ジャンヌ・オルタは不器用可愛い   作:雨あられ

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第4話

「先輩、ここは危険です!」

 

ああ、危険だね。でも一番危ないのは…

 

「……安心してください、私が何としてでも守り通します。ほら、私の膝の上に先輩の頭を置いておけば……無敵です。」

 

うん、それは良いんだけどマシュ。この状況が一番きけ……

 

「先輩、先輩。あーんしてください」

 

もぐもぐ、うん、マシュとりあえず…

 

「うふふ、先輩、なでなでしちゃいます……次行きますよ、あーん……」

 

駄目だ!この甘やかし系後輩サーヴァント!

令呪をもって命ずる!マシュよ!今日一日ザル(お酒に強く)になれ!

 

言葉を発するとともに、甲の刻印が光を放つ、そして、とろんとまどろんでいたマシュの瞳に光が宿っていく。

 

「……?……っつ!!?」

 

先ほどまで、酒で頬が赤かっただけなのに、次には首筋から手先まで赤くなり……

 

「あ、あああああの、あのあの、先輩?」

 

ぐっもーにん、マシュ。

そういうと、マシュはミスターバベッジよろしく、頭から煙を出し、卒倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、先輩。バイタル値、精神共に正常です。お手数をおかけしました」

 

気にしなくていいよ。マシュの膝は柔らかかったし。

そう先輩に言われて顔が赤くなる。何があったのかは、正確に覚えていない。ただ、感触だけは残っていて、なんとなくふわふわといい夢を見ていたような……。

 

「おう、難儀だったな。とにかく、これでようやくまともに作戦も立てられるってもんだぜ」

 

目の前にいる山のような大きな金髪グラサンの男性はミスター・ゴールデン……坂田金時さんだ

時は平安。舞い散る桜に錦の空……そう、京の手前の丘に、私と先輩たちはレイシフトしていた。もちろん、今回も人類の存亡をかけた、特異点化を防ぐため。

 

「しっかし、良いのかい大将。作戦会議ってのはあんたの手持ちも含めて皆でやるもんじゃねぇのか?」

 

「はい、そのことなのですが……」

 

 

 

 

 

「良いねぇ!やるじゃないか黒いの!っ……っ…ぷはぁ!次持ってきな!」

 

「ふん、まぁ貴様の飲みっぷりも……っ……ふぅ、中々だ。次だ。早くしろ、そこの。」

 

「な、なんで俺がこんな犬みてぇにウェイターの真似事なんかしなくちゃいけねぇんだ…」

 

「「早くしな(しろ)!!!」」

 

「へい!!お待ちぃぃ!!!」

 

 

 

「……その……話し合いができる空気ではなくて」

 

「あぁ、まぁ……わかるぜ(にしてもあの女、胸元開きすぎだろ。パイレーツオブカリビアン…!!目のやり場が……!)」

 

…金時さんも、あまりの惨状に目を逸らしています。

この特異点には、どうやら周りにエタノール…酒気を帯びた霧が蔓延しているらしく。私を含むサーヴァント全員があのように、酔っ払ってしまっている。もちろん、金時さんやドレイクさんのように酒に強いサーヴァントはある意味、普段通りなのですが……

 

「ジル……?ジルはどこ…?ジルぅ……」

 

「ぐぅ…やりました、ついにセイバーを…また、新しいセイバー?…今度は水着?…ぐぅぐぅ…」

 

と、酔いつぶれてしまっている面々も……。

 

「まぁ、暴れられるより大人しくて良いじゃねぇか」

 

「金時さん、あの、さっきからなぜ目を逸らすんですか?やはり私たちが…」

 

「いや、嬢ちゃんたちは悪くねぇ…。と、マスターさっさと作戦立てて、俺たちもゴールデン休憩と行こうぜ」

 

そうだね。そういってマスターは、今回の騒ぎの元凶である、茨木童子の資料を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、先輩完璧な作戦です」

 

「あぁ、ゴールデン良い案だぜ」

 

やっぱり先輩はすごい!この場面で最高の戦略を思いつく。まず、フレンドのスカサハさんが、鬼(茨木童子)の右手を倒し、その隙に、フレンドのスカサハさんが左手をやっつける、そして最後に、茨木童子本体をフレンドのスカサハさんが倒す……あれ……何かおかしいような……

 

「ゴールデン良い作戦も思いついたし、俺たちも宴会と行こうぜ」

 

「そうですね。先輩、おにぎりも作ったので食べま……」

 

「ジル?あ、マスタぁ…!」

 

!!??

