浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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詰め込み感半端ない感じになってしまった…それでは、どうぞ〜


第13話 修学旅行の時間③

◇三人称視点

 

 

 

「うひゃひゃひゃ‼︎チョロすぎんぞこいつら‼︎」

 

道路上で走る車。その中に茅野と神崎、そして不良らがいる。高校生が運転できる筈ないが、法律とか関係ないのだろう。

 

「言ったべ?普段計算ばっかしてるガキはよ、こういう力技にはまるっきり無力なのよ」

 

1人の男…リュウキは自慢気に語る。

 

「……ッ、犯罪ですよねコレ。男子達あんな目に遭わせといて」

 

対して茅野は怒っている。この男たちがやってるのは犯罪行為でしかない。だが、そんな事は男らには百も承知だ。

 

「人聞き悪ぃな〜。修学旅行なんてお互い退屈だろ?楽しくやろうって心遣いじゃん」

「な、まずはカラオケ行こーぜカラオケ」

「何で京都まで来てカラオケなのよ‼︎旅行の時間台無しじゃん‼︎」

「分かってねーな。その台無し感が良いんじゃんか」

 

リュウキの顔が歪む。よほど『台無し』に拘りがあるようだ。

 

「そっちの彼女なら分かるだろ」

 

そっちの彼女というのは神崎のほうだ。真面目な神崎にはそんな事分かりようがない、と思うのだが…

 

「どっかで見たことあったのよ。目ぼしい女は報告するよういつも友達(ツレ)に言っててよ」

 

そう言って携帯を取り出す。その画面には1枚の写真が写っている。

 

「去年の夏ごろの東京のゲーセン、これお前だろ?」

 

写真は神崎が写っていた。だが髪の色が染まり、服もドクロが描かれている。正に不良に近い女子であった。

 

「さらおうと計画したら逃がしちまった。ずいぶん入り浸ってたんだってなぁ。まさかあの椚ヶ丘の生徒とはね〜。でも俺にはわかるぜ。毛並みのいい奴等ほどよ。どこかで台無しになりたがってんだ。恥ずかしがる事ァねぇよ。楽しいぜ台無しは。堕ち方なら俺ら全部知ってる。これから夜まで、台無しの先生が何から何まで教えてやるよ」

 

 

◇学真視点

 

ちっ…今から茅野らを救おう、て時によ……とんだ邪魔が入りやがった。こいつら一体何なんだ?

 

「お前らさぁ…あいつらの何なの?俺たち忙しいから構ってる暇無いんだけど」

 

カルマが明らかに不機嫌そうな声で言っている。自分に一杯食らわせた奴に仕返ししたい一心だろうなと思われる。

 

「そうはいかねぇな。彼奴らとは手を組んでてねぇ。みすみす逃すわけにはいかんのよ」

 

相手は…高校よりも年上……大人か。厄介だな。こんな奴等に構ってたらあいつらを救えなくなっちまう。

 

「安心しなよ。女子どもは楽しく過ごすらしいからよ。君らは俺らが相手してやるよ」

 

だんだんとコッチに近づいてきてる。止むを得ねぇ…相手するしかねぇか。

 

 

 

 

 

 

「お前らぁ‼︎何してやがる!!」

 

 

 

 

 

……!?大声…?

 

 

 

 

 

「刑法第百六条、多衆で集合して暴行又は脅迫をしたものは騒乱の罪とし処断(省略)。これ以上何かしようってんなら…俺が貴様らをしょっぴくぜ?」

 

あれは……

 

 

 

 

「黒崎くん⁉︎」

 

 

黒崎 裕翔だ。なんでここに…?

 

「やれやれ、忠告しておいたのにろくすっぽ聞きもしねぇ奴がいるな。念を入れといて良かったぜ」

 

……俺のことかよ…ぐ、反論できん。

 

「なんだ、椚ヶ丘の奴か?法律までしっかり覚えてるなんて真面目だねぇ。でもよぉ、ガキが大人のマネをしてると痛い目みるぞ‼︎すっこめガキィ!!」

 

…!1人が黒崎に襲いかかる。不味い…?

