俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

2話突入。

そしてアホの子ビッチが登場。



2話:俺と彼女の料理ダークマター

ホームルームを終えて教室から出た俺を待ち構えていたのは平塚先生だった。

 

腕を組み、仁王立ちになった姿はさながら看守のようである。軍服と鞭を装備させたら似合うんじゃねーかと思う。

 

平塚「比企谷、部活の時間だ」

 

あー、この人俺をさぼらせないために待ち伏せていたんだな。

 

八幡「いやいや、最初からさぼる気なんてありませんから。強制入部だし」

 

弁解すると先生は満足げな顔をして、納得のいったように頷いた。

 

平塚「フッ、どうやらいらん心配だったようだな。精一杯励んでくれ」

 

そういって先生は白衣を翻して去っていった。

 

八幡「さて、俺も行くか」

 

小声で呟いて俺は特別棟の一角を目指した。

 

 

 

 

≪部室≫

 

ガラララ

 

八幡「うーっす」

 

雪乃「こんにちは」

 

雪ノ下は、昨日と同じく窓際の席に座っていた。俺が来たら文庫本から一瞬目を離し挨拶をし返し、そしてすぐに文庫本へと視線を戻す。

 

風音「お、来た来た。八く~ん」

 

風音は、軽く手を振って返した。雪ノ下から少し離れた廊下側に座っている。

 

どこに座ろうか悩んでいたが、無難に風音の隣でいいだろうと判断した。

 

今の席はこんな感じ

----------------

廊              窓

下  八 風      雪  側

側  =====机======

 

----------------

 

 

 

 

風音「あ、そうそう。八くん、私と雪ノ下さんって同じクラスでしょ。だから入部を機に仲良くしようとしたんだけど、話しかけても『そう』の一点張りなんだよ~」

 

思わぬ暴露に雪ノ下は肩をビクつかせ、罰の悪そうな顔をしてこっちを向いた。

 

雪乃「その、彼女が話していたのは流行の物や服のことなのだけれど、私はそういうのに興味がなくて」

 

八幡「あー、確かにお前は最近の女子高生とはかなり違うからな」

 

俺から見ても、雪ノ下は今時JKのようにきゃーきゃー騒ぐような奴じゃないだろう、むしろ真逆だ。

 

ていうかほんとにあいつらうるさい。イヤホン越しでも甲高いキャーキャーが耳に入ってくる。教師にしゃべるなと注意されてるのに、しゃべり続けるあいつらの神経がわからない。

 

対する風音はあまり騒がない。静かにおしゃべりをするタイプだ。

 

雪ノ下「ええ、だからそういう話は友達としていたらいいわ。私には通じないもの」

 

少し棘のある言い方だな・・・。

 

風音「えー・・でも同じ部活なんだし仲良くはしたいよ」

 

シュンと落ち込む風音。仕方ない、ここは一つ助け舟を出そう

 

八幡「風音、なんならこの時間にでも何か話したらいいじゃねぇか。知らないことを教えるのはいいことだぞ。教えてく中で雪ノ下でも興味持ちそうなやつが出てくるかもしれないしな」

 

そう風音に助言をしたら目を輝かせ、

 

風音「確かにそうだね!さすが八くん!」ダキっ

 

彼女は抱きついてきた。嬉しいけど、場所を弁えてくれ!TPO!TPO!

 

風音「それじゃあ雪ノ下さんこれからいろんなことを教えるからよろしくね!」

 

雪乃「え、ええ、お願いするわ。けれど読書はさせて」

 

風音「大丈夫!その辺は弁えるから。それと雪ノ下さんじゃ他人行儀っぽいから雪乃ちゃんって呼ぶね」

 

雪ノ下は、深い溜息をつき俺を恨めしそうに見た。まぁまぁいいじゃねえか。

 

あ、そういえば聞かなきゃいけないことがあったな・・・。

 

八幡「なぁ雪ノ下、ここは何部なんだ?活動内容とか教えてほしいんだけど」

 

そう聞くと雪ノ下は小さく首を傾げ

 

雪乃「あら、先生から説明を受けなかったの?」

 

