浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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気づけば11月、今年が終わるまであと僅かになりました。時間が経つものは速いものですね。

調べたところ今年最初の投稿は56話でした。つまり今年一年で夏休み編の殆どが投稿されたことになります。読んでくださる方々がいたからこそ、めげずに頑張れたんだなと思います。

ここから先も投稿を続けていき、やがては完結させようと思っております。それまでお付き合いしてくだされば嬉しい限りでございます。





第94話 疑いの時間

「一応この作戦で行くつもりだ。今夜あのターゲットが来ないわけがない。ここで勝負を仕掛けるつもりだ」

 

 

暗い部屋で、男はシロの話を聞いていた。それは殺せんせー暗殺の作戦を練っている途中であった。

 

その作戦の流れに、おかしなところはない。シロの目論見通り、殺せんせーは間違いなく『そこ』に来るだろう。

 

1つだけ気になるとすれば、それで殺せんせーを殺せるか、という事だった。イトナは殺せんせーと2回だけ戦っており、その度に負けている。今回もまた、殺せんせーに負けて終わるのではないかと予感していた。

 

 

「なぁに、イトナは更に進化している。敗北は人を強くするとはよく言ったものだ。負ける度にイトナは強くなっているさ。

 

最も、これ以上負けると救いようがないけどね」

 

 

なんと冷たいことだろうか。目の前のシロの冷静さに、男はため息をつかずにはいられなかった。

 

触手の性質は知っている。触手は感情に大きく左右されるものであり、感情が暴走すれば、宿主を死に至らせることまでになる。

 

今回でイトナが負けたとすればどうなるか、容易に想像できる。恐らくシロも同じ結論に達しているだろう。その上でその言葉を吐いているのだ。

 

つまり、場合によってはイトナを見捨てるつもりなのだ。イトナとは全く面識がないが、あまりにも可哀想になってくる。

 

 

「そうなった時は君の力を借りるかもしれない。君ほどの力を持つ中学生なんてなかなかいないからね…」

 

 

シロのお世辞は軽く聞き流した。心にも思っていない賞賛を言われたところで、別に何とも思わない。

 

だが任務は全うしなければならない。彼の目は依頼を受けた殺し屋のように、執念が宿っている真剣な眼をしていた。

 

 

 

 

 

◇学真視点

 

 

 

俺たちはいつも通り授業を受けていた。天気も良く特に問題ない。校舎だっていつも通りの奴だ。何も変わってはいない。

 

だが今日の授業はいつもとは明らかに違うことが1つだけある。それは…

 

 

 

「えー…この文法はァ…こうなってますのでぇ……」

 

 

 

授業をしている殺せんせーの様子だ。顔色がすごく悪く声も弱々しい。

 

そしてそれを受けている方はというと、一言で言えば結構冷たい。冷めた目で殺せんせーの授業を受けている。一応話は聞いているが、真剣な目で殺せんせーを見ている人は多分いない。

 

こんな状態で授業をしている殺せんせーは堪ったものじゃないだろう。多くの生徒がいるというのに、教卓では孤独になっていると見た。

 

なんでこんな事になったのか。それは少し前に遡る。

 

 

 

 

 

「これって明らかに殺せんせーだよね?」

 

 

教卓で殺せんせーを取り囲んで話しかける。見方によっては問い詰めているようにもなる。

 

そうまでしてみんなが殺せんせーを問い詰めているのは、新聞や週刊誌に載ってある1つの事件が関係している。

 

それはいわゆる、下着泥棒というやつだ。最近そういう事件が頻発しているらしい。特に巨乳の人が被害にあっているみたいだ。

 

そしてその雑誌には決まってこう書いてある。『黄色いタコ』。それがどういう意味かは言わなくても分かるだろう。

 

 

つまり、いま殺せんせーは下着泥棒の疑いがかけられているわけだ。

 

 

「正直ガッカリだよ」

 

「こんな事するなんて」

 

「ちょちょ、ちょっと待ってください!先生全く身に覚えがありません!」

 

 

殺せんせーは否定している。そりゃ下着泥棒という、犯罪でもありセクハラでもある行為を認める奴はいない。

 

 

「じゃあ、アリバイは?昨日夜、どこで何してたの?」

 

「何って…上空1万メートルから3万メートルの間を行き来しながらシャカシャカポテトを作ってました」

 

「誰が証明するんだよそんなもん!」

 

 

それはもはやアリバイとして成立しないな。確認できる人なんていない。

 