よろよろと、遠くで膝を抱えていたジャンヌ・オルタさんの顔が輝き、一息にこちらまでかけると、そのままの勢いで、先輩に、マスターに抱き着いた!?

そして……

 

「……」

 

む、無言でマスターの胸元に顔をぐりぐりと押し当てています。いつもに比べて軽装になっている彼女の胸元はぐいぐいと押し付けるたびに形を変える…!

それに対して、マスターは困惑しながらも、条件反射的に彼女の頭を撫ではじめると、ジャンヌさんは口を尖らせながら、頬を染めて、離さないんだから……といって、手を絡ませはじめます……

 

「……(こいつはゴールデンだぜ、大将……)」

 

なんてうらや……危ない光景なのでしょう。普段の彼女からは想像もつかないそのだだ甘えっぷりに、言葉を失う。

 

『やーみんな、調子はどうだい?って、うわ。ど、どうしたの彼女(ジャンヌ)!?』

 

こんな非常事態に、ドクターの呑気で間の抜けた声が聞こえてくる。でも、もしかして、彼ならばこの状態の改善を…

 

「ドクター……どうやらジャンヌさんはお酒に酔ってしまったらしく」

 

『え?って、ま、まずいよ。早くその二人を』

 

『はぁい、マ・ス・タ―?あなたの清姫ですよマス…』

 

『ジャンヌぅ!私も応援に…………』

 

そこで通信は途絶えた。聞こえてきたのは嘆きに近い触魔たちの悲鳴と竜の雄たけびに似た憤怒の声。そして、それに巻き込まれたドクターの絶叫だけであった。なんの役にも立たなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩。彼女にも私のように令呪を使えば…え、もう令呪がない?私に使ったので最後ですか?」

 

何ともやりきれない気分だった。酔っている間、確かに記憶はなかったが。それはそれは幸せな気分だったのは覚えている。しかし、今ブルーシートの上で行われている……

 

「……」

 

この砂糖を吐き出しそうになるほど甘い光景が頭に焼き付いてくる。

マスターに抱き着き、まるでそれを奪われまいと周りの人間にジト目で睨みを利かせるジャンヌ・オルタさん。手を伸ばしただけで、噛みつかれそうです。

 

「おーこわ、普段甘えられない反動が爆発した、と申しますか。ほんっと!尻尾に来る光景ですねぇ」

 

「主どの…」

 

「あ、玉藻さん、牛若丸さん」

 

私の横に正座して腰を下ろしたのは尻尾をいきり立たせた玉藻の前さんと、尻尾をだらりと下げて落ち込んだ様子の牛若丸さん。二人とも、この世界、日本を代表するサーヴァント。

 

「ちょっと!そこの黒いの!アベンジャーだかアバズレ○ッチだか知りませんが、そのような独裁!許されようはずがありません!っていうか、代わりやがれです、この!」

 

「……反対側なら空いているわ」

 

「そうです!反対側なら……え?」

 

「え?」

 

え?