八幡「いや、何にも聞かされてないぞ・・・」

 

すると、雪ノ下はこめかみを押さえ

 

雪乃「全く・・・強制入部させるのであれば、説明をするのが筋ってものじゃないのかしら」

 

溜息交じりにそういった。まぁ正論だな、あの人適当過ぎるでしょ・・。

 

雪乃「そうね、せっかくだからクイズ形式にしましょう。ここは何部なのか?そしてそれを選んだ理由を答えてもらおうかしら・・・」

 

ほぉ、ずいぶん回りくどいことを提案したな・・・。まぁいいだろう受けて立ってやる。

 

風音「せっかくだから、久しぶりに勝負しない?」

 

八幡「お?いいなそれ、やるか。最近やれてなかったからな・・・」

 

風音「あ、ちなみに【ロットアイ】は禁止ね。あれ反則に近いんだから」

 

八幡「え!マジか・・しょうがねぇな」

 

2人はしばらく考え込む。そのとき雪ノ下の頭の中には一つ疑念が生じた。

 

――――――――ロットアイ?

 

それはなんなのだろうと思いながら雪ノ下は彼らを見ていた。すると答えがわかったのか八幡が口を開く

 

八幡「文芸部か?」

 

雪乃「・・その心は?」

 

八幡「特殊な環境、特別な機器を必要とせず、部費なんて必要としない部活だ。それに雪ノ下は本を読んでいる。どうだ?」

 

勝利を確信した俺だが、雪ノ下は笑みを浮かべ

 

雪乃「はずれ」

 

・・・・・嘘だろ?じゃあマジで何なんだこの部活は?

 

雪乃「新島さんは何かわかったかしら?」

 

風音「ん~?・・・・奉仕部とか?」

 

雪乃「へぇ・・その心は?」

 

風音「まず、平塚先生が八くんに奉仕活動を命じると言ってたの。それでこの教室にきて先生は依頼があると雪乃ちゃんに言った。つまり誰かの依頼を受けるのが活動内容じゃないかって。だから安直に奉仕部」

 

雪ノ下は驚いたように目を見開く。まぁ確かにそんなへんな部活名があるわけ・・・

 

雪乃「正解よ、新島さん、パーフェクト」

 

風音「やった~♪」

 

マジかよ!えっ、しかもパーフェクト!風音すげぇ!?

 

雪乃「驚いたわ、まさか正解するなんて、すべて的を当ててる。さすが国際教養科ね、普通科とは違って頭の回転が速いわ」

 

八幡「おい・・今ナチュラルに俺を馬鹿にしただろ?」

 

雪乃「持つものが持たざる者に慈悲を与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、モテない男子には女子との会話を。困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ。

 

ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ」

 

腕を組み、立ち上がって言い放った。歓迎されているかはわからんが・・・。

 

八幡「活動内容は分かった。だけど、その依頼がくるまで何をしてたらいいんだ?」

 

雪乃「何をしてくれても構わないわ。読書に勉強、娯楽、基本自由よ」

 

ほー、部活だからそれなりに気を引き締めていたが、その必要はあまりなかったようだ。

 

風音「じゃあ八くん。この時間だったら勝負できるんじゃない?」

 

八幡「お!そうだな!それじゃお互い何か思いついたらここでやるか」

 

さっきのクイズといい、この二人は何を競っているんだろうと気になる雪ノ下。

 

雪乃「ねぇ、あなたたちが言ってるその勝負とやらはいったい何?」

 

八幡「ん?ああ、そういえば言ってなかったけど、俺達は幼馴染みなんだ。んで、小さいころからいろんなことで、競ってたんだ・・・。ジャンル関係なくな・・」

 

風音「そう、それで勝負が終わったら、手帳に記録するの。勝った人は白丸、負けた人は黒丸って」

 

雪ノ下は、へぇ、と興味深そうに俺達を見た。な、なにかな?

