浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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久しぶりの原作の話です。こういうことが出来る学校って良いよな〜と思った話でございます。


第67話 虫とエロの時間

夏休みと言えば、色々とやれることがある。しばらく行き続けていた学校に行かなくなったいま、時間的にも出来ることが沢山ある。

 

人によっては、部屋に入り浸ってゲームをしまくるって人もいるだろう。間違いなく窠山はそのタイプだな。アイツ、ああ見えてゲームがかなり好きだし。

 

そんで俺はというと、夏休みになったからといってやりたいことがあると言うわけではない。特に何もなかったら、1人でこの部屋にいるだけだった。日沢や如月がいた時も、時々外に出るぐらいであまり外に出ようとしなかった。

そんな俺が、夏休みの間にあるイベントに参加しようとするとは、思っていなかった。自分でもそう思ってしまう。

 

「はい。2人分お願いします。ありがとうございました。失礼します」

 

電話で話を終わらせて、受話器を置く。俺の言った言葉で俺が何をしたか分かるだろう。注文ってやつだ。いま買えるらしかったから急いで頼んだ。いや〜…焦ったわ。

それが届くのは6時間後らしい。それが届くまでは暇だ。一体何をしようか。

 

『学真さん、杉野さんからラインの通知が来ましたよ』

「うおお!?」

 

突然の声にビックリする。俺の携帯から話しかけてるのは律だった。未だに携帯から突然話しかけられるのに慣れてないから勘弁してほしい。

 

『大丈夫ですか?学真さん』

「いや、良いよ…それより杉野からなんて来たんだ?」

『えっとですね。『今日の昼、学校に来てくれるか?』だそうです』

 

律が言ってくれた杉野の文章に疑問を感じる。なんで夏休みにあの校舎に行くんだ?まぁ考えても無駄か。

 

「了解、すぐに行くと言っておいてくれ」

『かしこまりました』

 

杉野に返事を返して直ぐに出る準備を整える。どうせやる事なかったし、杉野に付き合っても悪くないと思った結果だ。

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり昆虫採集が目的というわけか」

「いやぁ…いい年して昆虫採集ってのは恥ずかしいけどな」

 

杉野が学校に呼んだ理由は、昆虫採集らしい。1人だと流石に恥ずかしいから、俺と渚を呼んだという事らしい。

言われてみれば、このE組校舎は裏山の中にあるわけだから、昆虫とかが来るはずだ。意外なところでこの校舎の良さが出ているものなんだな。

 

「しかし、前原が来るとは意外だわ。こんな遊び興味ないと思っていた」

 

ちなみにいまここにいるのは俺と渚と杉野と前原だ。杉野の言う通り、ここに前原がいるのは珍しい。コイツそんな昆虫とかに興味がある奴だったっけ?

 

「次の暗殺は南国リゾート島でやるじゃん。そしたら、何か足りねぇと思わねぇか?」

「なにが?」

 

なんかカッコつけて言っている。あの島に向けての暗殺のために準備しないといけない事は山ほどあるのは確かなんだけど、それがこの昆虫採集とどう繋がっているんだ?

 

「金だ!水着で泳ぐ綺麗な姉ちゃん(ちゃんねー)を落とすためには財力が不可欠!このザコじゃダメだろうけど、オオクワガタだっけ?あれってウン万円するらしいじゃん。ネトオクに出して大儲け。最低でも高級ディナー代とご休憩場所の予算は確保するんだ!」

「旅の目的忘れてねぇか?」

 

…杉野に同意だ。コイツの頭の中は女のことしかないのかよ。殺せんせーを暗殺するチャンスだというのに…

 

っていうかコイツ1つ勘違いしてるな。オオクワはもう…

 

「ダメダメ。オオクワはもう古いよ〜」

「えっ…倉橋?」

 

ゲスな目的でオオクワガタを探そうとしている前原に、倉橋が声をかけた。というかよくそんな木に登れたな。

 

「おっは〜。みんなも小遣い稼ぎに来てたんだね」

「そんで倉橋。オオクワはもう古いってどういう事だ?」

「私たちが生まれた時は凄い値段だったらしいけどね。今は人工繁殖法が確立されちゃって、大量に出回りしすぎて値崩れしちゃったんだってさ」

 

そう。倉橋の言う通りオオクワガタは今や人工的に量産できるから、あまり高くない。せいぜい数千円ぐらいだろう。

…え?なんでそれを知っているかって?まぁマニアの知り合いがいるからな。

 

