アルドノアグール   作:柊羽(復帰中)

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Episode.3 革命の青年

鞠戸たちが戦闘し始めたのと同時刻、韻子たちは住民の避難を行っていた。

 

「皆さーん、落ち着いて避難してください!焦る必要はありませーん!」

 

韻子は高校生の頃、生徒会に入っていて地元でパレードなどやるときはそこへ駆り出されていた。来る人を並ばせたり迷子の子を施設で待機させたりなどが仕事た。そのおかげでこういうことには慣れていた。

 

『網文、そっちは大丈夫か』

 

無線が入る。この声は不見咲カオル准特等捜査官。たしかライエと組んでいたはずだ。住民避難は集まった捜査官を何チームかに分けて行っている。

 

「いえ、こちらには住民の数が多くて避難に時間がかかっています。避難指示区域にまだ逃げ遅れていないか確認できていません」

 

『わかった。こちらは比較的住民は少ないから、今から何人かそちらに向かわせよう。あと、敵は一匹とは限らない。仲間が来る可能性はあるから警戒も引き続き頼む』

 

「了解」

 

ここで無線が切れ、韻子は再び誘導に戻る。すると起助が近づいてきた。

 

「おい韻子、今しゃべってたのは?」

 

「不見咲上等だよ。あっちから増援送ってくれるみたい」

 

「そりゃあ助かるよ。人多すぎて猫の手も借りたい位だったからね、ここ」

 

起助はお手上げと言わんばかりに両手を挙げる。

 

「敵の仲間が出るかもしれないから警戒を怠るな、とも言ってたよ。」

 

「大丈夫、一応見てるさ。」

 

少しドヤ顔するが、そこ自慢するのかと韻子は苦笑いする。でも、それより――

 

「伊奈帆たち、大丈夫かな。10区を壊滅させた喰種って情報だし……」

 

「まぁ信じようぜ。鞠戸准特等とかもいるし、大丈夫っしょ」

 

「うん……」

 

二人が見つめる先から、微かに爆発音のような音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊奈帆、ユキはトリルランと対峙していた。

 

コンクリートを浮き上げさせたのはユキのクインケ、”アーマチュア-α”だ。

 

これは腕につけて戦う珍しいタイプで、拳あたりにある部分を壁や地面に叩きつけて指定した場所を破壊したり、先のように動かしたりできる。まだまだプロトタイプで場所指定に曖昧な部分はあるが、ユキはうまく使いこなしている。

 

伊奈帆はカームに肩を貸して立たせる。

 

鞠戸たちも近くに駆け寄る。

 

「やつはSレートの紫オーガ。突然変な霧に覆われた後、触れた物をすべて吸収するようになった。こいつはやっかいだぞ」

 

「触れた物を……吸収?」

 

「そんなことあるの?」

 

2人は驚きを隠しきれない。それもそのはず、いきなり喰種に特殊能力がついたと言われても驚かないはずはない。

 

だが、まわりに転がっている不自然なバラバラの死体が真実を物語っている。

 

「霧に覆われる。誰も歯が立たない。……まるで、光を放つ喰種みたいだ」

 

伊奈帆は前に出て、アタッシュケースの持ち手のボタンを押す。

 

中からオレンジ色の槍状のクインケ、”スレイプニール”が姿を現す。刃は大きくとても鋭い。

 

「少し確認したいことがあるからユキ姉、援護よろしく」

 

「はいはい。あ、あとユキ姉じゃなくてユキ上等だって言ってるじゃない!」

 

「おい、やつは危険だ、気をつけろ!」

 

「大丈夫ですよ。触れられなければいいんです」

 

そのまま伊奈帆は走り出す。同時にスレイプニールの先を地面にすりつけ、破片を飛ばす。

 

その破片をトリルランは避ける身振りもせず、ただ伊奈帆を見ている。案の定、破片は吸収される。

 

――なるほど、確かに吸収されている。ならこれはどうだ。

 

内蔵されたギミックを作動させる。スレイプニールはあっという間に槍からボウガン状に変形した。

 

刹那、そこからまばゆく光るエネルギーが球体状に圧縮され、発射された。

 