 

――――――コンコン

 

雪ノ下は俺達に何か聞こうとしたが、扉のノックによって遮られた。姿勢を正し返事をする。

 

雪乃「どうぞ」

 

ガラララ

 

?「し、失礼しまーす」

 

入ってきたのは、1人の女子生徒だ。肩までの茶髪に緩くウェーブを当てて、歩くたびにそれが揺れる。探るようにして動く視線は落ち着きがない。

 

うっわ・・こいつ、まさに今時のジョシコウセイって感じでこの手の女子はよく見かけるのだ。つまり青春を謳歌してる派手めな女子。短めのスカートに、ボタンが三つほど開けられたブラウス、覗いた胸元に光るネックレス、ハートのチャーム、明るめに脱色された茶髪、どれも校則を完全に無視した出で立ちだった。俺にとっちゃその派手さは目に毒だ。なんというか・・ビッチくさい。

 

俺がそんなことを思っていると、彼女は俺を見てびっくりしたのか、後ずさりした。うん、俺に初めてあった人はだいたいその反応だから、別に気にしていない。・・・ホントダヨ。

 

?「な、なんでヒッキーがここにいんの!?」

 

は?ヒッキーって俺のこと?その前にこいつは誰?

 

雪乃「由比ヶ浜結衣さんね。どうぞ、そこに腰を掛けて」

 

雪ノ下は由比ヶ浜という人物を椅子に誘導した。ほんとに誰だこいつ?あと、なぜ俺のことを知っているんだ?。

 

風音「八くんの知り合い?」

 

八幡「いや、まったく知らん。見覚えすらない」

 

結衣「はぁ!?おんなじクラスじゃん信じられない!?」

 

初対面の人に対して、引きこもりみたいなあだ名つける方が信じられない!?

 

雪乃「はぁ・・あなた、同じクラスの顔と名前ぐらい覚えておきなさいよ」

 

八幡「フっ、俺は興味ない人の顔や名前は覚える気ないんだよ。そんな暇あったら、英単語の一つでも覚える」

 

結衣「なにそれ意味わかんない!?キモイ!死ねば?」

 

おい、それ以上言うな、風音が怒り出す。実際に拳を握って震えているんだから。とりあえず風音の手を握って落ち着かせよう。

 

落ち着きを取り戻したのか、風音は俺を見た後、冷静になった。

 

八幡「おい、死ねとか殺すとか軽々しく言うんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ」

 

結衣「あ、ごめん、別にそういうつもりじゃ・・・って今言ったよ!?超言ってたよ!?」

 

うん、わかった。こいつアホだ。だがちゃんと謝れる奴でもある。俺ってすごい、このやり取りだけでこいつのことがだいたいわかったよ、八幡天才。

 

結衣「・・それで平塚先生からここを紹介されたんだけど、生徒の願いを叶えてくれるんだよね?」

 

八幡「そうなのか?」

 

雪乃「いいえ、少し違うわ。・・この部の活動はあくまで生徒の自立を促すことよ」

 

結衣「どういうこと?」

 

今の説明でわからんのか?やはりアホの子だ。

 

風音「簡単に言えば、飢えた人に魚を与えるんじゃなくて、魚の取り方を教える。そういうことでしょ?」

 

雪乃「ええ、そのとおりよ。だから願いが叶うかどうかはその人次第。・・・それで、由比ヶ浜さん、あなたの依頼というのは?」

 

その言葉で思い出したのか、由比ヶ浜はあっと声をあげる。

 

結衣「あの・・クッキーを・・」

 

と言いかけて、俺の方をちらちら見る。

 

八幡「あ、男の俺がいると話しづらい内容なのか。・・んじゃ、何か飲み物買ってくる。風音は何か飲むか?」

 

そういって俺は席を立ち、要望を聞く。

 

風音「あ、じゃあソウルドリンクで」

 

俺と同じやつか。ちなみにソウルドリンクというのは千葉限定MAXコーヒーのことだ。あの甘さが癖になるんだよな~、これまた。

 

八幡「OK。お前らは?」

 

雪乃「じゃあ野菜生活100いちごヨーグルトミックスをお願い」

 

野菜ジュースにそんなのあったんだな。うまいのかそれ?・・・あれ、由比ヶ浜が何も言わない。

 

八幡「おーい、由比ヶ浜は?」

 

結衣「え?いいの?」

 

八幡「アホ。一人だけ買わないってわけにはいかねぇだろ」

 

