クレヨンしんちゃん 未来編   作:ドラグノフ

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第三話

 

第三話「中学校なんて小学校に毛が生えたようなもんだ。……って、誰か言ってた様な気がする」

 

 

 

 

 

学校説明会は終わった。ん?学校の説明が終わったのか?まぁどっちでもいいか。

結果、美人の先生なんてどこにもいやしなかった。

これはつまり……、オラ、父ちゃんに騙されたという事か?

……。まぁいいんだよ…。どうせ、こんなことだろうと思ってはいたし…。

でも、父ちゃんにまんまと騙されてんのにあんなにはしゃいでしまった自分が恥ずかしいわ。めっさ恥ずかしいわ。

学校の説明が一通り終わると、一学年の主任からの挨拶があった。

その後は自分らのクラスに行って担任の先生とあいさつをするらしい。

どうせ担任の先生もあのおばさんの中の一人なんだろうけど。

一年生のクラスは三階にあって、視聴覚室は二階だったのでそこまで遠くはない。

ちなみにオラのクラスは五組だ。

この学校は全クラス五組以上あるらしい。どうりで広いわけだ。

視聴覚室も双葉小のと比べてかなり広かったし。こりゃ教室も広いだろうなぁ。

オラはちょっとだけワクワクしていた。

「ねぇねぇしんちゃん」

「んー?なぁに?」

オラを呼んだのは、かつて<おにぎり>の異名で小学校を笑いの渦に陥れた。

異名の通りのオニギリヘアを持った男……だったのだが。今やその象徴であるオニギリヘアにはフサフサな髪の毛が生えてしまった。

それ以来、彼を<おにぎり>の名で呼ぶ者は滅多にいなくなってしまった。が!しかぁし!

我ら春日部防衛隊は、彼をこう呼んでいる!

「オニギリボーイXマサオっ!!」

「ばばばばかぁ、こんなところで大きな声で呼ばないでよ!前にも言ったでしょっ!!」

「怒鳴っちゃってやあねぇ」

「前にもそんなこと言ってなかった?」

雅夫君は額に青筋を立ててコブシを握った。こうなると雅夫君もなかなかイカツイ面なんだよなぁ。

「そんなことよりさ!同じクラスになれて良かったね!!」

「なに?そんなことを言う為にわざわざ呼んだのぉ~?」

「べっ、別にいいでしょ!それくらい!遠い所から呼んだわけじゃあるまいし」

「へいひぇ~い。ボーちゃんにも言って来たら?」

「うん!そうするよ♪」

ハハハ、全く……。どうしてあそこまでルンルン気分なのかねぇ…。

五組に選ばれた防衛隊の面子は雅夫君とボーちゃんで、寧々ちゃんと風間君はどっちも三組だった。

思えば六年生の時も雅夫君と同じじゃなかったっけ?クラス。

階段を上るとすぐ左に、五組と書かれた紙が貼ってある横流し式のドアを見つけた。

「あそこか……」

周りを見渡す限り、一クラスの生徒は三十六~三十七人あたりか。

結構多いな。双葉小は一クラス二十人で三クラスずつだったのに。

やっぱし埼玉県のいろいろな小学校から来てることだけあるよなぁ。

見かけない顏ばっかりだ。ってぇ、そりゃそうか…。

そんな事を思っている内に、どんどんと教室の中へと入ってゆく五組の生徒。

「しんちゃん…」

「お?」

次に話しかけて来たのはボーちゃんだ。

「一年間、よろしく」

「ほほぉい、よろしくぅ!まぁ一年間ってのはどうかと思うんだが」

オラは後頭部を掻きながら苦笑しつつ言った。

「そうだったね。よろしく」

彼はマスクをしていた為、普段から解らない表情の変化がさらに解らなくなっている。

しかし、そこんとこは七年間も一緒にいると感覚で解るようになってくるもんだ。

「僕もそろそろ、前髪、切ろうかな。中学校は、そうゆうの、厳しいって聞いてる」

「……。いつの頃だったかは忘れたけど、ボーちゃんってイケメンだしスタイルいいし、頭もいいわ運動できるわですっごいモテてなかったっけ?オラの憧れの的でしたよぉ、ほんと」

