アルドノアグール   作:柊羽(復帰中)

13 / 39
夏休みだから投稿ペース早まるとか言ったな、あれは嘘だ。


Episode.11 迫り来る飛行者

「今度は3区か……」

 

鞠戸が今回の被害等についての資料を眺めていた。

 

「敵の情報は相変わらず少ないですけど、何もないよりマシですね」

 

隣にいた佐々木が同じく資料を見つつ言う。

 

「ないよりマシだが、あってもどうすることも出来ないかもな……」

 

ホッチキス留めの資料を目の前の長テーブルに投げ、鞠戸は背もたれに寄っかかる。

 

 

 

これから、その件について会議が行われようとしていた。

 

 

時刻はまもなく午前11時。会議もその時間から開始される。

 

すでに室内は多くの捜査官たちが資料を見つつ、また仲間と会話などして待機していた。

 

 

 

短針が11を示したのとほぼ同時に、大会議室の扉が開かれ、久保田と2人の捜査官が入ってくる。

 

前に設置された彼らの席に着くと、早速開始される。

 

 

「えー、今日は集まってくれてありがとう。今日は皆もう知ってるように、再び始まった喰種の襲撃についてだ」

 

久保田がマイクを取り、話し始める。

 

 

 

「コイツを見てくれ。これは今までに襲撃された地区を赤く色づけしてある。ここからわかるのは、まぁ前にも言ったがヤツらの占領は徐々に広がるようにしているってことだ」

 

久保田が目の前にあるパソコンを操作し、巨大スクリーンに画面投影する。そこには東京の地図が表示され、3,10,11,12,13区のところが赤くなっている。

 

「最初に起きたのが10、12区だ。だが、その次はイレギュラーだが11区とここ21区だ」

 

久保田はスクリーンを進める。最初に10、12区のところが点滅する。次に、11区と21区のところが点滅した。

 

「11区でも始まり、その周辺で戦闘が起こると思っていたが、敵の方は裏をかいたのかわからないが21区への戦闘を行った。これが予想外であったが、我らが勝利した」

 

21区の場所は赤ではなく、青に塗られた。

 

「その後、11区を襲った喰種は13区に目をつけた。結果は惨敗、ヤツらに占拠された」

 

13区のところが点滅。

 

「この次が案外重要だ。13区を襲った喰種が再び21区に来たんだ。これにもなんとか勝つことが出来た。が、死傷者多数、広範囲で建物等の破壊……。最初のやつより損害規模がデカい」

 

再び21区のところが点滅するが、すぐおさまる。と同時に、死傷者数や破壊された街の写真がいくつか出てきた。

 

「こうも2回にわたって攻撃を仕掛けてくるということは、我々21区、いや21区の捜査官を危険視しているということだろう」

 

 

同じところに二度も来る。それはそういう意図だろうと納得できる。捜査官たちの多くが軽くうなずく。

 

「それで、今回が3区だ。ここでヤツらは広げた領土周辺をまた攻め始めた。全くどういう選び方してんのかわからねぇわ。ま、そんなことは置いといて、だ」

 

久保田はスクリーンを進める。画面には1本の動画の再生待機が出ていた。

 

「これは3区での戦闘をとらえることが出来た映像だ。カメラは捜査官の頭につけられていて、映像はリアルタイムで支局を通して本部に送られた。何人かカメラをつけた捜査官はおったが、あっという間に1人になったってな……まぁとりあえず見ろ」

 

再生ボタンをマウスを操作して、クリックした。

 

動画が始まると爆発音、カメラをつけている捜査官の走る音、呼吸、少し聞こえる無線の声が同時に流れ出す。これは敵と戦闘中のところだけを切り取ったようだ。

 

 

『クッソ!一体どうなってる!?』

 

『おい田中!他のやつは?』

 

『ダメだ、他全員やられた!俺は俺で避けるのに精一杯だ』

 

左右と上を確認していた捜査官の田中は、他の仲間の班を見つけ、合流した。どうやらカメラの主の班は壊滅のようだ。

 

『くっ!これじゃ防戦一方だ……き、来たぞ!!』

 

