現実の苦さを中和する甘い甘いプリンの話が始まります。
『君は甘い。自分自身に対して』
何かあったら、必ず授業がある。俺の家ではそれが当たり前だった。
完璧すぎる父親は、何においても非の打ち所がなくて、逆に俺の至らないところはいつも見つけ出される。その度にこうやって授業が始まっていた。
その授業をしている時の父親の目は、決まって笑っていた。俺と話している時はいつもその目だ。それ以外の目なんて見たことがない。
俺はこの人の、本当の顔を知らない。
◇
「じゃあ、そうなると分かっていてあの盾を渡したということか?」
「まぁな。A組に行く事になったばかりの竹林には、何を言ったとしても説得力に欠けると思ったからな。あの日がベストタイミングだったんだよ」
竹林にあの盾を渡した事を前原や磯貝に話している。あの時竹林がベスト経営者の盾を取り出したとき、俺以外のみんなは驚いただろうしな。
「それにしても…竹林が戻ってきてくれた事は嬉しかったけど、まさかああいう風に戻ってくるとは思わなかった」
「少し乱暴なやり方だとは思うけど、それ以外に方法はなかったしな」
磯貝が笑いながら竹林が戻ってきた事に驚いている。言っていることも話し方もイケメンだ。好感持てるわけだよ。
磯貝のセリフから分かると思うけど、みんなは竹林の復帰を喜んでいる。
あの日、竹林と別れた時はみんな心配していた。A組に行ってから大丈夫なのかって。それこそA組の生徒みたいになるのは嫌だっただろうし。
一部の生徒は遠くから竹林の様子を見守っていた。正直バレたりしないだろうかと心配になったが、何故かバレずに済んだらしい。明らかに種類が違う葉っぱを頭に乗せて隠れても意味がないだろとは思っていたが…
因みに俺は殺せんせーに頼んで理事長室の中に入った。竹林は自分の状況に迷う事になるだろうと思っていたし、その時に自分の進む道を選択する機会を与えたかったからな。
これで一件落着というやつだ。竹林の選択によっては暗殺がやりづらくなるかもしれないけど、戻ってきてくれたし、何より竹林は火薬関係の技術を会得している最中だ。竹林が自分から動くとは思っていなかったけど、戦力向上にも繋がるし結構いい感じになった。
こうやってまたクラスのみんなが揃ったとなると嬉しいもんだ。
「それにしても…なんでお前らがここに来ているんだよ」
「それ今更聞くか?」
俺たちがいま来ているのは、俺がよく来ている喫茶店だ。テスト勉強の時は色々とお世話になったし、そうじゃない時でもここにくる事は良くある。
以前桃花と倉橋と、霧宮と一緒にここに来た事がある。その時は確か黒崎もいたけどな。
息抜きついでに店の中に入ったら、磯貝と前原がいた。まさかこの2人に会うとは思っていなかった。2人とも喫茶店に来るイメージが無かったし。
「2人で一緒に飯食おうかなとは思ったけどな。少し前に矢田から勧められたから行こうかという事になったんだ」
「ああ、なるほど」
なるほど、桃花が勧めていたのか。どうやらこの店を気に入ってくれたみたいだな。一緒に行った甲斐があったぜ。
「お前矢田と一緒にここによく来るんじゃねぇか?」
前原がニヤニヤとした顔で聞いてくる。チクショウ、何かあったらそれで弄りやがって。
二学期に入ってから、ずっとこんな調子だ。俺に桃花の話を振ってきたり、2人きりにさせることがあったり…それを見て楽しんでいる奴らばかりだ。竹林がE組から離れた時は流石にそんな気分じゃ無かったのか、弄ろうとする奴はそんなにいなかった。けど竹林が戻ってきた瞬間に思い出したかのようにみんなから弄られる。それどころか竹林もソッチ側だ。
「あんまり面白がるな。そりゃ何回か一緒に来たことは…」
《カランカラン》
「すみません。友達が2人ほどいると思うんですけど…」
「あ、はい。ご案内致しますね」
……へ?あの声、聞いたことがあるんだけど…
「おまたせ、磯貝くん…アレ?学真も来ていたの?」
「…片岡……」
店員の案内に従って、何人かの女子生徒が来ている。先頭には片岡がいる。その後ろに岡野と倉橋…
「…学真、くん……」
そして思った通り桃花がいた。
「…おい、どういうことだ」
「いや、折角だし片岡たちもどうかなと思って誘ったんだよ。学真がここに来るとは思っていなかったし」
…ああ、そう。
