26話突入。デート回
それではご覧ください。
いよいよ待ちに待った修学旅行3日目。風音との京都デート。楽しみで凄い眠れたわ。ホテルのロビーで待ち合わせているため、今はそこにいる。集合時間より30分も俺は早く来た。そもそも、風音とのデートで待ち合わせとかしたことが無かったな。家超絶近いし。
ロビーの椅子に座りながら、マッカンを煽る。あ、このマッカンは昨日風音にもらった。俺のために持ってきてくれてたらしい。本当に、感謝。
しばらくすると、俺の目の前に1人の女子生徒が現れた。由比ヶ浜だ。
結衣「ヒッキー、ありがとう。あたしたちのグループ守ってくれて」
八幡「は?何言ってんだ?俺は何もしてない。そういうのは葉山に言え」
結衣「でも、隼人君がああやってできたのは、ヒッキーのおかげだから・・」
八幡「・・・はっ、違うな。葉山が勝手にそう解釈して、自分の力でやったんだよ」
結衣「それでも、ありがとう。あたしたちのために・・・」
・・・こいつは何を勘違いしているんだ。誰がお前らのために1つのグループを守るかよ。俺がそうしたのは、もっと別の理由だ。
八幡「俺はお前らのためにやったんじゃない。勝手に勘違いするな。俺は本気の奴が頼ったから動いただけだ」
そうだ。葉山のグループが崩壊しようと何だろうと、俺にはどうでもよかった。俺は、戸部が本気だったから、止めなかったんだ。昨日のような一番いい終わり方ができたのは、戸部の考えと葉山の機転によるものだ。俺なんて何一つ活躍していない。
八幡「用が済んだなら俺は行く。今日はデートだからな。これからはよく考えて依頼を受けろ。こんな面倒ごとはもうごめんだ」
ん~、我ながら結構きついことを言い残したかな?でも、風音とのデートが潰されかけたんだからこれくらい言わせてほしい。
風音「おはよう八くん」
八幡「おはよう。じゃ、早速行こうぜ」
腕を組み、旅館に出て、いざ出発。これは所謂、制服京都デート。学生のうちで修学旅行でしか味わえない、未知の楽しみだ。
◆
まずは、天竜寺にやってきた。
天龍寺は、後醍醐天皇の菩提を弔うため足利尊氏が建立したと言われている。庭園を見学するのに500円諸堂参拝に100円が追加される。あながち高いと思われるだろうが、千葉から来た人にとって京都は貴重なため、安い物だろう。
綺麗だ・・・。和が好きな俺と風音はしばらく庭園の輝きに見惚れていた。水面には周りの木々が鏡のように映っている。
庭園をしばらく見学した後、その参拝場所である、大方丈・書院・多宝殿を回る。
他にも天龍寺と言ったら、ふすま絵の龍。やはり龍というのは、男の中の何かを奮い立たせる程、神々しい風貌で、ロマンがあり、とてもカッコいい。
しばらく見入っていると、チョンチョンと風音に肩を突かれた。
八幡「ん?どした?」
風音「あのね、折角の京都だし、見入る気持ちはわかるよ。私だってそうしたいし。・・けどね」
組んでいた腕を更にぎゅっと締め
風音「我儘だけど、私の事もちょっと見て・・・」
ぐはっ!甘えた口調に上目遣い。その可愛いコンボに思わず、心の中で吐血してしまった。
八幡「そうか・・・。随分と甘えん坊になったな」
風音「そんなこと・・・・・・・・ないよ」
今の間は何だったんだろうな。まぁ、甘えられるのは好きだから、頭は撫でる。
そして!天龍寺と言ったら他にもある。そう、甘党の俺が注目するグルメ。『天龍寺パフェ』である。こだわりの和素材をふんだんに使い、さらに有機栽培の茶葉を使った抹茶も付き、ほうじ茶の自家製アイスが絶品らしい。