「ま、まさかのクワ大暴落か。てっきり1オオクワ=1ちゃんねーぐらいの相場と思っていたのに」

「ないない。今はちゃんねーの方が高いと思うよ」

 

なんだその方程式は。人を金で計るなよ。それに話が合わせられる倉橋も大概だけど…

 

「ねぇねぇ、折角だしみんなで捕まえよう。多人数で数揃えるのが確実だよ」

 

相変わらず明るいな、倉橋は。生き物好きなのと明るい性格から、ゲスな奴の心を惹きつける。…小遣い稼ぎが上手いってことでもある。

倉橋の呼びかけに応じて、俺らは倉橋に着いていくことにした。

 

 

 

 

「…ゾーン?」

「うん。殺せんせーが、あの時学真くんはその状態に入ったと言っていたんだ」

 

向かっている途中で渚から妙な話を聞いた。先日の窠山との試合の時に、俺はどうやらゾーンとやらに入っていたらしい。そこに入ってからは、動きが急激に良くなったとか。

 

「覚えてないのか?」

「うーん…ガムシャラだったせいか、記憶が曖昧なんだよな」

 

実のところを言うと、あの時に何を考えていたかを全く覚えていない。

必死に戦っているうちに、途中で完全に体力が切れた事は覚えている。それで追い詰められた時、窠山から攻撃が来そうになったんだけど、それを防いで仕切り直しになった。恐らくあの時にゾーンに入ったんだろうな。かなり動きが良くなった気がするし。…なんか大事な事を忘れている気がするけど。

 

「やっぱり、いつでも入れるって訳じゃないんだね」

「まぁそうだな。もし自由に入れるようになったら便利なんだろうけど」

 

渚が言うには、かなり集中した状態じゃないと入れないという事らしい。ゾーンって極度の集中状態の事で、集中力が高まると余計な事を考えない状態になるとか。

…後で殺せんせーからも話を聞く必要がありそうだ。

 

「着いたよ。見て、そこそこいるよ」

「…おぉ」

 

思わず感動してしまった。木に吊り下がっている物に、カブトムシとかがいる。倉橋が作ったトラップだそうだ。古い靴下に果物とみりんを入れて発酵させるとか。木に蜜を塗るやつと同じ系統か。

 

「あと20箇所ぐらい仕掛けたから、うまくいけば1人千円ぐらいは稼げるよ」

「おお、バイト代としてはまずまずか」

 

かなり徹底してるな…

トラップ1個当たり3匹ぐらいが付いているし、ここにいる全員で分けたとしてもかなりの量捕まえる事が出来そうだ。

 

「ふっ…効率悪いトラップだ。お前らそれでもE組…」

「ところで倉橋、お前は自由研究とかはどうするんだ?」

「ちょ、俺のセリフを遮るなよ!」

 

昆虫を捕まえようとしている俺らに話しかけて来たのは、エロ坊主でお馴染みの岡島だった。なんかカッコつけていたから、無視しようかと思った。お前の話より夏休みの課題の方が大切だろ。

 

「それでどうしたんだよ岡島」

「せこせこ千円稼いでいる場合かよ。俺が狙うのは当然100億だ」

「…100億って…」

「その通り。南の島で暗殺するって予定だから、あのタコもそれまでは油断するはず」

 

100億、その数字が何を指すのかを俺たちは知っている。殺せんせーを殺した時の報酬だ。それを狙っているという事は…暗殺をするということか。

 

「けどどうやってだ?いつもの暗殺なら躱されておしまいだぞ」

「俺を甘く見るな学真。俺はこの時のために仕掛けていたのさ」

 

自信満々に道を進んでいく岡島が止まったところで、俺たちは岡島が見てる先を見た。そこには…

 

 

大量のエロ本の上でトンボの被り物をしながらエロ本を堪能している殺せんせーの姿があった。

 

 

「くっくっくっ…かかってるぜ。俺の仕掛けたエロ本トラップに」

 

 

なんて酷いトラップだ。そんなトラップにまんまとかかっている奴を見るのもかなり悲しくなる。

 

「どの山にも存在するんだ。エロ本廃棄スポットがな。そこで夢を拾った子どもが、大人になって本が買える齢になり、今度は夢を置く。終わらない夢を見せる場所なんだ」

「いや資源ごみとして出せよ」

「ちょうどいい。お前らも手伝えよ。俺たちのエロの力で、覚めない夢を見せてやろうぜ」

「…パーティーが致命的にゲスくなった」

 