「そんなこと……あるかもしれない」

「あ、肯定するのね。いや、事実だけどさ」

「でも。しんちゃんだって、イケメンだし、スタイルだっていいし、集中力がいいから一瞬で暗記できちゃったり。運動だって僕より上だったでしょ。僕の二.五倍はかっこいいよ」

「なにその現実的な数字。まぁ二倍ってのは確かに大きいからいいよ。何より数百万倍もかっこいいなんて言われたちょっとね…」

「そんなにかっこよくないから」

「……、ひどいこと言う……」

教室の前でアハハハと笑うオラ達を、教室の中で雅夫君が、仲間外れにされたと思い込んで口をへの字に曲げていた。

 

教室に入って適当な席に座る。ボーちゃんは隣で雅夫君が後ろの席だ。

しばらくすると、コンコンとノックの後に大柄な五十歳ほどの体育系教師が入ってきた。

「ハロー!エンブリワァン!わたくし、ジョン大津と言いますぅ。よろしくねっ!」

バリバリ日本人なのに外国人っぽい口調のその先生、ジョン大津は五組の生徒に気さくな笑顔を見せた。

クラスにちょっとした笑いがおきる。ジョン先生は満足そうな顏でオラ達を見ていた。見ていたんだが…。

「はい静かに。今のはほんの冗談です。今日はこのクラスの担任の先生の代わりでやってきました」

さっきの気さくな口調と笑顔はどこにいったのやら。今度は生真面目な表情かつ、冷静な口調で言った。

「このクラスの担任の先生は残念ながら用事で来れなくなってしまいましたので、私がその代わりに挨拶をします。あぁ、その前に。このクラスの担任は鮎川美沙子先生と言います。彼女とは入学式の日に会えますので、本人との挨拶はその日になります」

彼は淡々の話してゆき、最後にプリントを渡したところで、

「えーそれでは、今日のところは以上ですので解散と致します。少し時間が余ったので少しの間、ここで待機しておいてください」

そう言って、さっさと教室を出て行った。

「変な先生だったね」

「うん。でも、松坂先生や上尾先生には敵わない」

雅夫君とボーちゃんが話し始めるに釣れ、周りもだんだんと話し始めてゆく。

三十何人が一斉に話し始めるとどうなるか。もう堪ったもんじゃない。

「ねーねー君名前はー?」

とか

「どこ小?今度カラオケ行かない?」

とか。大体、初対面でカラオケに誘うとかどうなってんだか、最近の若者は。

「なんか……うるさくなってきたね……」

「外で風間君達を待とう。三組はそう遠くない」

「だね」

話し合った結果、三組の教室の前で待つことにしたオラ達は、ガヤガヤしている教室を後にした。

 

 

「なぁみんな、帰りはどうするんだ?僕は電車なんだけど…」

駐車場に向かう中、風間君の質問を聞いた途端にみんなは腕を組み、うーん、と唸った。

「僕は誰かの車に乗せて貰ってってママに言われてるんだけどさぁ」

「私もー。ママ、これから用事があるからってさっさと帰っちゃった」

雅夫君と寧音ちゃん、二人して同じような困った顔して言われるとオラも黙っちゃおけない。

「それじゃぁお二人さん、オラんちに乗ってく?」

オラがそう尋ねると、二人は揃って「ほんと!!」と目を輝かせた。

「もちろん!オラに二言はないぞ!」

雅夫君は、「さすがしんちゃん!」と尊敬の眼差しを送り、寧々ちゃんは陰でガッツポーズをとった。

トントン、と誰かに肩を叩かれたので振り返ると、人差し指を自身に向けたボーちゃんが期待の含まれてるであろう眼差しで、オラを見つめていた。ようするに…。

「なに?ボーちゃんも?」

「よろしく」

肩にポンっと手を乗せられ、オラはハァ、とため息をついてしまった。

ちっちゃい頃はまだしも、中学一年生が三人であんなちっさい車に乗れるのか。オラは唯一それが心配だったのだ。

 

 

 

