クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 銀河の守護者   作:オービタル

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第51話:聖女イレーネ・ファーレンス

 

陽弥達は港町トロップに立ち寄ると何やら民衆が広間に集まっていた。

 

「何だ?何かの集会か?」

 

広間の像の前に何やら不気味なローブをした二人とその真ん中に紫の宗教の服装をした男性"タミエル"が民衆に何かを語っていた。

 

「善良なる人々よ、我が声に傾けなさい。待ち望みし救世の時が、訪れようとしているのです。そう!我々罪深き者を救いし、至高の存在.......全能の王 アスモデウス。その復活の時がーー」

 

「アスモデウスだって!?まさかあんたたち.......」

 

「シュドネイ教.....魔王崇拝者なのか!?」

 

老人が問うと、タミエルは返答した。

 

「いかにも我々はシュドネイ教徒、しかし.....さて、何を戸惑っておられるのやら?アスモデウスこそがこの世を救うというのに。偽りの平和から目を背け、さあ、ご覧あれ、さすれば、ほら、見えるではありませんか......愛すべき家族、友人、隣人、恋人が冷たき石となり、恒久の闇と苦しみに囚われる姿が、我々は救う妙薬は一部の特権階級が独占し、一般の民に届くことはないのです。間違っている........そうは思いませんか?」

 

「た、確かに.....」

 

「そう、この世は今、過ちの中にあるのです。心清らかなる弱き者達が喘ぎ苦しみ、心浅ましき者達が欲望の器を満たす。そのような世界を、浄化の炎をで焼き尽くす者こそが、偉大なるアスモデウスなのです。」

 

その様子に陽弥は心の中でブラムと会話する。

 

「(どう思う?ブラム)。」

 

『(.......狂信者が)』

 

「(そっか......)」

 

『(魔王アスモデウス?笑わせるなぁ、俺の方こそが獄闇の力を統べる皇神帝だ。魔王なんざ、ひよっこレベルの下級以下だよ)』

 

「(ハハハハ、魔王を下級以下って......)」

 

陽弥は彼らの話の続きを聞くと、老人が問う。

 

「待てよ、魔王はこの世を炎で焼くんだろ?だったら、俺たちまで焼かれてしまうじゃないか!?」

 

「はい、あなたのおっしゃる通りです。アスモデウスは、我々もろともこの世を焼くのです。」

 

「そ!そんなことになったら俺達も死んじまうよ!」

 

民衆が慌て出すと、タミエルは言う。

 

「あぁ、並ば、共に焼かれようではありませんか」

 

「え......?」

 

「『はっ......!?』」

 

突然のタミエルの言葉に民衆とそれを聞いていた陽弥とブラムが唖然する。

 

「アスモデウスは、従う者に大いなる慈悲を与えます。醜く卑しい世界を焼き尽くしてのち、アスモデウスによって想像された新たなる世界。その世界において永遠の幸福を得られる者こそすなわち、我々なのです。全能の王を愛しましょう!さすれば我々もまた、王の愛に包まれるのです。浄化の炎で焼かれる苦しみは一瞬........。されど、新たなる世界で得られる幸福は永遠........。そう!永遠なのです。」

 

タミエルは民衆に御辞儀で返し、左右の腕を振りながら、ローブの男二人を連れ、出ていった。陽弥達は邪魔にならないよう道をあけ、タミエルが横を通り過ぎた直後、またしても陽弥の頭から痛みが走ってきた。

 

ーーピキッ!

 

「うっ.....!?」

 

『どうした?陽弥』

 

「......何でもない」

 

陽弥の様子を心配するかのようにブラムは陽弥に問うと、光学迷彩で姿を消しているバッカスが言う。

 

「(あれが魔王崇拝者.......シュドネイ教か。なんとも凄いものだな)」

 

「あれだけ絶対の確信を込めて語られれば、付き従うものも多そうですね。もっとも、彼の言葉がデタラメであることを僕たちは知っているワケですが。」

 

フェイズも彼らの事を語ると、バッカスは特効薬の流通の事を語る。

 

「(うむ、特効薬が行き渡らなくなったのは原料が手に入りづらくなったせいだからな)」

 

