どうも、とある富豪の三男に産まれて骨肉相食む遺産争いに巻き込まれ、兄に毒を盛られてさらに弟に上からぐっしゃぐっしゃと包丁で刺された者です。
いや~、怖かった。だって弟が瞳孔おっぴらいて笑いながら包丁向けてくるんだよ?ただのホラーじゃん。
まあそんなわけで俺は死んだと思うのだが、何故だか今は大きな川の前に立っている。
え?なんでそんな状態になってるかって?そんなの俺の方が聞きたいわ。目が覚めたら病院でしたとかいうありがちパターンじゃなくて河原にいるとかどういうことだよ。
さっきから川の上流に行ったり下流に行ったりしてみてるんだが橋のひとつすらない。
それにさっきからなんだが川のほとりに生えている草がよく足に引っかかる。鬱陶しいことこの上ない。しかも白い岩みたいなのが多くてこれまた転びそうになる。
いったん川周囲の観察は諦めて、俺自身の現状についてを思い出してみる。
家は上流階級、兄が2人、姉が1人、弟が1人。俺だけが所謂妾腹で、顔は、確か母親似だったはずだ。
厄介払いよろしく中学卒業まで遠い親戚の爺さん婆さん方に囲まれ、農業手伝ったり山で鹿を狩ったりの、何時代の日本だと突っ込みを入れたくなるようなレベルの悠々自適なスローライフを送っていた。
それが急に血のつながりがある生物学上の父親が「戻ってこい」などと言い出したせいで遺産相続という骨肉の争いに巻き込まれた、と……だめだ、自身の名前だけがどうしてか思い出せない。
好きだった食べ物、趣味、最近はまってたことなどは容易に思い出せるだけ、自分の名前だけ出てこないというのにとてつもない違和感を感じる。
何がなんだか分からなくなってきて、俺は考えるのを放棄し、川辺に寝転んだ。
空が青…くないな。土留色の空だ。汚い色である。
ふと、寝転んだときになんとなしに手の甲に当たった岩を見た。
白い岩だ。白い岩だと、思ってた。
「……ひっ!?」
よく見ればそれは岩なんかじゃなくて、大なり小なり大きさは違えど、どれもこれも髑髏だった。頭蓋骨だ。
草だと思ってたものも、本当は草なんかではなく髪の毛だ。ウワッ、俺こんなところに寝転がってたのかよ!きもっ!!
焦りつつ足に絡み付いてくる髪の毛を踏んでは絡み捕られ踏んでは絡み捕られを繰り返すうちに、急に目の前にあった川や地面が大きく歪む。いや、これは俺の視界のほうが歪んでいるのか?頭もぐらぐらする。
ぐんにゃりと視界が歪んで原型を留めなくなった瞬間、何かが割れたような音と聞き覚えのない女の声がして意識が切れた。
「リプレイします。」
0:壊れたままで、再び世界は回り始めた。