浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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暗殺教室の2次創作でありながら恋愛小説として楽しめるようにこの小説を作っているわけですが、そもそも私は恋愛系統の小説やドラマをあまり見たことが無いことに改めて気づきました。知識が少ないながらも精一杯作ったわけですが違和感を感じるかもしれません。それでも『作者頑張れ』という気持ちで見ていただけると助かります。


第86話 模索の時間

病院を出てから13分後に公園にたどり着いた。公園には遊んでいる子どもがいるが矢田はいない。思った通り俺たちの方が先に着いたみたいだ。

 

 

「矢田が来たら、まず俺が話をする。そこから謝罪しろよ」

 

「分かったよ。さっきみたいに疑われる目で見られるのはゴメンだ」

 

 

…まぁそりゃそうだろうな。あの時は説得が大変だった。

 

病院から出る時の話だ。渚たちと会って、今から公園に行くと話をしたんだけど、そこで何をするのかを説明する時に面倒な事になった。

 

今からする事を説明する為には、当然あのデパートで起きた事件のことを話さないと行けない。そしてここにいるメンバーの中にはあの事件の事をよく思っていない奴がいる。

 

ここにいる金宮の父親は、あの事件を起こした男の父親である。そうするとかなり心配された。主に杉野から、コイツと一緒に居て大丈夫なのかと言われたし。

 

そしていまなんとか説得し終わってここにいる。なんで俺が説明してからになったかと言うと、ここでいきなり矢田にコイツと合わせたら怖がらせてしまうかもしれないと思ったからだ。矢田はあの事件の被害者だし、その事件を起こした男の父親と知ったら、落ち着こうとしてもなかなか上手くいかないんじゃないかと思う。

 

だから俺が最初に説明をすれば、少しは落ち着くんじゃないかと考えた。あの事件の当事者が大丈夫だと言えば少しは効果があるだろう。

 

 

「…お」

 

 

そうこう考えているうちに矢田が来た。言っていた通り20分で着いたみたいだな。

 

矢田も俺の方に気がついたみたいで、俺のところに来た。そして俺の後ろにいる金宮の父親を見て少し警戒している。

 

 

「えっとだな。まず俺が呼んだ理由を説明するけど…」

 

 

予定通り説明を始める。あのデパートの事件について話をして、ここにいる男が金宮の父親である事を説明する。

 

思った通り、矢田は金宮の父親を更に警戒していた。あからさまな敵意は見せなかったけど、少し怯えているような目になっていた。

 

 

「大丈夫だ。一応俺と話は済んでいる。コイツはお前に謝りに来たんだ」

 

 

矢田に大丈夫である事を説明する。納得してもらえたようで少し落ち着き始めた。

 

 

「あんたが矢田 桃花だな。俺のバカ息子が迷惑をかけた」

 

 

金宮の父親が矢田に頭を下げている。とりあえずはこれで矢田に謝らせるという目的は達成された。後は俺がいなくても大丈夫そうだな…

 

 

「えっと…その、大丈夫です……」

 

 

……ん?

 

矢田の様子が少しおかしい。なんかマズい事でもあるんだろうか。

 

そういえば…電話の時もおかしかったな。いつもに比べてぎこちないというか、とにかく困っている感じだった。

 

 

「詫びとしてお前ら2人にサービスする。一万円以下なら1回だけ俺が商品をやる事にする」

 

「…そんな事突然言われても、欲しいものなんて…」

 

「別に今日じゃなくて良い。これでもケジメのつもりだ。コレに電話してくれれば、俺が話を済ませておく」

 

 

金宮の父親からカードみたいな物を渡される。これって…名刺か?この男の名前が書いてあるし、裏には電話番号が書かれている。これに電話しろということか。

 

 

「…まぁとりあえず、矢田は許したみたいだし、もう帰っても良いんじゃないか」

 

 

もう終わらせても良いと思い、金宮の父親に言った。特にこれ以外にやる事なんてないし。

 

 

「…これで良いのか?」

 

「…矢田はこれで良いか?」

 

「あ、うん……」

 

 

ひとまずこの話は無事に終わった。金宮の父親は後ろを振り向く。そのまま歩いて帰るだろう。

 

 

「ああ、そういえば。浅野学真」

 

 

すると何か思い出したように話しかけてきた。

 

 

「お前は、自分の親父をどう思っている?」

 

「親父…?」

 

 

聞かれたのは、親父の事だった。その質問は割と困る。どう思ってると言われても、あまり思う事がないし。

 

 

「…化け物だと思う。力も性格も、親父の事はあまり理解出来ない」

 

 

なんとか答えをひねり出した。間違ってはいないと思う。まぁ本物の化け物はE組校舎にいるんだけど…

 

 

「なるほどね」

 

 

それだけを聞いて金宮の父親は行ってしまった。結局何がしたかったんだ。さっきの質問も意味がわからないし…

 