「あと、エッジさんが倒した賊の背後にいるその流通を阻害しようと者たちですね。ですが、それも騎士団が動いてしますし........どうせ魔王なんて存在しないんです。遅かれ早かれ、ああいう人は消えていきますよ。」

 

「どうかした?」

 

メリクルがエッジを心配する。

 

「いや、ちょっと引っ掛かっただけなんだ。そうなった時、彼らはどうするのかなって.......僕には関係ないことだ....行こう。」

 

エッジは何事もなく、イレーネのいる家へ向かう。陽弥は心の中でブラムとの会話を楽しんだ。

 

『陽弥.....お前はあの狂信者の語り方、誰に似ていると思った?』

 

「.....ジュリオ・飛鳥・ミスルギ。通称"アホ皇帝"」

 

『フフ、お前もそう思ったか.....』

 

ブラムが笑うと、陽弥も笑い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽弥達はイレーネの家にたどり着き、エッジがドアをノックした。

 

「イレーネさん、いらっしゃいますか?サラに紹介されて来たのですが」

 

しかし、まったく反応がなかった。

 

「返事なし......」

 

「留守なのかな?」

 

エッジがドアノブに手を差し伸ばした直後、リムルがあっさりとドアを開けた。

 

「鍵、開いてるのよ。お邪魔しますのよ」

 

「仕方ない、僕たちも入らせてもらおう。」

 

陽弥達は構わずイレーネの家に入った。だがこの時、陽弥の後ろに何者かの影が忍び寄っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

陽弥達は部屋中探すが、イレーネらしき人物は全く見当たらなかった。

 

「どうだった?」

 

「残念ながら、イレーネさん本人も消息をおわせるものも発見できませんでした。」

 

「私も」

 

「リムも見つけられなかったのよ、かくれんぼが上手なのよ。」

 

「さすがはイレーネ様!あたしたち程度じゃ、見つけられないんだね」

 

メリクルが感心していると、突然メリクルが辺りを匂いだす。

 

「くんくん......?何だか焦げたにおいがするよ」

 

「そう言えば.....」

 

陽弥も薄々気づき始めた直後、

 

「見て!」

 

レイミが窓がある指す方向を見ると、窓の辺りが炎に包まれていた。バッカスが姿を現し、メリクルが別の部屋に行く直後、部屋から業火が吹き荒れ、フェイズがメリクルを助けだし、後方に下がる。

 

「キャッ!」

 

「誰かがこの家に火を付けたのか.......!」

 

皆は慌てていると、床から緑に光る紋章が浮かび上がる。

 

「こ、これは.....!」

 

「転送紋章....!?」

 

陽弥達は謎の転送紋章によって何処かへ飛ばされ、皆のいた所の上から燃え盛る柱が落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛ばされた陽弥達は何処か知らない洞窟にいた。

 

「ここは....?」

 

「確かにイレーネさんの家だったのに.......」

 

すると奥の方から誰かの足音が聞こえてきた。

 

「........誰かが、来る.........!」

 

現れたのは、ランタンを手に深緑と白衣の服を着た女性だった。

 

「貴様らが来ることは分かっていた」

 

「......え?」

 

「サラの友人ということも、貴様らごと家が焼かれようとしたこともな」

 

「あ、あの......」

 

「だから転送呪紋を用意しておいてやったのだ。感謝しろ、小僧」

 

「えっ?あっはい、ありがとうございます......」

 

エッジはお礼をし、陽弥は頭の中で彼女だと判明した。

 

「(........まさか、この人がクロウさんの......)」

 

「何をボーッとしている?貴様らも感謝しろ」

 

「は.......は、はい!ありがとうございます!」

 

「では、続いて遠慮なく喜べ。私こそが貴様らの会いたがっていた。その名もイレーネ・ファーレンスだ。」

 

陽弥とブラムは彼女がイレーネ・ファーレンス名に驚き、想像描いていたイメージが砂のように崩れ落ちた。

 

「『(........嘘~ん!?)』」

 

「来い、呼んだ覚えはないが、茶ぐらいは出してやる。」

 

「あ!あの、待ってください!あなたは本当に、サラが言っていた.......」

 

「二度は言わんぞ小僧、来い」

 

「は、はい!」

 

「では、行くぞ」

 