ていうかそもそもこの先生にアリバイは意味がない。マッハ20のタコは日本の中なら10秒以内で移動できる。誰かが監視していたとしても分身があるし意味がない。

 

 

「ちょっと待ってください!ここまで言われたら黙ってはおけません!先生の意思の強さを示すために、学校に置いてあるエロ本を全て捨ててきましょう!」

 

 

疑いの視線に耐えきれなくなったのか、殺せんせーは大声でそう叫んだ。言ってはなんだけどそれしたところで何の意味もない。

 

殺せんせーはそのまま職員室に移動した。生徒のみんなもついてきている。烏間先生やビッチ先生が何事かとコッチを見ている。

 

 

「この机の中には先生の宝物が詰まっています!それを一切合切捨ててしまいます!」

 

 

そう言って机の引き出しを開けた。もはや半ギレだ。器が小さいと言うのは既に分かっているし、何かあったらヤケクソになる。

 

 

「なっ…!?」

 

 

だが、悪い事は次々に起こるものだ。

 

殺せんせーの机の中にあったものはエロ本だけではない。噂の下着が机の中にたくさん詰まっていた。机を開けた瞬間、勢いでいくつか地面に落ちてしまっているし。

 

 

「うわ…」

 

「下品……」

 

 

更に空気が悪くなる。ここに来て殺せんせーが下着泥棒である事の証拠が出てしまったようなものだし。

 

 

「ねぇ見て!出席簿…女子の胸のサイズがメモされている!」

 

「何これ!ひどい!」

 

「『永遠のゼロ』ってなによ!!!」

 

 

出席簿には胸のサイズが書かれているのか…これまたとんでもないものが出てきたな。あと茅野、気持ちは分かるがそんなにキレるな。

 

 

「そ、そうだ……先生実はバーベキューの準備をしているんです!良かったら皆さんで一緒に楽しみましょう!!」

 

 

机の隣に置いてあるボックスを開ける。殺せんせーの話からするとその中にはバーベキューのセットが入っているという事だ。

 

 

けどそんな事はなかった。ボックスの中から殺せんせーが取り出したのは串に引っかかっているブラジャーだった。さっきからの流れで大体分かっていたけどな。

 

誰もなにも喋らない。それは呆れか、それとも軽蔑か。少なくとも殺せんせーを快く見ている生徒は誰1人としていなかった。

 

 

 

 

 

 

「きょ…今日の授業はここまで……」

 

 

そそくさと殺せんせーは教室から出る。後ろ姿から落ち込みすぎているのが分かる。そりゃ気不味いだろうな。

 

 

「アッハハ。今日一日虫の息だったね」

 

 

カルマはその様子を面白がっていた。隣でケタケタ笑っているのか見えたし。こういう時だけサボらないんだよな…

 

 

「でも、殺せんせー本当にしたのかな?こんなシャレにもならない事…」

 

「地球爆破に比べれば可愛いものでしょ」

 

「うん…そりゃそうだけど……」

 

 

渚は未だに疑問に思っているみたいだ。人をあまり疑わない渚らしいといえばその通りだ。

 

カルマの言う通り地球爆破と比べれば大した事はない。マッハ20なら泥棒なんてお手の物だろうし、警察にも捕まる事もない。

 

ただ……

 

 

「俺は無いと思っている」

 

「学真くん?」

 

 

俺が口を挟んだとき、何人かは俺の話を聞いている。真実が気になっている人もいるんだろう。

 

 

「殺せんせーが教師バカなのは、見ただけで分かる。生徒の面倒はなにがあっても見る人だ。

 

それが、俺たちの信頼を損ねるような事を平然とやるとは思えない」

 

「……うん、僕もそう思う」

 

 

渚は安心した表情になっている。笑ってはいるが、カルマも同じように思っているんだろう。

 

 

「けど、じゃあ一体誰が?」

 

 

茅野が言う通り、問題はそこだ。新聞や雑誌として載せられている殺せんせーらしき人物は誰かという事になる。

 

それについてはある程度予測が付いている。それは…

 

 

「ニセよ」

 

 

…ハイ?

