浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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第10話 カルマの時間②

◇渚視点

 

「印象と性格は一致するとは限らないし、寧ろ一致しない方が多い」

 

そう、カルマくんは正しい。僕は学真くんのことをあまり知らない。僕が思っているような人物じゃ無いかもしれない。

 

でも…そんな警戒するような人じゃないと思う。杉野とキャッチボールしたり…集会でも普通に話せたし…僕は、間違っていないと思う。

 

 

 

 

 

「ようカルマ。のんびりとお出かけかぁ?」

 

 

すると、僕等の前で不良たちが待ち構えていた。狙いはカルマくんらしい。

 

「え何?お兄さんたち、あの日以来顔を合わせないからてっきりビビって震えてたのかと思ってた」

 

…わざとらしい笑顔で、しかも妙な演技が合わせながら言い放つ。当然相手の人たちは怒り始める。カルマくん、こういうのはプロ並みに天才だ…

 

「ふっ…その減らず口も大概にしとけよ…前回お前にボコボコにされ《バキイ!》グボア!!てめぇ、俺がまだ話してる最ち《ドス!》ゴホ!?」

「何が言いたいの?早く言わないと決めゼリフ言い切る前にエンディング迎えるよ?」

 

不良の男が何か言おうとしてもカルマくんはその口を封じるように拳を繰り出す。流石…人の怒らせ方を知っているなぁ…

 

 

 

 

その時僕は、後ろから襲ってくる男に気づかなかった。

 

 

「…!渚くん、どいて‼︎」

 

カルマくんは直ぐさま僕を投げ飛ばし、その男が持つ凶器を腕で受けた。…痛くないのかな、アレ

 

「何?こんな下らない物を使い始めたの?漢の戦いが聞いて呆れるね」

 

その凶器は、鉄パイプだ。一体何処から持ってきたのか、と言いたいが、それを受けたカルマくんは気付いてなかった。もう片方の手に持つ怪しげなハンカチに…

 

 

「…!ぐ…これ…て……睡眠…薬……?」

 

口をハンカチで覆われ、カルマくんはそのまま倒れた。

 

「な……⁉︎」

「ハッ……手こずらせやがって…だがここまでだ……カルマ……」

 

男たちはカルマくんの腕を掴む。そう、連れて行く気だ。

 

「ま……待って!」

 

僕はその腕に掴んだ。その腕を離させるために…

 

「何だ?ガキ」

 

けど…僕の力じゃその腕を解かせることは出来なくて……逆に僕が投げ飛ばされた。

 

「痛い目見たくねぇなら大人しく去りな。俺らはテメェに構ってる暇ねぇんだからよ」

 

 

 

 

動けない。僕は、動くことが出来ない。

危ないのに、連れていかれるのに…

どうすれば良いのか分からなくて…

男たちがカルマくんを連れて行くのを見ている事しか出来なくて……

 

 

 

 

どうすればいいだろう。

こんなときに、僕は何の役にも立たない。

焦りと不安が、思考をさらに狂わせる気がする。

 

 

 

『今じゃ同じクラスメイト、一緒に頑張ろうぜ。アイツを殺す為に』

 

 

その時に思い浮かべたのは、やっぱり学真くんだった。

 

 

 

 

 

◇カルマ視点

 

 

《ドゴ!》

 

俺の腹に激痛が走る。まぁ、当たり前か。俺の身体は壁に縛られ身動きが取れない。つまり攻撃し放題だ。

 

あのハンカチを喰らったのは完全にミスだ。まさか複数人であの場に、それも後ろから付けられたのに気付けなかった。

 

 

 

「カルマも此処で終わりだなぁ。どうだ?流石のお前もビビって声出せねぇか、あぁん?」

 

俺の攻撃を続けて、1人の男が俺を誑かす。恐らくボス格だろう。学ランの色がそいつだけ違うし…

 

「何?今の脅し?てっきり吠えの真似事かと思ったよ。

 

てゆーかこんな事して満足するとか、やっぱりお前ら惨めだよね〜。正攻法で勝てないから卑怯な手で倒して勝者の座に泥酔するとか…

 

本当、哀れな幸せ者だね」

 

そいつの顔が気持ち悪かったんで挑発してみる。案の定乗ったみたいで顔に青筋が立っている。こういう奴、ていじり甲斐あるよね〜

 

俺の顔面に拳を入れたそいつは部下からバットを貰う。

 

「こんな状況でまだそんな事言う元気あんだなぁ…いいぜぇ…もっと痛ぶって、その口を利かせなくしてやる」

 