「あれがイレーネさん......か、サラから聞いた話とはずいぶんイメージ違うな」

 

「乱暴な女性だ......」

 

陽弥達はイレーネの後に続くと、一人だけしょんぼりした人がいた。リムルはその人に声をかける。

 

「メリたん、どうしたのよ?なんか元気がないのよ」

 

「おそらく、心に描いていた聖女イレーネと同じ名前の彼女とのギャップに衝撃を受けたのかと」

 

「聞こえているぞ」

 

地獄耳を持つイレーネは"聖女"と言う言葉に興味を持つ。

 

「だが、聖女と言うのは悪くない響きだ。明日からは聖女イレーネと名乗るとしよう。」

 

「や!やめて~!あたしの夢をこれ以上壊さないでよ~!」

 

「くっくっく、あんまり褒めるな、照れる♪」

 

「褒めてないよ~!うわ~ん!」

 

メリクルは悲しみ、エッジ、レイミ、陽弥は言う。

 

「.......イジメッ子だな」

 

「........イジメッ子ね」

 

「......イジメッ子だ」

 

三人は語っていると、イレーネが指を鳴らし、壁に並んでいたランタンを一斉に付けた

 

「けれど、占い師としての力は確かなようですね僕たちの訪問やサラさんとの関係だけでなく、火災についても正確に把握しているなんて」

 

フェイズがイレーネの占いに納得すると、

 

「だったら、もっと早く助けてほしかったよ」

 

「それではありがたみがないだろうが、愚か者。命を助けつつ、その大切さも教えてやったのだ。礼を言われこそすれ、非難される覚えなどない。」

 

「絶対違う.....違うよぉ、イレーネ様は美しく賢く優しい人なんだから......」

 

「なんだ、やはり私のことではないか」

 

「フ~~~ッ!」

 

メリクルがイレーネに威嚇すると、リムルがイレーネに問う。

 

「ねぇ、いーたんのお家はこっちなのよ?」

 

「くくく、いーたんかぁ....それも愉快だ。聖女いーたん.....ふむ、こっちの方がいいな♪」

 

「だからもうやめて~~~~~!」

 

「この先には私の隠れ家があるのだ。チビ助」

 

「隠れ家?」

 

「私を狙う身の程知らずどもが多くてな、ほら、着いたぞ。」

 

目の前に怒鳴るが見え、イレーネがドアに近付くと、

 

「そこのデカイの、いい加減に出てこい。」

 

イレーネがバッカスの存在に気付き、バッカスは姿を現した。

 

「ふむ、そんな姿をしていたのか」

 

「......いつから気付いておられた?」

 

「私をなめるな、会う前からに決まっている。」

 

「おー」

 

リムルは興奮すると、バッカスは頭を深く下ろし、感心した。

 

「.....おそれいった。ミス・イレーネ」

 

「貴様はそこで待っていろ。入れんことはないが、デカイ図体が邪魔だ。」

 

「承知した。では、自分はここで待機している。」

 

バッカスはドアの横にある大きな石の上に座った。

 

「バッカスさん。いいんですか?」

 

「問題ない。中での会話はここからでも聞き取れる。」

 

「貴様ら、間抜け顔で突っ立ってないで、早く入れ」

 

陽弥達はイレーネの隠れ家にお邪魔した。

 

 

 

 

 

 

その頃、隠れ家のもう一つの隠しドアに、三人のローブを着た戦闘員達がたいまつを持って、隠しドアに火を付けようとした直後、後方から紫のクロークとスペルスタッフを身に付けた紅色のロングヘアーした美しき女性が現れた。

 

「家を焼いたばかりか、隠れ家まで襲うの?次から次へと、いい女は休む暇はないのね」

 

三人の戦闘員はその女性に攻撃をするが、女性は華麗なステップで回避した。

 

「そんなに魔王を崇拝しているのなら、今すぐ魔王の元に送ってあげるわ!」

 

女性はスペルスタッフを天高く上げると、上空から雷の呪紋ライトニングブラストが三人の戦闘員直撃し、服に引火した。三人の戦闘員は悲鳴を上げ、海の方へ飛び込んだ。

 

「魔王復活の阻止.....か、本当にジオットは面倒な仕事ばかり回すわね。」

 