八幡「知ってるか?先に抹茶を飲んでから食うと、パフェの甘みが引き立つんだ」
風音「知ってるよ~、雑誌に書いてあったもん」
自慢げに語ったが、彼女の一言で撃沈した。ああー!恥ずかしい!風音は自覚ないらしいが、結構天然なため、それに気づいていない様子。
風音「八くん、あーん♪」
八幡「あん」
うむ、癒された。彼女のあーん、は偉大だと思う。この海底深くに沈んだ気持ちを一気に海面まで浮上させたのだから。
うん。最高に美味い。
◆
続いてやってきた場所は、京都東山の音羽山の中腹に建つ歴史ある寺院と言われている、清水寺だ。清水の舞台で名高い東山の清水寺は、坂上田村麻呂が創建した単立の北法相宗大本山。かつては清少納言も参詣したという。秋は紅葉と堂塔伽藍が調和して美しいのだ。
ちなみに風音は中学生の時、しみずでらと読んでいたのは内緒だ。間違いを指摘したときの慌てっぷりは面白かった。
風音「紅葉が綺麗だね~。絶景♪」
紅葉の絶景を背景に、ご満悦の風音一枚撮影。
小町の受験合格祈願をしたら、次は名所の滝だ。
拝観順路に従いながら、奥の院からの本堂・舞台を眺め、そこからは音羽の滝へと繋がる道がある。
清水寺という名の由来になった、霊水だ。
数十分並び、柄杓で一杯。・・・うん、美味い。さすが、古くから伝わる名水だ。季節的にも冷たくさぞや喉に気持ちがいいことだろう。
持ってきた空のペットボトルで水をすくい、春と秋にしか公開されない、成就院も見学し、次の目的地に向かった。
◆
続いて、京都と言ったら、当然和菓子。という事で、和菓子作りの体験だ。初京菓子だ。スーパーとかに普通に売ってるが、買ったことも食ったこともない。
風音「どっちが上手く作れるか勝負しようよ」
八幡「お?久々にやるか。いいぜ」
まずは、
最初は桜。まずは、あんこが入っている、白いものをころころと優しく丸めるらしい。
風音「昔、泥団子作ったの思い出すね~」
ど、泥団子?まぁ、確かに要領は同じだろうが、まさかの泥団子で例えるとは・・・。ほらね、言った通り、天然でしょ?
泥団子か・・・。思い出す。みんな忘れがちだが、俺と風音はよく勝負をし、勝敗をメモしている。泥団子対決で、どちらが丈夫で固いものを作れるか競ったことがある。小学生の時ね。さすがに中学でやってたら引くわ。そして、家から持ってきた皿を的に、投げつけたのだ。そしてら見事に皿がパリーンと粉々。お互いに本気出し過ぎて、めちゃくちゃ固い泥団子を作った思い出があるのだ。すげえ親に怒られた。
八幡「そうだな」
いくつかの作業工程を描写が難しいという事で飛ばし、桜色のやつ(名前分からない)を全体に包ませ、桜の形にする。使うのは指と木のヘラみたいなものだけだ。
風音「~♪」
風音はいとも簡単に楽々と、桜の形にしてきている。さすが料理上手だ。職人とあんまり大差がない。器用に次々と切り込みを入れている。このままじゃ負けるな。・・・・・・・・【ロットア
風音「禁止」
八幡「な、何故分かった?・・・」
風音「八くんのロットアイ使うときの雰囲気とか大体わかるよ。ずっと隣にいるもんね♪」
やはり風音にはかなわないな。一体いくつ俺の何かを見破れるのだろう。
はい、結果は風音の勝ちだ。職人さんにも褒められるほど上手にできている。
作り終わったら、自分で作った和菓子を食べて終わりだ。お店の方から抹茶のサービス。太っ腹。
風音「美味しい」
八幡「初めて食べたが、本当に美味いな」
今度風音と一緒に作ろうかな?