 

いや、なに突然口を挟んできているんですか、不破さん。

 

 

「ニセ殺せんせーよ!ヒーロー物のお約束!偽物悪役の登場だわ!!」

 

「お、おう……」

 

 

なんか燃え上がっているな…ひょっとしてこういう展開が好きなのか?ヒーロー物っぽいといえばそうなんだけど。

 

まぁとにかく、不破の言う通りニセである事は確かだろう。殺せんせーを知っている誰かが殺せんせーを真似して犯行に及んだんだろうと思われる。

 

 

「その線だろうね。真犯人は今夜も仕掛けてくるだろうし、ここでとっ捕まえて、あのタコに借りを作っておこうよ」

 

 

寺坂の肩に手を置いてカルマがそう語る。寺坂は連行という事ね。

 

まぁカルマの意見には賛成だ。被害は主に殺せんせーである事は確かだが、このままにしておけない。なんとかして真犯人を見つけ出してみせようかね。

 

 

「…永遠のゼロ……!」

 

 

その呟きは抑えてくれませんかね……。

 

 

 

 

 

 

というわけで、俺と渚、茅野にカルマ、寺坂と不破でニセ殺せんせー捜査になった。検索要員としてモバイル律もいるわけだけどな。

 

 

「ふっふっふ。見た目は中学生中身はそこそこ大人の名探偵参上」

 

「やってる事はフリーランニングを使った住居侵入だけどね」

 

 

不破さんが楽しそうでなによりです。やってる事が探索みたいなことだしな。『東京醤油ラーメンズ』とか『海猫』とかを想像する。

 

 

「それで、なんでこの建物に犯人は来るんだ?」

 

 

さっき渚が言っていたけど、俺たちはある住居の中にいる。不破が言うには今日犯人はここに来るらしい。その理由はまだ聞かされていないんだ。

 

 

「この建物は、有名な巨乳アイドルグループが合宿として使っているところなの。今日で最終日、洗濯物が外で干されているし、犯人がここに来ないわけがないわ」

 

「なるほどね」

 

 

不破の主張は的確だ。どんな形であったとしても真犯人がここに姿を現わすだろう。

 

なら俺たちはここでしばらく待機というわけだ。真犯人が現れた時にすぐ捕まえられるように。

 

それにしても…不自然すぎる。アイドルグループの合宿ならもう少し音楽や声が聞こえていても良いはずだ。なのに凄くシーン、となっている。下着が干されているところには、潜んでいるタコしかいないし…

 

 

「いや待て。何をしているんだあのタコは」

 

 

…殺せんせーもここに来ていたのか。俺たちと同じく真犯人を捕まえに来たんだろう。まぁ真犯人に対しての怒りが大きいだろうしな。

 

それにしても何だあの格好は。姿がバレないようにと言うつもりなのか、黒い服にサングラス、そんでもって手拭いを顔に巻いている。忍者の真似でもしているつもりなんだろうけど、場所的に下着泥棒にも見えるぞ。

 

 

「見て!真犯人に対する怒りのあまり下着を見て興奮している!」

 

「あいつが真犯人にしか見えねーぞ!!」

 

 

まぁ、なんて言うんだろう。どうしても殺せんせーが怪しく見えてしまう。不審な行動が怪しさに繋がるからだ。今朝もそれが根底にあるのは確かだ。もう少し烏間先生みたいに規律正しくしていれば疑われることもなかっただろうに…

 

 

 

「…!オイ、アレは…」

 

 

庭に入ってくる人影を見つけた。遠くにいるからよく見えないが、黒タイツと黄色いヘルメットが見えた。

 

やはり、真犯人は別にいたか。

 

あの黄色いヘルメットは、恐らく殺せんせーに似せた物なんだろう。それで殺せんせーに疑いが向けられるようにと言うことか。

 

 

「あ!下着を高速で盗っていってる!」

 

「あの身のこなし、只者じゃねぇ!!」

 

 

干されていた下着を素早く取り、庭から出ようとしている。

 

マズイな。このままじゃ逃げられ…

 

 

「捕まえたーー!」

 

 

……んなわけねぇか。ここにはマッハ20のタコがいるわけだし。

 

 

「よくも私の姿で羨ましい事をしてくれやがりましたね!暗がりに連れ込んでたっぷりと手入れしてやりますヌルフフフフ…」

 

「…なんか、泥棒よりやばい事をしている人みたい」

 

 

…一応、一件落着なのか?これからとんでもないことが起こりそうな気もするけど。

 

 

「さぁ、顔を見せなさいニセモノめ!!」

 

 

殺せんせーがその男のヘルメットを外す。当然、ヘルメットの下には素顔が見えた。

 

 

「なっ…!」

 

「あれって…!?」

 

 

その瞬間、殺せんせーや渚が驚きの声を上げる。ヘルメットを外したその下に隠された顔は…

 

 

「烏間先生の、部下の人…?」

 

 

それは、烏間先生と一緒にいた人だ。確か名前は、鶴岡さんだった。

 