 

「あの、学真くん……」

 

 

あっ、いけね。矢田の事を放ったらかしにしていた。

 

 

「すまなかったな。アイツ今日しか時間が取れないと言っていたから、なるべく今日のうちに済ませたかったんだよ」

 

「…うん、大丈夫……」

 

 

矢田は少しビックリしたのかもしれないな。突然来てくれなんて言われて困っただろう。

 

 

「じゃあ、またね」

 

 

矢田は俺に手を振って、そのまま向こうの方に行こうとしている。このまま帰るつもりだろう。

 

 

やっぱりおかしい。

 

 

特に体とかに変化があるわけじゃないが、今の矢田は元気が全く無い。去ろうとしている後ろ姿も、かなり淋しそうに見える。

 

考えてみれば、さっきからかなりぎこちなかった。電話の時もそうだった。

 

 

何かあるんじゃないか。

 

いま矢田は何か抱えていて、それを打ち明けずにいるんじゃ…

 

 

「おい、矢田」

 

 

向こうに行こうとする矢田に声をかける。矢田は進もうとする足を止めて俺の方を向いた。

 

 

「お前、どうしたんだ?今日かなりおかしいぞ」

 

 

矢田からの反応はない。動かずにしばらく止まっていた。けど、表情が少し硬くなったのが見えた。

 

やっぱり何かある。

 

 

「だ、大丈夫…なんでもないから」

 

 

矢田は何も言わずにそのまま行こうとしていた。このままだと矢田は打ち明けずに立ち去ってしまう。

 

急いで矢田の近くに行き、肩を掴んで矢田を止める。

 

 

「嘘をつくなよ」

 

 

矢田は俺の方を見て困惑しているようだ。まだ言いたくないんだろうか。

 

 

「お前が何を言おうと、今日はおかしい。話している様子も変だったし、いまもそうやって逃げるように行こうとしている。いつものお前だったらあり得ないんだ」

 

 

あまり抱え込んで欲しくないと思っている。俺の罪をみんなに打ち明け、受け入れられた時は気持ちが軽くなった。みんなと支える力の大事さをあの時始めて感じたんだ。だから1人で抱える事がとても辛い事であると、この時の俺はシッカリと記憶している。

 

 

「言いたくないんだったらそう言ってくれ。そうやってただ嘘をつくだけだと…」

 

「そんなに気にしてるんだったら……」

 

 

俺が話しかけている時に、矢田が話し始めた。さっきまでの途切れ途切れになっている話し方と違い、ハッキリと聞こえる…

 

 

「なんで気づいてくれないのよ!!」

 

「………えっ?」

 

 

突然の大声で気が緩んだ俺は、矢田を掴んでいる手の方も力が緩んでいた。勢いよく俺の手を払いのけて、矢田はそのまま向こうの方に歩いて行った。

 

 

「気づかず…?」

 

 

1人取り残された俺は、さっき矢田が言っていた事をもう一度振り返る。

 

結局聞きたかったことは聞けなかった。けど、さっきの矢田の言葉は、気持ちが含まれていたような気がする。怒っているようで、結構悲しい気持ちが…

 

 

 

「あーあ、矢田さん怒っていたね」

 

 

 

…え?アレ?

 

 

 

「…なんでお前がいるんだ、多川」

 

「いや最初からずっと一緒にいたよ」

 

 

…そうなの?

 

全然気づかなかったんだけど。金宮の父親と一緒に病院を出た時も、公園で矢田を待っている時も、多川の存在に気づかなかった。こいつ、もしかしてスパイ並みに監視力が高いのか?

 

 

「ちょっと気になってね。こうなるんじゃないかって」

 

「…お前はこうなる事が予測できていたということか?」

 

「うん。冷静に考えてみれば分かると思うよ」

 

 

簡単に言ってるけど、俺には全く分からない。矢田に怒られるなんて思ってもいなかったし、その理由も見当がつかない。

 

 

「じゃあさっき矢田さんに電話した時の事を思い出してごらん?」

 

「矢田に電話をした時?」

 

 

そう言われて、病院で矢田に電話をした時の事を思い出してみる。あの時は会議室で、金宮の父親と多川が同じ部屋にいた。

 

俺は矢田に電話していた。金宮の父親が謝りに行くと言っていたから、公園に来て欲しいと。

 

 

「その時君が言った言葉を思い出して」

 

 

その時に言った言葉?なんて言ったんだっけ?

 

確か…

 

 

 

 

 

 

『もし時間があるなら、俺たちがよく行く公園に来てくれないか?ちょっと大事な用事があるんだ』

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

イヤ、待てよ。そんなバカな。そりゃ()()()()()()聞こえるのかもしれないけど、いくらなんでも…

 

 

 

でも、もしそうだと仮定したら、さっきから気になっていた事にも説明がつく。

 

 

 

 

まして、昨日は……

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「気づいたみたいだね」

 

 

 

嘘だろ、オイ。まさか矢田は()()を期待していたのか?それでさっき怒っていたのか?

