浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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第72話 決行の時間

「全力の暗殺を期待しています」

 

私の生徒たちが、知恵と工夫を凝らした全力の暗殺を仕掛ける。それが私にとって1番の楽しみだ。

 

報酬を得るために精一杯の努力をしてくれた。先生を殺すための策を練り続けてくれた。先生にとってこれ以上嬉しい事はないとも言える。

 

 

 

 

 

 

このチャペルの壁には対先生物質が仕込まれている可能性がある。脱出しようとするとかえってリスクが大きい。このチャペルの中で暗殺を躱すしか無いようですね。

 

 

 

「始めるぜ。殺せんせー」

 

 

 

岡島くんがチャペルの電気を消した。部屋の中が暗くなり、設置されてあるテレビだけが唯一の光になっている。

 

 

 

 

『東京都内某所、椚ヶ丘中学校3年E組。あろう事かこのクラスの担任は、暗殺のターゲットである。我々が与えられた任務は…』

 

 

 

テレビは椚ヶ丘中学校の様子が映されている。学校の生活の様子を動画にしたものでしょう。先生が授業をしていたり、生徒たちが暗殺を仕掛けている場面が映されている。こうしてみると懐かしいですね。あっという間に1学期が終わった訳ですから。

 

 

 

テレビが流れている間、後ろの方で部屋を出入りしている音が聞こえる。位置と人数を明確にしないためでしょう。

 

しかし甘い。2人の匂いがこの部屋に無いのが分かっていますよ。出口の奥の方から、E組きってのスナイパー、千葉くんと速水さんの匂いがします。タイミングを見て狙撃するつもりでしょう。そちらの方向はなるべく注意した方が良さそうですね。

 

 

 

 

しかしこの動画は良く出来ている。編集とナレーターが三村くんですか。カット割りといい選曲といい、良いセンスです。つい引き込まれてしまいますね。

 

 

 

 

『我々調査部隊に、極秘情報を提供してくださった方々にお越しくださいました。話を伺う前に続きをご覧ください』

 

 

 

 

教室の中で三村くんが喋っているシーンが暗くなった。シーンが変わるという事でしょう。さて、一体何を見せてくれるのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『買収は………失敗した』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗したァァ〜〜〜〜〜!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な、ななな…これは、これは!先生が裏山でエロ…じゃなくて捨てられていたエロ本…じゃなくて廃棄物を調べているところでは無いですか!なんでこのシーンが…

 

 

 

 

 

 

 

『最近のマイブームは、熟女OL。全部このタコが拾い集めたエロ本である』

「ちょ、違ッ…お、岡島くんたち!みんなに言うなとあれほど…」

 

 

 

 

なんて事だ。まさかこのシーンを生徒たちが見ている中で公開されるなんて…口封じのためにわざわざアイスを一本ずつ渡してあげたと言うのに…

 

 

 

 

 

『女子限定のケーキバイキングに並ぶ巨大な男。

 

 

 

誰あろう、奴である』

 

 

 

 

うぎゃあああああああ!!なんで変装してケーキバイキングに並んでいたシーンも映っているんですかァァ!!?

 

 

 

『バレない筈がない。女性でない以前に人間ですらないとバレなかっただけ奇跡である』

「あーあー、エロ本に女装に恥ずかしくないの?このど変態」

 

 

 

ひぃぃぃ…ナレーターの三村くんや狭間さんのコメントが心を抉ってきます…

 

 

 

 

『給料日前、男は分身でティッシュ配りの行列に並ぶ。そんなに貰ってどうするのかと思いきや…』

 

 

 

 

え、あ……このシーンは…!

 

 

 

 

 

『唐揚げにして食べだした。教師…いや、生物としての尊厳があるのだろうか』

『今日はポケットティッシュの唐揚げです。先生こないだ気づいたんです。ティッシュって意外と甘いものなんです』

 

 

うああ…最近の私の秘密までバッチリ取られている、こうしてテレビで自分の言葉を聞くと恥ずかしい…

 

 

 

 

『こんなものでは終わらない。この教師の恥ずかしいところを、1時間たっぷりとお見せしよう』

 

あと1時間も!?どんだけ私の恥ずかしいところを撮られているんですかァァ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇1時間後

 

 

 

死んだ…

 

 

先生もう死にました…

 

 

 

あんな恥ずかしい事知られて、もう生きていけません…

 

 

 

 

 

 

 

『さて、極秘映像に付き合って貰ったが、何かお気づきではないだろうか、殺せんせー?』

 

 

 

え……?

