浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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本日、感想欄で指摘された事ですが

実は私小説を2つ投稿していますが、この小説のとあるシーンで学真がもう片方の小説の主人公である『黎人』になってました。確認は何度もしたつもりでしたが、全く気付きませんでした。

これがダブル小説投稿のリスクというものですね…

作者の方でも読み直してみますが、もしこの小説で『黎人』になっている部分があれば誤字報告、活動報告欄、メッセージ等でご報告ください。ただし感想の方でのご報告はお控えください。


第70話 暗殺計画の時間

南の島での暗殺まで1週間をきっていた。日数が経っていくにつれて気合いと不安が高まっているのが分かる。

 

俺たちは、その訓練と計画のために椚ヶ丘中学校に集まっていた。俺も射撃練習に取り組んでいる。ほかのみんなも訓練に積極的に取り組んでいた。いま運動場では、まるで運動部が活動しているように、活発性に溢れている。

 

たった1人を除いては…

 

「まぁまぁガキども。夏休みだというのに汗水を流してご苦労な事ねぇ」

「ビッチ先生も訓練しろよ。射撃やナイフは、俺らと大差無いだろ」

「大人はズルいのよ。あんたたちの作戦に乗じて、美味しいとこだけいただくわ」

 

…このクソビッチ。なんでバカンスの格好をしてトロピカルジュースを飲みながら俺らの訓練を他人事のように見てやがるんだ。そのジュースどこで買ったんだよ。しかも偉そうに美味しいところを取っていくとか言いやがって。ハゲてしまえ。

 

「学真くんが思いっきりディスってんのが見て分かるんだけど…」

 

それは黙っておくという約束なのだぞ渚くん。

 

 

 

「ほう。偉いもんだな、イリーナ」

 

どこかで聞いた事がある声だ。静かそうで、心臓に響くほど強烈な衝撃を与えているような。

愉悦そうな表情をしていたビッチ先生は一瞬で怯えた表情になっていた。まぁビッチ先生にとっては何よりも怖い人の言葉だろうしな。

 

「ろ…ロヴロ師匠(せんせい)!」

 

ロヴロとは、少し前に椚ヶ丘中学校に来ていたビッチ先生の師匠だ。元殺し屋で今は殺し屋の育成をしている人。前はビッチ先生と暗殺勝負をしていた。

 

「夏休みの特別講師で来てもらった。みんなが考えた作戦に、プロの視点から助言をくれる」

 

まぁ、暗殺計画については暗殺のプロに聞くのが1番いいだろう。ビッチ先生もプロではあるが、当てにはならない。それにしても烏間先生は、よくロヴロさんに連絡が取れたな…

 

「1日休めば、指や腕は殺しを忘れる。落第が嫌ならさっさと着替えろ!」

「へ、ヘイ!喜んで!」

 

大声で怒鳴られて、ビッチ先生は大慌てで校舎に移動する。どこの居酒屋だよ、その返事。

流石にビッチ先生はあの人に逆らえないみたいだな。まぁ見るからに顔が怖いし、ビッチ先生には指導の先生のようなもんだしな。

 

「久しぶりです。ロヴロ先生」

 

ロヴロに話しかけたのは、霧宮だ。どうやら霧宮に暗殺の技術を教えたのはロヴロさんらしい。ある意味師弟関係なんだろうな。

 

「霧宮、君も失敗したようだな。俺としてみればイリーナよりも成功確率があると踏んでいたが…」

「…自分の力不足としか言いようがない」

「いや、奴が特殊なだけだ。これまで送ってきた暗殺者でも成功出来なかった。そう落胆することではない。

だからこそ、今回の暗殺は絶好の機会だ。殺せる位置まで接近する事すら出来なかったからな」

 

まぁロヴロさんの言う通りだな。今まで暗殺者が学校に来た事が何回かあったけど、シッカリ手入れされて帰ってしまうのがオチだ。

 

「今回も暗殺者も送るの?」

「いや、今回は送らん。と言うよりも送れないのだ。あのタコは鼻が効く。暗殺者の独特の香りを嗅ぎつけてしまう。

加えて困った事が重なった。優秀だった殺し屋たちに連絡がつかなくなった」

「他の殺し屋が失敗して、怖気付いたのか?」

「かもしれん。今は彼らの暗殺にかけるしかない」

 

何やら困った事が起きているようだ。暗殺者と連絡が取れないって、行方をくらましたと言う事なのか。なんか嫌な予感がするな。

 

「…ふむ。まず約束の8本の触手を破壊させ、その後クラス全員で一斉射撃か。それは分かるが、この1番最初の『精神攻撃』とはなんだ?」

 

渚が作成した『殺せんせー暗殺計画』を読んで貰っている。渚は暗殺の計画を立てるのがかなり上手い。作戦の全貌を聞いて感心してしまったほどだ。…特にいまロヴロさんが気になっている精神攻撃はかなりヤバかった。

 