 

 

 

 

 

 

「その、矢田は……」

 

 

「告白されると思っていたんじゃない?それで実際は違ったから少しショックだったと思うよ」

 

 

マジかよ。

 

忘れていた。昨日のことを。昨日矢田が肝試しの時に言ったセリフの意味を聞いてきた時のことを。その時も矢田は少し悲しそうにしていたんだ。

 

あの時はその理由も察していたと言うのに、金宮関連の話ですっかり忘れてしまった。

 

 

 

それで『なんで気づいてくれないの』というわけだ。

 

 

 

 

「はぁぁ…」

 

 

 

ドカッとベンチに座る。穴があったら入りたいって気分だ。目を隠すように自分の顔を触るととても熱い。鏡を見なくても赤くなっているのが分かる。

 

あまりにも情けない。何も気づかずに矢田を問い詰めていた自分に腹が立ってくる。そのまま自分に勢いよく2、3発殴りたい。

 

 

「それで、どうするつもり?」

 

 

多川の声を聞いて、思考が現実に引き戻される。そうだ。過ぎた事をグチグチ言っても仕方がない。いまするべき事を考えないと…

 

 

「…ひとまず謝る。それで関係が元どおりになるとは限らないけど」

 

「違うよ」

 

 

これからするべき事について話しているところを遮られた。多川はベンチに座っている俺の正面に立っていて、その目はかなり真剣だった。

 

 

「矢田さんの想いに対してどうするのって話。気づいているだろ。彼女がお前に対してどう想っているのか」

 

 

…そういうことか。考えてみれば矢田の弟が俺を矢田の彼氏と聞いている時もいたんだっけ?ひょっとするとコイツも矢田の気持ちは分かっていたんだろうか。それにしても、俺が矢田の気持ちに気づいていた事に気づいていたとは。相変わらず観察力は鋭いな。

 

 

「どうこうするつもりもない。いつも通りにしようと思っている」

 

「…それで満足してるの?本当はそう思っていないでしょ」

 

 

…やっぱりコイツに嘘は通じないか。

 

コイツは他人の気持ちに敏感だ。話している奴が本当はどう思っているのかを高確率で当てる。勘が冴えているのか、それとも心理分析なのかは分からないけど。

 

 

 

「ああ。けど…」

 

「…けど?」

 

「俺には矢田を幸せにする事が出来ない。

 

昔友達だった奴がいたけど、俺は守る事が出来なかった。苦しんでいた時、助けになることができなかった。だから俺にはアイツの隣にいる権利がない」

 

 

俯いて喋っていくうちに、あの時の記憶が蘇った。日沢が死んだあの日のことを。

 

俺は守れなかった。あの時俺がもっとちゃんとしていれば、あんな事にはならなかった。

 

矢田を守る事が出来ない。幸せどころか不幸にさせてしまう。だから俺には、矢田の気持ちに応える事が出来ない。

 

 

「随分最もらしい理由をつけているよね」

 

「えっ……」

 

 

顔を上げると、多川が怖い表情になっている。いつものような爽やかさは全く無かった。

 

 

「そうやって最もらしい理由を出して、自分の感情から目を逸らして満足なの?

 

お前八幡さんに言ったじゃないか。『いま以上の力が必要で、強さが必要だ』って。気持ちから目を逸らしている奴が強くなれる?」

 

「…それ、は……」

 

 

ぐうの音も出ない。確かにその通りだ。俺がやっているのは最もらしい理由をつけて、無理やり納得しているだけ。

 

八幡さんはよく言っていた。『強くなるためにはまず自分の気持ちと向き合うことだ』って。いま目を逸らしているままじゃ強くなれない。

 

それだと変わらない。それが嫌で変わりたいからあの道場で訓練しているんだ。

 

 

「勘違いするなよ。他人の支えになるのに守れる守れないは関係ない。必要なのは守るか守らないかだ。

 

もしお前が守る覚悟が無いんだったら、そのまま怯えている事を勧めるけどね」

 

 

多川は踵を返して立ち去っていく。気がつくと俺ひとりが取り残されていた。

 

分かっている。アイツの言っている事は正しい。俺がやっているのは自分に嘘をついて誤魔化して納得しているだけ。俺が変わろうとしない限り変わりはしない。

 

けど、俺にはその一歩を踏み出す事が何も出来ない。どうしてもビビってしまう。

 

多川にここまで言われたのに、なんて情けないんだろう。

 

 

 

もし、俺にもう少し勇気があったなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この恐怖も何とかなるのかな。

 

 

 

 

 




そろそろ学真の中では答えを出す時期になります。矢田さんとの恋愛に対してどう向き合っていくのか、この夏休みで出す答えに期待してください。
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