

 それは葛城の服装だ。

 鮮やかな緑の着物ではなく、お腹と腰が大きく空いた露出の高い軽装になっている。

 カラスの濡れ羽のような紙は一層濃く、カーテン越しの薄い朝陽を浴びて怪しく輝いていた。

 少し見ないうちに、子供っぽさが鳴りを潜めたようだった。

 鎮守府に配属されたころの野暮ったい雰囲気は無く、凛々しさすら感じられる。

 瑞鶴の記憶にある葛城と、イメージが乖離して、ついつい葛城の顔をじっと見つめてしまう。

 

「え、な、なんですか。あたしの顔に何かついてます?」

「少し見ないうちに変わったね葛城」

「……はい。瑞鶴先輩のために頑張りました」

 

 否定も謙遜もせず、はにかむ葛城。

 しかしここでまた違和感が寝起きの瑞鶴の心に波のように去来する。

 

「わたしのため……?」

 

 その時、唐突に部屋の扉が開いた。

 

「瑞鶴、起きているかしら?」

「加賀さん!?」

「葛城……もういるの」

「はい! 帰ってきてから一番でここに来ましたから」

 

 加賀は葛城の姿を見るとわずかに眉間に皺を寄せた。

 

「瑞鶴。演習の用意をなさい」

「演習? まだ朝ですよ」

「提督からの通達よ。特別演習ですって」

「特別演習? なんのですか?」

「それは――」

「あたしと、瑞鶴先輩の、です!」

 

 葛城は加賀の言葉を引き継ぐように答えた。

 

「はぁ?」

 

 寝起きでまだよく働いていない頭をなんとか回転させ、どうしてこの状況に陥っているかを分析する。

 その結果――

 

「あ……」

 

 まさか。と思い出す。

 

「葛城、貴女……本当にわたしと一対一で演習を?」

「はいもちろんです」

 

 葛城は深く頷いた。

 

「そういうことよ。付き合ってあげなさい瑞鶴」

「あ、はい」

「やったー!」

 

 加賀は半ば呆れており、瑞鶴はまだ信じられないといった表情だ。唯一葛城だけが跳ねて喜んでいた。

 

「朝ご飯を食べて、マルキューマルマルから三十分だけだそうよ。一応、私が見届けるから、二人とも時間に遅れないように」

「はーい……」

「ハイっ!」

 

 かくして、瑞鶴のテンションはあまり上がらないまま、なし崩し的に二人の演習が始まるのだった。

 

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