それを聞いた由比ヶ浜はへぇ、と驚いていた。いや、俺だって他人に気ぐらい遣うよ。空気壊さないよう常にステルス発動してるとか。

 

結衣「あ、ありがと。じゃあオレンジジュースお願い」

 

八幡「はいよ」

 

そういって俺は部室を出た。

 

 

 

 

しばらくして部室に戻ると、みんな席を立っていた。どうやら移動するらしい。

 

八幡「あれ、お前らどっか行くの?」

 

風音「うん、家庭科室に行くよ」

 

八幡「家庭科室?・・・・ていうか依頼内容は?」

 

雪乃「着いたら教えるわ」

 

 

 

 

 

≪家庭科室≫

 

 

八幡「んで、何すんの?」

 

雪乃「由比ヶ浜さんは手作りクッキーを食べてもらいたい人がいるそうよ。でも自信がないから手伝ってほしい、というのが彼女の依頼よ」

 

八幡「ふーん、クッキーねぇ。・・・友達とかに頼まなかったのか?お前みたいなやつだったらいっぱいいるだろ?」

 

結衣「う・・そ、それはその、・・・・あんまり知られたくないし、こういうことしてるの知られたら馬鹿にされるし・・・」

 

俺は鼻で溜息をする。俺はいま思ったことを言おうとしたがやめておこう。こいつなりの立場やリア充事情があるんだろう・・・。

 

八幡「フゥ・・・わかったよ。それでどうするんだ?」

 

雪乃「あら、意外とやる気はあるのね」

 

え?俺ってそんなやる気ないように見える?目?やっぱり目なのか!?

 

八幡「頼まれた以上、手は抜かない。それが俺のモットーだ」

 

雪乃「へぇ・・少し感心したわ」

 

八幡「そーかい。・・・ところで風音は?」

 

風音「ここにいるよ~、八くん」

 

きょろきょろ見渡すと俺の隣にいた。

 

八幡「お前どこ行ってたんだ?」

 

風音「あ~、図書室に行ってクッキーのレシピ本を借りてきたの。ここってそういうの置いてないと思ったから」

 

風音は、手に持っていた本を掲げた。

 

速いな・・・。ここから図書室って少し距離あったのに。

 

八幡「そうか。ありがとな風音、助かったわ」ナデナデ

 

風音は嬉しそうに、満面の笑みを浮かべる。あ~、可愛いな~。癒される。

 

この光景を見ている二人はポカーンとしていたが、気にしない。

 

風音「はい、結衣ちゃんこれ見て頑張ってね!」

 

風音は、由比ヶ浜のもとへ行き、本を渡した。

 

結衣「えっ・・あ、うん。頑張るよ!」

 

八幡「んじゃまず、由比ヶ浜一人に作らせる。今の実力がどれくらいかを見よう。ちゃんとレシピ通りに作れ、いいな?」

 

雪乃「なんだか投げやりな気もするけれど、そうしましょう。何かあったら指摘すればいいし」

 

結衣「うん、わかった。私頑張る!」

 

拳を握り、気合を入れる、どうやら本気のようだ。頑張れよ。

 

 

このとき、俺達の判断が、のちに四人を苦しませることになるとは、思いもしなかった。

 

今更だが、さっき買ってきた飲み物は冷蔵庫に入れておこう。

 

 

―――――数分後・・・

 

 

結衣「できたよーー!?」

 

由比ヶ浜が差し出してきた皿の上には、黒より黒く、闇より暗き漆黒の物体が乗せられていた・・・。

 

八幡&風音&雪乃「「「・・・・・・・・・・・・・」」」

 

人間本気で驚くと金縛りにあったかのように動けないんだな・・・。ほんとにナニコレ?珍百景登録けってーーーーい!

