インフィニット・トリガー   作:兵庫人

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しばらく読み専だったのでリハビリに何かを書こうとふっ、とこの話を思いつきました。


第1話 四門空色人と佐鳥賢(1)

「ああー! もう羨ましいなー! 本当に羨ましいー!」

 

 深夜。とあるビルの一室で待機していた俺、四門空色人(しもんらいと)は隣で携帯電話のニュースを見ながら嘆く友人、佐鳥賢の声を聞いて思わずため息を吐いた。コイツ、またか……。

 

「はぁ……。いい加減にしろよ、賢。それでもう何回目だよ?」

 

「だって本当に羨ましいんだって。見ろよコレ」

 

 俺の言葉に賢は自分が持つ携帯電話の画面をこちらに向けてきた。携帯電話の画面には今日の朝に報道された、恐らくは世界全体で注目されているであろうニュースが表示されていた。

 

『世界初! 日本で男性のIS適合者現れる!』

 

 IS。正式名称はインフィニット・ストラトス。

 

 今から何年か前に篠ノ之束という天才科学者が開発したパワードスーツで、元々は宇宙開発の為に開発されたものらしいが発表されてすぐに兵器に転用されて、今ではアラスカ条約で兵器としての使用が禁じられてバトルスポーツに活用されている。

 

 そしてISは「世界最強の兵器」と呼ばれるくらい非常に強力な存在なのだが、何故か「女性にしか動かすことができない」という特徴があった。……そう、今までは女性にしかISを動かすことができないはずだった。

 

 しかしつい先日に織斑一夏という一人の男がISを起動させたことで、その今までの常識が覆されたのだ。

 

「世界で一人だけの男のIS適合者ってことはやっぱりIS操縦を習うIS学園に通うんだろうなー。そしてIS学園のクラスメートは当然全員女子なんだよなー。ああー! もう羨ましいなー! 織斑一夏が本当に羨ましいー!」

 

 好きなものは女の子とハンバーガーだと普段から胸を張っていう賢は、このニュースが報道された朝からずっとこの調子で会ったこともない織斑一夏を羨んでいる。正直うっとうしい。それにコイツはこう言うが、俺はそれほど織斑一夏を羨ましいとは思わないんだよな。

 

「俺はそんなに羨ましいとは思わないけどな。世界でただ一人の男性適合者なんて色々面倒そうだし」

 

「そんなことはないだろ。IS適合者になれたら変身ヒーローみたいにISを装着できてカッコいいし、可愛い女の子の知り合いが沢山できていいことだらけじゃんか」

 

「変身ヒーローも、可愛い女の子の知り合いをつくるのも『ボーダー』で充分できるだろ?」

 

 賢の言葉に俺は呆れた様にツッコミを入れる。

 

 ボーダー。

 

 それが俺と賢が所属している組織の名前だ。

 

 ボーダーがどんな組織かというと「世界の平和を守る正義の軍隊」といったところだろうか。

 

 今から四年くらい前にここ、三門市は「ネイバー」という異世界からの侵略者に襲われた。ネイバーの軍隊の前にはISを含んだ地球の全ての兵器は全く通用せず、三門市はネイバーによって壊滅させられると思われたがそれを救ったのがボーダーという組織だった。

 

 ネイバーを退けたボーダーは三門市に支部を作り、それからは特別なシステムでネイバーの出現を三門市周辺に集中させて現れたネイバーを撃退し、今日まで異世界からの脅威から地球を守ってきたのだ。

 

 そして俺と賢はネイバーが現れないかを見張り、現れたらすぐに撃退に向かう深夜の防衛任務の真っ最中であった。まあ、今夜はネイバーも現れる気配がないし、任務も後一時間もしないうちに終了だからこうして無駄話をしているんだけどね。

 

「……うん。確かにボーダーでもこうして『トリオン体』に変身できるし、可愛い女の子の隊員も沢山いる」

 

 俺のツッコミに賢は納得してようやく大人しくなってくれた。

 

 ボーダーではISを初めとする今まで使われてきた兵器を使用せず、「トリオン」という生物が生み出す特殊なエネルギーを利用した「トリガー」という兵器を使用している。そしてボーダーの隊員はトリガーを発動させた際に、生身からトリオンでできた戦闘用の身体「トリオン体」に変身するのだ。

 

 次にボーダーの女性隊員のほとんどは若くて可愛い、あるいは綺麗な女性ばかりだ。入隊したばかりの頃、賢はボーダーの美人隊員の多さに感動し、手当たり次第に女性隊員に声をかけたのは今でも覚えている。

 

 つまり変身ヒーローのように変身できて、可愛い女の子との出会いに恵まれたボーダーの賢は、織斑一夏を羨ましく思う必要はないということだ。やれやれ、これでようやく静かに……、

 

「それでもやっぱり羨ましいんだって! 一度でいいからクラスメートは全員女の子っていうギャルゲーみたいな学生生活を送ってみたい~!」

 

 ……ならなかった。

 

 静かになったのはほんの一瞬で、すぐに賢は体をくねらせて嘆いた。うざったい上に気持ち悪い。「何でコイツの友人をやっているのだろう」と本気で自問自答したくなるレベルだ。

 

「ああ~。俺も織斑一夏のようにISを動かせないかな~」

 

「無理だろ」

 

 賢の言葉に俺は即答した。

 

 織斑一夏という前例がある以上、第二第三の男性適合者が現れる可能性はあるかもしれないが、それでも俺達ボーダー隊員がISを起動させることは出来ないだろう。

 

 俺はそう結論付けると未だに何かを言っている友人を無視して任務に集中した。

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