 

 

 

 

 

そういえば水が流れている音が…

 

 

 

 

 

 

「な…これは…!」

 

 

 

 

 

いつのまにか床が水に浸かっている。先生の足は水を吸って太くなっていた。

バカな…誰も水など流す気配は無かったのに…

 

 

 

 

 

…!まさか…満潮!?

 

 

 

 

「誰かが小屋の支柱を短くでもしたんだろう」

「船に酔って恥ずかしい思いをして海水を吸って…大分動きが鈍くなってきたよね」

 

 

 

 

触手を破壊する権利を得た8人、中村さん、岡田さん、磯貝くん、学真くん、寺坂くん、吉田くん、村松くん、狭間さんが目の前に立つ。

 

 

 

 

「さぁて本番だ。約束だ、避けんなよ」

 

 

 

 

8人の銃口が向けられる。いよいよ始めると言うわけですか。

ですがスナイパーのいる方向は分かっている。そちらの方向さえ注意すれば…

 

 

 

 

 

 

 

「作戦、開始!!」

 

 

 

 

 

 

 

バン!バン!!

 

 

 

 

「うっ…にゅやっ…!」

 

 

 

 

磯貝くんが合図を出して、一気に8本の触手を失う。1本触手を失うことはしょっちゅうありましたし、イトナくんに何本も斬られたことはありましたが、ここまで多くの触手を失う事はなかった。ここまで痛みを強烈に感じることもありませんでしたね…

 

 

 

 

 

 

バリィィィ!!

 

 

 

「な…!」

 

 

 

 

 

突然、チャペルが壊れた。引き裂かれたように割れていったから破片はあまり落ちて来ないが、突然の変化に動揺してしまう。

 

 

 

しかも…

 

 

 

 

 

「フライボード…!!?」

 

 

 

 

小屋が破壊されたと言う事は、周りが海一面になったという事。その海から、フライボードに乗った生徒たちが浮いている。

 

 

 

これは、フライボードの水圧による檻ですか…小さな小屋から水圧の檻へと環境を変えて、反応速度を更に落とすという考えですね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバン!!

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

 

 

破壊されてない触手が何本か斬られた。先生の警戒を掻い潜って触手を斬り落とせる人物は…1人しかいない。

 

 

 

 

「霧宮くん…!」

「動揺しているあんたなら、左手でも触手は斬り落とせるな」

 

 

 

 

まさか…8人が先生の前に立っている時、霧宮くんは背後に立っていたと…

 

8本の触手を失っただけでも運動能力はかなり落ちているのに、いま落とされた触手の合計は10を超えている。もはや反応速度はないに等しい。

 

 

 

 

 

 

 

『一斉射撃を開始します。照射、殺せんせーの周囲1メートル』

「律さん!?」

 

 

 

 

水の中から律さんが出てきた。いま銃を持っている生徒たちが狙撃する。

 

しかし、先生に当てる様子がない。

 

律さんが言っていた通り、周囲1メートルの範囲を対先生弾が行き交う。弾幕で先生の動きを制限しつつ、先生を狙う弾を分からなくさせるためでしょう。

 

ですが、千葉くんと速水さんのいる方向さえ気をつければ…

 

 

 

 

《チッ…》

 

 

 

 

 

……ッ!?

 

 

 

 

 

いま、違和感が…

 

 

 

 

 

 

《パン!パン!》

 

 

 

 

 

な…

 

 

水の中から、千葉くんと速水さんが…

 

 

 

じゃああの2人の匂いは…

 

 

 

ダミーというわけですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生の目の前に弾が近づいていた。

 

 

今まで暗殺者や国家は、その域に達する事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よくぞ、ここまで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇学真視点

 

 

千葉と速水が狙撃して、対先生弾が当たったと思ったとき、大きな爆発が起きた。

 

いや、本当の爆発というよりも…衝撃波に近い。周りのものを吹き飛ばす勢いがあった。

 

 

先生の周りで狙撃していた生徒は、海に投げ飛ばされる。フライボードで水圧の檻を作っていた生徒は体制を崩して海に落ちていく。

 

 

 

 

そして海から顔を出すと、殺せんせーは居なかった。

 

 

 

 

いま確かに、千葉と速水の撃った弾が殺せんせーの目の前まで来ていたのが見えた。

 

という事は…殺せたのか…⁉︎

 

 

 

 

 

 

「まだだ!奴には再生能力がある!片岡さんを中心に水面を見張れ!」

「はい!」

 

 

 

 

烏間先生に言われた通り、殺せんせーが本当にいないかどうかを探す。逃げ道もなかった。タイミングもバッチリだ。

 

 

 

 

 

だから殺してないとおかしいんだ。そうじゃなかったら……

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おい…あそこ…」

 

 

 

 

 

 

杉野が指差す方向を見ると、泡が不自然に発生しているところが見えた。E組の生徒の誰かではない。

 

 

じゃあその正体は何か。それは全員がなんとなく察した。可能性がある解答は1つしかない。

 

 

 

その泡に向かって銃を向ける。もちろん真剣だ。相手はマッハ20の怪物、一瞬でも気を抜けば逃げられてしまう。

 

 

 

そうしていよいよ泡を発しながら何かが現れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず変な声が出てしまった。

 

 

 

俺たちの前に現れたのは、オレンジ色の小さな丸い生物が入っている透明なボールだ。…何アレ?

