浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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前回謝罪の時間を投稿したわけですが、私から皆さんにお詫びをしないと行けないことがあります。感想欄で言われたのですが、少し妙な食い違いが起きていました。自分の文章力の無さが原因です。そのせいもあり過去の話を少し訂正しています。とは言っても話の流れが大きく変わるわけではありません。


第85話 病院の時間 2限目

分かってはいたんだ。

 

 

矢田が俺の事を意識していたのは。

 

 

 

俺は鈍感ではない。寧ろ()()()()視線は気付きやすいんだ。今まで軽蔑するような目で見られることばかりだったからだと思うけど。

 

 

 

特に……

 

 

 

『あの時の学真くん…カッコ良かったから……』

 

 

 

 

 

 

あの言葉を聞けば、どんなに鈍感だったとしても気づく。カッコ良かったという言葉を使ったと言う事は、そういうことだ。

 

 

 

 

月日が経つごとにそれは確信になった。ときどき矢田の行動がそう言う事を裏付ける事になっていたから。

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

『さよなら、学真くん』

 

 

 

 

 

 

俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多川の父が経営している病院に来ている。俺はいま医者に診てもらっている最中だった。

 

 

「とりあえず順調だ。あと2週間ぐらいはそのままで様子を見る事になる」

 

 

眼帯のようにガーゼをつけられた状態で医者から説明をされる。2週間って、夏休みが終わる頃ぐらいか。残りの夏休みはこのまま暮らす事になるみたいだ。

 

 

「決して無茶はしないように。若いと言っても無茶は禁物だから」

 

「はい。気をつけます」

 

 

医者から説明を受けて治療室から出る。そこには待ってもらっていた渚たちがいた。

 

 

「どうだった?」

 

「このまま様子見だと。まぁ怪我をしたところが目だし慎重にした方が良いんだろうな」

 

 

一緒に来ていたのは、渚と杉野、奥田、そして竹林だった。

 

みんなでここに来た理由は2つある。1つは、俺の目の怪我の診察だ。まぁいまの様子を見ればそれは分かるだろう。

 

けど本命は違う。俺の怪我はついでみたいなものだ。…いや大したことないという訳じゃねぇけど、今回は大事な用事が別にある。

 

 

「さて、それじゃ案内するよ。霧宮くんのところに」

 

「ああ。よろしく頼むぜ、多川」

 

 

多川が俺たちを連れて病院の奥に入っていく。病院の奥には入院用の部屋がたくさんある。

 

 

俺たちの本当の目的は、ここに入院している霧宮の様子を見るためだ。

 

リゾート島でグラトラとか言う集団と戦った霧宮は、治療のために一足先に東京に帰った。そしてそのままこの病院に行ったみたいだ。

 

 

今日は霧宮の様子を見に来るためにこの病院へ足を運び、ついでに俺の怪我の検査をしたような感じだ。先に行っても良いとは言ったけど、みんな揃って俺を待ってくれたみたいだ。

 

 

「ここだよ。この部屋に霧宮くんがいる」

 

 

霧宮のいる部屋の前にたどり着いた。扉の横のパネルには霧宮の名前が書かれている。

 

霧宮が扉を開け、俺たちは部屋の中に入る。カーテンのようなものでベッドを囲んでいる。

 

カーテンを開いて中の様子を覗く。そこには布団に入ったまま本をを読んでいる霧宮の姿があった。あの本は…侍の物語か。

 

 

「思っていたよりは元気そうだな」

 

「元気ではない。思うように体が動かなくて失敗した」

 

「…ああ、暗殺(しごと)の話か」

 

 

アイツ来たのか。道理で問題集がたくさんある訳だよ。

 

いい加減に国家機密であるという自覚を持って欲しい。変装も全くなってないしおかしな行動を取るから、周りから変な目で見られているんだぞ。

 

 

「退院はどれくらいだと?」

 

「…1ヶ月後だそうだ」

 

「と言うことは、2学期が始まってしばらく経った後か」

 

 