女性は隠し扉に耳を近付けると中からエッジ達の声が聞こえてきた。

 

「この声は...」

 

女性はじっくりと耳をすます。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、エッジはイレーネに問うり

 

「本当にイレーネさんは全てを知っているんですか?」

 

「サラさんはパージ神殿に捕らわれているですか?だとしたら、どうやって入ればいいんですか?」

 

一気に話を薦められ、イレーネは二人を落ち着かせる。

 

「焦るな、ものには順序がある。」

 

「.....」

 

「今、この地に暗躍する者達がいる。貴様らも知っているのではないか?シュドネイ教とかいうあの趣味の悪い連中だ。サラを連れ去ったのは奴等だ。」

 

「何で、魔王崇拝者がサラさんを.....?」

 

レイミは問うと、イレーネは厳しい目で返答する。

 

「正真正銘の大バカ、いや、特上の愚か者たちだよ。幾千幾万の勇者が命がけで撃退した魔王を何千年と飽きもせず崇拝し、讃える。これまでは密かに信者を勧誘していただけだが、ここ最近、突然動きが活発になった。まるで得たいの知れない何かに突き動かされているかのように、な。」

 

イレーネは魔王アスモデウスを語る。

 

「太古の昔、魔界よりこの地に降臨した魔王。その名をアスモデウス......あの連中の目的は当然、魔王アスモデウスの復活だ。私の力を欲し、同志として迎えたいと誘われたが、答えは言わずとも分かるだろう?」

 

皆はいわかに信じられない表情になる。

 

「信じられない馬鹿げた話.....そんな顔だな」

 

「えっ?そ、そんなことは決して.....」

 

「私は別におかしいとは思わんがね。なにしろ、私の目の前にいる貴様らは.....星の海を渡って、この地にやって来たのだからな」

 

イレーネの言葉に陽弥達は驚いた。

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

「私に言わせればどちらも馬鹿げた話だよ。外のデカイのにも言ったはずだ.....私をなめるな.....とな。」

 

「それがあなたの占い.....と言うわけですか?」

 

「正確には少し違う。"オラクル"......神託と言うやつさ。消耗は激しいが、占いよりよく当たるぞ。今回も見事に当たったじゃないか、サラが面白い客を私の元に導く.....とな。くくく、確かに面白い客だ。」

 

「.......何がおかしいんですか?あなたはサラさんの友人なのでしょう?彼女が、心配ではないのですか!?」

 

「.......あれは私の妹みたいなものだ、心配に決まっている。」

 

「ならば、何故?」

 

「神託を受け、待っていたのだ。貴様ら、星の海を渡って来たものたちと、時空の海を渡ってきた神を.....な」

 

「僕たちを....待っていた?」

 

「あぁ.......サラを救い、魔王復活を阻止できるのは貴様らとお前と.........お前の体の中に潜む.......魔王を喰らう混沌の龍神の皇帝......."ブラム"」

 

「ブラム?」

 

エッジが首を傾げると、陽弥が返答する。

 

「流石、聖女........そこまで分かっていたとは........」

 

「なめるなよ......それと、ブラムと話してみたいからなぁ....」

 

「.......良いだろう」

 

すると、陽弥の目が白くなり、倒れた。

 

「陽弥!?」

 

「陽弥さん!?」

 

すると陽弥の体から赤黒い粒子が溢れ、形を整えていった。

 

「っ........!?」

 

形を整え、現れたのは陽弥の姿をしているが、龍のような角と目、牙、爪、尻尾をした赤黒い龍人であった。ちょうど陽弥が起き上がり、ブラムを紹介する。

 

「痛てて、紹介しよう.......こいつが魔王をも喰らう混沌の龍神の皇帝......."獄闇の皇神帝 ブラム"だ」

 

「初めまして諸君.......」

 

ブラムはエッジ達に礼をする。

 

「......確かに神を越えた存在だな、心が底無しの闇で埋め尽くされいるな。」

 

「そこまで見え見えとは.......とんでもない奴だ.......それで、俺らなのか?魔王の復活を阻止できるのは......」

 

ブラムは問うと、イレーネはエッジ達やドアの外にいるバッカスや女性に言う。

 

