浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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今回でオリ回は終了、次回は原作通りに進みます。


第23話 事実と真実の時間

「両親を…3月に亡くしてる?」

 

八幡さんから聞いた事をもう一度復唱する。いや…不自然と思うやついるかもだけど、にわかには信じがたい。アイツが、両親を失ってるなんて…

 

「いや事実だ。これは実際にニュースに出てる。3月のとある日、父親が何者かに殺された。その1週間後、母親が病死している」

 

…なんか、とんでもねぇ波乱が起こってたようだ。ほぼ同時に2人とも死ぬなんて…

 

「母親が死んだと同じくらいか。アイツは俺に頭を下げて鍛えさせるよう頼みに来てた。『俺が力無いばかりに、途轍もない物を失った。これからは、それを失わないために、力が必要だ。頼む、俺を鍛えて下さい』とな。その時の目を見て、俺はその要望を断る事は出来なかった。そして奴を、この道場に入れさせた。

奴は恐ろしく才能があった。たった1ヶ月の間で腕を上げ、2ヶ月が経つ頃にはこの道場で奴に叶う者は居なかった。もう教える事はないと俺は奴を卒業させた。

奴ほどの素質があるものを、俺は今まで見た事はない。だからこそ…不可解に思うのだろう」

 

八幡さんの話を聞いて、不思議な気分になる。

アイツがこの道場に入るきっかけは、両親の死だという事になる。だが、『力無いばかりに、途轍もない物を失った』とはどういう事だろうか。

父親を守れなかったとか?…いや、いくら何でもそんな事で責任感じるのは妙だ。どういう経緯なのかは知らないが、父親が殺されるなんて誰も思わない。それに、それで力をつけたというのは不自然な気がする。

それに…八幡さんから聞いた話だけじゃ黒崎が何で殺せんせーや暗殺の事を知っていたのかが分からん。これじゃ黒崎について余り知れないか…

 

「終わりか?ならば休憩終了だ。特訓を再開するぞ!」

「あ…お、押忍」

 

八幡さんの声かけにより、休憩が終わった。モヤモヤな気持ちのまま、俺は練習に参加する。

 

 

 

 

「き…キツ…もう立つのさえ…」

「なっさけ無いなぁ…」

 

練習が終わり、フラッフラな状態で壁に寄りかかる。根性なしとか言うんじゃねぇ!ガチでキツイんだぞこれ!多川とかが可笑しいだけなんだよ!

 

「それじゃ、また明日。今日はゆっくり休めよ」

「お…おう、じゃあな」

 

多川が道場から出る。そんな訳で今中には俺と八幡さんだけがいる。

 

「やれやれ…1日目からこの体たらくとは…こりゃ当分の間はキッツイぞ」

「す…スミマセン…」

 

八幡さんからキツ目の評価を貰う。…ショックなんか受けてないからな。…受けてないからな!

 

「稽古の時も何の考えも心得も無しに突っ込むだけで叩かれ放題だ。悲惨だったろう、今回振り返って」

 

…何とも言えない。全くもってその通りです以外に思いつかない。今日なんか、1年生と戦ってる時でさえボロンチョンに叩かれた。

…畜生。強くなるためにここに来たのに、これじゃ何の意味も無く過ごす結果になってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……悔しい。

 

 

 

 

 

 

 

「全く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伸び代しか無いな!お前は」

 

 

 

…………え…?

 

 

「…八幡…さん?」

「何すっとぼけた顔をしてやがる。最初はな、誰だって何をして良いか分かんなくて無我夢中になるんだ。

ここの時点で大半は諦める。何も出来ない、何の力も無い。そんな現実を叩きつけられるだけで意欲を無くす奴ばかりだ。

最初っから力に恵まれてる奴なんかいねぇよ。今回テメェがボロボロだったのは、決してお前に才能が無いからじゃねぇ。寧ろ逆だ。あれだけ叩かれても、決して諦めずに挑んだお前は、十分素質がある。

その原因はわからんが…お前の覚悟が本物だとは分かった。もしお前が本当に強くなりたいなら、これからもしぶとく挑み続けろ。

お前が初の勝利を身につける時…お前の敗北の回数は数え切れなくなるだろう。だがそれで良い。1回勝利をつかむ事が出来たなら…数多の敗北も、立派な勲章だ」

 