それと同時に皆の視線が一斉に先輩の左半身に集中する、確かに、彼女はべったりくっついてはいるが、左側は……

 

「壇ノ浦・八艘跳!(だんのうら・はっそうとび!)」

 

「っ!させません!呪層・黒天洞!」

 

「っ!伊勢義盛…いえ、玉藻の前さん!ここだけは、譲れません!」

 

「牛若さん……お互い日本編が始まってついに!和風サーヴァント大活躍の大決戦!と思いきや礼装が追加されただけで肩透かしを食らった仲……

しかし、それとこれとは話は別!でもでも!クラス相性悪いのでやっぱり穏便にここはじゃんけんなど…」

 

「お覚悟!」

 

「ちょ!」

 

「……」

 

二人が激しい戦闘を始めたのを横目に見ながら、こっそり、するすると、マスターの隣に腰かける。

じとーっとジャンヌさんは私を見てきましたが、追い払う様子はありません。

 

「あの、先輩。カレーおにぎり作ったのですが、はい。では、どうぞ。

あ、ジャンヌさんもいかがですか?」

 

「……マスターの、もらう」

 

……甘々すぎて、カレーおにぎりのはずなのに、甘いイチゴのような味がしますこのおにぎり。

マスターはおにぎりを小さくちぎって、ジャンヌさんの手もとに渡そうとしましたが、床に手をつき、口を開いて待っているジャンヌさんを見て仕方がなく、あーんを……

 

「もぐもぐ…ねぇ、マスター」

 

「……?」

 

「私を召喚してくれて…ありがとう……」

 

「!」

 

マスターの令呪の消えた手の上に、彼女は手を重ね。穏やかに、まるで、黒くなる前の、あの、オルレアンでの見た白いジャンヌ・ダルクさんのような、美しい笑みを浮かべる彼女。

 

「私をここまで、育ててくれてありがとう。

いつもクエストに連れて行ってくれて、ありがとう。

こんな私を……好きでいてくれて、ありがとう。」

 

……ジャンヌさん。

目を合わせているのが辛くなってきたのか、彼女は先輩の肩に頭を乗せながら心の中のものを次々と吐き出す。それは、まるで懺悔にも似た光景だった。

普段の殻(黒聖女)を破り、彼女自身(ジャンヌ・ダルク)に戻ったような。そんな光景……

 

こちらこそ、ありがとう。ジャンヌ。

 

手を握り返す先輩。

自分は、浅はかだったと思う。今も、羨ましいとは思うが、この二人の間にある絆は決して、玉藻さんたちのような邪なものではない。もっと尊くて、深くて、綺麗な……

 

ふふ、それにしても、こんな、素直な彼女、きっと酔って(正気を失って)いなければ見ることができないだろう。もし酔っていなければ…

 

『お待たせ!いやーひどい目にあったよ。そうそう、お酒に弱いサーヴァントのアルコールを分解する術式をダ・ヴィンチちゃんと作ったよ。10分前には出来てたからみんな正気に戻ってると思うけど……どうかな』

 

「……」

 

「……」

 

……ああ、ドクター。ドクターはどうしてドクター何ですか?

良い雰囲気を醸し出していた二人の間に、ぐるぐるとどす黒い空気が渦巻き始めた。

 

「ふ、あはははは!かかったわね!!

あーあ、残念ね、全部嘘よ!くく、あんな戯言で間抜けな顔をしちゃって!さぁ、死になさい!そして、全て忘れなさい!死ね死ね死ね!」

 

顔を真っ赤にしながら宝具を展開する彼女!ドクター!後でスパルタクスさんと一緒に無人島にレイシフトしてもらいます……!

 

「き、きます先輩!」

 

「よくわかんないけど盛り上がってるじゃない!私の歌、ついでに聞いてく!?」

 

「もう耐えきれねぇ!フレンドだか何だか知らねぇが師匠まで現れちゃ俺の居場所がねぇ!マスター!逃げ……れねぇよなぁ、こりゃあ!?」

 

「こりゃ、待たんかセタンタ!」

 

「ああ、みなで夜のゴールデンな京へと乗り出すぞ」

 

ああ、結局、いつもこうなってしまうのですね。

先輩も、こんな状況なのに、なんでもないと、いつものように笑って見せる。私も……これで良い。これが落ち着く。

どんな逆境だって、こんな賑やかなみんなと一緒なら……

 

 

 

ジャンヌ・オルタは不器用可愛い 終わり

 

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