 

 

 

 

「こ…殺せんせー?」

 

 

 

まさかと思い可能性のある名前を呼ぶと…それはコッチに向いた。その通りらしい。

 

 

 

 

 

「ヌルフフフ。これぞ先生の奥の手中の奥の手『完全防御形態』です!」

 

 

 

 

 

か…完全防御形態?

 

 

嘘だろ…ここに来て液状化とか脱皮じゃない隠し技かよ…

 

「外側の部分は高密度に圧縮されたエネルギーの結晶体です。肉体を思う存分縮めて、その分余分になったエネルギーで肉体をガッチリと固める。この形態なった先生は正に無敵、いかなる攻撃を受ける事はありません」

 

…つまり、高密度のエネルギーで攻撃を防ぐということか…?しかも、球体だから360°全ての方向からの攻撃を防げる構造になっている。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、その形態でいれば暗殺されることはないということか…?」

 

純粋に思った疑問だ。いざという時にその形態になれば、ずっと暗殺されないで済む。最初からその形態でいれば暗殺される心配も無かったと言うことになる。

 

「ところがそう上手く行きません。このエネルギー結晶は、約1日で自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体を膨らませて、エネルギーを吸収して元の身体に戻るわけです。

 

裏を返せば結晶が崩壊するまでの約1日間、先生は全く身動きが取れません。これにはさまざまなリスクを伴います」

 

…確かに、身動きが取れないという事は、危ないところに運ばれてしまう可能性もある。そう意味でリスクがあるということか。

 

 

 

 

「最も恐れるのは、この状態のままロケットに乗せられて遥か彼方の宇宙空間に飛ばされる事ですが…その点は抜かりなく調べ済みです。24時間以内にそれが可能なロケットは、今の世界のどこにもない」

 

 

 

 

 

…ダメだ。

 

 

 

完敗だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

いま俺らは…この生物を殺せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケッ何が無敵だよ。何とかすりゃ壊せんだろこんなもん!」

 

寺坂が殺せんせーを捕まえて、スパナで叩き壊そうとする。寺坂の力でやれば並大抵の物は壊せるかもしれない。

 

「ヌルフフフ、無駄ですねぇ…核爆弾でも傷1つつけられませんよ」

 

けどダメだな。壊れるどころかヒビが生える様子もない。鉄とかダイアモンドとかよりも硬い可能性がある。物理攻撃でどうこう出来ないと考えた方が良いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか〜、壊せないんじゃどうしようもないね」

 

 

 

 

 

 

 

橋の上に立っているカルマが寺坂から殺せんせーを受け取る。するとカルマは携帯電話の画面を殺せんせーに見せた。あ、嫌な予感…

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゅやあぁぁ〜〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

…思った通り殺せんせーの悲鳴が出た。

 

 

 

 

 

多分あの携帯には、さっき殺せんせーに見せた動画が映っているな。それを見せて精神的なダメージを与えている…なるほど、そっちの攻撃は通じるな。

 

 

 

 

 

「やめてー!手がないから顔を覆えないんです!」

「あぁこめんごめん。じゃあこれを固定しておいて」

「全く聞いていない!」

「さっきそこで拾ったウミムシを引っ付けておくね」

「うわぁぁ!キモ!ウミウシの裏マジキモい!!」

「あと誰か不潔なオッサン連れてきてー。コレけつの穴にねじ込むから」

「助けてーー!」

 

 

 

 

 

…なんか可哀想だな。

 

 

カルマの嫌がらせのレベルが高すぎて、見てるだけで殺せんせーが不憫だなと思ってしまう。ホント、こういう時のカルマは天才的だ。

 

 

 

 

 

「とりあえず解散だ。上層部とコイツの処分を検討する」

「ヌルフフフ、対先生弾とプールの中に封じ込めますか?その時はエネルギーの一部を爆発させて、さっきのように爆風で周囲を吹き飛ばしてしまいます」

「……!」

 

烏間先生の眉が動いたのが見えた。烏間先生も手がないみたいだ。

 

 

 

 

…そりゃこの状況からどうする事も出来ないだろ…

 

 

 

