浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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はい。オリジナルストーリーです。今回は10話を予定しています。つまり長いです。かなり大事な回なのでしっかり書きたいと思います。


夏休み
第55話 ゲームの時間


夏休みが始まり、俺らはいまやるべき事がある。それは例の旅行の暗殺の作戦だ。触手8本と水、これだけでもかなり有利だが、それだけで殺せんせーを殺せるほど甘くはない。それで殺せるんならとっくの昔に殺している。

いまやるべき事は技術の向上と、当日の暗殺の計画だ。この指揮を取っているのは、磯貝だ。こういう時にリーダーとして信頼できるのは、磯貝ぐらいだろう。

まぁそんな訳で、俺も色々と準備をしないといけない。まして俺はあの触手を破壊する役だ。暗殺開始の頃は、どの生徒よりも殺せんせーの近くにいる。かなり重要な立場だというのが嫌でも分かる。

だからシッカリと準備しないといけない。

 

 

 

なのになんで俺はゲームセンターに来てるんだ?

 

いや自分で言うのもなんだけど…

 

「杉野、なんで俺を連れて来たんだ?」

 

俺をこの場所に連れてきた張本人に聞く。俺は杉野に誘われて来たんだ。

別に文句があるわけじゃないけど、渚とかカルマとかと一緒にいる事が多い気がするのに、なんで今日に限って俺なのだろうか。

 

「いやぁ…神崎さんとゲームできたらいいなと思って」

「だ、か、ら、何で俺がゲームセンターに来てるんだって聞いてんだ」

 

…神崎さんとゲームの話が出来たらみたいなこと言ってるけど、結局なんで俺が来た理由が分からないままだ。まさか俺以外に頼る奴が居なかったとか言うんじゃねぇだろうな。

 

「…なぜ分かった」

「当たったのかよ!」

 

…まさかのソレかよ。

 

 

 

だいたい見えて来た。

修学旅行に行った時、神崎さんのゲーム力の高さを見た事がある。中学1、2年生の頃にゲームをしまくって居たようで、簡単なゲームでは失敗しないほどだ。

神崎さんと仲良くしたい杉野だが、神崎さんほどの実力者がやってるようなゲームについては全く知らない。そこで、ゲームを色々と研究しようとしているみたいだ。真っ直ぐさが売りの杉野らしい動機だ。

 

ゲームセンターにある1つのゲームをしている。大きなディスプレイがあって、そこに出てくるゾンビを、用意されている銃の形をした機械を使って撃ち倒して進み続けるゲームだ。

その銃を操作しながら、杉野と話をしていた。

 

「渚とカルマとも一緒に行った事あるんだけどよ…やっぱりお前の話も聞きたいなと思って」

「…ゲームとかあまり詳しくないんだけど」

「良いんだよ。聞いておくに越したことは無いだろ」

 

まぁ、確かに。色々な奴から情報を聞くと言うのは良いだろう。情報を手に入れる方法は多くあるに越したことはないとよく言われるし。

 

そんな事を言っている間にも、ゲームの方は佳境に入っていった。最初の方は一体ずつ出て来た感じだったのに、いつの間にか何体も出て来て、画面上にゾンビがウジャウジャいる。結構カオスだ。

物陰に隠れる事が出来ないから、対処できないゾンビからの攻撃は食らってしまう。攻撃を喰らい続けて、結局ゲームオーバーになってしまった。

 

「クッソ〜、なかなか難しいな」

「そうだな。俺も成功した試しがねぇ」

 

このゲームは、本当にプレイヤーの腕が試される。偶然とか無いし、何より物陰に隠れる事が出来ないから、プレイヤーの命中率が成績に直結する。

こういうのはあの射術コンビが得意そうだ。特にコレは…速水か?何となくだけど千葉は遠いところからの狙撃、速水は中距離の連続射撃が得意なイメージがある。ただ好成績を出しているだけの2人だからかなりエグいんだけど。

 

「まぁ終わったもんは仕方ない。別のゲームをしようぜ」

 

別のゲームをしようと話しかけて、そのゲームを辞めた。

因みにいま来ているゲームセンターは決して有名なところでは無い。さっきのゲームもそうだけど、かなり難しいゲームばかりあるから、大抵の人は2回来ることは無いようだ。来るのはそれこそゲームの上級者だ。

近くによく行っている店があるから、ここのゲームセンターの存在は知っていたけど、やっぱり別のところにするべきだったかなー…とは言っても別のゲームセンターは知らないけど。

 