だが、これも虚しくトリルランの左の肋あたりに吸収された。

 

「ほぅ、君は面白いクインケを使うねぇ。しかし、我には効かぬぞ!」

 

トリルランは伊奈帆に急接近する。そのスピードのまま蹴りを繰り出す。

 

だか、伊奈帆も瞬時に対応し、避ける。トリルランが次々と繰り出す攻撃を見事にかわしていく。

 

「クッ、こんのォ!ムシケラの分際でェ!」

 

そこに再びユキのアシストが入る。

 

蹴りを入れようとしたトリルランの足元周辺を斜めに浮かす。バランスを崩されたトリルランは慌てて飛び退き、体勢を立て直す。

 

「………」

 

「ハッ、ちゃんとまともなのが2人いるではないか。なら、本気を出させてもらうぞ!!」

 

トリルランの赫眼がピキピキと音をたてる。

 

腰あたりから、2本の触手のようなものが飛び出す。

 

紫色でゴツゴツとした表面。これは鱗赫であろうか。

 

「オラオラァ!!!」

 

再び伊奈帆に襲いかかる。

 

伊奈帆は素早く回避し、距離をとる。と同時に移動しつつチャージしていたボウガンを鱗赫めがけて発射。

 

だが弾は吸い込まれる。

 

「鱗赫にも吸収されるのか……」

 

「残念、そんなに甘くはない!」

 

鱗赫が加わったリズミカルな攻撃に伊奈帆は反撃の余地もなくひたすら避ける。けれど伊奈帆は、トリルラン攻略のカギにあと少しで届くところまで推理していた。

 

ユキのナイスタイミングでのアシストにより、再び伊奈帆は距離を置く。と同時にスレイプニールにあるレバーを引き、弾の種類を変える。

 

今度はトリルランの近くにある浮き上がったコンクリートめがけて撃つ。着弾と同時に鼓膜が張り裂けてしまうような音が発生した。音爆弾である。

 

「ハハッ、どうした。疲れて撃ち損じたか?」

 

「………!」

 

伊奈帆は王手をかける。

 

レバーを引き弾を変え、トリルランの足元に撃つ。

 

着弾すると一気に白い煙が広がる。

 

「ガッ、ぐ、グアアッ!!なんだこれ!?催涙弾か!!」

 

トリルランは針が刺さるような痛みで悶絶する。そこにもう2発くらい撃ち込み、

 

「みんな、いったん撤退だ。」

 

「え、おい!これからどうするつもりだ」

 

「僕に考えがあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊奈帆たちは、少し離れたところへ来た。ここら辺の住民も戦っている間に他の捜査官たちが避難させたようだ。

 

「なぁ界塚弟、あいつを倒す策を思いついたのか?」

 

鞠戸はその場に腰を下ろす。

 

「はい。こんなのは前代未聞ですが、どんな能力にも欠点はあります」

 

伊奈帆は続ける。

 

「あいつは触れた物、物理的な物から音、光などすべてを吸収するバリア、を体にまとっていると思われます。攻撃が当たらないので無敵に見えますが、()()()()()()()()体全体に張れません。もし全体に張ってしまうと、まず第一立てなくなります」

 

「………!」

 

カームだけがうまく理解していない様子なので言い換える。

 

「足裏に張ってしまうと常に物と接している状態になる。そうすると吸収してしまって地面にどんどん埋まっていくことになる。また、目に張ると前が見えなくなりますし、鼻、口に張ると呼吸できない」

 

カームも納得したようだ。

 

「実際、さっき催涙弾を撃ちましたが効いていたので目にバリアはなく、音爆弾は効いていない様子なので耳には張っているようです」

 

「やつの弱点等はわかった。で、どう倒す?」

 

佐々木は問う。

 

「多分一度きりですが、成功すれば必ず勝てます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか、トリルラン様!」

 

クルーテオの指示でここ21区に来ていたスレインが駆け寄る。

 

トリルランはさっきの場所から少し離れた公園にいた。そこにある水飲み場で目元あたりを洗っている。

 

声をかけられ、痛みで目を細めたままスレインの方を向く。

 

