いまこの学校では、全生徒に注目されている対決がある。A組とE組の期末対決。対決は良い。自主性を大きく育むきっかけになる。
この対決を受けて、期末テストは難問ばかりを出している。生半端な勉強では到底解けない物に仕上がった。
それは『問題』ではなく『問スター』と言い表わされる生物だ。
採点基準は公正明大、これで勝敗はハッキリと分かれる。この対決の結末は、今後に大きく影響されると言っても良い。A組もE組も、勝利するために動いている。
だが…1人だけこの対決に参加しない生徒がいる。
◇学真視点
〜英語〜
「うおおおお!!」
あらゆる怪物(問題)を撃破(解答)しながら次から次に新しい怪物(問題)に立ち向かう。黒崎が言った通りだな。中間の時よりも難易度が上がっている。あまりにも難しい内容になっているのは…恐らく、E組とA組の対決に影響されているからだろう。
多くの生徒は序盤の方で瀕死状態だ。今回の期末は、そう簡単に高得点は取らせてくれないみたいだ。
「ハッ!これがラストの問題か!!」
遠くの方でラスボスに立ち向かっている奴を見つけた。瀬尾智也だな。まぁ五英傑と名乗るぐらいだし、解くスピードは速いだろう。
それにしても、あれがラストの問題か。いままでの問題もバケモノだったけど、コイツはそれと比べ物にならないほどの大きさだ。英単語の量も、重要項目の量も桁違いすぎる。本校舎の先生はどういう問題を作りやがったんだ。
「今さら中学レベルの英語でつまづくかよぉ!!」
…あ、フラグ建てやがった。
瀬尾は凄い勢いでその怪物に解答を叩き込んだ。その結果…
「なに!?満点解答の見本だぞ!?」
減点されていた。フラグ回収乙。
にしても、ロサンゼルスに通っていたと自慢ばかりする瀬尾で満点が取れないとはな。解答が観れる訳じゃないけど、文法の解釈は合ってるはずだ。つまり、単純に文法の解釈をするだけでは解けないと言うことか。
それにしてもこの長文は…
《タン!…トン》
…お
「お堅いねぇ。力抜こうぜ優等生!」
中村がそのバケモノの額に軽く武器を当てた。するとそのバケモノは消え、花丸の跡が残っている。…どうやら、満点解答だったみたいだ。
「満点解答!?E組が…?」
「多分読んでないっしょ。サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』」
…やっぱり『ライ麦畑で捕まえて』だったか。あのタコに勧められて読んだ記憶がある。英文だったら全て暗記してる。
「外国で良い友達いなかったでしょ瀬尾クン。やたら本を勧めてくるタコとかさ」
〜理科〜
「そぉ〜ら、理科は暗記だ!!」
《ビリビリビリ!》
「…ヴオオオオ!」
「なに!?暗記した筈なのに!!」
早速小山がやらかしてやがる。なんか瀬尾の二の舞を見ているみたいだわ。
ていうか理科もなんか難しいな。記述問題ばかり出されている。単純に用語を覚えただけでは解けないようになってるな。小山の作戦ミスだ。
こういう記述問題は、聞かれていることに対して的確にかつ分かりやすく答えないといけない。だからまず要点を…
…ん?
「それでね〜」
『分かる〜』
………何アレ
奥田さんが怪物の肩に乗って楽しそうに話しているんだけど!?ていうか兜脱いだらあんな顔になるの!?