「お、あっちのゲームが空いてるぞ!アレやろうぜ」

「ああ…意外と人が居ないし、良いんじゃねぇか?」

 

杉野が別のゲームを決めたようだ。画面の譜面に合わせて太鼓を叩くゲームだっけ。かなり難しいレベルになると連続して叩くことになるから、頭の中では何を叩けば良いのか分かっていても手が動かない時があるんだよな…

 

「よーし、折角だし対戦しようぜ。同じ曲で最高点数を競うんだ」

「…まぁいいけど、手加減はしねぇぞ」

「おう、望むところだ」

 

そんなやり取りをして、そのゲームのところに向かう。

 

「あれ?杉野くんに学真くんじゃん」

 

すると俺らに声がかかった。何回も聞いた事がある声だ。その声は確か…

 

「おっは〜。2人とも一緒に来てたんだね」

「あ…おはよう」

 

…やっぱり、その声は倉橋で、一緒に矢田もいた。

 

「…ああ、おはよう」

「おう」

 

 

…こんな偶然があるか?杉野と遊んでいたら矢田と倉橋にも会ったなんて、偶然にもほどがあるだろ。

話を聞くと2人とも近くの服屋に行っていたそうだ。恐らく、あの旅行の服を買っていたんだろう。そんで、近くにあるここに通いに来たんだと思われる。

 

「まさか会うとは思わなかったよ。偶然ってあるもんだな」

「そうだね」

 

杉野と倉橋が2人でゲームをプレイしている後ろで、矢田と話している。このゲームは最高2人だから、どうしてもこうなるわな。

 

「テストはどうだった?」

「あ、うん。中間に比べて結構上がったよ。一緒に勉強していた甲斐があったかな」

 

テストの話をしている。矢田も点数が上がったようだ。

あの5人で一緒に勉強したのがいい結果に繋がった。全員で勉強に取り組む事で自分だけじゃ気づかなかったところまで気づくきっかけになるから、いままでよりも内容をしっかり抑えてテストに挑む事が出来たしな。

 

「学真くんも凄かったじゃん。国語の一位を取ってくれて、殺せんせーの触手を破壊する権利を得たんだし」

 

俺の話になった。まぁ矢田の話だけするのも変だし、触手を破壊する権利の下りは大きな話題だからその話にはなるだろうなとは思っていた。

 

「ありがとな。でも、本腰を入れて頑張んないといけないのは、旅行の時の暗殺だし、気を引き締めないといけないな」

「うん…学真くんは凄いね。次から次に、新しいことに挑戦するから」

 

矢田は2人がゲームをしているところを見ながら言った。その視線の先にあるのは、決してゲームじゃなくて、今後の話だろうな。結構大掛かりな暗殺だし、色々と思うところがあるんだろう。

 

「お、おう…そうか」

 

しっかし褒められるのはやっぱり慣れないな…親父や八幡さんからは叱責しか受けてないし、兄貴からは嫌味しか受けた事がないから、褒められるとなると少しムズムズする。なんとかならないかな、コレ…

 

「やった〜、高得点〜」

「うおお…大差つけられた」

 

どうやら2人のゲームが終わったみたいだ。杉野が大差つけられて負けたみたいだ。選ばれた曲は倉橋が知っているのに合わせたし、杉野には難しかっただろう。まぁそこまで点差にこだわる必要は無いと思うけど、2人で同じ内容のゲームをやると、気になってしまうんだろうな。

 

 

 

「…おい、大丈夫かよ杉野」

「おう…大丈夫だ」

 

決して大丈夫じゃない。かなりショックを受けているな、コイツ。

結論から言うと、さっきから良いところがない事で落ち込んでいるみたいだ。アレから色々なゲームを4人でしているけど、杉野はさっきからミスの連続だ。

 

因みにいま倉橋がクレーンゲームをやっている。動物をモチーフにしたようなキャラクターを取ろうとしている。けどなかなか取れないみたいだ。

 

「あ〜!クレーンには挟まっているのに、なんで持ち上がらないんだろう?」

 

クレーンゲームって難しいんだよな…取れたと思ってもアームが持ち上げてくれなかったりするから、やってる側はかなりイライラしてしまう。そんでもう一回とかやってしまうから、お金がどんどん注ぎ込まれて行くんだよな。

 

「むぅ〜、もう一回!」

 

案の上クレーンゲームの術中にハマっているな…これ以上やっても取れないなら諦めさせるか…

 

「ダメだよ。その真ん中に1つだけ置かれている奴は、一見取りやすそうだけど、1番取りづらい奴だから」

 