 

「どうして、あなたが…?」

 

 

そんな人がなぜこのような行動をしたのか。俺らだけじゃなく殺せんせーも疑問を抱いていた。

 

 

《ブワ!!》

 

「っ!?布…!!?」

 

 

殺せんせーを囲むように、白い布が突然現れた。四角形の配置で策が4本置かれてあり、それで布を張っているみたいだ。穴は上だけで、それ以外の抜け道はなさそうだ。

 

 

「彼には君をおびき寄せる餌として動いてもらったんだよ、殺せんせー。君をこの布の檻に入れるためにね」

 

「…!この声は…!」

 

 

殺せんせーに向けられていたその声は、知っている。1学期の時に俺たちはその声を2回聞いたことになる。殺せんせーの暗殺を目的とする人物でありながら、一度E組を危険な目に合わせた人物だ。

 

 

「シロ…!」

 

 

思わず力が入る。プールの事件の時から、俺はどうしてもコイツの事が気に喰わない。

 

 

「対先生物質で作られた繊維だ。君では絶対に抜けられる事はないよ。夏休みの生徒たちの暗殺を参考にした。当てるより先ずは囲むべし、てね」

 

 

布の中から鶴岡さんが出てきた。人間には無害という事だろう。同じように殺せんせーは脱出出来ないという事らしい。

 

そしてシロが出てきたという事は、もう1人の刺客がいる。

 

 

「さぁ、決着をつけよう。兄さん」

 

 

殺せんせーを囲んでいる布の檻の、唯一の逃げ道である天井に、シロの奥の手であるイトナが現れた。

 

まさかこの状態で戦うつもりという事か。殺せんせーに下着泥棒の疑いが向けられるようにしたのも、最後に鶴岡さんを使って殺せんせーをあぶり出したのも、全てはこの状態を作るためということか。

 

 

「クソが…!」

 

「あ、学真くん!」

 

 

シロに向かって走る。他のみんなも後ろをついてきていた。

 

 

「おや?驚いたね。まさか君たちが来るとは思っていなかったよ」

 

 

俺たちの姿を見て、シロは驚いた()()口調で喋っている。意外だったのは間違いないんだろうけど、焦っている様子がまるでない。俺たちが来たところで、計画にはなんの支障もないということか。

 

 

「いつもくだらねー小細工ばっかしやがって」

 

「まぁそう怒るなよ寺坂くん。目的のためならくだらない小細工も必要さ」

 

 

相変わらずつかみどころがない。飄々としているというか、俺たちに尻尾を掴ませてくれないとでも言われているみたいだ。

 

 

「そうだ。今の戦況を君たちに分かりやすく説明してあげよう。

 

見ての通りフィールドは四方を布で囲まれている。殺せんせーの行動範囲も制限される上にイトナにとって的が絞りやすい。

 

また、触手の方にも強化を施しておいた。対先生ナイフを触手につけることに成功した。もちろん、イトナの触手が溶ける事はない。

 

高低のアドバンテージもあり、どちらが有利なのかは一目瞭然だろう」

 

 

前からそうだったんだが、シロの作戦は結構緻密だ。殺せんせーを確実に追い込める状況を作り出すやり方なんかは、俺たちなんかより全然うまい。

 

けど、その方法は選ばない。関係のない人が巻き込まれる危険性なんかはおかまいなし。あくまで殺せんせーを殺すという目的のためだけに動いている。

 

だからこそ気に喰わない。自分だけ安全なところから殺せんせーを殺そうという魂胆が特に。

 

 

「終わりだ、兄さん。お前を倒して1つの問題を解く。すなわち、最強の証明を!」

 

 

イトナが殺せんせー目掛けて触手を振り下ろす。全力で触手を叩き込もうとしているんだろう。あの範囲だったら外れる事はなさそうだ。

 

 

「お見事でしたイトナくん。1学期までの先生だったら殺られていたかもしれませんね」

 

「なに…?」

 

 

この声は…殺せんせーか。まさかあの攻撃を避けたのか?