捜査官が指さす方向に画面が動く。

 

空から何か物体が赤紫色のベールをまとってこちらに飛んでくる。

 

『避けろ!』

 

全員その場から離れる。その物体は闘牛のように猛スピードでさっきまでいた場所を通り、地面ギリギリで上昇する。そしてまた空高く上がり、ビルの影に隠れた。

 

『止まっててもしょうがない。移動するぞ!』

 

『で、ですが!逃げても、コイツはどうするんですか!分離した赫子が飛んでくるし、本体がどこにいるか確認できてない!このままじゃ僕らは……』

 

『ここで考えてもしょうがない!もっと逃げ場のあるところに行かないと、避けきれない!』

 

もはや圧倒的な強さに意気消沈する捜査官に怒鳴りつけるようにして、走り出す。だが、それは簡単に逃がしてはくれないようだった。

 

『正面から、また来ます!』

 

『さっきのか!距離を置いて加速してきてる!気をつけ』

 

 

ドガァァァァァン!!

 

 

注意喚起を妨げる轟音。後ろから聞こえたそれは、捜査官全員を恐怖にたたき込むものだった。

 

『なっ、2体目かよ!なんでこんな……』

 

2つ目の物体が横の建物を突き破って現れた。そして方向を修正しつつ、こちらに向かってくる。ここは建物が両脇にある一本道。挟み撃ちだ。

 

『うおおお!!』

 

田中は全力で避ける。画面がブレにブレるが、そうだと容易に考えられる。

 

 

再び画面が道に戻ると、そこには複数の肉片が散らばっていた。どれが誰のどのパーツなのかわからない。

 

最初に田中に声をかけた捜査官、盛岡は生きていた。だが、二つの物体のうち片方は旋回して、再びこちらに向かってくる。

 

『はぁ、あああクソがァァァ!!!』

 

盛岡は自身の剣型甲赫クインケを握りしめ、構える。

 

『盛岡、やめっ!!』

 

手を伸ばすが、無意味だった。

 

 

まるで野球のように、ピッチャーが投げたボールをバッターが打つように、盛岡は思いっきり飛んでくる物体にクインケをぶつける。

 

しかし、凄まじい勢いに勝てるはずもなく、瞬時に盛岡は衝撃で吹っ飛ばされる。そのまま数メートルまで転がった。

 

『盛岡!』

 

田中が直ぐさま駆け寄る。

 

クインケは大破し、その破片の一部が盛岡の胸や腕などに刺さっていた。

 

『田……中。ガハッ……お。お前だけでも逃げろ』

 

『っ……だけど!』

 

『怪我人つれてどうよけんだ馬鹿野郎。それに、避けるばかりじゃ意味ないの……かもな』

 

 

ついに盛岡は動かなくなった。停止した体からは血だけが溢れ出ていた。

 

『くっ!』

 

田中はそのまま走り出す。もう少しで開けた場所に出られる。すると、上空に自分と同じ方向に飛んでいくあの物体があった。

 

一本道を出ると、少し遠くのビルの屋上に誰かが確認できた。そこに物体が集まっていく。

 

6個のそれはその人にくっつく。おそらく、あれが今回の敵、光を放つ喰種だ。

 

『はぁ……、あれが本体か。何故いったん戻した……?燃料……切れか?』

 

荒い呼吸を整えながら、田中はこれを見る人たちに聞かせるように呟く。

 

『それに、本体が直接攻撃してくる気配がない……ということは、あれだけが攻撃手段……なんだな』

 

呼吸がますます荒くなる田中のカメラが彼の体を映す。

 

そこには、先程の盛岡のクインケの一部だろうか、右脇腹に刺さっていた。田中にも飛んできたのだ。

 

『はは、全く、最期まで足引っ張んなよな……。馬鹿野郎はお前も、だよ』

 

再び、画面は本体のいるビルへ。そして、大きく一回、深呼吸した。

 

そのまま駆け出す。それと同時に自身の羽赫クインケをビルに向け、発射し始める。

 

