竹林の中にぽつんと落ちている一つの箱。
その箱は鉄で出来ており、大小のダイヤルが二つ。
金庫である。
だが奇妙なのは「有刺鉄線」でぐるぐると巻かれていること。
金庫は血などで赤黒く錆び付いており、とても不気味だ。
そんな金庫の前に一人の少女が。
「何これ?」
彼女は「因幡 てゐ」
この竹林の住人だ。
散歩中に偶々この金庫を発見したのだ。
「これは……金庫ってやつかな?」
幻想郷には金庫がほとんど無いため、金庫を知っている者は少ない。
だが、彼女は金目のものの知識は妙にある。
「確か、これってお金を入れるものだった筈……。
だとしたら中身があるかも!!」
そう思った彼女はすぐさまその金庫を持ち上げる。
ズシッ……
かなり重たい。
「結構、重いな〜。
音がしないあたり、中身はお札かな?」
その金庫は彼女の頭よりかなり大きい。
やや小柄な彼女にとってはかなりの大きさだ。
人の頭ぐらいすっぽり入ってしまう程大きい。
「う〜ん、開かないな〜。」
ガチャガチャと左右にダイヤルを回すが一向に開かない。
当然である。
金庫の番号の通りは何千何万とある。
あてずっぽうで当たるなどまず無理だ。
「こじ開けてみるかな。」
あてずっぽうじゃ開かないと思った彼女は力ずくでこじ開けるつもりだ。
彼女は近くに転がっていた大きな石を持ち上げる。
人の頭より一回り程大きな石だ。
普通の少女なら持ち上げるのは無理な重さだ。
だが彼女は人じゃない。
妖怪の一種なのだ。
人間より力があって当たり前なのだ。
そして、彼女は金庫の真上に石を構え、思い切り叩きつける。
「ゴァァァン!!」
金庫は重々しい音を立て、衝撃で一瞬僅かに跳ねたがビクともしない。
当てた石の方が砕けた。
鋼鉄。
ただの鉄ではない。
鉄より遥かに頑丈な鋼鉄製だ。
幻想郷に復旧している金属製品の殆どは鉄製。
鉄製はかなり昔に作られ、現在は殆ど無いため、幻想郷には多い。
だが鋼鉄は別だ。
鉄の2〜3倍の強度を持つ鋼鉄は技術が進歩して出来た代物だ。
現在でも多く使われている為、鋼鉄製のものは幻想郷には殆ど無いのだ。
一部では作っている所もあるらしいが。
彼女は鋼鉄を知らなかった。
「あれ〜?鉄ってこんなに硬かったっけ?」
もちろんただの鋼鉄ではない。
「焼き入れ」を施された鋼鉄だ。
焼き入れをすることで金属などは遥かに強度を増す。
金庫や刀のように頑丈さが取り柄のものなどによく行われるものだ。
「う〜ん、こじ開けるのも無理かな〜?」
彼女は悩んだ挙句にあることを思いつく。
「えーりんの薬で何とかならないかな?」
そう言うと彼女は金庫を抱え込み竹林の奥に消えてゆく。
「ゴトン」
無人になったその場にさっきと同じ金庫が落ちてくる。
一つ、二つとゴトゴトと落ちてくる。
持って行かれた金庫。
そして複数現れる金庫。
この金庫は一体!?
次回、異変か!?