 

 

「イトナくん。先生だって成長するんです。先生が成長しないで生徒にどうやって教えることが出来ますか」

 

 

…なるほど。夏休みの暗殺を通して成長できたのは俺らだけじゃない。同じく殺せんせーも成長していたのか。

 

それもそうか。超生物と言いながら俺たちと同じく生き物だ。経験を通して成長するのは、俺たち人間と変わらない。

 

 

「さて、それではこの厄介な布の檻をどかしましょうか。実を言うと夏休みを経験して新しい技を身につけました」

 

 

殺せんせーが何かをするみたいだ。あの布をどかすって言っていたけどどうするつもりだ?直接触る事は出来ないみたいなんだけど…

 

 

「…?なんだ、この光は……」

 

 

布が眩しく光っている。いや、布が光るわけがない。光っているのはその中か…

 

 

「触手を束ねて、そこのみ完全防御形態の状態にしておきます。それで溜まったエネルギーを一気に放出する。覚えておきなさいイトナくん!暗殺教室の標的は、教えるたびに強くなる」

 

 

打ち上がった花火が爆発するように、布の光が一気に弾けた。衝撃波が溢れ出し、殺せんせーを囲んでいた布が飛び散る。その布が衝撃波を吸い込んだせいか、俺たちにあまり負担はなかった。

 

そして布が防いでいないイトナは、上空へと打ち上がる。殺せんせーの事だから直撃するような事は無いだろうけど、俺たちよりも受けているダメージは大きいだろう。

 

そのままユックリと地面に向かって落ちていく。地面に激突する事はなく、殺せんせーがイトナを空中でキャッチした。

 

 

「そういうことです。もうこのような手は通じませんよシロさん。イトナくんを私の教室に預けて、直ちに去ってください。そして私が下着泥棒の犯人でないことをちゃんと広めておいてください」

 

「わ、私も正しくはび…Bだから!」

 

「落ち着こうか茅野」

 

 

茅野は結構必死だ。そんなに胸が小さいのが嫌なのか。少し盛っているのがすぐ分かるぞ。

 

 

「い、イタイ…!」

 

 

…ん?

 

 

「頭が…割れそうだ……!」

 

「イトナくん!?」

 

 

イトナの様子が何かおかしい。頭を抱えたまま苦しんでいる。頭から生えている触手も暴れているようにも見えるし、イトナの身体自体にも何か起こっている。一体なにが…?

 

 

「度重なる敗北のショックで触手が暴走したか」

 

「…暴走……?」

 

 

そういえば、前に来た時も言っていたな。触手は感情に影響される代物だと。もしかしてそれが関係しているのか?あの触手の暴走ぶりは、イトナの感情を示しているとか。

 

 

「…ここが潮時かな」

 

「…は?」

 

…なにを言っているんだ?潮時って…何のことだ。

 

 

「イトナ。その触手のメンテナンスには莫大な資金がかかっている。こう何回も成功できないでいるとね。国もお金を出してくれないよ」

 

 

イトナの触手のことか?聞いている限りメンテナンスが結構必要だと言っているみたいだけど。

 

いやそれは明らかだ。どう見たって自然のものではない。見るからに危険なものだし、相当念入りに管理しないといけないはずだ。

 

けど何でいま言うんだ?

 

 

「目的のためには線引きが必要だ。次の適正者を探すためにもね。

 

 

 

 

サヨナラだイトナ。これからは1人で頑張ると良い」

 

 

 

…!!

 

 

 

コイツ、本気か。

 

いまコイツは…

 

 

 

 

 

イトナを見捨てやがった…!

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…!あなた保護者でしょう!!」

 

「この期に及んでまだ教師の真似事かい?私は許さないよ。全てを奪ったお前自身を」

 

 

 

身勝手すぎる。

 

よく分からないが、シロは殺せんせーに対して尋常じゃない殺意を持っている。感情が読みづらい男から唯一感じ取れる感情だ。

 

けどだからと言ってイトナを見捨てる事が許されるはずがない。シロはイトナの保護者としてここに来たはずだ。なのに使えなくなったら見捨てるなんて、無責任にも程がある。

 

 

コイツ、相当なクズだな。

 

 

 

 

「それより良いのかい?生徒を放りっぱなしにして」

 

 

「…っ!危ない!!」

 

 

 

殺せんせーが俺らの前に立つ。コッチに近づいてくるイトナの伸びた触手が弾かれた。

 

 

「うっ…うう……」

 

 

 

暴走が極限に達したのか。意識は朦朧としたまま、触手が暴れまくっている。

 

 

 

 

 

 

「うあああああああああああ!!!!!」

 

 

「おい!イトナ!!」

 

 

 

 

制止の声が聞こえるはずもなく、イトナは大声を出しながらどこかへ走り去ってしまった。目を離した瞬間にシロもどこかに移動し、その場には殺せんせーを含んだE組のメンバーだけが取り残された。

 

 

 

 

 

 

 




イトナくんが暴走してしまいました。この先果たしてどうなる!?
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