「本当の理科は暗記だけでは面白くないです。『君が君でいる理由を知っているよ』って言葉に伝えると、この理科凄く喜ぶんです」
奥田さんが怪物の頭に杖をポンと撫でるように叩く。
すると怪物は鎧を全部脱いで走り去ってしまった。
………気持ち悪い。
〜社会〜
社会も結構シビアな問題が多いな。理科同様記述の問題が多いが、いま習っているのが現代社会なだけに、いま話題となっているトピックの問題ばかりが出されている。新聞でいま現在の社会の情勢を知らないと、ほとんどの問題が解けなくなる。
…しかも。
「しまった…アフリカ開発会議の会談の回数なんて分かるかよ」
荒木鉄平が負けた怪物なんか、エグい問題だ。結構細かいところを聞いてくる。トピックをもっと詳しく知っておかないと解けない感じだな。
「ふぅ…危なかった。会議の重要性の象徴だから、一応覚えておいて正解だった」
すると磯貝がその怪物を倒した。ていうかアイツ覚えていたのか。
「磯貝、きさま…!」
「たまたまだよ。俺ん家けっこう貧乏だからさ。アフリカの貧困にちょっと共感して調べていたら…実際に現地に連れていかれて、更に興味が広がっただけだよ」
…行ったのか、アフリカ。あのタコ、色々と容赦無く連れて行くからな。
そんな危ない経験をしたと言うのに、たまたまと言えるあたり、本当にイケメンだなと思ってしまう。
〜国語〜
案の定出たよ。百人一首。俺の思った通り、その詩について文法やそれを作った人の感情について聞かされる問題ばかり出ている。
「ウオオオ!」
怪物が、俺に向かって刀を振り下ろそうとしている。
「舐めんなよ」
だが返り討ちにしてやった。怪物は見事に霧散している。
霧宮が1つ1つの問題でボケるせいで、そのツッコミを入れている内に内容を殆ど覚えた。
それだけじゃない。霧宮に分かりやすく説明しようとしたおかげで、記述問題は完ぺきに出来ている。
「しゃあ!どっからでもかかってこい!」
いつもより手応えがあるから、自分でも妙なテンションになっていることが分かる。けど今回は暴走しても止めない。俺らの暗殺もかかっているんだ。負けてたまるかよ。
◇第三者視点
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
同じく国語の時間、E組の神崎が難問をクリアしていた。力強く解答している学真に対し、こちらは鮮やかに斬り伏せている。まさに美しい、という表現がシックリ来るようだ。
「ハッ…顔だけでなく言葉も美しい。だがたった一問の快心の解答でテストの勝敗は決まらない」
その神崎の姿に感動しながら、榊原は言った。その通りである。テストの点数はあくまで総合点。いくら難しい問題が解けたと言っても基本的な問題が出来なければ意味はない。
〜数学〜
期末テスト5教科の最後のテストが始まった。多くの生徒が苦手であろう数学だ。この時点で4教科のテストを終え、大抵の生徒は集中力が落ちている。
それはA組も例外ではない。連続して出される超難関のテスト問題を既に4教科も受けており、この時点で頭が働かない生徒もいた。
そんななか、1人だけ全く疲れている様子を見せない生徒がいた。その男こそ、浅野學峯の息子であり、浅野学真の兄である浅野学秀だ。
これまで、全ての強化のテストで満点に近い点数を叩き落としており、各教科において死角はない。そのため、彼はこの勝負の勝ちを疑わなかった。
彼はこのテストに、とある野望がある。
E組との勝負で勝った時の要求だが、それは『浅野学秀の作り出した誓約書に同意する』というものだった。その誓約書にはE組の生徒に義務付けられる行動について記されており、この誓約書に従って動かなければならない。法律に触れない範囲でえげつない内容ばかりが書かれている。
学秀の目的は、その中に書いてある『A組に尋ねられた質問に正確に答えなければならない』であった。
学秀は、父である學峯が何か隠し事をしていると睨んでいる。例年よりE組に接触する機会が多く、『巨大なタコを見かける』のような噂を聞いていた。
学秀は、これを使ってE組に隠されてある秘密を知り、それを使って父親に揺さぶりをかけるつもりなのだ。
例え父親であろうと支配する。それが学秀の行動の指針であり、それ故にここまで力をつけたということでもある。
(死角はない。E組を軽く蹴散らし、父親を支配する駒になってもらう)
◇
数学のテストが始まる直前、カルマは周りの生徒の様子を見ていた。殺せんせーの触手を破壊する権利と、A組との勝負における報酬を得るために、すべての生徒はいつもより気合いが入っている。中間テストの時より気合いが入っていた。
(あーあー、みんな目の色を変えちゃって。勝つっていうのはそーゆー事を言うんじゃないんだよね)
そんな生徒たちを見て、呆れたような顔をしている。いつもより気合いをいれて勝負に挑む。そうして得られた勝利は彼にとっては勝利では無かった。
あくまでいつも通りで余裕で相手よりも良い成績を出す。彼にとってそれが本当の勝利だ。
(通常運転でサラッと勝ってこその完全勝利。正しい勝ち方、みんなに教えてやるよ)
そしてテストが終わり、いよいよ結果を聞くときになった。
◇学真視点
「さて皆さん。全教科の採点が届きました」
いよいよ、この時がきた。テストの結果の返却…これで全てが決まる。教室の中は緊張でいっぱいだ。
「では発表します。まずは英語から」
英語…あの長文のところは難しかった記憶がある。もし殺せんせーにあの小説を進められなかったら、手も足も出ていなかったかもしれない。
「E組の一位…」
ドクン、と心臓が鳴る音がした。自分で緊張しているのが分かるほどだ。果たして…
「そして学年でも一位!」
…!