つまり最初から片岡たちが来る予定だったのね。
どうりで大きい席なわけだよ。2人にしては席が多すぎるから、なんでここに座っているんだろうなとは思っていたけど。
そしてこれが俺を一緒の席に座らせた理由か。後で桃花が来ると分かっていたから、敢えて帰ろうとする俺を引き止めたというわけだ。
「まさかこういう形で会わせて来るとは…」
「何も言わなかったのは悪いと思っているよ。学校では2人で喋る事も出来ないだろうし、ここでユックリと話したらいいんじゃないかな」
相変わらずのイケメンだ。前原と一緒に企んでいたんじゃないかなとは思っていたけど、そんなことなさそうだな。警戒心が薄れていくような感じがする。
まぁそうだよな。学校では話す機会が無いのも確かだし、ここで話し合うのも良いかもしれないな。
「それじゃ、席を変えようかね」
俺たち3人は立ち上がって、女子と一緒に席に座る。
案の定、俺と桃花は隣どうしにされたわけだけど…
そこまでして俺と桃花を近づけさせたいか。
因みに俺は机の端に座っている。俺の左のほうには桃花、倉橋、磯貝という順番に座っている。そして俺の斜め前には前原がいて、横の方に岡野、片岡と続いている。
そしてみんなで適当にちょっとしたデザートを頼む。喫茶店なわけだし、別にコーヒーだけ頼んでも悪いわけじゃないと思うけど。ちなみに磯貝は何も頼んではいない。片岡とかから貰ったりするのかもな。
さて、何を話すとするか。話す機会は与えられたものの、何を話していいのかが分からん。カップルの間では何を話すのが妥当なんだろうか。考えてみれば、今までこういう経験なんてなかったし。
「…桃花は、ケーキとかは好きか?」
とりあえず目の前にケーキがあったから、それに関する話題を出した。
「あ、うん…好きな方かな」
「へぇ……特に何か好きな奴はあるか?」
「うーん、と…果物が入っているのが好きかな」
「そうか……」
なんだこのぎこちない会話。
自分で言うのもなんだけど、下手くそにもほどがあるだろ。そうか、てなんだ。続けられないのか。自分で言うのもなんだけど(2回目)。
斜め前に座っている前原の面白がっている顔が腹がたつ。女たらしなだけあるしどうせ慣れてるんだろうな。そんな奴から見たら俺の会話は傑作にしか思えないんだろうし。
「そういえば…学真ってこう言う甘いものを食べているイメージがないけど」
突然、岡野から聞かれた。次に何を話そうか迷っていたから助かった。
それにしても…俺って甘いものを食べているイメージないのか?…まぁ親父のイメージが影響されているんだろうけど。
「甘いのは好きだよ。美味いケーキ屋があったらメモに残すぐらいには」
「そういえば…自宅にお菓子が置いてあるんだっけ。それも沢山」
片岡が言った通り、俺の部屋には差し入れ用のお菓子を沢山置いてある。親父の関係者が俺のところに来る事もあるから、念のために置いているようなものだ。
そんでこの前クラスメイトが俺のところに来た時それを出した。考えてみれば、よく人数分あったな。
因みにケーキというよりは紅茶が好きだ。プロが入れる奴は飲んだ瞬間に香りが口の中に広がる。しばらく余韻に浸っておきたい気分になるんだよな。特にイギリスのブランド品なんかは…
「ボンボンの趣味なんて誰も聞いてないから」
なんだよつれないな。せっかく人が気持ちよく話しているというのに…
『皆さん、茅野さんからメールが届いています』
うお…ビックリした。
今の声は律か。どうやら俺ら全員にアナウンスがあるとは。
それにしても…茅野から?なんか珍しいな。茅野って基本的に渚について来ているという感じがあるから、自分から動き始める人に見えなかった。茅野の事を詳しく知っているわけじゃないからなんとも言えないけど。
「えっと…エプロンを持ってこい?」
ラインを開いて茅野から送られているメッセージを読んだ。エプロン、か……暗殺関係の事だろうし、料理に関する暗殺を仕掛けると言う事か。
「でも…そういう暗殺ならひと通り仕掛けたよね」
「食事中に暗殺を仕掛けたり、料理の中に対先生弾を忍ばせたり、それこそ毒を盛ったりな」
その通りだ。これまでにひと通りの暗殺は試している。特に食事は殺せんせーが油断しやすいからという理由で、十分すぎるぐらいに確かめた。この場にいるみんなもそれを知っているから、少し疑問に思ってしまう。