最後は、和菓子作り体験の証明書みたいなものを作るため、その場で写真撮影。肩を寄せ合い、撮った。
◆
次にするのは扇子作り。紙に好きな絵を描いて職人さんが仕上げてくれるのだ。
風音は京都ならではの紅葉を描いている。
一方俺は、天龍寺のふすまに見惚れて、龍を描いている。一般の男子高校生があんなの描けるわけがない。ズルだがロットアイを使わせてもらった。
風音「八くん凄い・・・」
職人さんに渡したときは、凄い驚かれたな。あんな度肝を抜かれた表情は忘れない。
扇子にするには時間がかかるため、千葉の自宅に送る形で扇子作りが終わった。
◆
さて、目を付けた名所も一通り行ったという事で、お次はグルメ。やっぱ県外に来たら食べ物でしょう。普段と変わらない食事よりも、限定的に食べる方が胃に入るという謎のメカニズムが発動するのは何故だろう?別腹と同じ要領なのかな?とにかく食う。
ここで一つ。風音は太らない。そう、いくら食べても全く肉がつかないのだ。不思議だよな。でも、陰で努力してたら可愛いよな。これ以上細くなるのは嫌だけど。程よい肉付きがいいのだ。
まず、京都と言えば天ぷら。美味そうな店を風音と見つけたからそこへ行く。どうでもいいが、天ぷらの語源はポルトガルなんだよ。
八幡「美味い」
風音「本当に美味しいね。ここで正解だったかな?」
サクサクとした食感に舌鼓を打ちながら、次はどこに行こうか話し合った。
◆
腹も膨れたため、今は路地を散歩中。途中で買った団子を食べ歩きながら道を進む。
風音「八くん、あれ何?」
風音が屋根の上にある像を指さして聞いてきた。
八幡「あれは鍾馗さんって言って、魔除けの神様らしい」
魔除けって、何かの厄から救ってくれるというイメージが強いが、実際魔とはどういうものだろう、と俺は思う。ネット上では魔除けで救われたなんて言う人がいるけど、そもそも魔を体験しなきゃ救われたなんて分からないんじゃないか。だから魔除けなんて所詮は気分や思い込みの問題なのかもしれない。ちょっとした運の良さも魔除けのおかげだ、なんて言ってしまう。だから、その効果を知ると、魔除けに縋りついてしまう。もう、魔除け自体が魔みたいなものだ。
とまぁ、雰囲気ぶち壊しの捻くれ理論もここまでにしてデートを楽しもう。
風音もこう見えて、あまり占いとかご利益というのは過信していない。さっきの魔除けもそうだが、ああいうのは本気にし過ぎると、自分を見失う可能性があるからな。
◆
そして、時間的にこれが最後。俺と風音が行きたかった場所、京都屈指のラーメン激戦区、一乗寺だ。
全国にある有名なラーメン屋の総本店。何故か関東では千葉にだけないという理不尽。
俺も風音もここを楽しみにしていた。
八幡「こってりで」
風音「私もこってり」
風音は俺に負けず劣らずのラーメン好きだ。なりたけでも普通にギタギタ食べる。
この重量感はたまらない。ぷるぷるとしたスープも麺に絡みついて、食欲をそそる。風音も目を輝かせている。
美味い!