「中村 莉桜!」
…マジか。中村が英語のトップを取ったのか。
「どやぁ〜」
うわ凄いドヤ顔。こういう調子の良いところは流石としか言いようがない。
「完璧です。君のやる気はムラッ気があるので心配でしたが…」
「なんせ賞金100億かかってっから。触手一本、忘れないでよ。殺せんせー」
「勿論です」
顔に丸を出している。とりあえずは触手一本、そしてA組とは一勝というところか。
すると殺せんせーは全員に英語のテスト結果を渡した。なるほど、
「渚くんも健闘でしたが、肝心なところでスペルミスを犯す癖が治っていませんね」
渚も惜しかったみたいだ。まぁアイツ、英語が得意だったらしいし。
「さてしかし、1教科トップを取ったところで、潰せる触手は一本。喜ぶことが出来るかどうかは、全教科返してからですよ」
…まぁ確かに。テストは5教科ある。そのうち一つを返されただけなんだ。残り4教科によってどうなるかがハッキリと別れることになる。まだ安心できないってことだな。
「続いて国語」
国語…百人一首は勿論、あらゆる読解問題も解いた。頼む…
「国語に関しては、学年トップは2人います」
…!2人…!?一体誰と誰が…
「そのうち1人は…E組、浅野学真!」
……え…!
「オレ!?」
「いやお前だよ!」
あ、いや…疑ってたわけじゃないけど…まさか俺が1位になったってなると少し戸惑った。いままで一度も取ったことないのに…
「おめでとうございます。ただ君の兄である浅野学秀くんも同じく1位ですので、勝敗はつきませんが、触手を破壊する権利は差し上げますよ」
そう言って殺せんせーは触手に『予約済み』の旗を刺した。
テストを貰うと、点数は100点だった。つまり満点ということか。
もう1人はやっぱり兄貴だった。そりゃ兄貴がその点数を取ってもおかしくはない。
けど…
『情けないな。お前のレベルはこんなものか』
あの兄貴と同じ点数…
「………っ!!」
思わず力が入り、鳥肌が立った。小さい頃から敵わないと思っていた兄貴と並んで1位を取ることが出来た。それが出来たんだ…!
「よく頑張ってくれました。君が人一倍努力していたことは分かっていましたから。このような点数を出してくれて先生も嬉しいですよ」
「…はい。ありがとうございます」
思わず泣きそうになる。それを誤魔化すようにお礼を言った。この達成感は…いままでで1番感じたこと無かった。
「さて…まだ3教科残っています。A組との勝負は今のところ1勝0敗1引き分けとなっています。まだ結果は分かりませんよ」
殺せんせーの言葉を気を取り戻す。そう、まだテスト返却は終わっていない。あと社会、理科、数学が残っている。どうなる…?
「続いて社会。E組1位は磯貝優馬くん」
E組の社会トップは、磯貝のようだ。さて…学年ではどうだ?
「そして学年では…おめでとう!浅野くんを抑えて学年1位です!」
「よし!」
どうやら学年トップも取ってくれたみたいだ。思わず立ち上がってガッツポーズをしている。これで触手3本目、A組との勝負は今のところ2勝0敗1引き分けだ。これで勝負の方はほとんど決まった。これでコッチの負けは無くなった。
「マニアックな問題が多かった社会で、よくこれだけとりました。続けて理科!」
続けては理科。理科もかなり難しかった。問題内容も難しいところを聞かれていたし。さて…
「E組1位は、奥田愛美。そして…素晴らしい!学年1位も奥田愛美!」
…お!理科もコッチか。これで触手4本目、A組との勝敗は3勝0敗1引き分けだ。これでコッチの勝利は確定。例の報酬も貰った。
「仕事したな奥田!」
「触手一本、お前のものだ」
奥田さんは、結構頑張ってた。放課後殺せんせーと色々な実験をしていたのを覚えている。理科に関しての熱意なら、奥田さんに敵う者はいない。
「後は、数学だけですね」
竹林に言う通り、後は数学を残すことになった。A組との勝負の決着がついたとは言え、触手を破壊できるチャンスはまだ残っている。
「さて、数学の結果は…」
◇
流石に、数学は無理だった。1位は兄貴だった。総合点でも、兄貴が1位を取っている。兄貴の強さを嫌でも実感してしまうな。
とは言え、勝負の結果はコッチの勝ちだ。喜んでも問題ないだろう。
