リプレイします。   作:翠架

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n+1-3:君の面影

 

[エルヴィン・スミス視点]

 

 

 

 

彼の第一印象は、「綺麗だが不思議な奴」だった。

 

長い銀髪や左目の眼帯、貴族出身かと思うような容姿が相重なって訓練兵団入団式当初から目立っていた。

 

話をかけても曖昧な返事。

掴み所のない、とっつきにくい性格。

周りと一線を引く雰囲気。

いつの間にか、というよりも最初から、彼の周りには誰も居なかった。

 

 

そんな彼、レーヴァテインを私はいつも目で追っていた気がする。

 

 

彼と連むようになったのは一年目の兵站行進の時だった。

ただでさえ重い荷物を、気に食わないという理由で二倍の量を持って走れと彼は言われ、「はっ」と返事をした。

その返事が、私は何故かとても気になったのだ。

ちゃんとした返事なのか嘲笑いの混じったものなのかと聞けば彼はあっさりと後者だと断言し、さらには訓練自体を無意味だと卑下した。

 

その言葉とは裏腹に、彼の瞳に困惑と動揺が浮かんでいたのを。そして、それを見て「あぁ、彼もちゃんと人なのだ」と思ったことを、今でも鮮明に覚えている。

 

 

それからは、レーヴァテインによく話かけるようになり、いつしかレーヴァテイン…いや、レイの横には私が、私の横にはレイが居るようになっていた。

 

…連むようになってから分かったことがいくつかある。

レイは、頭は良いがバカだった。いや、バカというか規格外というか…とりあえず彼奴は何かとおかしいやつだった。

対人格闘術の時間に料理の話をし始めて皆の腹を余計空かせたり、斬撃訓練中にいきなりよくわからん方向に飛んでいって猪を仕留めていたり。

朝飯を食べに行くときなんて、まだ寝てたから起こそうとすると「俺はもう駄目だ…俺のことは置いて、お前だけでも行ってくれ…!」とか言い出したりすることが多々あった。

 

訓練兵団卒業後はレイと共に憲兵団に入るはずが、彼奴がいきなり「調査兵団に入る。」などと言い出してなし崩し的に私も調査兵団に入ることとなったり、初の壁外調査で巨人と戦ったり、レイの戦闘能力の高さが評価され入団二年目にして分隊長にまで上り詰めるなど、なかなか充実した日々だった。

 

 

あの日の、壁外調査までは。

 

 

 

作戦の一部として私たちの隊を含む数隊が森の中に入っていった時、突如奇行種の大群が現れた。

あっと言う間に囲まれ、殆どの者が戦死した。

次は私か、などと思っていたとき、レイが言ったのだ。

 

 

「…なぁエルヴィン、お前よく『何かを変えるためには何かを捨てる覚悟が必要だ』って言ってたろ?

あれさ、俺もその通りだと思うんだ。

あれ聞いたとき、あ、こいつきっと上に立つ者になるんだろうな、って直感的に思ったんだよ。

だからさ、何があったとしてもその考え方を変えるなよ、エルヴィン。」

 

 

その言葉を聞いたとき、何とも言えない嫌な予感が脳裏をよぎった。

もしかしたら、レイは私さえ捨てるのではないか、という嫌な予感が。

 

 

 

しかしその予感は悪い意味で的中しなかった。

 

レイが現状を変えるために捨てたのは、レイ自身だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ィン…ルヴィン……おい、エルヴィン!」

 

「…、ぁあ、リヴァイか。どうした?」

 

「どうしたはこっちの台詞だ、エルヴィン。お前、大丈夫か?」

 

「エルヴィン団長、大丈夫ですか?」

 

 

 

心配そうにこちらを見てくる今の私の部下たちに大丈夫だ、と言って、レイに胡散臭いと評価された笑顔で笑いかける。

 

 

レイが居なくなって、既に20年近くの月日が経つ。

あの日の壁外調査の時、他の班を引き連れて戻ってきたそこには生きた人どころか巨人一体すらおらず、そこかしこに転がる死体の中にレイの姿はなかった。

壁内に戻ってレイの部屋に行ってみれば、私宛ての小さな小箱が一つ机の上にあった。

『happy birthday』と書かれたカードと共に入っていたのは、いつもレイが気に入って付けていたネックレスと同じ形の物だった…。

 

 

 

 

「…本日の作戦確認は以上!明日の壁外調査に備え、今日は早めに寝るように!」

 

「……なんか、団長さっきと打って変わって元気ですね。」

 

「さっき寝てたからじゃないか?」

 

「いや、今回の調査で、何故か奴が見つかるような気がしてね…まぁ、有り得ないとは分かってはいるのだけれど。」

 

「…奴?」

 

 

 

あの調査で、結局最後までレイの死体が見つかることは無かった。

その後の調査でも、それは同様に。

 

一般団員だった私が団長に上り詰めるほどの時が既に流れてしまったから、有り得ないだろうと頭では分かっている。

分かってはいるのだが、奴ならばそのうちひょっこり現れて、「風呂に入りたい!」などと言うのではないかと思っている自分が居るのもまた事実。

 

 

 

もし、まだ生きているのなら私は必ず見つけ出してみせよう。

私の隣を歩くのは、レイ、お前しかいないのだから。

 

 

 

 

胸元のネックレスが、何故かとても熱く感じた。

 

 

 

 

 

  

まだ戦場で探してしまうと言えば、君は笑うだろうか?

 

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