「けどまぁ、やってみない事には分からないだろう。ひょっとすると盲点を突いているのかもしれないし」
「…まぁ、そうだね」
少しリラックス出来たみたいだ。茅野の暗殺計画を聞いてみようという気になったんだろう。
何はともあれ、茅野の計画を聞いてみない事には何にも始まらないしな。明日の楽しみにしておくか。
「そういえば学真くん。最近りんごシャーベットばかり食べているよね」
「……まあ、色々あってな」
◇
そんなこんながあって翌日。日曜日のため学校は休みになっている。茅野はその日を暗殺準備としてチョイスした。
そして俺たちは、校庭に出ている。エプロンと言うから、てっきり調理室でも行くのかと思っていたけど、どうやらそうではないみたいだ。
「なるほどな。とんでもない事を思いついたもんだ」
「そうでしょうそうでしょう」
フフン、と得意げになっているのはこの計画の考案者、茅野カエデだ。
何しろこれは褒めざるを得ない。俺が予想していた内容を遥かに凌いだ。
プリン爆破なんて、思いつきすらしなかったし。
この計画は、どうやら大量の卵を破棄するニュースを見て思いついたらしい。
ご存知殺せんせーは超がつくほど甘党だ。貯金があれば甘いお菓子を買おうとするし、それ欲しさに女装までするほどだ。
茅野が殺せんせーとプリンを食べていた時、殺せんせーが『一回り大きなプリンに飛び込んでみたい』と言っていたらしい。だから茅野はその願いを叶えさせてやろうと張り切っていた。その時の茅野の目がキラキラしていたのは別の理由があるからだろうけど、触れない方が良いんだろう。
校庭には校舎と同じぐらいの大きな装置がある。形的にはプリンの型になるんだろう。それ以外にもパイプとかクレーンとかもある。…コレって結構予算を使うんじゃないのか?
「計画の流れを説明すると、中に対先生弾と竹林くん制作の爆弾が入った巨大なプリンを作って、殺せんせーにプリンを食べてもらう。そして奥の方まで食べ進んだ時にドカン!というわけ」
プリンの中に爆弾、か…かなり勿体無いような気もするな。
けど暗殺できる可能性は高いだろう。スイーツ好きの殺せんせーには効果てきめんな気もする。
やってみる価値はありそうだ。
「よし!じゃあやってみるか!!」
磯貝が声を出すと、みんなも掛け声をだす。みんなをまとめ上げる力は本当に強いよな。
と、言うわけで。
俺たちは巨大プリンを作る作業に取り掛かった。プリンを作るためには生地を作るところから始まり、それを型に入れて冷やすという工程になる。
作業をすれば質問とかは当たり前のように出てくる。その度に茅野に質問しに行った。
「カエデちゃん、この間テレビで巨大プリン潰れていたよ。自分自身の重さに耐えられないからって」
「その対策として、強化剤にはゼラチンの他に寒天を混ぜてあるの。ゼラチンより溶けにくいから、9月の野外でも崩れにくいの」
「茅野さん、これは?」
「オブラートで包んだ味変わりだよ。ずっと同じ味だと飽きちゃうから、型を作るときに時々投げ入れて味にバリエーションを増やすの」
なんていうか…色々と凄いな。茅野は科学的根拠を捉えつつ、美味しく食べられるように味までシッカリと研究している。茅野が色々と考えている事が所々で見える感じだ。
「凄いね茅野ちゃん。自分で全部考えたの?」
「あ、うん。そうだよ」
茅野に近づいているカルマも感心している様子だ。この計画に取り組んでいる様々な工夫を見ればそうなってくるだろう。
「プリンは前から好きだったし、一回こういうのやってみたかったんだ。予算も防衛省が確保してくれるし、チャンスと思っていたの。そう決めたら一直線だから」
茅野が言う通り、真っ直ぐな性格なんだろうな。こういう計画を思いつき、さらにそれを成功させるための苦労も惜しまない。自分の気持ちに素直である性格が出ているんだろう。
普段サポートに徹しているから、余計に印象が強くなっているのかもしれないが、
「……あ」
そうか。そういうことか。
最初会った時、初めて会った気がしないと思っていたけど、茅野のああいうところ、日沢に似ているんだ。
日沢も自分の気持ちに真っ直ぐだ。俺と仲良くなりたいからという理由で、特に深く考えずに俺に話しかけてくるぐらいに。
