次の話は多分比較的真面目に書く筈。
バレットパンチが動きを止めたサーナイトの胴を捉え、吹き飛ばす。
しかしまだ、戦闘不能判定は出ていない。そしてサーナイトはまだやれるだろうという確信がユウキにはあった。
「もう一発だ!」
だからこそ追撃を仕掛ける。サイコパワーを応用した急加速で、地面に叩き付けられる寸前のサーナイトに追いつきその鋼鉄の脚を振るう――
その瞬間、メタグロスが吹き飛んだ。
「えっ?」
メタグロスの下には、拳を突き上げる姿勢で浮いているサーナイトの姿があった。攻撃を受けたサーナイトの方を向けば光になってその姿を溶かしていた。
「……フェイントかぁ」
テレポートからの速攻は囮で、本命はかげうちからの奇襲。意識外からの攻撃が
「まさかこいつが何もできずに倒されるとは思ってませんでした」
苦笑いを浮かべながら四体目を繰り出すユウキ。彼の四体目はポワルン。天気によってその姿とタイプを変化させる希少なポケモンだ。
「にほんばれ!」
ユウキの声と共に、激しい光を放つポワルン。
その光はテレポートで一息に決めに行こうとしていたサーナイトの目を焼くだけにとどまらず、天井に向かって打ち上げられフィールド全体を過剰な光量で照らしだす――それと同時にポワルンの姿が太陽のような姿に、またそのタイプをノーマルからほのおへと転じさせる。
「ウェザーボール!」
フィールドの上に輝く疑似太陽の力を受けて、灼熱の玉と化したウェザーボール。それが、唸りを上げて光に怯んだサーナイトに襲い掛かる。
しかし、直撃コースだったはずのウェザーボールは明後日の方向へと飛んで行った。
目を抑えたままな事から、光のダメージから立ち直ってはいないようだが勘が別の何かで攻撃の来る位置を看破し、弾いたようだ。
目が落ち着いたのか、抑えた手を放し転移する。
距離を離すのか、それとも再び接近戦に持ち込もうとするのか。ユウキの目がフィールドを走る。
見つけた。明るく照らし出されたフィールドにおいて不自然に濃い影を。
「影に向かってウェザーボール!」
指示は問題なく伝わったのか、ユウキの想像通りの軌道を辿ってウェザーボールは飛んでいく。
しかし、サーナイトはただ止まって当てられるのを待つような的ではない。
影に潜ったままフィールドの上を滑るようにポワルンの下へと動き始める。
近づかせまいとばかりに、技を放ち続けるもクネクネと不規則に蛇行するサーナイトに対し有効打を得る事はできず、ついに真下までの接近を許してしまう。
あなをほるのように、地面から跳び上がる――ような事はなく、影から出てそのまま地面に足をつく。
トレーナー、ポケモン共に一瞬だけ動きを止めるも、すぐさま再起動し、攻撃を放つ。
迫り来るウェザーボールに対し、サーナイトは何をするでもなく立ったままで――今にも攻撃が当たるという段階になってようやく手を上げた。
それはある種の構えのようだった。
シンオウ地方で人気のあるポケモン、ルカリオ。彼のポケモンは
サーナイトはそのはどうだんを習得できる訳ではないが、その立ち姿はルカリオのそれに酷似していた。
構えた瞬間に手の間が激しく発光し、同時に直撃寸前だったウェザーボールが霧散する。
「ポワルン!?」
うめき声にユウキが顔を上げると、ポワルンはダメージを負っていた。
おそらく、ウェザーボールを撃ち落としたあの光は技を打ち消すにとどまらずそのまま突き抜けてポワルンにもダメージを与えたのだろう。ユウキは小さく頷き、次の指示を出そうとした。その時。
再び、サーナイトの両手の間でエネルギーが弾けた。
サーナイトは空中に浮いていて、遠距離攻撃を主体とするポケモンや高速で動き回るポケモンと戦うのが嫌いだった。
なぜならば空中では十八番の接近戦の威力も若干削がれる上に、自分の間合いに入れる事が困難だからだ。
一応は、めいそうをする事で技の処理速度を上げる事で強引に自分のペースに引き込む事もできたが、四天王クラス相手にそんな暇はなかった。
それで、どうしたか。
弾けたエネルギーは無数の光の線を描き、ポワルンに襲い掛かった。
それも芸のない直線でなく、一本一本が別々の角度から逃げ場を封じる檻のように緩やかな曲線を描いてだ。
はかいこうせんの精密なコントロール。
繊細さとゴリ押しの融合というある種、荒唐無稽な試みが実を結んだ。
力なく地面に向かって落ちていくポワルンをボールに戻しながらも、ユウキはまだ笑みを浮かべていた。
あと2体しか残っていないという焦燥に、相手に一泡吹かせたいという欲求が勝っていた。
ユウキの5体目はバシャーモ。
ラグラージ、そしてジュカインに並ぶホウエン御三家、その最終進化形である。
「かえんほうしゃ!!」
指示と共に掌をサーナイトに向けるバシャーモ。そして掌――ではなく、手首から激しく炎を噴出させる。
ポワルンが打ち上げた光球の効果により、その噴き出た炎は一層激しく燃え盛りサーナイト目掛け殺到する。
それに対し、サーナイトは念力によってそれを吹き散らす。
細かな炎となったかえんほうしゃの残り火。それを隠れ蓑に見立ててか、バシャーモはその中を駆け抜ける。
「かえんほうしゃで加速するんだ!」
再び飛ぶかえんほうしゃの指示。しかし、先とは違ってバシャーモは手をサーナイトに向けず、下ろしたまま手首の炎を燃え滾らせた。
それはまるで宙を駆けるロケットのように。
炎の噴き出る勢いで加速したバシャーモは、炎が放たれる勢いそのままにサーナイトに殴りかかった。
もはやテンプレート染みた展開ではあるが、当然のようにテレポートで回避。続けざまに転移し、反撃とばかりに殴りかかる。
虚を突かれたのか、何発か受けるものの即座に持ち直し炎を纏った手足で応戦する。なお、当たらない。
普通に殴り合っているだけだが、これまでの経験の賜物かサーナイトの方が打ち勝っていた。
「一旦、離れるんだ!」
指示が飛ぶと当時に、ビルを飛び越えると言われる程強烈な脚力で跳び退る。
普通のポケモンでは距離を詰めるのに幾ばくかの時間を要するであろう距離。それに対し、サーナイトはテレポートで応じた。
再び、先のような乱打戦が始まると思われたがその予測は外れ、サーナイトはバシャーモから距離を置いた空中に現れた。
放たれるサイコキネシス。
予測していたのか、バシャーモはそれを難なく躱す。
躱した場所に再び放たれるサイコキネシス。
それをまた躱す。
そして再びサイコキネシスが放たれる――かと思いきや、いつの間にかバシャーモのすぐそばに跳んでいたサーナイト。
一瞬の硬直。
生まれた隙を突いて増大するサイコパワー。
先に放たれていたソレより高出力なサイコキネシスがバシャーモを壁に叩き付けた。
あの戦いからそこまで長い時間が経った訳ではない。
ただ、
どうあがいても、どちらかのポケモンが倒れればこの戦いは終わる。
それを惜しむでもなく、焦るでもなくチャンピオンは口元に小さな笑みを浮かべていた。
最後の一体、最強の相棒を送り出す。
咆哮を上げながらフィールドに降り立つ相棒の背中に頼もしさと、ある種の全能感を覚えながら口を開く。
「これで最後です。僕のジュカインを超えて見せてください! サーナイト!!」