 

 

 

 

 

 

…子供の頃から、俺は途轍も無い家に育った。家の方針は強者、そして支配する側。そんな家にとって、俺は落ちこぼれでしか無かった。何においても、俺には誇れるものが無かった。けど…

 

 

 

 

くそっ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しいじゃねぇか…

 

 

 

 

 

 

そうやって、俺に素質があるなんて言ってくれて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!ありがとうございました!」

 

感激のあまり、泣きそうになるのを堪え、その代わりに大声で感謝の言葉を言った。あまりにも大きいとは思うが…正直、これでも足りないくらいだ。

 

 

「…明日からも、頑張れよ」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、家に帰っている。当然、夜道だから暗い。急いで帰らねぇとな。

 

それにしても…黒崎があの道場にね…

知った時は驚いたが、まぁそれなりに納得した。だとすれば、修学旅行先の京都で、アレだけの男を倒したその実力には納得がつく。

しかし、あいつに関しては謎だらけだ。殺せんせーを知ってたことも、暗殺を知ってたことも…っていうか、本校舎にいながら、E組を差別扱いしないのも変な話だよな。いや、俺らにとっちゃ嬉しい事なんだけどよ。本校舎でそれをやるって事は敵を作るって事になるだろうに…

 

「そういえば、椚ヶ丘中学校に行くための金はどうやって稼いでんだ?」

 

本校舎とか行ってる内に不思議に思ってたんだが…椚ヶ丘は一応私立、学費は存在するんだが…稼ぎ手が居ないのにどうやって確保してんだろうか?

 

「…黒崎はそんな事話しそうに無いか」

 

一瞬黒崎に聞いてみようかと思ったが、直ぐに諦める。だってあの黒崎だ。そんなプライバシーの事なんざ言うはずもねぇだろ。ま、深く考えなくても良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

『黒崎って、黒崎 裕翔さんですか?』

 

 

 

 

 

 

 

……へ?

 

 

なんか聞こえた気が…

 

 

 

 

 

 

 

辺りを見渡す。だが周りに誰もいねぇ。そりゃそうだろ。夜でこんな通りに人なんかいるわけねぇし。…うん

 

 

 

 

 

あれーーーー!?

 

 

え…じゃあ一体今の声は何?空耳?空耳かな?空耳だよね?うん、今日の特訓で疲れすぎたから幻聴並みの空耳が聞こえたんだよ。…の割にはハッキリとした空耳だな。

 

『学真さん、ここですよ、ここ。携帯の画面を開いて下さい』

 

…へ?携帯の画面?ってかこの声聞き覚えが…

 

 

 

俺は…携帯を取り出して開く。

 

 

 

 

 

 

『お邪魔してます』

 

…………

 

「何だ律か…ってか何で俺の携帯の中に入ってんだ?」

 

携帯の画面には律が写ってた。お邪魔してますって…

 

 

『皆さんとの情報共有を円滑にするため、携帯に私のデータをダウンロードしてみました。モバイル律とお呼び下さい』

 

…こいつも大概何でもアリだな。

 

 

「…それで、どうしたんだ?」

『はい、椚ヶ丘中学校3年D組、加えて椚ヶ丘中学校の風紀委員長の黒崎裕翔さんの事ですが…』

 

…あいつ風紀委員長だったのか?知らなかった…生徒会紙見れば一発で覚えるんだが、見る機会もないし、あったとしても面倒だから見ない。

 

『恐らくですが、彼の財源の確保先について、その可能性がある情報をキャッチしました』

「…へ!?」

 

な…なんだってーーーー!?って言いたかったけど夜中で周りに迷惑掛けたく無いので『へ!?』で留める。

てかこの娘本当に何でも出来るな。頼んでも無いのに見事にやってのけた。…マジパネェ。

 

『ネットワークの中で極秘サイトがあるんです。利用者は、警察の人と…1人の男性のみ。その名は…犯罪処罰委員会』

 

すると携帯の画面が変わりだした。一番上に『犯罪処罰委員会』と書いてあり、その下は、掲示板がある…だが、詳しくは見れない。白い枠に『関係者以外は見れません』とあるだけだ。

 