「今、この場にいる、星の海を渡ってきたものたちと、時空からの神に重ねて言う。パージ神殿で進められている魔王復活の儀式を貴様らで断固阻止するのだ。今、魔王が復活してはならない。また、早すぎる。」

 

「まるで、この先復活するように聞こえますが.......」

 

「復活するさ......」

 

「えっ?」

 

「いずれ魔王は必ず復活する。だが.........今少しあとのことだ。」

 

「その時が来れば、魔王に引導を渡す者が現れる。それはさすがに、貴様らではないがな。」

 

「........それも、神託というやつですか?」

 

「そういうことだ。まぁ、そんなことより、重要なのは、今、魔王を復活させてはならないこと。そして何より、魔王復活のためにさらわれたサラを救うことだ。」

 

「ちょっと待ってください!ですから、なぜ魔王の復活にサラさんが!?」

 

レイミが慌てて言うと、陽弥が言う。

 

「......生け贄か」

 

「.....そうだ。魔王復活には、聖なる生け贄がひつようとなる。サラは聖なるフェザーフォルク 魔王に捧げられる価値は十分にある。サラ救出と、魔王復活阻止は同義。つまりはそう言うことだ。」

 

「........もしも、僕たちに出来なかったら、この星はいったい、どうなってしまうんですか?」

 

「それは......だな。」

 

するとイレーネが気を失うと、彼女の周りから白き光が満ち溢れてきた。

 

「えっ?」

 

「この光......これが」

 

「これは.......」

 

皆が驚くとイレーネは起き上がり、語り出す。

 

「白き聖なる乙女が、祭壇への道につきました..........」

 

「いーたん、どうしちゃったのよ?」

 

「まもなく道は開かれ、散らされし純白の翼が、朱に染まり.......目覚めるは、闇深き世界より来たりし魔王。白き聖なる乙女の朽ちた身を引き裂き喰らい......この地を滅ぼす、先触れとするのです。」

 

「イレーネさん.....さっきまでとは全然違う......」

 

「もしやこれが.......神託《オラクル》......」

 

「抗えず、逃れず、世界は包まれます。何者をも灰とする破滅の業火に、全ては、美しく滅びを迎えることでしょう」

 

そしてオラクルを終えたイレーネは荒い息を吐く。

 

「.......ガァッ!、ハァ....ハァ......ハァ」

 

「イレーネ.....様?」

 

「見せてやった方が、早いと思ってな。今のが神託だ、貴様らが失敗したときの 、な。サラは死に、この地は滅びる.......そこには一切の妥協も希望もない。何度やろうとも、この神託は変わらない........滅びは、確実に訪れる......だが、サラを助けれれば変わるかもしれない。私は.....それを賭けてみたいのだ.....」

 

イレーネは体制を立て直し、陽弥達を見る。

 

「......稀代の占い師とたたえられてもこのザマだ......神託を受け入れるだけで体は悲鳴を上げ......他人の手を借りねば、友も救えぬ......」

 

イレーネはエッジを見て、言う。

 

「頼む.....サラとこの星を滅びから救ってやってくれ......この通りだ。」

 

「イ、イレーネさん.......!?.........や、やめてください.......星の運命だなんて、そんなことに僕を関わらせないでください........!」

 

「エッジさん......」

 

「そんなこと言われても、困りますよ.....!サラどころか、この星の運命まで......!また......そんな.......僕に........だって僕は.......!」

 

「.......愚か者........が」

 

イレーネはそのまま体制が崩れ、気を失なった。

 

「イレーネさん!?」

 

「しっかりしてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イレーネをベットに寝かせても、全然起きなかった。

 

「何やっても起きないのよ」

 

「......行きましょう、パージ神殿に」

 

「......フェイズ」

 

「正直、魔王復活なんて僕には眉唾ものですが、サラさんに危機が迫っているのは確かなようです。」

 

「けど......イレーネさんは目を覚まさないわ。それに神殿に入口はないんですよ?」

 

「だが、あの壁は微かに動いた。間違いなくあそこが入口だ.......」

 

「それなら作ればいいんです。たとえ、神殿全てを破壊しようとも.......」

 

「ダメだ!そんな乱暴な手段は認められない!」

 