さてどうするか……この縄中々取れないし…冗談抜きでピンチ、てやつか……

 

 

 

 

 

 

《ドン!ガシャン!!》

 

 

鉄製の板が崩れた音、それがこの敷地内に響いて俺を含んだ奴らは音のした方…つまり、入り口を見た。

 

「頭のレベルが低いな。廃墟ビルなんてお前らみたいな奴らが集まりやすい場所だ。まして、そこに見張りなんておけば何かあるな、て素人目でも分かるぜ」

 

そいつの手には、中に誰も入れさせないように配置した見張りがボコボコで気絶している。

 

 

俺は、そいつの顔を知っていた。そいつは、最近E組に来たばかりの男、浅野 学真だった。

 

 

 

 

◇学真視点

 

…やはりと言うか此処にいたか。そう遠くに居ない筈だから渚がいた場所付近の廃ビルに来た。一応もう一手は打ってんだがな。そしたら入り口に見張りがいたんで確信になった。これはあれだ…「ビンゴ」て奴だ。

 

 

取り敢えず見張りをシメて、俺は扉を壊す。錆びついててボロボロだったからすぐ折れた。中にはやっぱり、大量の不良とそれに囲まれてるカルマがいた。

 

「何だテメェ…カルマの仲間か⁉︎調子こいてると痛い目見るぞテメェ」

 

お〜お〜、犬が吠えてるわ。そいつらはかなり怒ってるようだが…

 

悪いな、俺もブチ切れ寸前なんだ。

 

 

「それはこいつの台詞だぜ。クラスメイトを此処までボコボコにしやがって…仕返しとして……

 

愛でてやるよ、犬小屋で」

 

 

こういう奴らは挑発によくのる。自分を見下される事に苛立ちを感じる奴らだからな。

 

 

「舐めやがって……やっちまえ!!」

 

 

案の定のった奴らは一気に襲いかかる。…てかお前ボスだろ、テメェが来いよ。

 

 

だがまぁ、喧嘩で勝負をするとはな…

 

 

「くたばれ!!」

 

1番最初の男が鉄パイプを持って振りかぶる。だが遅すぎるな。コッチはバケモノの教官に鍛えられてんだよ。

 

 

「止まって見えるぜ!」

 

そのパイプを持つ手を逆に掴み、手首を捻る。喰らった事があるから分かるが…関節への一撃はかなり痛い。

 

「ぐ…あぁ!」

「そこ動くなよ」

「なん…?」

 

俺の言った意味が分からなかったのかそいつは動きを止めた。安心しろ、理解する必要はない。俺はそいつに体当たりを仕掛け、吹き飛ばす。その吹き飛ばした先が俺の方に突っ込んでくる大衆に突撃し、一斉に崩れた。まるで人がボーリングのピンのようだ。

 

「本当にレベル低いな。多対一なら囲むのが定石、一方向から一気に突っ込むんなら対処なんて容易だ」

「ぐ……こいつ……」

 

 

今のでボス格の奴以外は倒れた。まぁ今ので致命傷を負ったのは突き飛ばした奴だけだろうな。

 

「や…やれ!絶対殺せ!」

 

…いや此の期に及んでまだ動かねぇ気かよテメェ。そこは普通『下がれ。お前らじゃこいつは倒せねぇ』て言うところだろ。どんだけ動きたくねぇんだ意気地なしなボス。

 

 

ま、それを抜きにしても俺にばっか構ってたのはミスだったな。

 

 

 

《ガス!》

 

「が…あ!?」

 

 

急にボス格の奴が倒れた…て思ったんだろ。俺の前に立つ男たちはそいつのいた方を向く。

 

 

「え…?カルマ……!?」

 

 

そう、そいつをぶっ飛ばしたのはカルマだ。こいつらの考えてることは分かる。『どうやってあの縄を解いた!?』だろ。そりゃあな……

 

 

「あんなので俺を縛ったつもり?あんな緩いのいつでも解けたよ」

 

そうそう、さっきは捕まったフリをして本当は抜けれた…じゃねぇ!渚が解いたんだよ!俺が戦ってる間に裏に回って渚が解いてたんだよ!此処に来てカッコつけてんじゃねぇ!…てか渚は何処行った?