 

雪乃「あ、あの由比ヶ浜さん、これは一体?・・・」

 

結衣「ん、なにってクッキーだよ」

 

八幡「これのどこがクッキーなんだよ!?どこからどう見てもダークマターの一種だ!?こんなの食わせる気か!ほんとにレシピに従って作ったんだろうなぁ!?」

 

俺は珍しく声を大きく荒げて説教をした。俺ってこんな声出せるんだな。

 

結衣「ひどい!?ちゃんと作ったよ!・・でも普通じゃつまんないからちょっと付け加えたけど・・・。」

 

原因はそれか・・・。ていうかレシピ通りにしてないじゃん。ひどいのはどっちだよ・・・。

 

風音「あのね、結衣ちゃん、アレンジは料理できる人が工夫して生み出すからこそアレンジっていうんだよ。できない人がやったってうまくいかないよ・・・。」

 

風音の至極真っ当な意見に、由比ヶ浜も納得せざるを得ないようだ。

 

結衣「で、でもまだ食べてないんだから味はわからないでしょ。食べてみて!」

 

せめて食べてからいろいろ言って、と皿をこっちに突き出す。やめてくれ。

 

八幡「やめろ!?まだ死にたくない!俺のアホ毛センサーが警戒度MAXなんだよ!?」

 

結衣「アホ毛センサーってなんだし!?」

 

いや、このセンサーは馬鹿にできないぞ。今までこいつのおかげで危機を回避できてきたんだからな。俺はこのアホ毛に100%信頼を寄せている。

 

雪乃「はぁ、わかったわ。食べるわよ。そのかわりあなたも食べなさい。いいわね?」

 

こうして、俺達四人の手に、クッキーという名の暗黒物質が乗せられた。え?逆だって?残念当ってます。

 

八幡「だいたい、スーパーの食材でどうしたらこんなのになるんだ・・・」

 

風音「食べられないものは使ってないから、問題ないと思うんだけど・・・・」

 

俺達は覚悟を決めて、それを口に入れた。

 

その瞬間、目の前で惨劇が起きた・・・。

 

雪ノ下は口を押さえ涙目。

 

由比ヶ浜も雪ノ下同様涙目。あんたが作ったんだぞ!?

 

風音は俺の腕を掴んでこらえている。大丈夫か風音!?

 

対する俺も口を押さえこらえている。やべぇ・・・あまりのヤバさにアホ毛センサーがオーバーヒートしてる。

 

俺は冷蔵庫に向かいさっき買った飲み物を急いでみんなに渡した。

 

無理矢理胃に流し込む・・。腹壊さねぇかなぁ・・・。

 

八幡「はぁ・・・雪ノ下、風音、お前ら付きっきりでやってくれ。これは指摘するというレベルをはるかに超えてる」

 

雪乃「言われなくてもそうするわ」

 

風音「うん、もうあれは勘弁だよ・・・」

 

こうして、雪ノ下&風音の徹底的な教育が始まった。

 

 

――――――――一時間後

 

 

雪ノ下と風音の力により、なんとか食べられるところまで進歩した。

 

雪乃「・・・あと少しね」

 

結衣「何がいけないんだろう・・・」

 

風音「う~ん・・・」

 

八幡「なぁ、どうしてそこまでうまいクッキーにこだわるんだ?」

 

結衣「はぁ?」

 

由比ヶ浜は「こいつ何言ってんの?」みたいな顔でこっちを見た。あまりに馬鹿にしくさった表情だったのでイラッときた。

 

八幡「せっかくの手作りクッキーだ。そこをアピールしなきゃ意味がないだろ。店と同じようなものを出されたってあんまり嬉しくない。むしろちょっと悪い方がいい」

 

そう言うと雪ノ下は納得のいかない顔で聞き返す。

 

雪乃「悪い方がいいの?」

 

八幡「ああ、そうだ。要は気持ちの問題だ。一生懸命作りましたっていう想いをぶつければ『俺のために頑張ってくれたんだ』と思うんじゃねーか?」

 

風音「あ~、それは一理あるね。おいしすぎると逆に特別感がなくなるかもしれないし」

 

結衣「そんな単純なもんなの?」

 

八幡「そうだな。男子ってのは女子が思っている以上に単純だぞ。ましてや手作りクッキーだ。男心も揺れるだろう」

 

結衣「ヒッキーも揺れるの?」

 

八幡「ん、ああ。(風音からもらった時は)揺れたね。柄にもなく心の中で舞い上がったよ」

 