俺や渚が呆れてツッコミを入れる。こんな酷い暗殺が今までになかっただろう。

 

「随分研究したんだぜ、アイツの好みを。俺だって買えないから拾い集めてな」

「…?殺せんせー、巨乳ならなんでもいいんじゃないの?」

「現実ではそうだけどな。エロ本は夢だ。人は誰でもそこに自分の理想を求める。写真も漫画も、僅かな差で反応が全然違うんだ」

 

なんか訳の分からん理論を言いながら岡島は携帯を見せた。携帯の画面には、1ヶ月間エロ本を読んでいる殺せんせーの顔があった。日によってエロ本を読んでいる時の表情が違う。…マジで分析してやがるな。

 

「お前のトラップと同じだよ、倉橋。獲物が長時間夢中になるように色々と研究するだろ?」

「…うん」

「俺はエロいさ。蔑む奴はそれで結構。だがな、誰よりエロい俺だからこそ知ってる」

 

岡島は足元に置いてあるエロ本を取り、そこに挟んである対先生用ナイフを取り出す。

 

「エロは…世界を救えるって」

 

…なんだこれ。

エロでこんなシリアスな空気になっている現状に異議を唱えたい。

 

「やるぜ。エロ本をの下に対先生弾を繋ぎ合わせたネットを仕込んだ。熱中している今なら必ずかかる。だれかこのロープを切って発動させろ。俺が飛び出してトドメを刺す」

 

なんとも酷い暗殺方法だが、殺せる確率はかなりある。今殺せんせーは一心不乱にエロ本を読んでいる。今なら暗殺が成功するかもしれない。

渚が岡島の指定したロープを切ろうとしている。そして岡島はいつでも飛び出せるようにナイフを持って準備を整えていた。

 

 

ところが、異変が訪れる。

 

突然殺せんせーの様子がおかしくなった。殺せんせーの目が…飛び出てきた。

 

「…なんだアレ?」

「データにないぞあの顔。どんなエロを見た顔だ?」

 

…いや、多分エロ本とは全く違うところを見ているし、エロは関係ないな。

 

「ヌルフフフ、見つけましたよ」

 

肝心の殺せんせーは触手を伸ばした。そして伸ばした触手を戻すと、触手には小さなクワガタがあった。

 

「ミヤマクワガタ。しかもこの目の色!」

「あ!白なの!?殺せんせー!」

「おや倉橋さん。ビンゴですよ」

 

殺せんせーの言葉を聞いて、倉橋が飛び出した。あらら…岡島の暗殺が失敗したな。

 

「すっごーい!探してた奴だ」

「ええ、この山にもいたんですね」

 

「ああ…あとちょっとだったのに…」

 

落ち込んでいる岡島は置いといて今の状況を分析する。女子中学生と怪物がエロ本の山の上でピョンピョン跳ねてるって、なんかシュールな絵だな。

 

「はっ!!」

 

俺らを見つけて我に返ったのか、殺せんせーは今の状況に気がついた。俺らが殺せんせーの痴態を見てしまったことに…

 

「にゅやあ〜〜〜!!」

 

殺せんせーの声が、椚ヶ丘中学校の裏山中に響いたのであった。

 

 

 

 

 

「面目無い。教職者としてあるまじき姿を…本の下に罠があるのは知ってたんですが、どんどん先生好みになっていく本の誘惑に耐え切れず…」

「すんなりバレてた!」

 

俺らに囲まれて、正座しながら懺悔している殺せんせー、岡島の罠に気づいてはいたらしい。だったら尚更なんでそのトラップの中で読んでたんだ。

 

「で、どういうことよ倉橋。それってミヤマクワガタだろ?ゲームとかじゃオオクワガタよりぜんぜん安いぜ」

「最近ではミヤマの方が高い時が多いんだよ。まだ繁殖が難しいから。このサイズだったら2万は行くかも」

「2万…!?」

 

びっくりする数字ではあるが本当だ。量産できないからレア度が高く、その分価格も高い。部屋に一体飾っているマニアもいるほどだ。

 