 

 

「それより…俺を此処まで痛めつけたんだ…苦痛しか感じない身体にしてやるよ…」

 

 

カルマの復活はこいつらにとってかなり嫌な展開だ。話を聞く限り正攻法で戦おうとしなかったから、正攻法で戦うことのリスクはかなり感じているんだろ。

 

「ひ…怯むな!落ち着いて…そうだ、数で押し切れ!」

 

危機的状況の中一生懸命考えたところ悪りぃが…それ敗北フラグだぜ。

 

 

《スパパパパパパパァン!!》

 

 

不良らの顔が一斉に横に回転する。軽くエグい。ま、マッハ20のビンタなんて喰らってるんだから当たり前か。

 

「漸くきたかよ、殺せんせー」

 

 

「遅くなって申し訳ありません。言われた通りの場所を探してましたので」

 

察しの良いやつなら分かるだろうが、さっきのビンタは殺せんせーだ。渚からの電話を受けて俺は殺せんせーに状況を伝え、俺が記憶している『不良の溜まり場スポット』を教えた。恐らく全部回ったんだろう。

 

 

「よくもウチの生徒を甚ぶってくれましたね。お礼としてたっぷりと手入れしてあげましょうヌルフフフフ」

 

 

…殺せんせーの怪しい笑い声と共に倒れた男どもが闇の中(隣の部屋)に引きずり込まれる。…同情はしてやる。

 

 

 

 

 

 

残されたのは俺と、カルマと…何もしなかったボス格の奴(あのタコ気づかなかった)。…何だろうな、この不穏な空気。

 

 

 

「…随分ボコボコにされたな」

「……まぁ、少し腹が立つ。こんな奴らに捕まったことも、お前に助けられたのも」

 

……うん、何でこいつ人の気を逆撫でらるんだよ。

 

「別に助けようと思った訳じゃない。渚に助けてと言われたからだ」

「……やっぱり渚くんか」

 

どうもカルマの目はモヤモヤしている。複雑なんだろ、色々と。助けられた恩はあるものの、借りを作ってしまった事に対する情けなさが合わさって…という感じか。

 

「それだけで十分だろ。大体クラスメイト、てだけで充分助ける理由になる。理由とか、建前とか、そんなのに縛られてたら…多分後悔する」

 

カルマは俺の方を向いている。多分、俺の口調に違和感を感じたんだろ。浅野家の奴が理由や建前を蔑ろにしてる事は思いもよらなかっただろうな。

 

 

それでも良いんだ。友情に、理由や建前を求めちゃいけない。

 

 

 

俺はそれで…1人殺してしまったから…

 

 

「意外だね。お前がクラスメイトだから助ける、て言う根拠もないこと言うなんて」

「何処に驚いてんだテメェ。何だっていいだろ」

 

 

ったく…だが、モヤモヤは消えた様だな。

 

 

「ま、そう言うのも偶にはいいか」

 

カルマの笑顔は、若干不気味な時があるが…此処まで清々しいこいつの笑顔は初めて見た。

 

 

 

 

「おい…てめぇら何俺をシカトしてくれてんだ」

 

あ、そいやこいついたな。さて、どうするか。

 

 

 

「カルマ君!持ってきたけど…」

 

ドア…あ、いや俺が壊したんだっけ…それがあった場所から渚が何やら持ってきた。…何あれ、ヤカン?

 

 

「うんサンキュー、ちゃんと沸騰してる?」

「う…うん、してるけど……どうするの?」

 

どうやらカルマが頼んだらしい。そりゃガス死んでないからヤカン沸かすのは訳ないだろうけど…何故?しかも空気が『シュッシュッ』てなってるからかなり熱いだろうけど…

 

「な…何を……」

 

「決まってんでしょ。これをお兄さんの服の中に入れるの」

 

 

 

 

……

………

…………

 

「「「ええ!!?」」」

 

カルマの発言が不穏すぎて3人の声がハモった。

 

 

 

 

「此処まで痛めつけられたんだから身体にじっくりと染み込ませないと気がすむ訳無いよね〜君以外あのタコに連れて行かれたし……

 

取り敢えず逃げられないように身体縛って…首元以外の服の出入り口はガムテープで塞いで…騒がれると厄介だから口も塞いで処置完了。

 

さてお兄さん、今こそ漢を見せる時だよ……」

 

 

《ドボドボドボドボ》

 

 

「ムゥーー!モガ!モガ!ンモガーーー!!」

 

 

 

……やっぱこいつとは仲良くなりたくねぇわ

 




転んでもタダで起きないカルマ君が好きだったりする。てなわけでオリストーリー終わりです。かなり苦しかったと思います。大変失礼しました。

次回『修学旅行の時間』
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