「では、どうしろと言うんですか!?」

 

「待つんだ......イレーネさんが起きるのを」

 

「何を悠長なことを!」

 

「彼女は僕たちにパージ神殿に行けと言った。けれど、かの神殿はあれ以上、奥には行けない。イレーネさんがそれを知らないわけがない。彼女は奥に入る方法を知っている......僕は..........そう思う.....」

 

「分かっているんですか?このままではサラさんが......!サラさんを.........ロークを見捨てるんですか!?」

 

「そんなことは言っていない!」

 

「言ってるも同じです!今までのエッジさんなら!.......こんなところでしり込みなんかしなかった。僕たちが出会った。あのエイオスから、レムリック、そしてカルディアノンでも......エッジさんは、臆することなく走っていた。前だけを見て、走っていた!だから、僕はついて行こうと決めたんですよ!?」

 

「その僕が!......何も考えていなかったその僕が、地球を滅ぼした!また、同じことになるんじゃないかって.......怖くて、怯えて、体も心も動かなくなるんだよ!」

 

「でも、レイミさんを助けるために、あなたは戦った!」

 

「戦ったさ!それでも、あの恐怖は消えないんだ......!」

 

「二人ともやめて!」

 

レイミがエッジとフェイズの喧嘩に怒鳴る。

 

「「!..........」」

 

「一つだけ聞かせて、サラさんを見捨てる気はないのよね?」

 

「.......当たり前だ」

 

「仲間を思うフェイズさんの気持ちは分かります。でも、私たちのリーダーは.......エッジだわ」

 

「..........はい」

 

「れーたん、すごいのよ.......」

 

「怒らせると怖いミャ......」

 

二人はレイミを感心していると、陽弥は言う。

 

「.......やっぱり、あの話の続きを話しとければ良かったなぁ」

 

「話の続き?」

 

「前に俺が"それを認めない者達がいるんだ"と言ったのは覚えているだろ?」

 

「えぇ、」

 

「......."偽りの民".....かつて俺の一族と父さんと母さんを差別してきた傲慢な人類の事だ。」

 

陽弥は彼らの事をエッジ達に説明した。陽弥が使っている"マナ"とは......かつて人類が進化の果てに得たとされる魔法の様な技術であり、それを扱う人間達は創造主であるエンブリヲからホムンクルスと呼称されていた。念動力のように物質を浮遊・移動させたり、光や熱を発生させたり、魔法陣のような拘束・防護用の結界を張ることも可能、統合システムへのアクセスによってマナ使い間での情報共有が可能であるため、相互理解を深め合うことが容易になり、これにより、人々は互いに繋がることによって相互理解を深め合い、戦争や貧富の差も消滅したとされ、貧困や格差の存在しない、平和で穏やかな理想郷を築きあげた。

しかし、マナの力を持たない人間「ノーマ」に対して、忌み嫌われ、嫌悪され、蔑まされ、差別されていた。

 

 

ノーマとは、エンブリヲが作り上げたホムンクルス達と異なってマナの力を持たない人間達に与えられる蔑称。であり、産まれながらにしてマナが使えない突然変異体で、マナによる干渉も受け付けない体質を持ち、結界などによる直接的な捕縛はできない。ただし、マナで動かした物による拘束は可能。 マナを否定する「退化した人間」と見なされ、社会システムを破壊しかねない危険な存在として人々から忌み嫌われて、差別されている。

何故か女性体しか発生しないが、その理由は一切解明されていない。

日々検疫官がその存在を取り締まっており、ノーマと判明した者は発見後は速やかに社会から隔離され、ノーマ管理法に基づき認定番号が与えられて拘束され、アルゼナルへ送られて名前を取り上げられ、対ドラゴン用兵器として訓練され、ドラゴンと戦い、一度も外の世界に戻ること無く死んでゆくことが使命とされるなど、人類社会の防人として強制的に軍務に使役される。