結衣「ふーん・・・そっか。雪ノ下さん、新島さん、ヒッキー、今日はありがとう。あとは自分の力で頑張ってみるよ」

 

八幡&風音&雪乃「一人で大丈夫(なの)(か)?」

 

結衣「だ、大丈夫だよ!?お母さんに見てもらうし」

 

それを聞いて俺達は安心した。よかった~・・・。

 

結衣「みんな、今日はほんとにありがとう。それじゃあバイバイ」

 

由比ヶ浜は手を振って帰っていった。

 

雪乃「あれでよかったのかしら?」

 

八幡「生徒に自立を促すのが活動理念なんだろ?」

 

風音「そうそう、だから依頼は達成でいいんじゃない?」

 

雪乃「・・・それもそうね」

 

そのあと、俺達は家庭科室を片付け、下校した。あのアマぁ、片付けぐらい手伝ってから帰れや・・。

 

 

 

 

《帰り道》

 

 

風音「私があの時あげたクッキー、舞い上げるほど嬉しかったんだ~、エへへ」

 

八幡「当たり前だろ、好きな人からもらった手作りだ。喜ばねぇわけないだろ」

 

風音「そっか。・・・じゃあまた今度作ってあげようか?」

 

八幡「ああ、お願いするわ。久々にお前のクッキー食いたくなったし」

 

 

 

 

 

 

《翌日》

奉仕部にて

 

 

今日も俺達は部活動に励んでいた。座ってるだけだけど・・・。

 

すると、不意にドアが開け放たれる。

 

結衣「やっはろー!」

 

気の抜けるような挨拶とともにやってきたのは・・えーっと、確か・・由比ヶ浜結衣だっけ?

 

雪ノ下「・・・何か?」

 

結衣「あれ、あんまり歓迎されてない?・・・ひょっとして雪ノ下さんって私のこと嫌い?」

 

それを聞いた雪ノ下は、ふむと少し考えて、平素な声で言った。

 

雪乃「別に嫌いじゃないわ。・・・少し苦手なだけよ」

 

結衣「それ女子言葉では嫌いと同義語だからねっ!?」

 

由比ヶ浜はあたふたとしていた。女子言葉って何ぞや?もしかして新しい言語?今度風音に教えてもらおうかな。

 

雪乃「それで、何か用かしら?」

 

結衣「あ、そういえば昨日のお礼にと思ってクッキー焼いてきたの。はい、ゆきのん。あとかざねんとヒッキーにも」

 

雪乃「あの、私今食欲が・・・それとゆきのんって何?気持ち悪いからやめてくれないかしら」

 

風音「私も今は・・・へっ?かざねんって?」

 

八幡「俺は腹減ってねぇから・・・あとヒッキーはやめろ」

 

結衣「ちょっさすがに酷すぎだし!?」

 

俺らの反応にさすがの由比ヶ浜もむかついたのか文句を言ってきた。・・・いや、昨日のあれを見せつけられたら誰だってこの反応するよ?あの餓死寸前の人でも食べるのを躊躇うほどのダークマターを錬成した奴に対してなら。

 

結衣「大丈夫だよ!?ちゃんとお母さんと一緒に作ったし・・・。」

 

それを聞いて安心したわ。

 

雪乃「それじゃあ、ありがたくいただくわ」

 

風音「結衣ちゃんありがと~」

 

八幡「サンキューな」

 

結衣「むーっ!?絶対見返してやるんだからー!?・・・それじゃバイバイ」

 

そういって、奉仕部を去っていった。

 

なんというか・・台風みたいなやつだったな・・。

 

 

ちなみにクッキーの味は美味くも不味くもなかった。つまり、普通。

 

 




新島風音の超簡単なプロフィール設定

身長・・165センチ

髪型・・肩につく長さで黒っぽい紺色をしている

好きなもの・・比企谷八幡、ぬいぐるみ

穏やかでおっとりとした性格。笑顔がとても癒される。八幡が悪く言われると、人が変わったようにキレる。眼鏡はかけていない。とても清楚。

その他の情報は話が進むにつれて、いろいろ判明します。

また次回。

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