浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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オリジナル話は今回で終わりになります。最初は6話のつもりでしたが、少し詰めたら完結できました。
なので少し詰め込みすぎかつ展開が速すぎかもしれません。


第36話 目覚めの時間

あれから何分…いや、何時間経っただろうか。寝ている時は時間の感覚が掴めない。まぁ、当たり前の事だが。

とにかく長い間眠っていた筈だ。そしてようやく目覚めた。目を開けると見慣れた天井が見える。つーか見慣れたってレベルでは無い。その天井は、俺の家の寝室のそれだ。

俺は布団の上で寝かされており、掛け布団をかけられている。だが布団に入った覚えなんて無いし、そもそも家に帰った覚えがない。

記憶を整理してみよう。俺はデパートに居たはずだ。デパートに矢田がいて、襲われそうになったのを見かけて、俺が矢田をその場から逃した。最初は時間稼ぎのつもりだったが、金宮の言葉にプチンと来て、それこそブッ殺そうかと言わんばかりに金宮に迫って行った。

…ここまでハッキリと覚えている。その後の記憶がない。…てことは、その後気を失ったか。そして誰かが俺をこの場に運んで来たのか?それが出来るのは…殺せんせーか?矢田に呼んでくれと頼んだ気がするし。

ここまで考えた時に、漸く気づいた。やってしまったと。おい、遅いとか言うんじゃねぇ。

()()()と同じだ。誰かの言ってる事にカチンと来て、怒りのままに、それこそ乱暴に暴力を振るってしまう。そして後になってとんでもない事になってしまう。

あそこで怒ったことが間違ってたとは思わねぇ。金宮の言ってる事が間違ってると思ってる。ただ…後先考えないで手を出してしまうクセが治ってねぇ。

暴力を振るってクラスメイトを逆に怖がらせてどうするんだ。先生に迷惑をかけてどうするんだ。自分の価値を下げてどうするんだ。

バカじゃねぇのか、と自嘲気味に笑う。するとリビングで何やら話し声がするのが聞こえた。俺はリビングに行くために扉を開けた。

 

 

 

◇三人称視点

 

学真を部屋に上げて暫し、学真が目覚めるのを渚、カルマ、矢田は待っていた。彼に聞きたいことが山ほどあるし、何より彼の無事を確認しない限り、そのまま帰ることは出来ない。だから待っているのだ。

だが1人、矢田は落ち着いて待つことが出来なかった。何やら姿勢を正したりキョロキョロしたり、とにかくぎこちない。

 

「や、矢田さん…大丈夫?」

「う、うん!?ダイジョウブよ、渚クン!」

「…どこが?」

 

渚に大丈夫かと心配をかけられ、なんとか平静を装おうとしているが、全く出来ていない。ビッチ先生の演技指導が、これっぽっちも活かされてなかった。

 

「…やっぱりビックリするよね。学真くんの部屋かなり広いし」

「…うん…思ったより広くて、ビックリしちゃった…」

 

渚は学真の部屋が余りにも広すぎて驚いていると思っているようだ。渚とカルマは以前彼の部屋に来たことがあるが、矢田は今回で初めて来るのだ。となれば、驚くのも無理はないと思った。

 

 

 

「いやいや、学真の部屋が広いからじゃなくて、学真の部屋だからでしょ?」

 

 

もう1人の赤髪悪魔はそう思わなかったようだが。

 

「か、カルマくん!?どういう…」

「おっや〜?隠さなくて良いじゃん。最近矢田さん、学真の様子をたびたび伺っているでしょ?」

「!?!?」

 

カルマの言葉を聞いて、矢田の顔の色が赤くなっていく。倉橋に、最近様子が可笑しいと言われたのだが、カルマには学真の事を気にしていることまで見抜かれていたのである。しかもカルマから取り出された携帯電話の画面には、学真の様子を見ている矢田の姿を撮られていた。

 

「そんな学真の家だもんね。そりゃ気になるのも無理ないよ。何なら物色してみる?アイツの使ってるものはかなり高価なものばかりだよ」

「…!そ、そんな事…」

「それとも直接アイツに手を出す?アイツいま無防備だから、ツバつけ放題だよ」

「…ッッッッ〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

耳元に囁かれる正に悪魔の声に、矢田は顔どころか身体全体が赤色になっていた。口をパクパクと動かしているようだが、声が全く出せてない。

 

 

 

 

 

「矢田に変な事を吹き込むな、カルマ」

 

 