だから茅野と初めて会った気がしなかったんだ。なんとなく日沢を思い出させるようなかんじだ。
「おーい、学真!手伝ってくれよ」
「…あ、あぁ。分かった」
杉野に声をかけられるまでボーッとしていたみたいだ。いけないいけない。今は作業中だからこっちに集中しておかないとな……
そんなこんながあって翌日。大きなプリンの型に生地を入れ終えて、一日中費やして冷やし続けていた。それもただ冷やすだけじゃなくて内側に冷水パイプを通して、内側と外側から同時に冷やしていく。これぐらい大きいと冷やし方に工夫もいるということらしい。
冷やす作業が終わり、プリンの型を外していく。ここで外す時に型を崩さないように慎重にしていく。巨大なせいかすぐに崩れやすいように見える。
仕上げに上にカラメルソースをかけ、表面をバーナーで炙っていく。その工程が全て終了して……
「完成だーーー!!!」
巨大プリンは完成した。校庭の中でものすごく目立つほどの大きさで、近くから見るともっとデカいように感じる。そしてプリンというものにふさわしいほど柔らかい見た目をしており、かなり美味しそうな仕上がりになっていた。
「すっげぇぇ……」
「あの中に爆弾があること忘れてしまいそうだね」
賞賛の声が絶えない。それもそのはず。これは自分たちでこの大きなプリンを作り出したということを証明しているようなものだ。それを目の当たりにすれば達成感が半端ない。俺も少し驚いているほどだ。
何はともあれ暗殺の準備は整った。あとは仕掛けるだけだ。
◇
「こ、コレ、先生が食べて良いんですか!!?」
「あ、うん」
「茅野さんが殺せんせーのために作ったんだよ」
殺せんせーが校舎に現れる。現れたと思ったらプリンの前に立ったまま震えているみたいだ。あの顔は感激している時のやつだな。本当に分かりやすい顔をしているもんだ。
「勿体ないから殺せんせーが全部食べちゃってよ。私たち教室に行ってるから!」
「勿論です!!あぁ、夢が叶ったァ!!」
スコップにも見えるスプーンを取り出して、殺せんせーは巨大プリンの中に突っ込んでいった。大きな衝撃でプリンの形が大きく変化したが全体が崩れたりはしなかった。あれが寒天の効果か。いやどうでもいいけど。
はてさて、この暗殺は上手くいくのかね……
俺たちは校舎に入って窓からプリンの様子を見ている。殺せんせーの食事のスピードも凄まじく、見る見るうちプリンが変形していく。まるでプリンの溶ける過程を眺めているみたいだな。
「プリンの底には爆弾と一緒にカメラが設置されている。爆破するタイミングは、殺せんせーがプリンを食べ進め、カメラの映像が明るくなった時だ」
爆弾を作った竹林は起爆スイッチを手に持ちながらカメラに映っている映像を見ている。映像の方は変化ない。
プリンの方を見れば、殺せんせーは完全に中に入っていったみたいだ。崩れたプリンの外側にはいない。
という事は、もうすぐという事だ。そこにたどり着くのはもう時間の問題だ。殺せんせーのスピードを考えればあっという間だろう。だからタイミングはしっかりと見極めないといけない。回避されるのもあっという間ということでもあるから。
ほとんど全員がカメラの映像を見ている。竹林なんかはもっと真剣だ。
全員に緊張感が走る。まだか、まだかと焦らされている時のような感覚だ。その間は誰も喋る事なく…
「ダメだーーーーーー!!!!!」
「うおおおおおい!!!?」
突然の大声に変な声を出してしまった。緊張が張りつめられている時に大声出されるのはダメなんだって…
いま大声を出したのは…茅野?なんか泣いているようにも見えるが……
「愛情込めたプリンを爆破なんてダメーーー!!」
「プリン好きの計画発案者が暴れ出したぞ!!」
…マジですか。
ここに来てプリンが爆破される事が嫌になったのか。いやまぁ勿体ないとは思うけど、もともとそういうつもりで計画していただろうが。
「プリンに感情移入してんじゃねぇ!!爆破させるために作ったんだろうが!!」
「嫌だ!!ずっとこのままモニュメントとして校庭に飾るんだい!!!」
「「「「「腐るわ!!!」」」」」
なんか色々とマズイ事になってきたな。計画発案者がこのザマだ。一気に計画が不安になってきたぞ。茅野を止めているうちにタイミングを逃してしまうんじゃ…
「ふぅ…少し休憩」
……え?