 

 

 

 

 

《ドゴォ!!》

 

「ガハッ……!?」

 

 

倒れたのは黒崎ではなく襲いかかった奴の方だ。何が起こった…?

 

 

 

 

「大人のマネ……?それはテメェらだろ。図体だけデカくなる阿呆が、大人を語るなよ」

 

……相変わらず怖い。

 

 

 

 

「黒崎くん……」

「行けよ。クラスメイトが攫われたんだろ。此処は俺が始末しておく」

 

…状況把握もしてるようだ。確かにその方がよさそうだが。

 

「それよりも修学旅行は良いの?班と一緒にいない事を見ると別行動だよね」

 

そうだ、カルマの言う通り黒崎は単独で行動してる。ばれた時大変じゃないか?

 

「安心しろ。俺らの修学旅行は自由行動が基本なんだ。もちろんトラブルに合わないように防犯ブザーをもたせてる様だが…邪魔なんで置いていった」

「…何考えてんだよ」

 

…妙な所で自由が効いている。自由行動、て何だよ。

 

「さて質問は以上か?そろそろアッチも痺れ切らす様だが」

 

黒崎の言う通り、相手は今にも襲いかかってきそうだ。これ以上長話は出来ないか。

 

「……任せたぜ」

「おう」

 

此処は黒崎に一任して茅野らを追ったほうが確実だ。

 

「行くぜ……」

 

黒崎はカバンから何やら武器を取り出した。何やら棍棒の様だが…それを持ち男らに突っ込んだ。

 

 

 

「マヨネーズは本能寺に有りィィィ!!」

「どんな明智光秀!!?」

 

…やべ、突っ込んでしまった。落ち着け俺…

 

 

 

 

そのまま俺たちはその場を後にした。

 

 

 

 

 

◇三人称視点

 

人が全く集まらない場所にそびえ立つ建物。そこに茅野と神崎を拉致した不良たちが屯してる。女子2人はガムテープで縛られ、身動きができない。

 

「そういえばちょっと意外。さっきの写真、真面目な神崎さんもああいう時期あったんだね」

 

そんな中茅野がさっきの写真の話をした。いつもは真面目な神崎が、あのチャラけた服装をしてるのは意外に思っただろう。

 

「……うん、うちは父親が厳しくてね。良い学歴良い職業…良い肩書きばかり求めてくるの。

 

そんな肩書き生活から離れたくて、名門の制服も脱ぎたくて…知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでみたの。

 

…バカだよね。遊んだ結果得た肩書きは『エンドのE組』もう自分の居場所が分からないよ」

 

 

ここまで聞いて、茅野には神崎の気持ちが少し分かった。遊び呆けていれば居場所なんて訪れてくるはずも無い。

 

だが、堅苦しい生活…自由も遊びも無い、肩書きのみを求める生活が居場所とも思えない。自分のやりたい事、やって見たい事が出来ないなんて、居場所と言えるのだろうか。

 

そのジレンマが神崎を苦しめている、と茅野は感じた。

 

 

 

「簡単さ、俺らと同類(ナカマ)になりゃいいんだよ」

 

 

話を聞いていたのであろう、リュウキが座り込んで語る。

 

 

「俺らもよ、肩書きとか死ね!って主義でさ。エリートぶってる奴等を台無しにしてよ。なんてーか、自然体に戻してやる?みたいな

 

良いスーツ着てるサラリーマンには…女使って痴漢の罪を着せてやったし。勝ち組みてーな強そうな女には…こんな風にさらってよ。心と体に2度と消えない傷を刻んだり

 

俺らそういう教育(あそび)沢山してきたからよ。台無しの伝道師って呼んでくれよ」

 

 

愉快そうに話す。数々のエリートを地に落とした快感が、リュウキの原点。それゆえこの遊びが面白くて止められないのだろう。

 

 

「……さいってー」

 

 

あまりにも非道なリュウキらを貶すように茅野が呟く。その言葉は、リュウキを怒らせるのに充分すぎた。

 

 

《グァシ!!》

 

 

両手で茅野の首を絞め上げる。握力が強く、茅野が苦しめに呻く。

 

 

「何エリート気取りで見下してんだアァ⁉︎お前もすぐに同じレベルに落してやんよ」

 