「まずは動揺させて、動きを鈍らせるんです。殺意のない攻撃には脆い事が多いから」

「こないだ殺せんせーさ、エロ本立ち読みしてたんだよ。黙っておくようにアイスを一本配られたけど…今どきアイスで口止めできるわけねぇだろ!クラス全員で散々にいびってやるぜ!」

「他にも揺するネタは確保してありますので、先ずはコレを使って追い込みます」

「…残酷な暗殺方法だ」

 

確かに殺せんせーは動揺しやすい。テンパるのが意外と速かったり、反応が鈍かったり。特に自分の恥ずかしいところを見られるのが1番羞恥心を感じるみたいだ。

と言うわけだからそれを使うということだ。このあいだのエロ本立ち読み事件なんかは良いネタだし。他のクラスのみんなから聞いた殺せんせーの痴態を聞いて、思わずドン引きした。コレを使うと恥ずかしくて死んでしまうんじゃないか?

 

「しかし、肝心なのはトドメを刺す最後の射撃。正確な狙いと精密なタイミングが不可欠だが…」

「不安か?このクラスの狙撃能力は…」

「いや逆だ。特にあの2人は素晴らしい」

 

ロヴロさんが一目置いているのは、このE組の中でもトップの射撃能力を持っている千葉と速水だ。あの2人、結構エグいレベルの狙撃が出来ている。しかも淡々と訓練を成し遂げる様子が如何にもプロの殺し屋らしい。とんでもない仕事人気質を感じたのは俺だけじゃないはずだ。

 

「他の生徒も良いレベルに育っている。短期間でよく見出し育てたものだ。彼らなら十分に可能性がある」

 

 

 

 

「狙いが安定しただろう。人によっては立膝よりあぐらで撃った方が向いている」

「はい。さすが本職…」

 

ロヴロさんは俺らの射撃の指導を始めた。不破の言う通り本職なだけあってアドバイスが的確だ。殺し屋の育て方も慣れているんだろうな…

 

「ロヴロさん」

 

ロヴロさんに話しかけたのは、渚だった。何か気になっている事があるようだ。

その時、ロヴロの表情に変化があった。何かを感じたのだろうか…?

 

「…?なんだ?」

「1番優れた暗殺者って、どんな人なんですか?」

 

1番優れた暗殺者…確かに気になるな。ビッチ先生以外にも殺し屋は沢山いるし、殺せんせー暗殺のために送り込まれた暗殺者もいた。そんな暗殺者のトップとはどんな人物だろうと思いたくなる。

 

「そうだな。最高の殺し屋、そう呼べるのは地球上でたったひとり。この業界ならよくある事だが、彼の本名は誰も知らない。ただ一言のあだ名で呼ばれている。

 

 

曰く、死神と」

 

死神、か…

 

死神といえば、死を告げる神というイメージがある。人が死ぬ瞬間に見えてしまう悪魔の姿…そう例えられていると言う事なのかもしれない。

 

「神出鬼没、冷酷無比。夥しい屍を積み上げて『死』そのものと呼ばれるに至った男だ。

 

君たちがこのまま殺しあぐねているのならば、いつかは奴が姿を現わすだろう」

 

…そうか。殺せんせーは100億の賞金首だ。そんな首を世界一の暗殺者が狙わない筈がない。

 

それは困るな…俺らの担任を、赤の他人に殺されるのは1番嫌だ。

 

ますます南の島の暗殺が大事になってきたな…

 

 

 

 

「因みに、最高の殺し屋とはいかんが、実績だけなら劣らない殺し屋がもう1人いる」

「え…?」

 

 

 

 

 

…おいおいマジかよ。まだヤバい殺し屋がいるってのか。そういうのは1人で十分だろうに。

 

「その男は…

 

 

 

 

全ての暗殺者の中で最も技術が低い」

 

 

 

 

 

 

 

 

…は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰の目にも触れないように動く技術も、標的に気づかれないための技術も持ち合わせてない。猪突猛進、正面から堂々と標的を殺すことしか出来ない男だ」

「それって殺し屋として成立してんの?」

 

思わず口を挟んでしまった。見た目からして冗談を言う人じゃないのは分かっているけど、今の話はあまり信じれない。なにしろ正面から堂々と来る殺し屋なら、抵抗する手段ならいくらでもあるはずだ…

 

「いま君が考えた通り、標的に気づかれたら暗殺の確率はほとんどない。寧ろ諦めて逃げる策を練らなければならないのが普通だ。

 

だがその男は逃げるような行動は取らない。そして相手を取り逃がしたこともない」

 

…つまり、相手が抵抗して来ようと逃げようとしても関係なく任務を遂行する、てことか…なんか、未だに想像つかない。普通そんなこと有り得ない。

 

「信じがたいだろう。それは目撃したはずの男も一緒だ。人間の体ではあまりにも不可解な現状を作り出す。その姿を兵器と例え、巷ではこう呼ばれる。『タンク』とな」

 

