パッパラパーン!
高らかに鳴るラッパの音と共にどこの王族ですかという衣装を着こんだ男の人が歩いて来た。真っ赤な絨毯の上で女性をエスコートしながら歩く男の人―LMEプロダクション社長ローリィ宝田は、呆然としているドラマの出演陣を見てにんまりと笑った。
私はそんなある意味異世界空間となっている場所から少し離れた場所、一般人の観覧スペース。そこで傍観をしていた。
はっきり言おう、関わりたくない。知ってはいたがこれは、凄まじいな。
うわー、薔薇をまき始めたよ。あれ誰が掃除するんだろ? ああ、監督の顔が引きつってる。笑い声が乾いてる。
オーラがすごいよね。そんなオーラが近づいて来ているんだけど、どうしよう。私、この人のお世話にならないといけないの?
「おお、こんな人混みにあっても感じるオーラ! まさしくあなたは私が求めた人だ。どうぞこの手を取ってください。あなたのお望みの待遇を用意しましょう。さぁ」
王子様設定なんだ。なら私はお姫様ってか?
周りの皆さんその期待に満ちた目をやめてください。
「(はぁ……、いいよ。お姫様になってやろうじゃん。男物の服だけど、ドレスを幻視させてやる)」
ざわりと周囲の空気が変わった。
社長の派手な趣向で注目していた面々は、目を見張る。
男物を着たおそらく男性だと思っていた人物が、結んでいた髪を解いきサングラスを外した瞬間彼《・》が彼女《・・》になった。
いきなり一般人に絡みに行った社長を見て、固まってしまった人を見て止めようと思っていたんだ。
なのに、なんだ、
困惑と不安しかしそれを上回る歓喜。まるで本当に見つけてもらえるのを待っていたかのような、そんなことを思わせる。
そんな礼儀作法なんか知らなくてもわかる所作で彼女が、ドレスを着ているかのような仕草と共に頭を下げた。
社長に手を引かれ歩いてくる彼女は、あるく所作もどれも姫のもので。まるで物語の中にいるかのような、そんな感じ。
こちらに来た彼女に社長が手を解き、頭を下げた。それはさすが交友関係が広いと思わせる完璧な礼で、でも、それより、それに答えるように頭を下げた彼女のほうがより―――……。
頭を上げた瞬間に、今まで纏っていた雰囲気を解いた。解いた髪をまた結び、サングラスをかける。
「ふぅ、聞いていた通りの人で驚きましたよ社長」
「はーはは、こっちもあそこまで付き合ってくれるとは!」
超嬉しー!と喜びの舞いを踊る社長。
「なんだか、あれになりましたが、これからよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。あ、そうそう。おーい、新開君。あれ、おーい」
社長の後ろで目を見開き、銅像のように固まっている男の人の前で手を振る社長。
「はっ、はい。なんですか?」
「お、覚醒したか。実は今日は彼女を紹介しようと思ってな」
「彼女……やっぱり、女性ですよね?」
「安心していいですよ。私は正真正銘女です」
「あ、いや、すまない」
「いえいえ、いいんですよ。このどっちがわからないというのが、私の(一応)売りですので」
「売り……? 宝田社長、彼女は?」
「ふふーん、彼女はなんと! あの今アメリカで大人気のバンドSSAのボーカル睡蓮だ」
「あー、あの、奇っ怪な」
奇っ怪て言われたし。いや、まぁ、メンバーが男装少女・男の娘・仮面男子ていう時点でダメか。この字面ですでに、可笑しいよな。
「その奇っ怪なバンドで(いやいや)ボーカルをやっている睡蓮といいます」
「あ、いや、すまない」
「いえ、自覚あるんでお気にせず。なかなかに濃いメンバーなんで」
「で、今日はどうしたんだ?」
「あー、いえ、日本に居る間そこで拗ねている社長にお世話になることになりまして。待ち合わせの場所がここだったんです」
「ああ、それは大変だな」
「ええ、やっぱりそう思いますよね」
「ああ。お、そうだ。これ、俺のメルアドとか書いてあるから何かあったメールしてよ。全然しょうもないことでもいいからさ」
「え、ありがとうございます。こっちにまだあまり知り合いがいないので嬉しいです」
「今ちょうど休憩中だからもう少しゆっくりしていきなよ。色々話してみたいし」
「いいですね。(社長が回復するまで時間ありそうだし)」
(俺が連れ来たんだもーん。二人とも俺の知り合いだもん。なのに二人して俺のこと視界からけしているし~)
二人が話している間。色々後ろでやっていた社長でしたが、二人とも総スルーするのでした。
むしろ新開誠士さんは主人公の印象が強くて、それ以外に目が行っていない(笑)