「おまけによーく目をご覧ください。本来黒いはずの目が白いでしょ。生物でアルビノ個体については教えましたよね」

「ああ、ごくたまに全身真っ白で生まれてくる奴だろ」

「ミヤマクワガタは目だけに現れます。ホワイトアイと呼ばれ、天然ミヤマのホワイトアイは大変希少です。学術的な価値もある。売れば数十万は下らない」

「すっ…!」

「一度は見てみたいって殺せんせーに話したら、ズーム目で探してくれるって言ってくれたんだ」

 

…そういうことか。ミヤマクワガタの更にレアなクワガタってところか。そりゃとんでもない価値になるだろうな。流石にそれは知らなかった。

 

「ゲスなみんな〜、これ欲しい人手ェ上げて」

「「「「欲しい!!!」」」」

 

倉橋が持っていったミヤマクワガタを追いかけるように、俺を除いたE組のメンバーがどこかに移動しやがった。

 

「にゅや?学真くんは追いかけないのですか?」

「いや…俺は別に欲しい訳じゃないし」

「にゅう…金持ちはこういう時に腹が立ちますね」

 

ほっとけ。俺から言わせると大金に群がる方が恐ろしいわ。

 

そこで俺は1つ思い出した。いま殺せんせーには聞かないといけないことがあったんだ。

 

「…そういえば殺せんせー、1つ聞きたいことがあるんだけど」

「ええ、良いですよ」

 

 

 

 

 

俺が殺せんせーに話したのは、窠山との勝負の時に入った(らしい)ゾーンのことだ。現時点では物凄く集中した時にゾーンに入ることが出来ると認識しているが、それはあくまで予想だ。殺せんせーの方がもっと詳しく知っているのかもしれない。

 

「そうですね。まず君の解釈は8割ほど当たっています」

「…8割?」

「ゾーンに入る時の条件ですが…君は集中力が高まった時にゾーンが入ると認識しているようですが、それは少し間違っています。そもそも集中力が高まってゾーンに入る訳ではなく、集中力が高まった状態をゾーンと言います

一般的には雑念を無くした状態の時ゾーンに入りやすくなるとよく言われます。1人の野球選手が言っていました。本番に対する不安を無くすために練習を続けると。一番近いのはそれですね。不安とか雑念など、目の前以外のことについて考えなくなる時にゾーンに入ります」

 

…要するに、目的に対して意識を向けるというより、目的以外を意識しないようにするということか。

 

「それって結構難しいんじゃねぇか?」

「はい。ゾーンに入った状態を体験出来ているのは、地球の中でも一握りです。だからこそ、ゾーンというものに価値を感じる人がたくさんいるという訳です」

 

殺せんせーの話を聞いてゾーンについて大体理解した。目の前の事以外の事を考えないようにする。それは誰にでも出来る事じゃない。意識しないようにしようとしても無意識に考えてしまうのが人間というものだ。

 

「…どうしたらゾーンに入りやすくなるっていうコツはあるか?」

 

「それは教えられません」

 

 

殺せんせーの顔にバツの印が浮かび上がる。それを教える事は出来ないという事を表しているのか。

 

「君がゾーンに入るためのコツなら、先生はある程度予想はしていますが、それを先生が教えるわけにはいきません。それは学真くん自身が見つけなければならない事です」

 

つまりは自分で見つけろということか。まぁ、殺せんせーの言う通りだな。それは殺せんせーに頼るところではなく、自分の力でどうにかしないといけないことだ。

 

「それはゾーンに限った話ではありません。学真くん、君はまだ自分について理解出来ていない。君の知らない事は沢山あります。君の良いところも、悪いところも」

 

最後の殺せんせーの言葉は理解出来たとは言い難い。俺の気づいていない俺の良さとか悪さって何があるんだろうか。ひょっとすると殺せんせーはある程度知っていたりするのか。

 

「…分かった。これ以上先生には聞かない。俺自身で見つけていかないと意味がないしな」

 

話がひと段落ついたところで杉野が帰ってきた。どうやら倉橋を見逃したらしい。哀れな奴…

 

 

 

 

 

家に着いた時、俺の部屋にある物がポストの中に入っていた。今朝俺が頼んだものだ。袋を破って中身を見る。ほぼ頼んだ通りだった。

 

どうにか間に合った。後はアイツに話をするだけだ。

 

 

 

 

俺は携帯電話を取り出して、とある番号を入力した。

 

 

 

 

 




最後に学真くんが電話しようとしたのは一体だれなのでしょうか。次回オリジナルストーリーです。

次回『デート?の時間』
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