タンク…tank…戦車か。

そういう暗殺者もいるということか。

 

「その暗殺者が来る可能性もあるのか?」

「それは分からん。タンクは自分の意志で動く事はない。それも兵器らしいところではある。だが…」

「操縦者…つまり、他人の意志で動くことがあるということですか…?」

 

…なるほど、渚の言葉に納得した。自分の意志で動く事はないかもしれないが、他人の意志で動く事だってある。

 

もしそれが死神だったら…考えたくもない。

 

とりあえずあまり悠長にしている暇がない。なにがなんでもこの暗殺で殺さないと…

 

「………」

 

いや、ダメだ。ここで迷っている場合じゃねぇ。いまみんなで殺せんせーを殺すために頑張っているんだから…

 

「では少年。君には必殺技を授けよう」

「…必殺技?」

「そうだ。プロの殺し屋が教える、必殺技だ」

 

何やら渚はロヴロさんから何か教えられているようだ。必殺技に少し興味があるけど、俺が入れるような話題じゃなさそうだし。

 

それにしても必殺技、ねぇ…八幡さんから技なんか教えてもらった事がないから、俺には全くゆかりの無い言葉だ。

 

その事に不満があるわけじゃない。八幡さんから色々特訓させられた。お陰で最初の時よりは、根性とスタミナがついたとは思う。窠山の時はとりあえず下手な攻撃を受けないで済んだし。

 

けどどれだけ根性がついても、力の差が歴然としている相手には意味がない。殺せんせーもそうだし…鷹岡の時もそうだ。受けているだけではあっという間に追い詰められる。

 

いまの俺に必要なのは、そういう奴に通用する技だ。

 

これはあの船上パーティーの後に考えた事だ。殺せんせーを殺した後、強大な敵が目の前に現れたとしたらどうすれば良いかと考えた事がある。今までは殺せんせーに頼っていた事があったけど、それが通用するとは限らない。

 

万が一の時に自分で活路を開くための一手を作り出さないといけない。

 

 

「…烏間先生」

 

 

俺は烏間先生に聞く事にした。この学校での教官は烏間先生だ。戦いに関する事ならこの人に聞くべきだろう。

 

 

 

 

◇第三者視点

 

訓練が終わり、いま学校に残っているのは、ロヴロ、烏間、イリーナだけである。イリーナは家に帰る支度を済ませようとしているが、烏間とロヴロは殺せんせーの暗殺について話し合っていた。

 

「協力感謝する」

「協力はあまりしてないがね。俺に出来たのは技術を教えるぐらいだ」

 

技術を教えるだけでもありがたくはあった。戦闘の経験があるとはいえ、暗殺に関しての経験は烏間には無い。特に遠距離からの射撃は知識としては持っているものの実践経験はそんなに無い。だからこそロヴロの指導が効果的だった。

 

「何か気になる事があれば、教えて欲しいのだが…」

 

烏間は他に何か改善しておかないといけない事がないかを気にしている。詰めを誤るわけにはいかない。追い込むなら徹底しておきたいと考えるだろう。

 

「別に気にするところはない。寧ろ思わぬ才能がいたぐらいだ」

「それは…?」

「確か…潮田渚と言ったか。彼はかなり暗殺者の素質があるな」

 

烏間もそれは気づいていた。渚はこのクラスの中で1番暗殺者の素質がある生徒なのは確かだ。

だから烏間は懸念している。彼が将来殺し屋の道を選んだ時、果たして認めるべきなのかどうか…それを烏間は迷っている。

 

「ましてあの見た目だ。周りから警戒される事もないだろう。

もし殺し屋になったら、それこそ『死神』に近い殺し屋に化けるかもしれん」

 

予測していた通り、ロヴロの評価が高い。プロの目から見ても才能があるとみなされたのだ。そこそこの才能ではない。だからこそ余計に迷ってしまうのだ。殺し屋の道の方が、彼にとっては確実な道のように見えるからだ。

 

 

 

 

 

「ああしかし…もう1人、気になる人物がいたな」

 

 

 

烏間の迷いが、一瞬で途切れた。

 

渚以外にロヴロが目をつけた人物がいたのだから。

 

「…それは一体…?」

 

その人物については、全く見当がつかない。潮田 渚以外にロヴロが目をつけるほどの人物は思い当たらないのだ。

 

「…これは潮田渚の逆だ。つまり、暗殺者の素質が全くない生徒だ」

 

先ほどまでとは全く別の疑問を抱く。そもそも訓練しているのは中学生なのだから、それこそ暗殺者の素質がある人物の方が少ない。だから潮田渚は異端なのだ。

にもかかわらず、ロヴロはひとりの男に目をつけた。その男は暗殺には不向きだ。

 

それだけではない。

 

寧ろこのままだと不味い事になりかねないとロヴロは考えていた。

 

 

 

「確か名は、浅野学真だったな」

 




次回から暗殺教室メインストーリーの1つ、リゾート島編です。

次回『南の島の時間』
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