それに気づいたか、本体はこちらに体を向ける。黒いマントを羽織り、喰種がつけるマスクは黄土色を基調としていて、2本角がはえていた。

 

『そんなとこいないで降りてこいやボケェェェ!!』

 

喰種は少しかわった構えをすると、6個の物体が一斉に飛び出した。それはどれもきっちり、田中の方へ飛んでくる。

 

『ハッ、流石に6個いっぺんは無理やわ』

 

 

 

 

 

 

 

ここで画面は黒く、砂嵐のようになった。

 

「……とまあ、こんな感じだ。この映像からわかることを簡単にまとめた」

 

最期は引きずらないようにして、画面は動画から再びパワーポイントの説明書きに移った。

 

「一つは、相手はおそらく羽赫と思われる。つまり飛んできた物体は羽赫自体を分離、硬化したもの。甲赫の可能性もあるが、本体と合体したときの感じが甲赫とはほど遠い形状だと判断した。二つ、攻撃方法は赫子の分離攻撃のみ。本体自ら攻撃をしてこなかった」

 

異例に異例を重ねてくる相手。今までの経験からして"普通"の喰種なんて出てくるとは思ってなかったが、今回も捜査官たちを驚きで硬直させるものだった。

 

「そして、だ。この喰種は今後他区に現れるものと考えていいだろう。ここも例外ではないが、二回も負けているところにわざわざ来るとはあまり考えられない。よって3区周辺の地区を中心に防御網を固める。我々も参加だ。のちに通知が各自に来るだろう。……と、必要かわからんが一応”経験者”から何かあったらどうぞ」

 

久保田は目線を最前列に向ける。そこにいた伊奈帆やユキ、鞠戸などがいた。

 

すぐに不見咲が手を挙げる。それを見てすぐにマイクを彼女に渡す。

 

「不見咲准特等捜査官です。私は主に騎士の戦闘に関わりました。そこからわかったことは、やはり相手の能力の恐ろしさです。その力に怯え、恐怖し、戦えなくなる捜査官も出てきます。そうなれば、何も覚悟できずに、無残な肉片になります。そうならないためにも、ここは強い信念を持つことが大切です」

 

以上です、と不見咲が言い終わってマイクを返す。今の発言で一気に場の雰囲気が変わった。漠然とした未知の敵に対して、よりリアルに、より現実味を帯びた恐ろしさ、緊張などが体の内側からわき上がる。

 

ここで、もう1人手が挙がった。

 

その人にマイクが渡る。

 

「界塚伊奈帆一等捜査官です。僕からは彼ら、"光を放つ喰種"と普通の喰種の見分け方、というのを」

 

多くの捜査官たちがざわつき始める。力さえ出さなければ只の喰種と変わりない。普通のだと油断していたら実は、というのを防げるかもしれないその情報がとても気になった。

 

「最初の21区での戦闘で見たのですが、相手の赫眼の瞳の部分の色が違います。普通なら赤ですが、彼らのはオレンジ色でした。数回相手と至近距離になったとき確認しました。相手がいきなり力を発動させるかもしれませんが、これを頭に置いといてください」

 

伊奈帆の発言は終わり、マイクは再び久保田へ。

 

「今日はこれで以上だ。……あッと忘れていた。改めて確定したヤツらの呼び方だ。光を放つ喰種ってなんか言いにくいし、カッコ悪いだろ?」

 

理由がなんだかテキトーに聞こえるが、ちゃんと決められた呼び名なら問題ないだろう。

 

「不見咲からいただいた情報で、騎士がこいつらの組織を"ヴァース"、力を"アルドノア"と言っていたらしい。そこから参考にさせていただいた」

 

 

 

 

 

 

「名を、"アルドノアグール"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、異常はないですね。見張ってる限りではお酒もなるべく飲まないようにしてる感じですし」

 

「ったりめーだ。この頃は大変でさ。まったりしてられねーんだよ」

 

鞠戸は座っている背もたれのない回転椅子をクルッと一回転させる。

 

その目の前に座る医者は耶賀頼蒼真(やがらいそうま)。黒縁眼鏡で少し伸びた髪、白衣を着ている。この局の担当医をしていて、主に来る捜査官たちの診察や定期的に行われる健康診断など行っている。