 

気が済んだのか、茅野をソファに投げ捨てる。いや、気が済んだのではなく、これからの本番のためにしている様だが…

 

 

「いいか、今から俺ら10人ちょいを夜まで相手してもらうがな。宿舎に戻ったら涼しい顔でこう言え。『楽しくカラオケしてただけです』ってな。そうすりゃだ〜れも傷つかねぇ。

 

東京に戻ったらまたみんなで遊ぼうぜ。楽しい旅行の記念写真でも見ながら……ナァ」

 

 

《ギィッ……》

 

 

扉が開く音。誰かが建物の中に入り込んできた。

 

 

「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着だぜ」

 

 

リュウキはその扉を開けた人を見る。そこには……

 

 

 

 

 

顔が晴れ上がりまくった不良の男がいた。

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「修学旅行のしおり1243ページ、班員が何者かに拉致られた時の対処法。

 

犯人の手がかりが無い場合、まず会話の内容や訛りなどから地元のものかそうでないかを判断しましょう。

 

地元民ではなく更に学生服を着ていた場合→1244ページ

 

 

考えられるのは相手も修学旅行生で、旅先でオイタをする輩です」

 

 

 

ボコボコになった不良を投げ捨てて中に入ってきたのは、茅野らと同じ班のメンバーだった。

 

 

「みんな!」

「なっ…てめぇら……⁉︎」

 

 

 

◇学真視点

 

不良どもの後を追い、発見できた。いや〜一時はどうなるかと思ったね。

 

 

「なんでココが分かった…⁉︎」

 

 

なんでココが分かったか、て?まぁ、渚の続きの話を聞いてみろよ。

 

 

「土地勘のないその手の輩は、拉致した後だった遠くへは逃げない。近場で人目につかない場所を探すでしょう。その場合は→付録134へ

 

先生がマッハ20で下見した、拉致実行犯潜伏対策マップが役立つでしょう」

 

 

地図には殺せんせーが潜伏するであろうエリアに印が描かれてる。それを元にしらみつぶしに探してた、てな感じだ。前のカルマの時と一緒な。

 

 

「すごいなこの修学旅行のしおり!カンペキな拉致対策だ‼︎」

「いやー、やっぱ修学旅行のしおりは持っとくべきだわ」

 

ほんとほんと、ものすごく役に立つ。

 

 

 

「「「ねーよそんなしおり!!」」」

 

 

……うん、だと思う。

 

 

 

「…でどーすんの?お兄さんら。これだけの事してくれたんだ。あんた等の修学旅行はこの後全部入院だよ」

 

カルマがいよいよ怒りをモロに出した。いつも飄々とした表情をしてるが、こいつを怒らせるとかとんでもない事したなこいつら。

 

 

「……フン、中坊が粋がんな」

 

《どたどたどたどた》

 

 

……ん?外で誰かがいるが…?

 

 

 

 

「呼んどいたツレどもだ。これでこっちは10人…お前らには良い子ちゃんにはな…見たこともない不良どもだ」

 

 

 

ドアが開く。そこに現れたのは……

 

 

 

 

 

 

キリッとした制服とクルクルメガネをかけたボウズたち、そして……

 

「ふりょ……不良……え⁉︎」

「不良などいませんねぇ。先生が全員手入れしてしまったので」

「殺せんせー‼︎」

 

それに仕立てた張本人…じゃなかったえーと…張本蛸、殺せんせーが現れた。

 

「……なんだよその黒子みたいな顔隠しは」

「暴力沙汰ですので、この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです」

 

殺せんせーの弱点⑩ 世間体を気にする

 

 

「渚くんがしおりを持っていてくれたから……先生にも迅速に連絡出来たのです。この機会に全員ちゃんと持ちましょう」

 

殺せんせーは渚以外にしおりを渡す。……いや、暗記してるからいらないんだけど、てのはもう辞めるか。助かったのは事実だし。

 

 

「先公だとォ⁉︎ふざけんな‼︎ナメたカッコしやがって‼︎」

 

 

不良どもが殺せんせーに突っ込む。ま、あれが殺せんせー殺せるわけないか。あれは任せて、茅野らのテープを解くか。

 

 

「後ろ向いててくれよ。ハサミで切るから」

 

 

茅野と神崎さんを振り向かせ、ガムテープを切る。厳重に縛ったな。切りづらい。

 

 

「よし‼︎解けた…どうした、神崎さん」

 

とりあえず解いたはいいが…神崎さんが少し浮かない顔をしてる。

 

 

 

「ねぇさ……学真くんはさ……家が窮屈じゃなかった?」

 

へ?突然何を……?

