ふと気がつくと見たことも無いところにいた。
金庫だけの身体になっている今、周りを見渡すことは出来ない。
彼は「ザ・キーパー」
精神の世界の人ならざる存在。
金庫で出来た頭を持つ異形の存在だ。
今、彼がいるのは竹林の中に建つ屋敷。
「永遠亭」の中にいる。
妙に薬品臭い。
嗅覚は無いのだが、なんとなく感じるのだ。
「ギシッ…ギシッ…ギシッ…」
扉の向こうから誰かが来る。
床は木製なのか、きしむ音がよく聞こえる。
「ガチャ」
誰か入って来た。
「これが貴女の言っていた金庫ね。」
「そうそう。何とか開けてよ。」
長い白髪に二色に分かれた服を着た女性。
彼女は「八意 永琳」
この永遠亭の医者だ。
もう一人は彼を運んで来た「てゐ」だ。
「見た所、鉄の一種みたいね。
酸でもあれば溶かして開けられそうね。」
彼女は酸を使って開けるつもりらしい。
彼にとってこの金庫は「本体」である。
つまり、金庫をこじ開けるということは彼にとっては、人間が頭蓋骨を無理矢理こじ開けられるのと同じようなものだ。
何としてでも防がなければいけない。
今すぐにでも身体を出現させて逃げたいが、相手は二人。
下手に動けば返り討ちにされる可能性がある。
「あら、此処には無いわね。
倉庫から取ってくるから大人しく待ってるのよてゐ。」
どうやら薬品を取りに行くらしい。
ラッキーだ。
今は相手は一人。
これなら何とかなりそうだ。
そう思い、彼は行動に移した。
「ゴトゴトッ。」
「ん?」
金庫がひとりでに揺れる。
てゐは気のせいだと思いつつも金庫を見つめる。
すると目を疑う光景を彼女は目にする。
金庫が浮き上がった。
「え?なに?」
困惑するてゐ。
そして、その直後。
視界がセピア色に染まり、コマ送りのように視界がかくつき、錆び付いた歯車を回す様な不快な金属音がなる。
「な、なに!?」
数秒程するとその奇妙な現象は収まるが、更に奇妙なものを目にする。
目の前にさっきの金庫を被った大男が立っているのだ。
左手に巨大な棘付きのハンマーを持ち。
右手には棘やフックの様なものが幾つも突き出した頭陀袋を持ち。
背中には妙な箱を背負い。
至る所に血シミが付いた肉屋の様な服装をしている。
彼が「ザ・キーパー」だ。
「な、な、ななななな!?」
驚きのあまり震えが止まらないてゐ。
そんな彼女にキーパーは歩み寄りハンマーを振り上げる。
殺す気だ。
彼は目に止まる者を殺しまわって生きてきたのだ。
彼に「殺さない理由」というものは無い。
まして、殺す理由も無い。
ただ、本能的に殺すのだ。
彼女にハンマーが降り下ろされんというその直後。
「バァン!!」
「一体何の音!?」
扉を勢いよく開け、現れたのは「鈴仙・優曇華院・イナバ」
さっきの「キーパーの出現音」を聞き、駆けつけて来たのだ。
「……!?」
「まずい。」と思ったキーパーは壁を蹴り破り、外に飛び出した。
2vs1では分が悪いからだ。
現状をあまり把握出来ていない彼には逃げた方が良いのだ。
キーパーは竹林の奥へと消えてゆく。
「鈴仙!!
よかった〜。」
「てゐ!!
一体何があったの!?さっきのは一体何なの!?」
二人が身の安全を確かめる中、永琳が帰ってきた。
「これは一体何の騒ぎかしら?」
彼女達にてゐはさっきのことを説明する。
「成る程ね。
これは調べてみた方がよさそうね。」
そう永琳は言うと自室に向かう。
「まぁ、あの竹林に一人で入っちゃったし平気かな。」
「如何かしら。
ほったらかしにするのはまずいと思うけど。
そう言うてゐに鈴仙は言う。
確かに迷いの竹林から案内人無しに出るなど普通の人間には無理だ。
だが、本当に大丈夫であろうか?
何とか人の姿に戻ったキーパー。
だが、迷いの竹林に一人で入ることに。
キーパーの運命や如何に!?
次回、あの方サイドに行くか!?