その為、彼女達の活躍は功績も献身も一般に喧伝されることはなく、実質的な奴隷であったが、ラストリベルタス開戦後、勝利し、ノーマと古の民には自由を勝ち取り、マナを使っていた人類は混沌の世界で抗争をする運命になっていたが、陽弥が18歳の時に突如、陽弥の婚約者でもあるエミリアがやって来た。彼女はこの惑星ローク並の文明レベルの星"惑星ホライゾン"に機械生命体国家アジマス連邦が侵攻してきた。しかしその正体はかつて、マナの光が使えなくなった人類の一人"新星国家ネオ・ミスルギ皇国"率いる現皇帝ジュリオ・飛鳥・ミスルギの陰謀であった。彼はラストリベルタスを起こした自分の妹アンジュに復讐の怒りに燃えており、惑星ホライゾンのエネルギー鉱石『フォドラニウム』を強奪し、民を強制にアジマス連邦の故郷でもある恒星要塞"アヴァロン"へ移住し、ついにアジマス人を奴隷に納めた。だが、ジュリオはさらに余計なことをした。かつて先代護星神タイタニスよって封印された邪神国家"グリゴリア大銀河帝国"と邪神達を復活させてしまい、ジュリオは邪神の配下になってしまった。それから俺達次第護星神やホライゾン民、父さん達は今も奴等と戦っている.........。

陽弥の話を聞いたエッジ達は、

 

「陽弥の世界も........あの地球と同じ運命を辿ろうとしている星が.......」

 

「あなたも........僕達と同じ運命を........」

 

「あぁ、だけど俺もエッジとフェイズの食い違いが全くもって俺の状況が同じなんだ........偽りの民とアジマス人全員生かすと言うのが.........また裏切られると.........それに、文明レベルが近かったヴァルヴァトール帝国の帝都を壊滅寸前までに追い込んだ俺を.......ホライゾンの民はこれを許すのかを.........俺は怖くて逃げた......だけど、ブラムが教えてくれた。お前の生存を待っている家族や、仲間、友人、そして愛する人がお前を待っていると.........俺目が覚めたんだ.........逃げていた自分を殴りたかった.........もう考えることや、迷うことは止めた!俺はヴェクタ人 シンとメイルライダー ヒルダの子 陽弥!と.......ミッドガンドの護星神として、エミリアの騎神と......」

 

陽弥は決意し、拳を握りしめ胸に当てた。エッジ達は陽弥の勇姿に興奮していた。

 

「..........」

 

「はるたん、なんかかっこいいよ。まるで絵本に出てくるナイトなのよ」

 

「僕も思いました........」

 

するとイレーネが目を覚まし、レイミが気が付く。

 

「あ........、イレーネさん?」

 

レイミは体を起こすのを手伝った。

 

「イレーネさん......よかった」

 

「......私はどのくらい意識を失っていた?」

 

「もう、朝みたいです」

 

「それほどか......歳はとりたくないものだ」

 

イレーネはエッジとフェイズ、陽弥を見る。

 

「........何があった、小娘?」

 

「パージ神殿の奥に行く方法で、その意見の食い違いがありまして......けど、陽弥さんが何とかしてくれました。」

 

「なるほどな......それは私が迂闊だった。」

 

イレーネは胸元から何かを取りだし、レイミに渡した。

 

「こいつを先に渡しておけば、問題はなかったな」

 

イレーネが取りだしのはカードキーであった。

 

「これは......?」

 

「カードキー......なのか?」

 

「この惑星の文明レベルで、なぜそんなものが.....?」

 

「パージ神殿の奥に行く方法は、その『導きの灯火』が必要なのだ。それがなければ、奥に行けん。破壊などしようなら、奥のサラが危険だ。」

 

イレーネの言葉にエッジの言葉が正しかった。

 

「エッジの判断が正しかったのね」

 

「.....あぁ、」

 

「........」

 

「カードキー、いえ....『導きの灯火』をどこで?」

 

フェイズが問うと、イレーネは返答した。

 

「昔、ムーアの血を引く奴から預かった。」

 

エッジ達は驚くと、イレーネは言う。

 

「さあ、もういい。急いでサラを頼む。」

 

「.....行きましょう」

 

フェイズは急いで隠れ家から出た。

 

「おい、そこのどら猫。確か....メリクルと言ったな」

 

「な、なに?また私の夢を壊す気なの?」

 

「暇になったら遊びに来い。聖女とやらの話、今度は笑わずに聞いてやる。」

 

