インフィニット・トリガー   作:小狗丸

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第16話 代わりの護衛

「なるほど。こういうことか……」

 

 話に夢中で一夏とオルコットさんの戦いを見ていなかった俺は、嵐山隊の皆とモニターに記録されていた二人の戦闘映像を時折先送りしながら見た。

 

 一夏とオルコットさんの模擬戦の内容は簡単にまとめると次のようになる。

 

・模擬戦が始まると同時にオルコットさんがスターライトmkⅢとビットを使って一夏に先制攻撃。それに対して一夏はオルコットさんの射撃を完全にではないが回避して距離を詰めようとする。

 

・模擬戦が初めて十分くらいが経った時、一夏が持つブレードが変形してビームサーベルのようになり、ビームサーベルを持った一夏がオルコットさんに「特攻」と思える勢いで突撃を仕掛ける。オルコットさんは当然一夏を撃退しようとするが、一夏も彼女の射撃のクセをある程度見切っていたようでビームの弾幕を掻い潜って接近することに成功し、ビームサーベルで攻撃しようとした。

 

・しかしどうやら一夏のビームサーベルは俺の闇烏同様、発動している間中シールドエネルギーを大量に消費するらしく、ビームサーベルがオルコットさんに当たる寸前で一夏のシールドエネルギーがゼロになり試合終了。結果、模擬戦はオルコットさんの勝利。

 

 …………………………うん。

 

 何て言うか……こう言っては一夏とオルコットさんには悪いけど、ちょっと残念な試合だよな。

 

 途中までは一夏もオルコットさんもいい動きをしていて見応えの試合だったのに、だからこそ最後のエネルギー切れという負け方が残念でならない。

 

「織斑一夏……彼は自分の武装も確認していなかったのですか?」

 

 木虎が若干不機嫌そうに呟くが、これは俺を含めて全員が彼女と同じ気持ちだったため何も言わなかった。

 

 この模擬戦における一夏の敗けは、一夏があのビームサーベルの特性を理解していなかったところが大きいだろう。もし一夏がビームサーベルの特性を理解していたら模擬戦の結果も違っていたかもしれない。

 

 俺が見たところ一夏のビームサーベルはかなりの攻撃力がある武装のようだから、相手に当たる直前に発動させるという使い方をすれば大きな戦力になるし、刃の長さを調節することができれば「旋空弧月」のように遠距離斬撃も可能になるだろう。そう考えれば考えるほど一夏の無駄が多い戦い方が勿体無く思えて、木虎が不機嫌なのもこれが原因なのだと思う。

 

「まあ、これで全ての模擬戦が終わって一組のクラス代表者は空色人で決まりだな。おめでとう」

 

 俺が戦闘映像を見ながら「自分だったら一夏のビームサーベルをどの様に使うか」と考えていると嵐山先輩が話題を変えるように話しかけてきた。

 

 嵐山先輩の言う通り俺の戦績は二戦二勝。織斑先生は最も戦績が良かった者をクラス代表者にすると言っていたから、俺がクラス代表者になるのは間違いないだろう。

 

「そうですね。ありがとうございます、嵐山先輩。……それで嵐山隊の皆は今日、俺の部屋に泊まるのですか?」

 

「いや、俺達は明日から早くに広報の任務があってな。もうそろそろ基地に帰って任務の打ち合わせをしないといけないんだ。空色人の護衛だったら別の隊が来る予定だぞ」

 

「本当は空色人の部屋に止まってIS学園の美女達と楽しくおしゃべりをしたかったんだけどな」

 

 俺が礼を言ってから嵐山先輩に質問をすると、嵐山先輩がそれに答えてから賢な残念そうな顔で話す。

 

 そうか、嵐山隊はもう帰るのか。せっかく久しぶりに嵐山隊の皆とゆっくり話せると思ったのに残念だな……ん?

 

 嵐山隊が任務でもう帰る事を残念に思っていると、ピットの入口に織斑先生とオルコットさんが立っていた。

 

 ∞

 

「さて……今日はもう疲れたし早く休もうかな」

 

 織斑先生とオルコットさんとの話が終わり、基地に帰る嵐山隊の皆を見送った後、俺は自分の部屋の前に来ていた。

 

 そういえば嵐山隊の代わりの俺の護衛をしてくれるボーダー隊員はすでに部屋に来ているらしいけど、一体誰なんだろう? そう思いながら部屋のドアを開けると、部屋の中にいた人達が声をかけてきた。

 

「帰ったか」

 

「お帰りなさい」

 

「おう、お帰り」

 

「遅いよ。どこで道草食っていたのさ?」

 

 部屋の中で俺を待っていたのは、ボーダーでも精鋭であるA級部隊の一つ、風間隊の四人。

 

 風間隊の隊長の風間蒼也さん。

 

 風間隊の紅一点でオペレーター、三上歌歩先輩。

 

 そして風間隊の隊員である「ウッティー」こと歌川遼と、「きくっち」こと菊地原士郎だった。


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