すると誰かが突然話しかけた。どう聞いたって、いまクレーンゲームをしている俺らに言っていると分かる。

 

「アームが働く力は、そのぬいぐるみを持ち上げるだけの力はない。ぬいぐるみの材質も滑りやすいから尚更無理だよ。

だから取るなら端っこで転がっている奴だ。一見取りづらく見えるけど、足からタグが出ているから、それにアームを引っ掛けるだけ。そうすれば…」

 

ソイツはボタンを操作してアームを動かした。するとアームはぬいぐるみのタグに見事引っかかり、持ち上がる。そのまま商品を運んで取り口にぬいぐるみを入れた。

 

「うわ…アッサリ取れた」

「そりゃそうだよ。だって僕がやったんだからね」

 

ぬいぐるみを取って倉橋に渡す。それは一体誰なんだと思ってその顔を見た。

その時、目を疑った。ソイツは、俺の知っている奴だった。

 

 

 

 

「窠山…!」

 

A組の、窠山隆盛だった。

 

「御機嫌よう」

 

嘘だろ…!よりによってコイツに出くわすなんて、最悪じゃねぇか。

 

「窠山って…A組の?」

 

杉野が俺に聞いた。窠山という単語は何回か聞いているだろうし、球技大会のあの野球の試合を見てるから、杉野は特に知らないはずがない。

普通だったらそれに答えるところだったけど、今の俺に答える余裕は無かった。

 

「随分馴染んでいるようだね。E組に」

 

いま窠山は笑顔で言っているが、俺にはどうしても安心できるものではない。こいつの笑顔はかなり嫌な雰囲気が漂うし。

 

「馴染んでるってなんだ。()()嫌味を言いに来たのか?」

「嫌味だよ。だってA組で1人だった君がE組ではみんなと仲良く暮らしてるみたいだし。それにしてもあの勝負はA組は完敗したな〜。まぁ瀬尾くんたちの自業自得だけど」

 

この人の気を逆撫でるような言い方から、こいつは相変わらずだなと思わせる。人を挑発するのはかなり得意だからな、コイツは…

 

「それよりもさ…君に話をしに来たんだけど」

 

…?俺に話…?

 

「どこか空いている日はない?この1週間の間に」

「…来週までなら特に無いが」

 

あの暗殺は2週間後の話だ。それに向けて、みんなで集まる日を一週間後に決めている。それにしてもなんでそんな事を聞くんだ…?

 

「なら三日後にしようか。その日にさぁ」

 

窠山の目の色が変わる。人を挑発する目から、人を脅迫する目に…

 

 

 

 

「勝負しようよ。格闘技で」

 

 

 

 

 

◇第三者視点

 

窠山の言葉に、全員が唖然としていた。窠山の言っていることが唐突すぎて、何が目的かがハッキリしないからだ。

 

「…何のためだ?」

「何のためでも無いよ。別に賞品とかはない。君と勝負したいだけだ」

 

ますます分からなくなっているようだ。A組の勝負のように、報酬がある訳ではなく、あくまで学真と戦いたいという理由だけしか言わない。目的が全く分からない窠山の行動に、その場の全員は不審に思った。

 

「断る。理由が無いのにテメェと勝負したくない」

 

学真はその誘いを拒否した。それは当然だと全員思った。目的や理由が無いなら、その誘いを受ける必要はない。まして2週間後にはあの旅行を控えている。その前に体力を消費したくはないだろう。

 

「いや、理由ならあるよ。君はこの勝負を受けないといけない」

 

窠山はポケットから一枚の紙を取り出した。その紙はかなり小さく、せいぜいA6の大きさだろう。

窠山はその紙をひっくり返して、その表を見せた。

 

「な…!」

「……!」

 

その表を見て、学真と矢田は絶句した。その紙だと思っていたのは、写真であり、それに写っているものが一体何なのかを、彼らは知っていた。

 

かつてデパートで、学真が黒服の男たちを殴り倒している様子が、写っていたのだから。

 

「どう?よく撮れているでしょ?僕の手下に優秀なカメラマンがいてね。撮られているなんて思わなかったでしょ」

 

学真も矢田も、そしてその場にいた倉橋もその男がいる事に気付かなかった。そして、学真のあの暴力をバッチリ撮られたのだ。

 

「もう分かるでしょ。拒否すればこれを学校に届ける。タダでさえE組に堕ちている君がこんな事をしていると分かれば、今度は退学かもね」

 