特に会話もなく、黙々と食べ続ける。ラーメンは基本無言で食うのだ。例え友人と来ようが、その美味さに箸が止まらなくなる。
八幡「美味かったな」
風音「うん。幸せ。なんだったらこれ食べに京都行きたいよ」
◆
楽しい時間は早く感じてしまう。もうすぐ日没だ。いや、太陽は沈むんじゃない。地球の裏側を照らしに行くんだ。
家族へのお土産も買い、旅館に戻る途中の俺達。
八幡「あー、喉乾いたな」
風音「自販機は無いみたい。あ、霊水あるよ」
そう言って清水寺ですくった霊水の入ったペットボトルを取り出した。風音は俺に渡そうと手を伸ばしたが、途中で止まり、俺とペットボトルを交互にチラチラと見た。
何事?と思っていたら、まさかの風音が飲み始めた。風音の行動が読み取れない。これには一体何が・・・。と思っていると、風音は飲んでいるわけじゃない。喉が動いていないから、口内に溜めているのだ。
次から次へとわけのわからないことが起き、ポカーンとしていたら、風音が今だ!と言わんばかりに目を細め、俺の口を自分の口で塞ぎ、溜めた霊水を流してきた。
そう、口移しである。
八幡「~~~~~~~っ!?」
風音「・・・・ぷはぁ、お、美味しかった?」
八幡「か、か、かじゃね?」
やばいやばい、テンパりすぎて噛み噛みだ。ていうか風音顔真っ赤じゃん。すげえ恥ずかしそうじゃん。何でこれやったの?いや、別に嫌とかじゃなく、寧ろ嬉しさの方が勝ってるけど。それ以上に恥ずかしい。
風音「い、行こっか八くん!」
そんな恥ずかしさを紛らわすべく、大きく張りのある声で俺の手を引っ張った。
本当に大胆になってきたな風音・・・。
◆
旅館に着いた俺達はロビーに座っている。ここで重要な話をするのだ。
八幡「まぁ、黙ってて悪かった。言うつもりではいたんだけどな」
風音「ううん。気にしてないよ。でも、これからはできる限り、相談してくれると嬉しいな」
八幡「今度からそうする。・・・じゃ、本題な。もう一度言うが、俺、”生徒会長”になろうと思う」
風音「うん」
八幡「俺らしくないだろ?こう思ってる自分に自分で驚くわ。・・・でも、この変わった俺がどこまでできるのかって、挑戦してみたくなってしまったんだ」
風音「そっか・・・」
今は生徒会長になると言っているが、それは選挙に選ばれればの話だ。それに、準備することは結構多い。演説内容に、応援演説をしてくれる奴。応援演説は昨日葉山に頼み、快く引き受けてくれた。
投票とかは、皮肉なことに真面目にする奴なんで極わずかだろう。せいぜい、友達が入れるからとか、人気者だからとか。
なんか、生徒会長になるために葉山を利用したって思われるかもしれないが、そんな下心一切ないからな。それ追及してきた奴、一から説明した後、八つ裂きにする。
八幡「それで、無理にとは言わないが。風音、副会長にならないか?」
風音「いいよ」
八幡「いや、別に今返事をくれなくていいんだ。これから先の学校生活もあるし、よく考えてって・・・・・え?いいの?」
風音「副会長、やるよ」
八幡「いいのか?」
風音「うん。八くんと生徒会、楽しそう♪」
八幡「ありがとな」
風音「部活はどうするの?」
そうか。部活・・・。平塚先生から、雪ノ下の補佐として強制入部させられたが、さすがに自ら生徒会長をやりたいって言う人を止めることは無いだろう。教師としてそれはどうかと思うしな。
八幡「雪ノ下には悪いが、やめる」
風音「
風音・・・。いつの間に呼び捨て。俺の知らないところでそんな仲良くなってたのか。そういえば、前に俺が言ったな。色々教えてやれば?って。※2話参照
八幡「あいつも、何か目的があって奉仕部を作ったんじゃないか?雪ノ下自身も何か見つけるために、生徒の悩みを聞いてたのかもしれない。直接確認したわけじゃないが」
風音「そっか。もしそうだったら、邪魔することになっちゃうね。でも、もし相談とかされたら、ちゃんと答えようね」
八幡「そうだな。元々奉仕部のおかげで、俺は変わることができた。この恩は返さなきゃな」
そうして俺達は、生徒会をする約束をした。
久しぶりだ。自分がどれだけできるかの、このわくわく感。いつ以来か覚えていないくらいだ。ま、探り探りで頑張ろうか。目の前にいる最愛の彼女のためにも。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
また次回。