『この掲示板の内容を見るためには、暗号が必要となります。そしてその暗号を持ってる人は、警察のトップの人たち、そしてたった1人の人物です』

「それが…黒崎?」

『断定は出来ませんが、恐らくは。数時間前、梟仮面と言う暴力集団が壊滅したと情報があります。そして、それが黒崎裕翔さんであると聞きました』

「…誰に?」

『烏間先生です』

 

…烏間先生が何でここで?とは思ったが、そういえば以前に俺が『E組以外の生徒が暗殺のことを知る機会ってありますか?』って聞いたのを思い出した。ひょっとすると、あの人も別に調べてる可能性がある。そして、活動中の黒崎を見かけた、というとこか。

 

『犯罪処罰委員会の仕組みは、烏間先生からある程度聞きました。民間の人が、警察の方に被害届を出すと、その警察の人がこの掲示板にその内容を投稿、その後黒崎さんがその依頼を完遂し、警察の方から契約金を渡されるという仕組みです』

 

…なるほど、そうやって金を手に入れてるという訳か。暴力団を対処した事に対しての契約金、相当な金額のはずだ。

だが…そんな事を堂々として良い訳が無いだろうとは思う。だってそれって『警察の代わりに一般の人に対処に行かせる』ってことだろ?それって警察の信用を大いに落とす行為だ。公にはなって無いはず。

恐らくは…警察の中でもごく一部の奴にしか知らないんだと思う。誰かがこれについて通じるものがいて、他にこんな事を知ってるのは、せいぜい椚ヶ丘にいる警察の人のみ。それぐらいとんでもないものだ。…どうやってこれを可能にしたんだろうな。

 

「それにしても…スゲェな律は。何でも調べれるなんてな」

 

それはそれとしても律の性能はスゲェと思う。だってあれだぜ?ネット上の大量の情報から必要な情報を探してくるんだ。いやもともと人間じゃねぇけど…なんだろうな、そう思ってしまう。

 

『全部知ってるという訳ではありません。私も全ての情報を所有するのは難しいので、調査の依頼が来た時検索します』

 

あ…そうか。コンピューターだって万能じゃねぇ。データはネット上にあってそれをコンピューターは必要な情報を取り出すんだった。コンピューターが覚えられるのは過去に調べた情報のみ、調べてない情報まで知ってると言うのは無理があるか。

恐らくこの『犯罪処罰委員会』は…烏間先生に依頼されて調べたんだろう。だから知ってたという訳だ。それで黒崎の事に悩んでいる俺に話しただけのことだ。

万能そうに見えて実は万能じゃ無い、本当に人間らしいな。だから親近感があるんだろう。俺たちだって何でもかんでも知ってる訳じゃなくて、知ってるのはあくまで今まで学んだ内容…即ち過去に集めたデータであって…

 

 

 

 

過去に調べたデータ…

 

 

 

 

 

 

過去…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「律…ひょっとして、今年の4月の…」

 

 

 

 

 

 

 

 

『…はい、皆さんとの協調のために、椚ヶ丘中学校のデータを調査してきた時に拝見しました。日沢 榛名さんと、如月 涼介さんと…学真さんが起こした事件について』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…やっぱり

 

 

 

ひょっとしてとは思ったが、知ってたか…

 

 

「律、その事はみんなには…」

『はい、黙秘します。どのような人でも知られたく無い事がある事も、分かってますから』

 

 

 

やっぱり優秀だ。こういうの、人によっては面白がって広めるかもしれないしな。

 

でも…

 

 

 

「律…どう、思った…?」

 

『どうとも言えません。データにあるのは事実であって真実ではありませんから。一般的には悪に見えますが、学真さんと関わって、私には、学真さんがそんな酷い人とは言えません』

 

 

 

 

それは良かった。本当に。

 

 

 

 

 

だって…そんな事を知られたら…

 

 

 

 

 

 

 

今度こそ、俺はみんなに、拒絶されるかもしれないから…

 




『犯罪処罰委員会』という捻りもない設定ですが、黒崎くんはそれを用いて悪党の処罰等をして財源を確保してます。彼がどうしてそうまでしないと行けなくなったかは後ほど(何時になるかは不明ですが)載せます。

また、学真くんの方も謎設定が出てきましたね。彼の心に潜む闇とは何なのでしょうか?

次回『イトナの時間』
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