インフィニット・トリガー   作:兵庫人

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第8話 勇気ある者と書いて勇者

 迅さんが俺の護衛をする為に部屋に来た次の日。俺と迅さんは朝食をとるために寮にある食堂に来ていた。

 

 すると先に食堂に来ていた女子達は俺と迅さんに強い視線を向けてきた。うん。本来は女子しかいないIS学園に世界に二人しかいない男性適合者の俺と、正体不明の男性である迅さんが現れたら注目されるよね。……あ~、目がチカチカしてきた。

 

「いやー、流石はIS学園。皆美人だねー。こんな大勢の美人達に注目されて羨ましいぞ、この色男」

 

 迅さんは笑顔で食堂を見渡すとからかうように俺の肩を叩いてきた。何だかこの台詞、前にも聞いたような気がするぞ?

 

「そう思えるのは迅さんだからですよ。俺はこんな大勢に見られたら落ち着きませんよ」

 

「おいおい、嵐山隊にいた頃は広報の仕事もしていただろ? まあ、いいか。それよりこの食堂、料理が全部タダって本当か?」

 

「そうですよ。昨日の昼もここで食べたけどタダでしたし」

 

 このIS学園では食事だけでなく授業料も全てタダで、それらは日本政府が代替わりしてくれている。その事を説明すると迅さんは驚いたように目を丸くした。

 

「それは凄いな。よし、タダだと分かったら遠慮はなしだ。早速食べようぜ」

 

「そうですね」

 

 俺と迅さんは食堂のおばちゃんの所に行くと料理を注文した。注文した料理は俺が焼飯と麻婆豆腐で、迅さんが味噌ラーメンと餃子だった。

 

「お前、朝からよく食うね?」

 

「迅さんもでしょ? それよりどこで食べようかな……?」

 

「おーい、空色人! 一緒に食べようぜ」

 

 迅さんに返事をしてからどこかに空いているテーブルがないか探していると、聞き覚えがある声が俺を呼んだ。声がした方を見るとそこにはクラスメートの女子と同じテーブルについている一夏の姿があった。

 

「一夏? お前、早いな? 確か自宅から通っているんだろ?」

 

「いや、それがお前と別れたすぐ後に山田先生と千冬姉……織斑先生がきてさ、俺も寮で暮らすように言われたんだよ」

 

 迅さんと一緒に一夏達のテーブルについて質問がすると、一夏は昨日の出来事を説明する。へえ、一夏も昨日から同じ寮にいたのか。

 

 昨日は迅さんと一緒にボーダー本部でやっていたB級のランク戦の映像を観ていたから気づかなかったな。

 

「ほうほう……。君がもう一人の男性適合者、織斑一夏君か。俺はボーダーの実力派エリート、迅悠一。ここにいる空色人とはボーダーの先輩後輩といった関係だ」

 

 迅さんの自己紹介に、過去にボーダーの入隊試験を受けてボーダーに強い憧れを持つ一夏が姿勢を正す。

 

「ぼ、ボーダー隊員!? お、俺は織斑一夏って言って、空色人とはクラスメートです。それでこっちが……」

 

「篠ノ之箒です。私も一夏と同じく四門空色人のクラスメートです。よろしくお願いします」

 

 一夏が自分の隣にいるクラスメートの女子、篠ノ之さんを紹介しようとするが、それより先に篠ノ之さんが自分から迅さんに挨拶をする。……ん? 篠ノ之って、もしかしてISの開発者の篠ノ之束さんの関係者か?

 

 そう考えていると篠ノ之さんが俺を見てきた。

 

「こうして個人で話すのは初めてだったな。篠ノ之箒だ。私のことは箒と呼んでほしい。……苗字で呼ばれるのはあまり好きではないのでな」

 

「そうか。じゃあ俺のことも空色人でいいぞ」

 

「分かった」

 

 篠ノ之さん、じゃなくて箒が小さく頷く。なんというかまるで侍のような凜とした空気を纏った女子だな。アレ? そういえば……。

 

「そういえば箒って昨日、休憩時間に一夏と教室を出ていなかったか? もしかして一夏が言っていた幼馴染って箒のことなのか?」

 

「そ、それは……」

 

「そうだぞ。俺と箒は幼馴染で、小四の終わりに箒が引っ越したんだけど、またここで再会したんだ」

 

 箒に質問すると彼女の代わりに一夏が答えてきた。小学生の頃に別れた幼馴染と再会ねぇ……。

 

「まるで漫画みたいな展開だな。これで寮の部屋が同じだったらなおヨシだな」

 

「えっ!? 何で知っているんですか?」

 

 俺達が話しているうちにラーメンと餃子を完食した迅さんがぼんち揚げをつまみながら言うと言うと一夏が驚いたように声を上げ、箒が顔を赤くした。……………え? マジで?

 

「……………え? マジで? 冗談で言ったのに本当にそうなの?」

 

 あまりに予想外だったのか迅さんが持っていたぼんち揚げを落としながらいうと一夏が頷く。

 

「ええ、そうなんですよ。実は……」

 

「いつまで食べている! 食事は迅速に、効率よくとれ!」

 

 一夏の言葉を遮って織斑先生の声が食堂に響き渡った。そう言えば織斑先生って、この寮の寮監でもあったっけ?

 

「急げよ! 遅刻したらグラウンド十周させ……ひゃっ!?」

 

 食堂にいる生徒全員をよく通る声で急かしていた織斑先生の口から奇妙な声が出た。何事かと織斑先生を見るとその横にはいつの間にか移動した迅さんの姿があった。

 

 そして迅さんの右手は織斑先生の腰、というか尻に伸びていて……って!? あの人もしかして織斑先生にセクハラしたのか!?

 

「き、貴様……迅か?」

 

 織斑先生が迅さんの名前を呼ぶ。え? あの二人って知り合いなの?

 

「お久しぶりです千冬さん。相変わらずお美し……ご!?」

 

「貴様ーーーーーーーーー!!」

 

 セクハラをしながら満面の笑みで挨拶をする迅さんを織斑先生が渾身のアッパーで天井近くまで吹き飛ばす。

 

 ……迅さん。織斑先生にセクハラをするだなんて貴方勇者だよ。勇気ある者と書いて勇者だよ。

 

 でもカッコ悪い勇者だよ、迅さん。

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