「先手必勝ですわ!」
模擬戦が始まって最初に攻撃してきたのはオルコットさんの方だった。彼女は俺の右肩に向けてスターライトmkⅢを撃つと、俺はそれを大きく体をそらして避ける。
続けて俺の左腕と左足を狙った第二射、第三射が飛んで来たが、それも前方に飛ぶことで避ける。
「ビーム射撃を回避した!? それも全て!?」
「驚いているところ悪いけど隙だらけだよ!」
自分の射撃が全て避けられたショックでオルコットさんの動きが止まり、その隙をついて俺は彼女に接近しながら両手に持ったサブマシンガンを撃った。
「……くっ!」
俺が撃ったサブマシンガンの銃弾は何発かオルコットさんに当たったが、彼女はすぐに体勢を立て直すと俺から距離を離していく。本当はもうちょっとダメージを与えておきたかったんだけど流石は国家代表候補生、そう上手くはいかないか。
ともあれこれでお互いの挨拶も終わったみたいだし、これからが本番だな。
∞
「ふぁあ……。凄いですね……」
四門空色人とセシリア・オルコットがアリーナで戦っていた頃。アリーナのピットでIS学園一年一組の副担任、山田真耶はモニターを見ながら感嘆の声を漏らした。
モニターにはアリーナの上空で距離を取りながらスターライトmkIIIを撃つセシリアと、セシリアの攻撃を避けながら両手に持つ二挺のサブマシンガンで応戦する空色人の姿が映っている。
「オルコットさんは勿論凄いですけど、四門君も凄いですね。とても初心者の動きとは思えませんよ。ねぇ? 織斑先生?」
「ああ、そうだな」
真耶の言葉に一年一組の担任である織斑千冬がモニターを見ながら頷く。
教職に就く前は第一回モンド・グロッソの優勝者と日本の国家代表候補生であった千冬と真耶から見ても、セシリアの実力はIS学園の全学年で上位に入るだろう。そしてそれに互角に戦っている四門の実力は、ISを起動させてまだ数ヶ月しか経っていない事を考えれば驚異的の一言だった。
「四門は確かにISに関しては初心者だが、ボーダーとして多くの訓練と実戦経験を積んでいる。それが上手く作用しているようだな」
「こ、これは……」
「スゲェ……」
真耶と話す千冬の背後でモニターを見ていた箒と一夏が思わず呟く。モニターに映る空色人とセシリアの戦いはIS戦闘の素人である二人から見ても高レベルなものだと理解できたからだ。
「フン……。織斑、よく見ておけよ? 何しろお前は後でこの二人と戦うことになるんだからな」
一夏が初めて見るISの戦闘に気圧されているのを感じとった千冬は、口元に笑みを浮かべてからかうような口調で声をかける。そしてそんな姉の言葉に、この後同じ舞台で戦うことになる弟ははっとした表情となって頷く。
「ああ……。分かったよ。千冬姉……えぐっ!?」
パシィン!
「馬鹿者。学園では織斑先生と呼べと何度言ったら分かる」
ピットに教師の持つ出席簿が一人の生徒の頭を強打する音が響き渡り、千冬は頭を抑えてうずくまる一夏を見てため息を吐いた。
∞
「よぉし! いいぜ、空色人! そのままガンガン行けぇ!」
一夏達と別のピットでも空色人の護衛という形でIS学園に来ていた嵐山隊の面々がモニターから空色人とセシリアの戦いを見ていた。
最初は一部を見たら扇情的なオルコットのIS姿に興奮して同じ隊の隊員である木虎藍に汚物を見るような目で見られていた佐鳥賢だったが、今はモニターの向こうにいる自分の友人の空色人に激励を飛ばしていた。
「空色人の奴、イギリスの国家代表候補生相手に善戦できているじゃないか」
「ええ。今の所一回も直撃を受けていませんし、攻撃がかすってもその分当て返してますからいいペースです」
「空色人のIS、翡翠の武装はボーダーでの装備を参考にしていて、今の空色人はボーダーでの戦闘の時と同じリズムを作れています。この調子でいけばいい所までいくと思いますよ」
嵐山隊の隊長、嵐山准の言葉にオペレーターの綾辻遥と隊員の時枝充が同意する。しかしそんな中で木虎だけ納得できない表情でモニターを見つめていた。
「およ? 木虎、どうしたの? 難しい顔して」
「……四門先輩がサブマシンガンを使った戦い方“も”得意としているのは私も知っています。でもそれだったら何で『アレ』を使わないんですか? アレを使ったらすでに四門先輩が勝っているはずです」
佐鳥に答える木虎の言葉を聞いて嵐山は少し考えて彼女に聞こえるように口を開く。
「恐らく空色人は先にオルコットさんが仕掛けてくるのを待っているんだろう。アレは決まると強力だが当てるのは難しいし、ISの戦闘で使うのは初めてだからな。……それに空色人はオルコットさんだけでなく織斑君とも模擬戦をしなくてはならないから、できることなら手の内を見せたくないんじゃないか?」
「……確かにその理屈は分かりますけど、私には四門先輩が織斑一夏を警戒する必要はないと思いますが?」
木虎は嵐山にそう返すと、自分の首にぶら下がっているスリングがついたタブレット型の端末を起動させる。タブレット型の端末の画面には織斑一夏のデータ……彼がIS学園に入学してから今日までの授業態度や授業が終ってからの訓練の内容などが記されていて、木虎はそれを不愉快そうに見る。
「おっ! オルコットさんが何か仕掛けるみたいだぜ?」
「え?」
佐鳥の声に木虎はタブレット型の端末から顔を上げてモニターを見る。モニターの中では佐鳥の言う通り、セシリアの行動によって戦いに変化が起ころうとしていた。