「クッ、貴様どこをほっつき歩いていた!援護の一つもないのか!」

 

トリルランの表情は怒りと憎しみで溢れかえっている。

 

「恐れながらトリルラン様、私はついさっきここに到着しましたので………」

 

「うるさい!!言い訳などなど聞いとらんわ!それよりヤツらは!?6人の捜査官どもを見なかったか!?」

 

「あ、えっと…た、確かここから南西あたりに向かって行ったかと……」

 

そう聞くとすぐに立ち上がり、体からあの薄紫の霧を発生させる。

 

「このトリルランを侮辱した罪、一匹残らず死で償ってもらうぞ!!!」

 

そのままトリルランは建物を無視して走り出した。

 

「あ、お、お待ちください!」

 

スレインは後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリルランは伊奈帆たちを探す。先の戦闘で記憶した臭いを頼りに。

 

ーーおそらくヤツらはそんなに遠くへ逃げてはいないはずだ。スレインの言ったことが正しければまだ増援も来ていない。なら今すぐにでも見つけて殺し……ん?

 

走りながら探していると人が2人いるのを見つけた。

 

トリルランが走っていた道路の右側の分岐道に彼らはいた。

 

ーーあれは.....さっきのヤツらだ!がっしりした体型のおっさんと、金髪ビビリ野郎だ、間違いねぇ!!!

 

トリルランは確信すると殺意むき出しで走り出す。

 

2人もトリルランが来る反対方向、大きな橋があるところへ駆け出す。

 

「やっぱりアイツ来ましたね鞠戸准特等」

 

「あぁ、そりゃ来るわな。あとは、あいつらに任せるだけさ!追いつかれんなよカーム!」

 

2人は橋を渡り、少ししたところにいるユキと合流する。

 

「ハハッ!橋の上では逃げ道がないぞぉ?!それとも死ぬ気にでもなったかぁ?!」

 

トリルランの腰から鱗赫が形成される。

 

「そろそろね.......はあぁぁ!!!」

 

ユキは膝をつき、思いっきり振り上げた右腕を地面に叩きつける。

 

その直後、橋の入口付近に亀裂が入り、崩落する。だが、トリルランはこれをジャンプしてかわす。

 

「こんなもんには引っかからんぞ!さっさとくたばれドブネズミィィィィィ!!!!!」

 

トリルランが3人にトドメを刺そうと地面に降りる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

「あなたは()()()()()()()()()()()!」

 

ユキは今度は左手で地面を叩く。そしてトリルランが今まさに降りたところが崩れ去る。

 

絶妙なタイミングである。

 

そのままトリルランはバランスを崩し、真っ逆さまに落ちる。この下は道路である。

 

――まずい!今すぐに...解除!!

 

トリルランの表面から薄紫の皮のようなものが取れて消える。

 

すぐに回転し、膝をつき両手をついて着地する。

 

が、降りたのもつかの間、増田がクインケを持ち突進してくる。降りたすぐのことだった、トリルランは反応できない。

 

「うおおおおおお!!」

 

増田は自身のクインケ、"ケンタウロス"でトリルランの左足を切断する。太ももあたりから斬り、斬られた足は血をばら撒きつつ宙を舞う。

 

「がぁぁぁぁぁ!!...っ、こんのネズミがぁぁ!!!」

 

鱗赫を使い増田を吹っ飛ばす。

 

「ち、人間ごときがこの俺様に.....」

 

トリルランは言いかけたが、目の前に先ほど自分をコケにした捜査官、伊奈帆が目の前に現れる。背後にも佐々木がクインケを構えていた。

 

「.....チェックメイトだ」

 

伊奈帆は佐々木とタイミングを合わせてクインケを発砲。2発とも鱗赫で打ち落とそうとしたが、雷を帯びた弾丸はそのまま刺さり、凄まじい電流が彼を襲う。

 

「ぐわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そしてトリルランは鱗赫が消え、仰向けに倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後トリルランを本部へ持ち帰り、謎の能力について解剖して調べたが、これといった特殊な臓器等はなかった。あの力について、また光を放つ喰種についても何かわかると皆思ったが、謎はより深くなっただけだった。

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