まぁ、そうなるか。あの怪我の治療は1週間2週間で終わるようなものじゃないだろうし、1ヶ月とかぐらいかかってもおかしくない。

 

 

「それじゃ俺は用事があるから」

 

 

多川は部屋から出た。用事が何なのかは知らないが、恐らく父親のところに行ったとかだろう。

 

 

とりあえず好都合だ。

 

 

いまこの部屋には霧宮と俺たちしかいない。多川がいたから詳しい話は出来なかったが、アイツがいないから暗殺の事とかが話せる。

 

 

 

「霧宮…」

 

「分かっている。俺の見解を話そう」

 

 

霧宮も察してくれたみたいだ。俺たちが来た本当の理由も理解してくれたみたいだ。

 

ここに来た本当の理由は、ウィルスにかかっていたみんなを誘拐しようとしていた奴らの話を聞くためだ。奥田や竹林からは大体聞いているし、殺せんせーからも気にしなくても良いとは言われたが、どうしても聞きたかった。

 

竹林と奥田がいるのもそれだ。2人ともあの現場を知っている以上放っておくことはできないみたいだった。

 

 

「戦闘していた時だ。メンバーの1人が『付属品が抵抗するな』と言った」

 

 

付属品、か…

 

 

「…殺せんせーの、て事か?」

 

「恐らく。目的が殺せんせーだった以上はその可能性が高い」

 

 

なるほどね。俺たちE組の生徒はあくまで殺せんせーの付属品と認識しているわけか。鷹岡みたいに俺たちにも目的があるとかではなく、ついでに近いと。

 

 

「烏間先生から聞いたが、奴らはテロリストらしい」

 

「俺たちも聞いた。いま政府が取り扱っている問題の1つだと」

 

 

烏間先生からある程度の話は聞いているみたいだな。それならその話をする必要はないみたいだな。

 

 

「す、すみません…あの時一緒にいたのに力になれなくて」

 

 

奥田が話し始めた。あの時同じ場所にいながら助ける事が出来なくて申し訳なく思ったみたいだ。アレはしょうがないとしか思えないけど。

 

 

「良い。寧ろ出てこなくて助かった。足手まといが増えたらどうなっていたか分からなかった」

 

 

…あ、足手まとい、か…

 

 

「おい、それはちょっと失礼だろ」

 

「下っ端ではあったがそれなりに戦闘経験がある。奥田も竹林も来たところで戦力にはならない。そう判断したから部屋の中にいさせた」

 

「お前…」

 

 

やれやれ。

 

多分霧宮(コイツ)は自分の考えている事をそのまま口に出しているんだろう。足手まといと言ったのは意地悪とかじゃなく、本当にそう思っているという事なんだろう。

 

 

たまにいるけどな。悪気もなく自分の気持ちを率直に言うタイプ。

 

 

「まぁまぁ、とにかく無事で良かったよ」

 

 

渚の言葉で邪悪な雰囲気が無くなった。

 

良かったよ。渚がいてくれて。このまま険悪な状態になっていたかもしれない。

 

 

「…とりあえずはそれを喜んだ方が良いだろう。仲間を1人失わなくて済んだしな」

 

「…そう、だな。被害がない事を喜ぶべきか。あの日で俺は死んでいたかもしれないし」

 

 

とりあえずはひと段落ついた。過ぎた事をゴチャゴチャ言っても仕方がない。この話はこの辺りで終わらせた方が良いだろう。

 

 

「早く治せよ。しばらくの間一緒に動けないわけだからな」

 

「そうだな。肝試しがあったみたいだが、参加出来なくて残念だ」

 

 

いやそれは残念に思う必要は無いと思う。まぁコイツはビビりそうにないよな。逆に幽霊を斬ろうとするかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば…学真がセクハラをしたと聞いたが、それは本当か?」

 

 

 

 

 

………ハ?

 

 

 

 

 

 

 

「…おい、それどこ情報だ」

 

「少し前にカルマが来て、その時に知った。その時の写真も見せられたのだが…」

 

 

 

…あ…っ、あの野郎…!