「うーん…入るかなぁ……」

父ちゃんは困った顔して腕を組んだ。

「だいじょうぶだいじょうぶっ!オラが前に行ってぇ、雅夫君達が後ろにぎゅっぎゅっって詰めれば!」

「友達にそんな真似させるわけにもいかないだろ~…」

「へーきへーき。雅夫君達はそれを望んでるわけですしぃ……、ね?」

「え、僕たちは何も……」

「そうよそうよ!黙って聞いてればそんなこと!レディーにさせる気なの!?」

寧音ちゃんは腰に手を当て、顔を覗く様にして聞いてきた。頬をぷくっと膨らませて。

「レディーって……」

「なぁに?私がレディーでもないと?」

顏は可愛いのに…。相変わらず、勝気ででしゃばりで自分勝手な性格のせいで、小学校の頃はあまり男子に好かれてなかったことが思い浮かんだ。

幼稚園の頃のリアルおままごとは、正に地獄の一時だった。これだけは何があろうと覚えてるだろう。

「それで、どうするんだ?」

父ちゃんが運転席で疲れた顔してオラ達に目を向けた。

「もう!早く帰っておやつの時間!はよ!」

「さすがに三人じゃ無理でしょーが!」

「無理な事なっしんぐだぞ!この世に不可能という言葉は無い!」

「何言ってんじゃ眉毛ぶっとぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ちみこそなんじゃい性格ゴジラァァァァァ!!」

オラと寧音ちゃんが怒鳴りあう姿を、呆れた顔して見る雅夫君。

大体なんだよ、眉毛ぶっとって。まぁ。全然気になんないけど。

ため息ついてヤレヤレ、と首を横に振る雅夫君の姿を、寧音ちゃんは見逃さなかった。

ギラッっと睨む寧音ちゃんの形相は鬼も恐れるであろうそれに近い。

結局、雅夫君は寧音ちゃんにしばかれ、ボーちゃんはいつの間にか姿を消していて。

オラは早く家に帰りたかったので、雅夫君達をおいて学校を後にすることにした。

こうなるんだったら連れてくなんて言わなきゃ良かったよ、全く。

 

 

 

「なぁ、どうしてオレが靴ひも結んでるのを嘘だと思ったんだ?」

帰り道、父ちゃんはオラに質問した。

「んー」

久しぶりの仲間と再会し興奮したせいか、疲れて眠たかった。

適当に返事をすると、

「なぁなぁ、なんでなんだよ」

と急かすように聞いてくる。

「んーとねー。朝出発する時はちゃんと靴ひも結んであったのに、運転で足をあんま動かしてないのに解けてるのはおかしいなぁと、思いまして」

「……」

「それにぃ、もし解けてたとして。結び終わって顏上げた時の父ちゃんの目が赤かったからさぁ。これはもしかして泣いているのをばれまいと、必死になって隠してたんじゃぁ?と、思いましてね」

「洞察力あるなぁ。普通気づかないだろ」

「普通気づくだろ?」

「人の靴ひもなんて普通見ねーよ」

「普通見るだろ?」

「おまえの普通が分からんわ」

そう言って父ちゃんはクスッと笑った。

「父ちゃんの足の臭さだって普通じゃないぞ?」

「普通じゃないことはいいことだ……」

「悪い方で普通じゃないね、父ちゃんは」

「…………」

それからしばらく父ちゃんは黙り込んで、車内は車が走る音だけが広がる空間となった。

これもまた、良きかな良きかな。

窓から眺める通り過ぎてゆく背景が。

一瞬セピア色に見えたのは、オラの気のせいだったのだろうか…。

 

 

 

これは、とあるお屋敷での会話。

 

「いつからその、中学校とやらには行けますの?」

「もうちょっとだよ。我慢しなさい」

「わたくし、一刻も早く、その中学校とやらに行きたいですわ」

「その気持ち、あと一ヶ月ほど溜めておきなさい」

「しん様……早く会いたいですわ……」

 

 




大変長らく更新できずにいました(+_+)

誠に申し訳ございません<(_ _)>

アドバイス等、是非、よろしくお願いいたします。
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