リプレイします。   作:翠架

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n+1-2:憎しみをこめて

 

そういえば、訓練兵団に居た頃の事なんだけどさ。

兵站行進をやる日に、何でか知らないけど俺だけ二倍重さの荷物を持って走れって言われたことがあった。

多分いつもひょうひょうと訓練を受けているのがカンにさわって、それに対する嫌がらせだったんだとは思うんだけど。

 

まぁそのときもいつもみたいに「はっ」って返事をしたわけだ。

そん時にエルヴィンに聞かれたんだ。

「お前のその「はっ」っていうのはちゃんとした返事なのか?それとも教官を嘲り笑ったものなのか?」って。

俺さ、その場では「後者に決まってんだろ?こんな無駄なことやって何になるんだ…?」なんて冷静を装って言ってたけど、内心かなり驚いたんだよね。

いや、馬鹿にしてんのがバレたこともだけどそれ以上に、俺に話しかけてくる奴がいたことに。

だってさ、自分で言うのもあれだけど俺かなり浮いてる存在だったし。

まぁそれがあってからエルヴィンとよく連むようになって、他の奴とも喋るようになったんだっけな。

その前から対人格闘術のときはたまに一緒にやってたような気もするけど、あんまし覚えてない。

あ、ついでにそん時の兵站行進は一位でゴールしてやりましたとも。

 

 

 

「…レイ、こんな時に考え事とは余裕だな。」

 

「ははっ…ちょっとエルヴィンと連むようになったきっかけを思い出してたわ。」

 

「…っ!……本当に、お前と言う奴は……お前らしいと言うか…なんというか………頼むから作戦でも考えてたとか言ってごまかしてくれ。」

 

「レーヴァテイン分隊長!八時の方向から8メートル級が3体こちらに向かっています!!」

 

「はいはい、新しく来た奴を確認する前に左に四歩ずれなさい。多分そこにいると振り落とされるよ。

全員衝撃に備えてどっかつかまれ!」

 

 

 

そう言ってやったにも関わらずそいつは、巨人が木にぶつかった振動で足元をぐらつかせ、巨人の口の中にダイブしていった。

あーあ、いわんこっちゃない。

 

この付近に配置された他の隊の奴らは既に死んだのか逃げたのかは分からないけど、今俺らの立っている木の下に巨人がたくさん集まってくることを見ると近くに生きてる人が居ないのは明確だった。

 

 

 

「エリファもトニオもガルシアもメイカもブランシュもクガンもギルバートもアルメラも死んじまったな…俺らの代の調査兵団、生きてんのもう俺とお前だけなんじゃね?」

 

「…笑えない冗談ですね、レーヴァテイン分隊長殿。」

 

「冗談じゃないからねぇ…笑えなくても仕方ねぇだろ。」

 

 

 

まぁ今のが冗談であろうが無かろうが、まだ俺なら笑い飛ばせられる状況なんだけどね。

 

 

巨人たちを睨みつけてるエルヴィンを横目に、エルヴィンや今生き残ってる隊員2人に気付かれないように中身が殆ど残ってる自分のガスボンベと少し前に死んでった隊員の、中身のあまりないガスボンベを交換する。

これから自分のやろうとしていることを思い返して、我ながらバカだなぁと思う。

 

 

「…なぁエルヴィン、お前よく『何かを変えるためには何かを捨てる覚悟が必要だ』って言ってたろ?」

 

「…は?」

 

 

今までぐだくだやってた人生の中では、多分よく生きた方だと思う。

心臓を捧げよ、とかいいつつ国にも公にも捧げたつもりのなかったそれの最後としてはなかなか良いんじゃないかな。

 

 

 

「あれさ、俺もその通りだと思うんだ。

あれ聞いたとき、あ、こいつきっと上に立つ者になるんだろうな、って直感的に思ったんだよ。

だからさ、何があったとしてもその考え方を変えるなよ、エルヴィン。」

 

「おいまて、レイ。それは一体どういう…」

 

「あ、あとエルヴィンにこれ渡しとく。俺の部屋の鍵。」

 

「は!?」

 

「壁に戻ったら返してもらうから、ちゃんと持っとけよ~。」

 

 

 

ぽいっ、と鍵をエルヴィンに投げてから、俺のガスボンベの中身を三人に均等に分けて入れる。

驚いてるそいつらが何かしら喋る前に、俺は作戦について話し始めた。

 

 

 

「一回しか言わないから全員よく聞け。

このままだと応援なんて期待できないから4人共全員バラバラの方向に飛ぶぞ。

巨人と戦おうなんて考えるな。今やったガスで全力で逃げろ。

もし他の隊のやつと会ったら、逃げてきたのかと聞かれる前に隊がほぼ全滅状態と言うことを伝えにきました、とでも言っておけ。嘘ではないから罰されはしないだろう。」

 

「なっ…お前そのガスボンベはどこから!?」

 

「死んだ隊員のまだ無事だった立体機動装置からだけど。」

 

 

 

ありえない、と言わんばかりの目で睨みつけてくるそいつは、確か俺の前に分隊長候補と言われていた奴だったか。

その場にある資源を有効活用できない奴が分隊長になぞなれるわけ無かろう。

 

まぁ、エルヴィンが生き延びれれば他は死のうが生きようがどうでも良いのだけれど。

 

 

 

「他に質問は無いな?じゃあ各自自分の行く方向を向け。

お前らが出てから3秒ぐらいは俺が残って巨人の注意を引いとくから。」

 

 

 

エルヴィンが「壁に帰ったら、さっき言っていたことを詳しく聞かせてもらうぞ。」的な視線を寄越してきたから適当に頷いておいてやる。

 

悪いな、エルヴィン。

 

 

 

「よし、準備できたな?では…行けッ!!」

 

 

 

俺、今生で壁に戻る打算してねぇんだわ。

 

 

 

 

プシュゥゥ、という他の立体機動がガスを吹かせる音の中、手でワイヤーを引っ張って、アンカーを巨人の頭上の木に投げつける。

ガスが無くっても多少なら巨人に対抗できるぐらいには、立体機動が壊れたときの対応として心得てんだ。

 

ぎちぎちと音を立てて手に食い込むワイヤーを無視して、巨人の項を削ぎ落とすため飛ぶ。

あぁ、何度やってもやっぱ痛ぇわ。

 

二秒間の間に四体の巨人を屠った時、巨人の雄叫びを聞いた隊の奴らが何事かと振り返った。

 

 

 

「レイ!?」

 

「振り返んな!さっさと行け、隊長命令だ!!」

 

 

 

あーあ、本当、自己犠牲とか俺らしさの欠片もない。

どれもこれも、俺に優しくしたエルヴィンのせいに違いない。そうでなければ、いくらループすると言えども俺が誰かのために命を捨てるなんてこと有り得ないのだから。

 

 

 

 

  

憎しみを込めて泣き叫んだとして、一体何になるというの?

 

 

 

 

だから責任取ってお前は生きろ、エルヴィン。

 

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