 

「私のところ家が厳しくてね……窮屈で仕方なかった。それから逃れたくて遊んでいたら……いつの間にか、居場所が無くなってたの。

 

学真くんからすればどう思うかな?やっぱり……そんな事しようなんて思わないのかな?」

 

 

……大体分かった。詳しく聞いた訳じゃないが、恐らく家がうるさかったんだろ。そんで浅野家でありながらE組に落ちた俺と照らし合わせ、結局何が間違ってたのか聞いてみたい、ということか。

 

 

 

「あ〜……窮屈といえば窮屈だったな。俺も」

 

 

とりあえず俺が答えられる限りの事を話しておく。こんな事で救えるかどうかは分からんが……

 

 

「不自由という訳じゃない。親父の権力ゆえか、欲しいものは大体揃ってるし、何一つでき無かったかと言えば嘘になる。だがそれを持ち続ける為には力がいる。常に上へと上り詰める事は前提、出来ないならクズ当然だ。

 

勉強もやった、習い事もやった、酷い時には研究会にも参加させられた。何となく生きた心地はしなかった」

 

 

ふうっと溜息をつく。やっぱ嫌なことを思い出すと、辛い。

 

 

「だが、最近そうでは無くなった。恐らく…E組(ここ)に来てからだな」

「え……?」

「此処は家にはない自由がある。俺を抵抗なく誘ってくれる渚や、ケンカを共にしたカルマ、放課後キャッチボールで遊ぶ杉野……自分たちの好きなことに没頭できるクラスメートや個性溢れる先生、そんな異常なクラスにいたことで、俺は楽しくなってきたのさ。

 

 

ついでに一つ教えておくぜ、とある奴からの受け売りだがな。『エリートであるのが凄いんじゃねぇ、自分が自分らしくあるのが凄いんだ』てな」

 

 

……あー恥ずかし…つーかちゃんと話せてるのか俺……

 

 

「その通り!君たちは学校内で差別されていながらも、()()()()()()に実に前向きに取り組んでいる。それこそ、君たちが誇るべき事です。学校や学歴など関係ない。清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです」

「……‼︎」

 

殺せんせーがフォローを入れてくれた。良かった良かった。シケたらカッコ悪いなんてもんじゃない。気づけば不良たちは屈していた。

 

 

「さて、私の生徒たちよ。彼らを手入れしてあげましょう。修学旅行の基礎知識を、体に教えてあげるのです」

 

 

……あれ?俺と茅野と神崎さん以外のメンバーが不良たちの後ろに立っている。手に何か持って……てしおり?

 

 

 

《ゴッ‼︎》

 

……そのしおりを不良の後頭部に何のためらいも無く叩きつける。文字通り、頭に叩き込んだな…哀れ

 

 

 

 

 

とりあえず脱出した俺ら、何事もなく出れた。……いや、むしろ何も起きなかった。

 

 

「何かありましたか?神崎さん。酷い災難に遭ったので混乱しててもおかしくないのに。何か逆に、迷いが吹っ切れた顔をしてます」

 

 

そう、神崎さんが寧ろ笑顔になってる。心に傷を負ってもおかしくないのに……

 

 

 

「いえ、特に何も。ありがとうございました」

 

 

……まぁ、いいか。

 

 

 

「いえいえ、ヌルフフフ、それでは旅を続けますかねぇ」

 

 

困ったことに、俺らの暗殺対象(ターゲット)は、限りなく頼りになる先生だ。

 




原作通り助ける事が出来ました。さて、次回は色々な事が明らかになります。

そして、いよいよヒロイン予定の『あの人』が出ます。

次回、『修学旅行の時間④』
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