 

「ってか、いつ俺のことを見張ってるんだよ」

 

「僕じゃないです。何人かに頼んでチェックさせてもらってます」

 

「相変わらず抜け目がねぇな」

 

鞠戸の素朴な質問にサラッと笑顔で返す。さりげない監視状態に鞠戸は呆れてため息をつく。

 

「ま、確かに大変な状況ですね。すぐに他区へ討伐に行くとか」

 

「お前のところにも伝わってんのか。明日にでも行くんだよ。いくつか班編制されてさ、俺がその一つの班長。まったく、他にいいやついただろ」

 

鞠戸は愚痴をこぼす。その相手はスッと小さな笑顔が消え、真面目な顔つきになる。

 

「………」

 

「………なんだよ」

 

耶賀頼は持っていた鞠戸の診断書を置き、しっかりと正面を向く。

 

 

「もう、大丈夫なんですよ。貴方は十分に班長としての役目を果たせる。だから選ばれたんですよ」

 

「……!」

 

耶賀頼が発した言葉はただの励ましだけじゃなく、鞠戸の心を見透かすようなものだった。

 

何も返せず、ただじっと耶賀頼を見続けることしかできない。

 

 

「大丈夫、ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠戸は自室のベットに寝っ転がりながら、天井を見つめる。

 

首にかけられたペンダントをおもむろに取り出し、持った手を伸ばす。

 

鎖がチャラと小さな音をたてて腕に当たる。

 

窓から入る月の光によって、ペンダントが艶やかに輝く。

 

 

「大丈夫、なのか?」

 

 

 

 

「教えてくれよ、ヒュームレイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルドノア、グール……」

 

 

 

ポツリと、伊奈帆が呟く。

 

「……それ、案外収まりがいいって感じよね」

 

目の前に座っているライエが自身の髪を指でいじりながら言う。

 

 

ここはトラックの中。捜査官たちを移動させるトラックだ。車内は壁に沿って長い椅子があり、捜査官たちは向かい合いながら座る。

 

高速で回る車輪が生み出す音が聞こえる。

 

「まぁ別に呼ぶ名前なんてどうでもいいさ。俺らの仕事はそいつらを殺す、それだけさ」

 

伊奈帆の横にいる鞠戸は腕を組みながら、目線は足下に落としたまま言う。

 

ここにいるのは上記3人と、ユキ、韻子。

 

車両の窓から見える景色は、夕日によってオレンジ色に染められている。

 

今日はやけに綺麗な夕日だ。

 

 

「……ところで、今どの辺走ってます?」

 

鞠戸の発言から会話が途絶える。その沈黙に耐えられなかったのか、韻子が質問する。

 

「ただいま5区を走行中です。目的の4区まではまだ時間がかかります」

 

「あ、ありがとうございます」

 

この車の運転手が答える。

 

「どうしたの?トイレに行きたくなった?」

 

「ち、違うよ!」

 

ライエの発言を速攻で否定する。

 

 

その刹那、

 

 

 

ザザッ……。

 

 

『こちらB-2!き、緊急事態!襲撃をうけた!』

 

 

前触れもなく車内に響いたのその無線からは、切羽詰まった捜査官の焦りと恐怖が感じられる。

 

この無線は一方的に全班に送られているようだ。

 

『おそらく3区を襲ったやつだ!突然何かが空から接近して、数台先にいたB-1の車両に突撃した。物体は再び空に上がり、北東の方向へ向かった!私たちはこの付近の住民たちを他班と共に非難させる。他ブロックの班は至急合流』

 

 

 

 

 

 

ここで無線が途切れる。その理由は定かではないが、おおよそ予想がつく。

 

「う、ウソ!今度は5区がターゲットなの!?」

 

韻子は突然の事態に声が少し震えていた。

 

「次はどこを襲うかなんてわからないでしょ。それより、どうして車両がわかったのかしら」

 

ライエはそれに対して落ち着いている。その状態で疑問点を口にする。

 

 