 

 

何余計な情報を教えてやがるんだ。

 

 

 

 

しかも写真があると言うことは…

 

 

 

帰ったフリして見てやがったのかよ!

 

 

 

 

 

 

「…それは誤解だ。というより事故だ。セクハラとかでは断じてない」

 

「…そうか。そのように覚えておく」

 

 

覚えておくって…セクハラではないとだけ認識してくれればそれでいいんだけど。けど説明したら余計にややこしくなりそうだな。

 

 

「大変だったのは事実だからな。コイツその後しばらく落ち込んでいたし」

 

「えっ…そうだったんですか…?てっきり仲直りしたと思っていたんですけど…」

 

「まぁ色々あってね。仲直りするまでに結構時間がかかったんだ」

 

 

コイツら…なんでその話ばかりしやがる。当事者がその話を聞くと凄く変な気分になるんだけど…

 

 

 

 

それからしばらくの間霧宮と話をして、俺らは病室から出た。思ったよりは深刻ではなかったから安心もしたし、これならしばらく経てば霧宮も学校に来れるだろう。

 

病院の出口に差し掛かる。病院から出るなら出口を通るのは当然だし、そこで何か起こるとは思っていなかった。

 

 

 

「おーい、学真」

 

 

 

その声は病院の方から聞こえた。振り向くと多川が来ていた。

 

 

 

「…どうした?」

 

 

何か用があるのかと思い、要件を尋ねる。

 

 

「いやちょっと悪いけど、ちょっとついて来てくれない?」

 

「…いま?」

 

「そう。直ぐに終わるから」

 

 

…すぐに終わるというなら、ついていった方が良いんだろうな。一緒にいた杉野たちの方を見ると、俺の言いたい事を察したようにうなづいた。

 

そして俺は多川の後ろをついていきながら、病院の奥の方に移動していった。

 

 

 

 

 

多川に連れていかれたところは、会議室という部屋だった。病院関係者のみが集まって会議をする場所というところだろう。

 

 

扉を多川が開けてくれて、部屋の中にはいる。会議室というだけあってあまり物が置かれていない素朴な内装だ。

 

 

そして部屋には俺と多川と…もう1人いた。

 

 

 

「連れて来ましたよ。彼が浅野学真くんです」

 

 

「ああ、そうか」

 

 

 

椅子にもたれかかるように座っていた男は、多川の紹介を聞いた後席を立った。

 

 

さっきまで座っていたから気づかなかったけど、結構高いな…2メートルぐらいはありそうだ。渚が見たら羨ましがるんだろうな。

 

そんで身長だけじゃなく髪も長い。男ではあるんだけど、髪はロングという奴だ。ボサボサと言うわけじゃなく、キッチリ整えられている髪が肩のあたりまで伸びている。

 

 

 

「ほうほう…間違いねぇな。髪の色はちょっと違うが、()()()と同じ目をしてやがる」

 

 

俺の方をジロジロと見ながら男が呟いている。観察でもしているんだろう。すごく気持ち悪いからやめてほしい。

 

 

「…あなたは誰ですか?」

 

 

埒があかないと思い、とりあえず名前を聞いた。まだ名前を知らない状態ではなんの話もできるわけがない。

 

 

「おお、そうだったな。まだ名前を名乗っていなかった」

 

 

…なんか適当な男だな。リゾート島のホテルで会ったアクロもかなり適当な男だったけど、コイツもコイツで酷い。アクロは余計な事ばかり話しそうな男だったけど、この男は大事な事を言わない感じがする。

 

 

「俺の名前は金宮 白蓮(はくれん)だ」

 

「…金宮…?」

 

「…何か思い出した事があるか?」

 

 

 

待てよ。聞き覚えがあるぞ。その名前。それも歴史の教科書に載っている人物の名前を覚えているとは違って…何というか、体がその名前を覚えているというか…反応しているような…

 

 

「…あのデパートのオーナーか?」

 

「おう。いつも利用して頂きありがとうございます」

 

 

…そうだ。俺が割と使っているあのデパートの経営者…あの名前が金宮だ。デパートの中でその名前をよく目にしているし、新聞でも取り上げられていた。しかも俺はその名前を別の男から聞いている。