「ですが君たちは誇っていい。世界中の軍隊でも、先生をここまで追い込むことは出来なかった。ひとえに皆さんの計画の素晴らしさです」

 

 

 

 

 

 

()()()()()殺せんせーの褒め言葉が来た。けど、それで嬉しがる生徒はいなかった。今回の暗殺は、今までの中で最も力を入れて、最も暗殺できる可能性があったものだ。

 

 

 

 

それを防がれたんだ。今までとは受けるショックが全然違う。

 

 

 

 

 

 

虚無感ってこういう事なんだろうな。なんとも言えない虚しさというか…自分の中にあったものが全て無くなった感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その気持ちを抱いたまま、俺たちはホテルの帰路を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルの野外に位置するロビーに移動していた。みんな揃って元気をなくしている。みんなも異常な疲れを感じているんだろう。

 

その中で、俺は後ろの席の会話を聞いていた。その席には、俺らE組のスナイパーである千葉と速水が座っていた。

 

 

 

「俺さ…分かったんだ。『ミスった。この弾じゃ殺せない』って」

 

 

 

千葉の言葉だ。さっきの発砲に気になる事があったみたいだ。さっきの狙撃がミスったとは思わなかったけど、この2人には分かるのかもしれない。

 

 

 

 

「自信はあったんだ。リハーサルはもちろん、あそこより不安定な場所で練習しても外さなかった。

 

だけどいざあの瞬間、指先が硬直して視界が狭まった」

 

「…同じく」

 

 

 

…そうか。あの時千葉と速水はプレッシャーに呑まれていたのか。責任感が強い2人だし、俺たち以上に重くのしかかっていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

けど…それだけじゃない。原因はもう一つある。

 

 

 

 

 

 

 

もともと予防策として、霧宮に触手を斬り落としてもらうように頼んでいた。狙撃する千葉や速水に何があっても良いように。触手を10本以上失えば、2人の発砲に気づいても反応できないだろうと思っていたから。

 

 

 

 

 

 

それでも失敗したのは、2人が撃つ前に殺せんせーが2人に気づいたからだ。

 

 

 

そしてそのきっかけを作ってしまったのは俺だ。

 

 

 

 

 

 

もともとは複数の生徒が撃つ弾が殺せんせーの周りを行き交う事で殺せんせーの注意を分散させて、殺せんせーを殺す本命の弾…つまり千葉と速水の攻撃を分からなくさせる作戦だった。

 

もう少しで殺せんせーを殺せる。そう思っていた。おそらくみんなもそうだっただろう。

 

 

 

けどその時、俺は一瞬迷ってしまった。

 

 

 

少し前から、俺は殺せんせーを殺すかどうかを迷っていた。それに対して答えを出さないままこの暗殺に臨んだ。

 

 

 

そしていざあの場面になった時、本当にこのままで良いのかと迷って…今までそれなりに安定していた狙撃がぶれ始めてしまった。

 

 

 

そして俺の弾が1発だけ殺せんせーの服にかすった。

 

 

 

 

それを殺せんせーが気にしない筈がない。沢山飛び交う弾幕の中から自分を狙う弾を探す視点から、1発だけ乱れた狙撃の原因を探す視点になった。つまり…行き交う弾幕の外に意識が向いてしまった。

 

だから千葉と速水に気づいた。だから避けられたんだ。

 

 

 

 

「………クソ…!」

 

 

 

 

 

こんな屈辱感は、今までに感じたこと無かった。自我を持っている時から負けの感覚が身についていた俺は…今まで何かに本気で取り組んだ事は無かった。

 

 

 

本気で練習して、失敗するって…こんなに悔しいもんなのか…

 

 

 

 

 

「…どうした。学真」

 

 

 

俺が悔しがっているのが分かったんだろう。前に座っている霧宮が俺に声をかけてきた。

 

 

 

「お前が責任を感じる事はない。できうる限りの手は尽くした。そしてそれがダメだっただけの話だ。今回の事をキッカケに、また一からやり直しすれば良いだけの事だ」

 

 

 

…まさか霧宮に言われるとは思わなかった。

 

 

 

いや、霧宮だからか。実家の道場を継ぐという未来を失ってから今の状態になるまで色々と苦労してきたから、その割り切り方になっているのかもしれない。

 

 

 

 

次、か…

 

 

 

 

「そうだな…やってみないことには始まら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉が途切れたのは、言うべき言葉が思いつかなかったからじゃない。思わず言葉を止めてしまう事態が起きたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧宮……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いま、俺の前の椅子に座っていた霧宮が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然椅子から倒れ込んだからだ。

 

 




ある意味次回からリゾート島編の本番です。


次回『薬の時間』
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