そう、彼らが乗っている車両はワゴン車。その中を改造してああいう席にしている。

 

21区から派遣される捜査官たちは全員班分けされ、それぞれブロックごとに別ルートで目的地に向かっていた。

 

出るタイミングも違い、かつ見た目はただの車。相手に捜査官だと悟られないようにするためだ。

 

 

それが今、無意味と化した。相手はピンポイントに捜査官が乗った車両を狙った。

 

他の車両にも攻撃を仕掛けたのかは定かではないが、そういった感じではなかった。

 

 

 

つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……情報が、漏れている可能性があります」

 

右手を握って口元に当てながら、こちらも落ち着いた様子で伊奈帆は言った。

 

「!!……ってことは、CCGの中に内通者がいるかもしれない、のか」

 

鞠戸は目を見開き、信じられないこの状況に困惑する。

 

「しかも襲われたのはBブロック。そのルートは僕らEブロックと近い。Bブロックはさらに僕らより早く出発している。相手の赫子は襲撃後北東へ向かった。なら……」

 

下を向きつつ自身の考えを淡々と述べる。そして少し区切って、顔を上げて皆を見つつ言う。

 

「ここにも来るかもしれません」

 

皆絶句した。

 

あくまで、ここはあくまで伊奈帆の考えであるが、そう思うしかなかった。

 

今の状況、CCGの作戦からして伊奈帆たちのワゴン車も襲われる可能性が大だろう。

 

いくら喰種を倒す技術があっても、ワゴン車ごと潰されたらどうしようもない。

 

 

「あ、あれは!」

 

運転手が何かを見つけたようで、慌ててその方向を指さす。

 

この流れからして、UFOなどなんかではい。

 

 

 

"アレ"だ。

 

 

 

 

あの時にビデオで見た、黄土色の羽赫がこちらに接近してきている。

 

「もうかよ!」

 

「っ……!早く!そこの脇道に行ってください!」

 

伊奈帆はすぐに運転席に駆け寄り、運転手に指示する。

 

「わ、わかった!」

 

運転手はすぐにハンドルを左に曲げ、アクセルを踏み、脇道へと突っ走る。

 

羽赫はまるで生きているように、ワゴン車が曲がったところを曲がる。

 

最初に見つけたときよりも、着実に距離は縮まっていた。

 

 

「……試してみるか」

 

伊奈帆はそう呟き、ワゴン車の後方のドアの前に立つ。そして、自身のクインケを出す。

 

「え、い、伊奈帆!?」

 

伊奈帆の行動に意味がわからず、韻子は目を見開く。

 

「あの時の映像からして」

 

 

「僕の予想が正しければ」

 

槍の石突の部分でドアを開ける。途端、高速で流れていく景色が現れ、斜め上方向からは羽赫の姿が確認できる。

 

片膝を突き、槍をライフルモードにして構える。銃口からは青白い電流が溜まり始める。

 

「ちょ、ナオ君!何する気!?」

 

ユキが慌てて伊奈帆の側に駆け寄る。だが、彼は目の前のことに集中しているのか、何も返さない。

 

 

ワゴン車が住宅街を過ぎ、川にかかる少し長い橋に乗った時だった。

 

「ファイヤ」

 

右手の人差し指で、引き金を引いた。

 

高電圧をまとった弾は一直線に羽赫の元へ飛んでいく。

 

ブレることなく羽赫の正面、ではなく少しそれた右側に被弾した。

 

当たった瞬間にバチバチッと凄まじい音がし、羽赫は途端にバランスを崩して一直線だった進行方向が少しずつ左に逸れる。

 

 

そのまま羽赫はワゴン車に掠りもせず、川に落ちていった。こちらも凄まじい音を立てて水柱が立つ。

 

「!!」

 

その場にいた他の捜査官4名は、一連の出来事に再び絶句した。

 

あの映像で見た、甲赫のクインケさえも砕くあの羽赫を、いとも簡単に起動をずらして被弾を回避したのだ。

 

「ひとまず、成功だ」

 

伊奈帆はいつもの冷静な顔で、かつ少し安堵した様子で呟いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。