 

 

「…あの時、矢田を連れ去ろうとしていた奴の…親か」

 

 

1学期の時だ。

 

デパートに買い物に行った時に、矢田は1人の男に迫られていた。その男が金宮だった。俺たちの1つ上の男で、矢田に好意を持っていたアイツは矢田を捕まえようとしていた。その時たまたま通りかかっていた俺がアイツを止めようとして…とんでもない事をしてしまった。

 

金宮はあのデパートの経営者の息子と言っていた。ということは経営者であるこの男はアイツの父親と言うことになる。

 

 

「…何しに来たんだ」

 

 

焦っているせいか、威圧するような言い方になってしまった。

 

あの時金宮はビビリまくって逃げていったと聞いている。多分、トラウマを植え付けられたんだろう。

 

その父親がここに来る理由として真っ先に思いつくのは、落とし前をつけに来た、というものだ。息子が酷い目にあったとしたら、親がする行動はその原因に何かしらの形で仕返しをすると言うのが多い。

 

 

「ピリピリするなよ。詫びに来たんだ」

 

 

俺を制しているように手を前に出しながら、金宮の父は口を開けた。

 

 

「…は?」

 

 

予想とは違う返答に、頭の中に疑問符が浮かんだ。

 

 

「アイツのやった事は部下から聞いたよ。女を連れて行こうとしてお前をボコったんだろう?だからお前には謝らないといけないと思ったんだ」

 

 

…いや、確かにその通りだ。さっき親は仕返しをする事が多いと言ったけど、息子に非がある場合、相手に謝りに行く親もいる。

 

けど、それにしてはおかしい。謝りに来たと言うならおかしいところがいくつかある。

 

 

「…なんでいま?それに、なんでここで?」

 

 

まずなんでいま謝りに来たのかと言う事だ。もし謝りに行くならその事件が起きた直後に来る筈だ。あの事件が起きてから1ヶ月以上は経っている。あの話についてはもう考えてすらいない話だ。

 

しかもなんでここに謝りに来たんだと言う事だ。俺の家が分からないにしても、金宮は俺と同じ椚ヶ丘にいるわけだから、学校に謝りに行けば良いはずだ。なんで病院に来たのかが分からない。

 

 

「ここのところ忙しくてよ。しばらく時間が取れなかったんだ。漸く時間が出来たと思ったら、どこか遠くの島に行ってしまったらしいし、謝りに行けるタイミングが掴めなかったんだよ」

 

 

忙しかった…まぁそれもそうか。デパートのオーナーぐらいになると予定が結構入っていてもおかしくはないか。

 

 

「それで今日が謝りに行けるタイミングだったと言うわけか」

 

「あぁ。お前が病院に行くと聞いたからな。少し前に来てここの院長に頼んだんだ」

 

 

…それで院長の息子である多川が案内してたと言うわけか。それにしても病院に『謝罪する場所を取ってくれ』と頼むのはなかなかシュールだな。それで病院の人が貸してくれたのも事も問題だけど…

 

 

「なんで俺が病院に来ると分かったんだ?」

 

 

…ふと気になった。なんで今日俺が病院に来る事を知っていたんだと。その情報を手に入れる事って普通は出来ないと思うんだが…

 

 

「…お前の親父から聞いたんだよ。今日この病院に来るってな」

 

 

……は?

 

 

なんでそこで親父が出て来るんだ?

 

 

いや、確かに親父は知っている。この病院に行くために必要な費用を請求しに行ったから。

 

けどなんでコイツは親父に聞いたんだ?親父のところに話をしに行こうとする親はなかなかいないし、そもそもいま学校に行っても親父は居ないんだが…

 

 

「なんで親父から聞いているんだ」

 

「そりゃお前、中学の頃の同級生だったからだよ。いわゆるダチって奴」

 

 

……マジかよ。

 

 

ここに来て、親父の友達と来たか。

 

 

 