そんなカルマに制止の声かけをしたのは、先ほどまで寝ていた学真だった。

 

 

 

 

 

 

◇学真視点

 

 

扉越しに声を聞くと、カルマが矢田に物色してみないかとか言ってやがる。あの野郎、矢田になんて事を吹きかけてやがんだ。『無防備』とか『ツバつけ』とか訳わからない言葉が聞こえるが、矢田をお前みたいな奴にしてたまるか。

 

「矢田に変な事を吹き込むな、カルマ」

 

扉を開けて、カルマに話しかける。俺の姿を見て、渚は安心そうにしていて、カルマはつまらなさそうに舌打ちをした。ふざけんじゃねぇ。

矢田は、俺の顔を見た瞬間、サッと顔を背けた。俯くようにしている。…まぁ無理もない。金宮に襲われかけた挙句俺の暴行を目の当たりにしたんだ。コイツにはちょっとダメージが大きいだろう。俺は深く追求しない事にした。

…なんか『ダメだコイツ』と言わんばかりの視線を感じるんだがどう言う事だ?

 

「…学真くん」

 

渚が声をかける。どこか不安と…疑問が含まれている。まぁ…そうなるわな。あんなの見れば疑問だらけになる。

 

「…分かってる。お前らの気持ちも。けど悪い。先に俺から良いか?」

 

別にそれを聞くことは構わなかった。だからコイツらの質問は聞くつもりだ。だがその前に、俺はやっておきたい事がある。

その場にいた3人が、大丈夫だという答えが返ってきた。渚と矢田なら気にしないだろうし、カルマはどっちでも良かったのだろう。とにかく許しが得られたなら、直ぐに行動に出る。

俺は姿勢を正し、上半身を前に倒した。それも恐らく90度…ぐらいはいってると信じたい。

この時点で、俺が何をしているのか分かっただろう。いわゆる、頭を下げるという奴だ。

 

「すまない。お前らに迷惑をかけた。あんな暴力を振るって、お前らに心配どころか不安を感じさせてしまった。お前らだけじゃない。あの場で他の奴らも来ていた筈だ。誰かが俺を止めようとしている声が耳に入っていたが、その時の俺は聞く耳を持たなかった」

 

俺が言ったのは、謝罪の言葉だ。突然謝りだして驚いている奴もいたが、俺はどうしても謝りたかった。

クラスメイトが暴力を振るっている姿なんて、あまり見たい物ではないだろう。今回の事を通して、俺の事を怖がらせてしまったかもしれない。

特に矢田には申し訳ない。矢田はそういう荒れた行為が苦手だ。直接言われたわけじゃねぇが、金宮と俺が話している時に怖がっていたのが分かった。矢田の性格を考えれば、恐怖にしか見えなかっただろう。

 

「本当に、申し訳ない」

 

そう言い切って、口を閉じた。つい先日にみんなの輪に入れたかもしれないのに、今回でまた距離を置かれるかもしれない。

距離を置かれてもしょうがない。親父が理事長だったからという理由じゃなく、どう見たって俺の自業自得だ。生意気かもしれないが、これで嫌われても構わないと覚悟を決めている。

 

 

 

 

 

「…ううん、大丈夫。怖かったのは確かだけど、学真くんはわたしやみんなの為に怒ってくれたんだから、気にしてないよ。

寧ろお礼を言わせて。弟の事を…気にしてくれてありがとう」

 

矢田からそう言われた。良かった。許してくれた。前から分かってはいるが、矢田は優しい奴だ。弟の心配をしたり、俺の事を気遣ってくれたり。

 

「そうか…良かった。俺の方こそ、ありがとな。正直、嫌われるかと思ってたんだ」

 

安心した気持ちのまま、俺は話した。安堵した俺の気持ちが、周りから見たら明らかに分かるだろう。さっきまでガチガチになってた気がするし。

 

「ううん、嫌ったりはしないよ。むしろ…」

 

俺の言葉に返そうとするが、何故か矢田はその話を止めた。なんか、おもわずとんでもない事を言おうとしていたみたいな顔になっているが…

 

「…矢田さん、どうしたの?」

 

俺と同じ事を思ったのだろう。渚が矢田に聞いた。なぜかは知らないが渚は人の感情の変化に敏感だし。

それよりも後ろの赤い悪魔が気になる。なんで悪魔のツノと尻尾が見えるんだ?