「...........き、気が向いたら来て上げる!それと、私はどら猫しゃないよ!」

 

メリクルは頬赤くして、バッカスとリムルと一緒に出ていった。するとイレーネは落ち込んでいるエッジを見る。

 

「.....小僧、貴様が何を恐れているのか、私は知らないし、興味もない。だが、これだけは言っておく.........自惚れるな!このバカめ!」

 

「.....!」

 

「!.....」

 

「......おぉ!」

 

イレーネが怒鳴った事に三人は驚いた。

 

「星の海は果てしなく、世界は途方もなく広い。それを貴様ごときが背負えると思うな......愚か者。栄えるも滅ぶも、それは全て星の選択だ。これは.....運命と言ってもいい」

 

「ですが、」

 

「もしや貴様、運命すら操れると思っているのか?なら、増長しすぎだ、この戯けが」

 

「そ、そんなつもりは」

 

「貴様にできることも、貴様が与える影響も、たかが知れている。貴様が契機となったものが、いずれ巨大な波となり、星を飲み込むことになるかもしれない。それこそが、星の命運になることだろう。だが、そこまで至るには、貴様の力だけでは不足、様々な要因が絡み合い、最後の運命を帰結するのだ。」

 

「イレーネさん.....」

 

「悩め!恐れろ!泣け!されど止まるな、おごることなく真っ直ぐひたむきに、前へ走れ。そうすれば、自分にできることが見えてくる。ちっぽけな自分にしかできないこともな......それこそ、貴様が真に成さねばならないことだ。」

 

「.......それも、神託ですか?」

 

「嫌、単なるご託だよ.....それに貴様には、そこの小娘がついているだろう」

 

「えっ?わっ、私ですか?」

 

「辛いことも、苦しんだこともあったろう。だが、貴様の中のムーアは、必ず意味があるだろう。」

 

「私の.....中の....」

 

「この小僧と共にあれ、ムーアの加護を受けて生まれた、幸福の子よ...」

 

「はい.......はい.......!」

 

エッジとレイミはお互い、心の中で決意し隠れ家から出ていった。陽弥も出ていこうとしたとき、

 

「待て、お前に渡すものがある.....」

 

陽弥はイレーネからある本を3冊貰った。

 

・"守護者と26人の使徒"と言う絵本

 

・"時間と空間"の書物

 

・"生きる"と言う小説

 

 

 

 

 

 

隠れ家から出た陽弥は3冊の本をポーチの中にしまった。

 

「こんなん貰って、何になるんだ?」

 

すると陽弥達の前に女性が話し掛けてきた。

 

「やれやれ、夜が明けてしまったわね。行くんだったら、早く行きましょう。」

 

「あ、あなたは.......何でここに!?」

 

「言ったでしょう。この星でなすべき事があるって、どうやら、その目的まで坊やと一緒みたいね。アスモデウスの復活を阻止すること。それがモーフィスの私に与えられた今回の任務よ」

 

「君もモーフィスの一員なのかね?」

 

「あなたの噂は聞いているわ、バッカス。こんなところで会えて光栄......と言っておくわ。そこの坊や以外に初めて名乗るわね、私はミュリア・ティオニセス。カルディアノン母艦であった子もいるわね」

 

「あなた、あの時の......」

 

「なぜ、あなたがロークに.....!?」

 

「それは私が知りたいわ。カルディアノンの時といい、このロークといいなぜあなたたちは事の核心にいるの?」

 

「.......まぁ、いいわ。取り合えず、一緒に行きましょう。」

 

「そんな、勝手に.....!」

 

「.......やっぱり、あいつを狙っているんですか?」

 

「もちろんよ、それまでは、坊やのそばを離れてあげないから」

 

レイミはミュリアとエッジの関係に疑心暗鬼になる。

 

「......どういうことなの、エッジ?」

 

「......簡単な事だよ、あの人はクロウを殺すために仲間に加わったのさ。」

 

エッジの言葉に陽弥達は驚いた。

 

「ええっ!?」

 

「大丈夫、そんなことはさせない。きっと、分かってくれるから......」

 

「それじゃ、よろしくね」

 

ミュリアは投げキッスで挨拶し、皆と共にパージ神殿へと向かっていった。

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