なんで殺せんせーがここに来て…っていうか…
「その手に持っているのは…カメラと起爆装置?」
殺せんせーの持っているものは、プリンの底に忍ばせていた起爆装置とカメラだ。起爆装置に至っては起爆回路まで絶たれてある。
「異物混入を嗅ぎ取ったのでね。地中に潜ってから取り除いておきました。次回から匂いのしない爆弾も研究しておいてくださいね」
「……はい」
…なるほどね。
よく知らないが、爆弾には強力な匂いを発する奴があると聞く。火薬の成分が影響しているんだろう。たとえどんなに微かであっても殺せんせーの鼻は嗅ぎとれると言うわけだ。
それで爆弾に気づいた殺せんせーがプリンの底にある爆弾を取り除いたというわけか。
こりゃ失敗か。結構良い作戦だと思ったんだけどな。
「…それで、この大量の皿はなんなんだ?」
教室には机の上に一つずつ皿が置かれてある。中に入っているものは、もしかしなくてもプリンみたいだ。
「プリンはみんなで食べるものですからね。綺麗なところを分けておきました。さぁ、皆さんで食べましょう」
…やっぱりな。殺せんせーの事だしそうするだろうなとは思っていたよ。クラス全員がプリンを食べれるようにするなんて、殺せんせーなら当たり前にする事だ。
俺の分のプリンを取る。綺麗な色をしたプリンが皿の上に乗せられ、カラメルソースがかけられている。クラス全員が美味しいところを食べれるようにという殺せんせーの配慮を感じる。
一口食べて、その美味しさに頬が緩む。一仕事した後甘いものを食べるととても美味しく感じるよな。
「残念だったね茅野。寧ろ失敗して良かった?」
「え…?」
「それにしてもビックリしたよ。茅野が暗殺を計画するなんて」
近くでは渚が茅野に話しかけている様子だ。いつも一緒にいる渚からすると、今回の計画にはとても驚いた事だろう。
「…ふふっ。本当の刃は、親しい友人にも見せないものだよ。また殺るよ。プルンプルンの刃なら他にも持っているんだから」
プリンを刃に見立てて殺せんせーに突き刺す姿は、騎士の一騎打ちのようにも見える。デザート好きの暗殺者も、張り切って暗殺をしかけた。ここにいると、本当に飽きないと思うよ。
◇
「楽しかったね。プリン暗殺」
「まぁ、滅多に出来ないことだしな」
授業が終わり、帰り支度を進めていた。教科書を全てバッグの中に入れる。倉橋とそんな話をしていくうちに片付けの準備は整った。
「そういえば、桃花はどうだ?女子だしそういうのはすきなんじゃねぇか?」
一緒にいる桃花にも話を振る。驚くほど自然に話しかけれた事に自分でビックリしてしまった事は内緒にしてほしい。
「え……うん…結構楽しかったよ。家庭科は好きだし」
どうやら桃花も楽しんでいたみたいだな。そりゃ良かった。
………?
なんかザワザワしてねぇか?
外を見ると他のみんなが立ち止まっているみたいだ。みんな校門の方を見ている気がする。ということは校門で何かがあるということだろう。
一体何があるんだろうかと思い、窓から校門の方を見る。桃花と倉橋も同じように校門を覗いていた。
「…………ッ!」
思わず声を出してしまうところだった。いま見たものは確かに、みんなが驚いてもしょうがないものだった。
「学真くん…アレって……」
桃花が恐る恐る俺に尋ねてくる。ソレを見れば俺の事を気にかけるのは必然だろう。
「……先に失礼する」
カバンを持ってそのまま教室を出た。そして玄関と続き、校門に向かって歩き続ける。
その場にいた生徒の心配そうな目を感じる。教室から覗いている桃花に至っては怯えているようにも見えた。
大丈夫だ、という意味も込めて一瞬だけ桃花に目線を合わせる。そして再び校門に近づいた。
まさかこんな形で会うとは思ってもいなかった。いずれは会う事になったかもしれないが、いまその姿を見ることが出来るなんて、正直驚きを隠せない。
その人物の前に立って目線を合わせる。人と話す時のマナーも含めて…あらゆる躾はこの人から死ぬほど叩き込まれた。その教えには従うのが俺の流儀だ。
「久しぶりだな。親父」
ここでラスボス登場です。一体理事長は何をしに来たのでしょうか。次回地獄のケイドロの時間です。