 

「…や、優しい人だなと思ってさ。弟のことなんて気にしてた人はいないから」

 

渚の質問に答える形で矢田は話した。

優しい人、ねぇ…なんか、日沢もそんな事言ってたな。弱い人を思いやれるって。

 

優しいと言われることは嬉しいけど、俺から見れば、本当に優しいのは…

 

 

 

 

 

 

「荒れていないか心配でしたが、余計な心配みたいですね」

 

すると、いつの間にか別の人…いやタコの声が聞こえた。やっぱり来ていたか。

 

「殺せんせー!」

「片付けはあらかた終わりましたので、こちらの様子を見に来ました。学真くんがいつも通りの様子で何よりです」

 

どうやら殺せんせーは俺がしでかした事の後始末をしてくれたらしい。しかも俺の事を心配してくれていた。本当、ありがたいよな。

 

「ありがとう、殺せんせー。とんでもない迷惑をかけて」

「いえいえ、生徒の面倒を見るのが役目ですから。どれだけ迷惑をかけても大丈夫ですよ」

 

形だけでも礼を言っておく。礼を言っとかないと気が済まないからだ。毎度のことながら、殺せんせーは本当に良い先生だよな。迷惑をかけても構わないとか…本校舎の先生なら絶対に言わない台詞だと思う。

 

「それから、他の皆さんも到着しました。顔を合わせておいてください」

 

どうやら、他の奴らも来たみたいだ。殺せんせーの言う通り、顔を合わせた方が良いだろう。俺は玄関に行き、扉を開けた。

扉を開けると、磯貝などのクラスメイトが来ていた。意外にも多い。こんだけの友達に、迷惑をかけてしまったんだな。

とりあえず俺は、迷惑をかけてごめんと謝った。クラスのみんなは別に良いよと言ってくれた。本当、E組は良い奴らばかりだよな。

 

ふと、1人の少女に気がついた。

 

「…そいや倉橋。さっきから思ったんだが、その子は誰だ?」

 

そう、倉橋の隣に1人の女の子がいる。あのデパートでもそうだったけど、倉橋と一緒にその子がいた。さっきは金宮から逃がすのに必死だったから気にしてなかったが、今のうちに聞いておくことにした。

 

「あ、優里香ちゃんと言ってね。さっきまで一緒に買い物してたんだ。1人で買い物してたみたいだから、お手伝いする事になったの」

 

…なるほど、偶然出会ったということか。見た目小学校…二年生ぐらいか。その歳で1人で買い物に来るとは、正直かなり凄いな。

 

「そうか。ごめんな、面倒な事に巻き込んでしまって」

「大丈夫、お兄ちゃんは気にしなくて良いよ」

 

しかもかなり良い子だ。結構躾されて来たんだろうな。服も髪もかなり真面目そうな感じだし。

 

「あれ?優里香ちゃん?」

 

すると、1人の男子の声が聞こえた。しかも俺の後ろから。何やら驚いているようだが。

 

「あ、渚!久しぶり!ひょっとしてこのお兄ちゃんたち、渚のお友だちなの?」

 

声をかけたのは渚のようで…待て。なんで優里香が渚の事を知ってるんだ?

 

「…渚…お前、コイツと知り合いか?」

「あ、うん…正確には、この子の兄さんの方を知ってるんだけど」

 

渚の話を聞く限り、渚は優里香のお兄ちゃんの事を知ってるみたいだ。

 

「ところで、さっきから思ったんだけど、お兄ちゃんが浅野 学真って人?」

 

今度は優里香が俺に聞いてきたが…なんで俺のフルネームを知ってるんだ?

 

「…そうだけど、なんで知ってるんだ?」

「よくお兄ちゃんが話をするから」

 

お兄ちゃんから、俺の話…?

 

 

 

 

渚の知り合いで…俺を知ってるやつって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、優里香ちゃん。上の名前はなんて言うんだ?」

「上の…?姓ってこと?」

「…そうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒崎だよ。わたし、黒崎(くろざき) 優里香(ゆりか)って言うの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ウソだろ…

 

 

 

 

 

黒崎の…

 

 

 

 

 

 

妹………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ!?おま…黒崎の妹なの!?あの、堅物の!!?」

「うん。堅物お兄ちゃんの妹だよ」

 

 

マジで!?アイツ妹いたの!?アイツ並みの堅苦しさ感じねぇから分からんかったけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆三人称視点

 

 

黒崎 優里香は、兄として黒崎 裕翔がいる。かなりの堅物で、躾のことばかりでうるさいが、とても頼りになる兄だ。

そんな兄が、自分の事を話すのは珍しい。するとしても、1,2年生の頃に一緒にいることが多かった渚やカルマの話だったが、別の人の話が出た時には、少し驚いた記憶が彼女にあった。

