トクサネシティ。
先のルネシティと同じく、ホウエン本土から少し離れた島にある町だ。
町としての規模は大したことはないが、郊外にロケットの発射台を備えた宇宙センターがある。
ここ、トクサネにもジムはある。
全国的に見ても珍しい形式のジムで、チャレンジャーは一度に二人のジムリーダーを相手にダブルバトルを行う事になる。
「ようこそ」「トクサネジムへ」
「ぼくはフウ」「あたしはラン」
「ふたりだけどひとり!」「ひとりだけどふたり!」
「ぼくたちのコンビネーション」「ひとすじなわ? ではいかないヨ!」
きゃいきゃいと話しかけてくる二人をサーナイトはどこか感心したような表情で眺めていた。
「どうかしたか?」
『いや、噂は本当だったんだなと......』
トクサネジムリーダー。フウとラン。
本来なら後の方に回すのは悪手とされるジムリーダーだ。
「テレパシーでお互いにやり取りしてるから、一人のトレーナーを相手しているようなもの......だっけか?」
『はい、実際に二人の間にテレパシーの経路が見えます。ですが、負けはしませんよ』
自信満々な態度にカルマは思わず苦笑いを浮かべる。
「それで、増えるだったか? ここは二体で戦うジムらしいから、試すのにおあつらえ向きなんじゃないか?」
『そうですが、今日はやけに落ち着いていますね?』
「なんかもう心配するだけ損って気がしてきたからな」
長々と喋っていたせいか、二人は取り繕っているつもりのようだが、隠しきれていない不機嫌さを漂わせていた。
二人が出したのはルナトーンとソルロック。
前の二人とは違い、この場にいる二体を倒せれば勝利というサーナイトと話の長さに優しいジムとなっている。
もっとも、他のトレーナーと違いサーナイト一体しか使えない上、バッジ7個目への挑戦という事で難易度は高めとなっているが。
「いわなだれ!」「サイコキネシス!!」
ソルロックがばら撒いた岩の群れをかわし、打ち払いながら進んでいくサーナイト。
しかし、地面に落ちた岩が浮き上がりサーナイトの背後から再び襲い掛かる。
『っ!』
たまらずテレポートでフィールドの端に逃げるサーナイト。そこに
「ほのおのうず!」「サイコキネシス!」
意思を持ったかのような炎が襲い掛かった。
ひかりのかべによって防いだものの、サイコキネシスによって操られた炎は通り過ぎることなく留まり続け、ひかりのかべにダメージを蓄積させ続けていた。
再びテレポートをし、カルマの傍に戻るサーナイト。
「攻めあぐねているな」
『はい、ダブルバトルの経験のないことが響いていますね』
「やっぱり野生のポケモンとは違うのか?」
『あれは数が多いだけで連携のれの字もありませんから......ダブルバトルは掛け算だって言うお客様がいましたがまさにその通りですね』
話をしている間にも、再び攻撃の態勢が整えられようとしていた。
「いわなだれ!」「めいそう!」
ソルロックが前に出て攻撃を行い、その後ろでルナトーンがめいそうによって能力を引き上げる。
『時間を掛けるのはまずそうですね』
「隠し玉があるならさっさと使ったらどうだ?」
『......切り札はそう易々と使っていい物じゃないらしいですよ? まあ、使う暇がなかっただけですが』
いつの間にか終えていためいそうにより、増幅された念力の波動が襲い掛かるいわなだれを弾き飛ばす。
『それでは行きますね、マスター』
声には出さなかったが、二人とも驚いた表情を浮かべていた。
テレポートを使ってソルロックの前に現れる。ここまではいい。
迎撃の指示を出す前に、かげぶんしんを使ってか二体に分かれたのも意図が分からずとも納得はできる。
問題は片方のサーナイトが迎撃のいわなだれを弾き返すと同時に、岩の上を跳ねるように移動したもう片方の攻撃がソルロックを殴り飛ばしたことだった。
普通ならばかげぶんしんは攪乱に使うための実体のない分身を作り出す技である。
後番組のように何十、何百、何千と分身して敵をタコ殴りにできるような技ではない。ポケモンはニンジャではない。イイネ?
二人にできた一拍の思考の隙間。
その間にサーナイトは再びテレポートし、めいそうにより動きを止めているルナトーンを挟むように布陣した。
我に返ったランが指示するよりも先に二体の拳が振るわれる。
シンクロした動きで振るわれた腕は同じタイミングでルナトーンを捉え、爆発的な衝撃を与える。
力尽きたルナトーンが地面に落ちていくのと同時に、ダメージから立ち直ったソルロックが浮かび上がる。
いつの間にかバトルが始まった時と頭数が逆になっていたが、その無機質な目からは闘志が立ち上っているかのようだった。
いくらやる気があったとしても、数と質の両方で上回れては覆す事はできず、ソルロックは再び地面に叩き付けられそのまま戦闘不能の判定を下された。
「これであと一つか......」
『そうですね』
トクサネのマインドバッジを手に入れ、残すはムロのナックルバッジただ一つ。
「ムロはかくとうタイプだからまず負けないだろ?」
『タイプの上では有利ですからね。でも、油断はできません』
ポケモンのタイプが不利だとしても覚えている技によっては勝敗がひっくり返るのがポケモンバトルだ。
『それにしても、あと一つですか』
「うん?」
『ここまで来ると、殿堂入りも現実味を帯びてきますね』
「少し気が早くないか?」
『そうですね、ジムリーダーを倒せるからといって四天王を倒せるとは限りませんから』
「まぁ、心配はしていないけどな」
『はい、必ず勝ってマスターを......カルマを後世に名を残すようなトレーナーにしてみせます』
「俺がそんな大層な扱われ方をしていいのか不安になるが、まあ、頷いた以上最後まで付き合ってやるさ、相棒」
決意を改め、最後のジム戦への気合を高める二人。
だが、バッジを集めても旅はまだまだ終わらない!
二人の明日はどっちだ!?
色々な技を並列して使って出しているという設定なので攻撃力を持たせるなら1体の分身を作るのが限界......敗北イベント後のパワーアップとかで増やしそうですが。