つまり、拒否すればその事件の事をバラすという事だ。完全に脅しではあるが、その脅しは学真に有効だった。いまの段階で退学は彼にとってもE組にとっても大ダメージだ。そのため、その挑戦を受ける以外の道はない。

 

「しっかし昔から変わらないね。こんなバカをやらかすなんてさ」

 

窠山は愉快そうに笑う。その口調から、まるでその事件が『2回目』であると言っているように感じた。

 

「弱者の肩を持って自滅とか、本当に考えなしだよ…」

 

窠山が言いかける途中で、彼は学真に襟を掴まれた。かなり乱暴に。

 

「なんて言った…!?テメェ…!」

 

学真の様子が激変している。かつてデパートの時のように、いつもの彼とは想像つかないほどの荒々しい雰囲気を漂わせる。その事を連想して、矢田は少し震えた。

 

「なんて言ったもクソもないでしょ」

 

窠山は平然としている。学真の怒りを、どうでもいいと捉えているように。

 

 

 

 

 

 

「弱者のために自滅するなんてバカバカしいって言ったんだよ」

「テメェ…!」

 

窠山の煽るような口調に、学真の怒りは頂点に達した。その怒りが、手にまで行き渡り、そのまま殴ろうとしている。

 

「やめて!!」

 

その彼の拳は、矢田の叫びによって止められた。思わず無意識に叫んだ言葉で、そのゲームセンター内に響き渡り、周りの人も一体何事かと思い彼らを見ている。

その拳を止めた学真は、全く動いていない。歯を食いしばりながら歪んでいるその表情は、かなり苦しんでいるようにも見えた。

 

「………クソ!!」

 

掴んでいた手を離し、学真はその場から逃げるように離れた。

辺りがシン、と静まる。かなり気まずい雰囲気になっていた。

 

「…返事聞きそびれたけど、まぁ大丈夫だよね。明日また返事を聞きに行くとしようかな」

 

窠山は学真に掴まれていた襟を正し始めた。

 

「待てよ!何なんだよあの言い方!あんなこと言ったら学真が怒るのも…」

 

その動きを機に、杉野が窠山に対して怒る。E組の生徒を『弱者』と言えば、学真が怒るのも当然だろうと杉野は思った。

そんな杉野の怒りを涼しい顔で聞いている窠山は話し始めた。

 

「怒るのも仕方ないって?アレで怒るからアイツは自滅して行くんだよ。

強者は、自分が生きる世界の理想論を語る前に、その世界で自分がどのように上手に生きるかを考えるんだよね。あいつみたいにさ…弱い奴の肩を持つのはそれに1番反する事なんだよ」

 

世界でどのように生きるか、それが彼の信念だ。

自分のやりたい事があったとしても、それが世界にとって不利益な事であれば却下される。それは至極当然だった。

だから生物はまず生き延びる方法から探し出す。人間であろうと動物であろうとそれは変わらない。それを探し出さないで適当に生きるものはアッサリと場所がなくなる。

かつて自分が楽に生きたいと思っていた寺坂がシロにまんまと操られたように、ただ利用されて終わる事だってあり得る。

 

「現に弱者の肩を持つなんて事をし出すから、アイツは2回も…まぁ今回の未遂も含めて3回も過ちをするんだからさ」

 

窠山の言っていることに、全員は違和感を覚えた。窠山の言う過ちには、彼らが知っている回数よりも一回多いのだから。

 

「どう言う事?」

 

矢田は窠山に尋ねた。その言葉の意味することは何かという事を。

 

「そう言えば君たちは知らないんだっけ?じゃあ教えてあげるよ」

 

矢田の質問に、窠山は答えることにした。かつて、E組に堕ちる原因となった出来事を。

 

 

 

 

「アイツさ…他校の先生を病院送りにしてるんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

◆学真視点

 

「何で私が責任を取らなければならない?アイツは勝手に死んだんだろ?」

 

ふざけんな…!勝手に死んだだと…!?アイツは…アイツは…!

 

 

 

 

 

死にたくて死んだんじゃないんだよ!!

 

 

 

 

 

「うああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

バキ

 

 

 

 

 

 

 

その拳は、完全にソイツの顔を捉えた。それも手応えは、今まで以上にあった。

 

 

 

 

「おい!何をしている!」

「他校の生徒か!?先生に暴力するなんて何を考えている!」

 

 

 

 

もう、後戻りは出来ない。それはもう分かっていた。

でも今さらだった。俺はもうとっくに、終わっていたんだから。

 

 

 

 

 

 




窠山くんが出てきました。そして学真くんが他校の先生を病院送りにしたとは…?

次回『支える時間』
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