 

「かなり良い奴がいる。ソイツは浅野 学真って言うが、俺らの中学の理事長の息子なんだ」

「理事長…?」

「簡単に言えば学校で1番偉い奴だ。ソイツの息子なのに、E組に堕ちた事で周りからはかなり酷い目を向けられている。

ある時直接会ってみたが、思ってたよりも目標をしっかりと見据えていて、下手な奴らより優れている。

ひょっとすれば、1学期の間に、とんでもねぇ事をするかもしれねぇ」

 

珍しく他人に肩入れしながらマヨネーズがタップリと入った丼を食べる兄を見て、少し浅野学真に興味が湧いた。

 

 

◇学真視点

 

「お兄ちゃんが他人の事を褒めることなんて珍しいから、少し学真さんに会ってみたかったんだけど、会ってみて納得したよ。あんな窮地で友達を助けれるって凄いなと思った。お兄ちゃんがあそこまで褒めるのも納得するよ」

 

…そうか。アイツ、そんな事言ってたのか。正直、誰かを貶すことは無いが、褒めるような事もない奴だと思ってた。そんな奴にそう言われると、少し嬉しいな。

 

「なぁ、黒崎って誰だ?」

「えっとな…ほら、球技大会で」

「あ、そっか…」

 

その様子に、他の生徒が不思議に思ったのだろう。前原が黒崎って誰なのかを聞いてきた。すると磯貝が説明したところで前原は察した。男子なら()()野球を見てるはずだし。

 

「さて皆さん。学真くんの無事は確認できました。もう時間も遅いです。早めに家に帰りましょう」

 

その後、殺せんせーがみんなに帰るように言った。言われてみれば、もう直ぐ夜になる頃だ。

殺せんせーに言われた通り、みんなは自分の家に帰っていった。

 

 

◇三人称視点

 

先ほど学真たちがいたデパートのスタッフルームで、パン!と音がした。そこでは、先ほど矢田に襲いかかっていた金宮が殴られていた。金宮を殴ったのは、白い髪をオシャレに整えている男性だった。

 

「バカ息子が。お前が手を出したのが、誰だと思ってやがる。お前らのとこの理事長だぞ。万が一にもこの事で責められたら、どうするんだ。それに、店内で騒ぎが起これば、お客に悪印象を与えてしまう。これで客数が減る事だってあり得るんだぜ。」

 

その男は、金宮の父親だった。彼は息子がデパート内でしでかした事を知っており、加えて学真が椚ヶ丘中学校の理事長の息子である事も知っていた。

このスタッフルームに息子を連れてきて、説教をしていた。デパートの経営者として、客数を減らす事はあまり得策とは言えない。そんな事を、まして自分の我儘で引き起こした息子を叱っていたのだ。

 

「まぁ…これはお前だけのせいじゃない。いままでお前を放置してきた俺にも責任がある。だから、取るべき責任はしっかり取るぜ」

 

そう言って説教を終わらせた。と言うのも、息子は学真にかなり追い詰められて、今のビンタだけで気絶してしまったので、父親の話を聞ける雰囲気では無かったのである。

男は、側の機械を操り、モニターを写した。そこには、自分の息子を追い詰めていた学真の姿だ。それを見て、男は顔を顰める。

 

「相変わらず…お前の息子も化け物だよな。學峯」

 

 

 

 

 

 

「もう7月だ。3月までに奴を殺せる手段は無いのか!?日本政府は手をこまねくばかりだと言われてるぞ!」

 

日本政府の会議で、緊迫した雰囲気が漂う。内容は、殺せんせーの暗殺についてだ。7月になりながら、未だに暗殺の成果が上がらない様子に焦っている様子なのだろう。

 

「総理!それについては彼に計画がございます。我ら情報部の隠し球です」

 

すると、1人の男を連れて情報部の男が言った。

 

「ほう…期待していいのかね」

 

周りの人らはその男を期待の目で見ているが、その男は資料にある1人の男を睨んでいるように見ていた。

 

 

(…烏間 惟臣!)

 

 

 




学真くんが意外と鈍感である。というより設定的には自分の事を好きであるという考えが思いつかないという事です。原作の渚くんと同じような感じかな?

次回は、暗殺教室を知っている人なら分かる、あのクソ野郎の登場です。

次回『新任教師の時間』
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