「夏休みが始まる頃に学校に行ってアイツに会ったら、E組は南の島に行くからそれまでは会いに行くのを控えてくれと言われたんだよ。その時にお前に会う日を決めたは良いんだが、その日に限ってお前は病院に行くと来た。他の日に変える事が出来ないから、仕方なくここの病院を借りて貰ったというわけだよ」

 

 

…なるほど。どうしてこの日この場所を選んで来たのかというよりも、この日この場所にしか時間が無かったというわけか。

 

それにしても親父の友達とは…仕事の関係者なら何人も会った事があるけど、友達とかは会った事がない。あまり知り合いも紹介されなかったし……

 

 

 

「おい、まさかと思うけどここの院長もアンタの…親父の知り合いだったりするのか?」

 

「察しが良いな。アイツも俺らと一緒にいたよ。3人で一緒にいた時代が懐かしいね」

 

 

予想通りか。なぜ病院が謝るための場所を用意してくれたんだろうと思っていたんだけど、知り合いと言うなら納得はできる。

 

ていうか親友構成エグすぎねぇか?理事長にデパートの経営者に院長って…恐ろしい経歴のグループが出来上がったよ。類は友を呼ぶ理論?

 

 

 

「ウチのバカ息子が迷惑をかけた」

 

 

金宮の父親は、俺に向かって頭を下げた。適当な男というイメージがあったけど、その謝罪には誠意がある。

 

なんというか…思ったよりもマトモだったな。あの男の父親だからそう思わなかったけど…

 

 

「別に言い訳をするつもりはないけどな…俺とか女房が家にいないから、アイツはずっと1人だった。だから淋しがっているんだと思う」

 

「…それで矢田をつけ回していたと?」

 

「一緒にいてくれる奴が欲しかったんだろう。できれば許して欲しい。責任はいくらでも取る」

 

 

責任は取ると言われても困る。それは望んでいない。俺が望んでいるのは、もうこれ以上矢田に接触しないで欲しいという事だ。

 

けど、もしアレが淋しさの現れだとするなら、それを止めるのも酷な気がする。

 

 

「…二度とあんな事しないと誓うなら、別に良い」

 

 

これで許すのは甘いと言うのかもしれないが、迷惑な事をしないと言うのならそれで良かった。何かされたとしても、反省したのならそれで良いし、それ以上の事を要求するのは気が引けた。

 

 

「俺はそれで良いが、それとは別に矢田には謝れよ」

 

 

それはそれとして矢田に謝ってもらう事にする。俺が許したからと言って済む問題じゃない。アレの件で1番嫌な思いをしたのは矢田だ。ソイツに謝らない限りは解決とは言えないだろう。

 

 

「ああ。分かったよ」

 

 

ひとまず了解はしてくれた。まぁここで断るような事は無いだろうけど。

 

携帯を取り出して矢田に電話をする。この部屋なら電話しても構わないと多川に言われたから問題ない。

 

 

『はい。矢田です』

 

「矢田。俺だよ、学真だ」

 

『あっ…学真くん』

 

 

矢田が電話を取った。俺だと分かったとき、少しだけ言葉に詰まっていたな。

 

 

「もし時間があるなら、俺たちがよく行く公園に来てくれないか?ちょっと大事な用事があるんだ」

 

『えっ…』

 

「…矢田?」

 

『…うん、大丈夫。今から行ったら20分くらいだけど…』

 

「オーケー、俺もそれぐらいに行く」

 

 

携帯を切った。矢田があの公園に着くのは20分と言ってた。ここからあの公園に行くのは…せいぜい15分。今から出発すればコッチの方が若干速く着くだろうな。

 

…それにしても、一瞬矢田が動揺していたな。声をかけるまで反応が無かったし、一体何があったんだろうか。

 

 

「それじゃ行くぞ。俺を待ってる友人がいるから、そっちに話をしてからになるが」

 

「あぁ。分かったよ」

 

 

そう言って俺と金宮の父親は部屋を出た。矢田の待っている公園に行くために。

 

 

 

 

 

 

 




金宮という男を覚えているでしょうか。今回はその父親を登場させました。次回は矢田とその男を会わせる話になります。
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