けど…
「…大丈夫か?アイツ…」
「うん…僕も心配している」
渚と一緒に、1人の男の心配をしていた。カルマだ。総合点でも数学でも、普通だったら1位を取れていたはずなんだ。
けど今回のテストで、カルマは1位を取れなかったどころか、著しく順位が下がってしまったみたいだ。数学は学年10位、総合点では学年13位だった。完全に、トップ争いから落とされていたとしか言えない点数だ。
原因は分かる。アイツ今回はあまり真剣に勉強している様子は無かった。何となく余裕だったというか…1位を取ることに壁を感じていなかったみたいだった。だから勉強はせいぜいあの殺せんせーの強化授業しかやっていなかったみたいで、だから点数が取れなかったんだろう。
八幡さんがよく言っていた。『浮かれるな』と。ひと時強くなったとしても、努力を怠れば直ぐに追い抜かれると。カルマはその餌食となったんだろう。
この事がキッカケで、何か問題があったら…
「なぁ、学真。一つ気になったんだけどさ…」
すると杉野が俺に聞いてきた。
「A組と言えばよ…中間テストで3位だったやつが居たろ?」
「…窠山の事か?」
「そう。けどよ…進藤から聞いたんだけど、A組の自主勉強会では参加してなかったらしいし、今回のトップ争いも参加してないみたいだけど…」
ああそうか。コイツ…というかみんなは、窠山についての情報をあまり知らないんだった。じゃあ言っておかないといけないな。
「窠山は多分、参加する気は無かったんだよ」
◇
「E組の奴らに負けるって、こんな屈辱あるか?」
A組で、不穏な空気が流れている。E組との勝負に敗れた五英傑は、かなり悔しそうにしている。なお、この学級のリーダーである学秀は理事長に呼ばれてここにはいなかった。
悔しがっているのは、五英傑だけでは無かった。他のA組の生徒も浮かない表情をしている。なんでE組なんかに…そんな気持ちを抱えていた。
たった1人を除いて。
「今さらガタガタ言わないでくれる?耳が腐りそうでしょうがないんだけど」
その男、窠山は悔しがっている五英傑に向かって言った。黒崎や学真に対して言ったような皮肉な口調で、五英傑を罵るように見えた。
「窠山…!お前、なんで今回のテスト本気でやらなかったんだよ!」
瀬尾が窠山に食いつく。今回、窠山は明らかに手を抜いていた。テストの成績なら学秀の次に高く、特に苦手科目の国語と数学以外なら学秀よりも高い点数を出せた可能性があった。それにも関わらず、手を抜いた窠山に怒っていた。
「は?なんで僕が本気で挑まないといけないの?喧嘩を始めたのは君たちでしょ」
平気な表情をして、窠山は答えた。確かに、喧嘩を始めたのは学秀を除いた4人の五英傑であり、窠山がその事に参加する理由はない。
「…けど、浅野が本気でやろうって言ってたじゃねぇか!」
しかし、E組との勝負が決まった時、学秀はA組の生徒全員を鼓舞していた。そう言われたのなら、それに応えようとするだろうと瀬尾は言った。
「だからそれが理由になる訳無いって言ってるんだよ。負けると分かってて全力で挑む理由が無い」
そんな軽い台詞を笑うように、窠山はいった。浅野学秀が鼓舞しようがしまいが、やる気が出なかったのは変わらないのだから。
「あんな不利な勝負を吹っかけて、負けることは分かっていたよ。最近E組の奴らが成績を伸ばしていってるみたいだし。各教科ごとのテストの1位を取った数で競うルールなら、各教科のスペシャリストを揃えるだけで勝つに決まってるよ」
「だったら、お前が…」
「スペシャリストを超えろって?無理だよ。正直どの教科も好きじゃないし、満点を取る気になれない。そんな奴がスペシャリストに勝てると思っているの?自称スペシャリストを気取っている君らは浅野くんより下の点数で満足してるし。
冷静に考えれば、こんなの無理ゲーに決まってんだろ。そう思わなかったのは、君らが相当バカだからなのかな?」
歯をくいしばる。窠山の言っている事に反論できないのが悔しいのだ。窠山は各教科でトップを取ってはいないものの、総合点では2位を取っている。彼よりも低い点数を取っている自分らが何を言っても無駄であると言うのが分かり、腹立たしく感じていた。
◇学真視点
「つまり…勝つ確率がない勝負には参加しないって事なのか?」
俺の話を聞いて、杉野が確認している。まぁ、杉野の言う通りだ。前に話した通り、窠山は結果重視の男で、どんなに頑張ろうと結果がダメならその努力も無意味である、それが窠山の考え方だ。
「負けると分かっていれば、アッサリ諦めるってのが窠山のやり方だ。そもそも、アニキがA組のみんなに言ったであろう『みんなで力を合わせて』というフレーズでやる気が削がれていただろうし」
「…?どういう事だ?」
「アイツ、仲間って単語が1番嫌いなんだよ」
「え、でも球技大会では同級生と協力してたんじゃ…」
「アレは多分、あのピッチャーが役に立つと考えていたからだ。コミュニケーションが取れない訳じゃないけど、進んで取ろうとしない。最低限の付き合いしかしない奴なんだよ」
俺の話を聞いて、ほとんどの奴が微妙な顔をしている。無理もないよな。俺だってその考え方は好きじゃない。
けど結果重視のアイツに取って、必要ないコミュニケーションは邪魔以外の何物でもない。どれだけ説得しようとしても、答えてはくれないだろう。
「仲間が嫌いとは、随分損してるな」
そんな俺の話を聞いて、そう言う奴がいた。霧宮だ。
「危険に侵されそうになった時、助けてくれるのが仲間だ。それを嫌うとは、勿体無いとしか思えないな」
……おお…此処に来たばかりの頃に、俺に斬りかかろうとしていた奴が言うとはな…あの時の殺せんせーの言葉が響いているのか。
「…そうだな。俺もそう思う。いつか分かってくれて欲しいと思うよ」
心からそう思う。仲間を作る事を避けるのは、俺的には勿体無いと思う。例え人付き合いが苦手でも、頼れる仲間は1人ぐらい持つべきだ。
いつかアイツが、それを分かってくれればな。
◇
「さて皆さん。素晴らしい成績でした。5教科で皆さんが取れたトップは四つです」
HRの時間、殺せんせーが前に立って話している。試験の結果はもう出た。殺せんせーはあの報酬の件を済まそうとしているのだろう。
「早速暗殺の方を始めましょうか。トップの4人はどうぞご自由に」
今回トップを取ったのは、俺と中村と磯貝と奥田さんだ。だから触手は4本落とせる。何とか躱せると思っているんだろう。顔が例の舐めている顔(緑色のシマシマの顔)だし。
けど、さっき磯貝たちと話し合った事について言わないといけない。
「おい待てよタコ。5教科トップは4人じゃねぇぞ」
それを言おうとする前に、寺坂が殺せんせーに言った。5教科トップが4人じゃないってどう言う事だ?
「にゅや?4人ですよ寺坂くん。国、英、社、理、数合わせて…」
「アホぬかせ。5教科っつったら国、英、社、理…
あと家だろ」
……へ?
「か、家庭科ァァ!!?ちょ、ちょっと待ってください。家庭科なんてついででしょ!?なんでこれを真剣に100点取っているんですか!」
「だれもどの5教科とか言ってねぇよな」
「あーあ、クラス全員でやればよかったこの作戦」
…なるほど、確かにどの5教科でトップをとれとかの話はしてなかった。寺坂、吉田、村松、そして狭間が家庭科のテストで100点を取っており、文句なしのトップを取っている。まさかその手があったとはな…
「ついでとか失礼じゃね、殺せんせー?5教科最強の家庭科さんにさ」
するとカルマが悪ノリする。あー、こりゃ言い逃れできないな、殺せんせー。
「そうだぜ、約束守れよ殺せんせー!」
「1番重要な家庭科さんで、4人がトップ!」
「合計触手8本!」
「8本!?ヒェェェェ!!!」
…うわぁ…もともと失う予定だった触手の本数よりも多い本数失う事になるのか。流石に殺せんせーに同情するわ。まさか家庭科で4人もトップが出るなんて、俺も思わなかった。
「それと殺せんせー。これはみんなで相談したんですが、この暗殺に、A組との勝負の戦利品も使わせてもらいます」
「…ワッツ?」
いよいよ、俺らの作戦だ。代表して磯貝が言ってくれたが。
今回の報酬は、暗殺に取っていい事だらけだ。この夏休みで、暗殺できる可能性がかなり上がったと言っても良いだろう。
夏休み始まりまで、あと僅か。俺らは大きな暗殺計画を立てる事になった。
次回で1学期編は最後です。
次回『終業の時間』